第58噺(145噺中) 「男性の更年期障害」
更年期障害という言葉を聞くと、ご婦人の「更年期障害」を連想しますが、最近では男性の更年期障害も話題に上っています。
実は、私は最近まで男性の更年期障害なるものは「机上の空論」だとバカにしていました。そして男性ホルモンを注射している医師に対して疑惑の目を向けていたのです。ところがです・・・金沢で開催された日本泌尿器科学会で講演された三浦雄一郎さんの講演を拝聴し考え方が変わってしまいました。
ご存知の三浦雄一郎さんは80歳過ぎでエベレスト登頂に成功した著名人ですが、実はそれまでにはとてもご苦労があったのでした。60歳ころ身長165cm体重90kgの肥満体で高血圧・成人病、小高い山にも登れない体力だったそうです。不整脈があり、骨粗鬆症と骨盤骨折も経験したことがあるとか。
そんな体力に自信のない三浦さんが一念発起してエベレストに登ろうと無謀な夢を抱いたのでした。個人で行う体力トレーニングには限界があります。専門家の指導で徐々に体力を付けていた頃、同じ北海道の関係で札幌医科大学泌尿器科名誉教授熊本悦明先生を紹介されます。
熊本悦明先生は泌尿器科学会の中でも異色の存在で、男性は生涯肉体的にも精神的にも現役で生きなければならないという考えをお持ちで、ご自分自らも男性ホルモン(テストステロン・エナルモンデポー)を注射されている御仁です。
エベレストに登るために体力を作ろうとするご老人の三浦雄一郎さんと、男性は生涯現役でなければならないと考える熊本悦明先生との出会いは、当然の結果を招きました。三浦さんは2週間に1回男性ホルモン注射を受け、ED治療薬であるシアリス(動脈硬化の進行を抑える作用があるのでアンチエイジングの世界では多用されている薬剤でもある)を週に何回か服用して、次第に体力が増強し、エベレスト登頂前には背筋力は120kg以上というすごいパワーにまでなったそうです。そして80歳にもかかわらず、萎えていた気力も回復して朝立ち(勃起)はするわ!でビックリするくらいの回復力で、あのエベレスト登頂を成功させたのです。
ここまで事実を見せつけられると、男性更年期障害を否定するこちらの気持ちが萎えてしまいました。逆に私も男性更年期障害の診断と治療を始めてみようと試行錯誤し始めました。まずは自分の慢性腎不全の治療と男性更年期障害の接点を見つけ、更に自ら男性ホルモン注射を打ってみました。腎臓の悪い私にとってはそれなりの副作用のリスクも注意しなければなりませんが・・・、ホルモンと腎臓という観点も面白い視点です。乞うご期待です!
講演を聞いただけでは納得できないのが、私の悪い性癖です。そこで、まずは自分の体がどうなっているかが興味が湧いてきました。もちろん採血をしてみました。ホルモン検査です。
LH(黄体形成ホルモン・男性の場合は精子形成ホルモン)
FSH(卵胞刺激ホルモン・男性の場合は間質細胞刺激ホルモン)
テストステロン(男性ホルモン)
エストラジオール(E2・卵胞ホルモン)
DHT(ディヒドロテストステロン)
を調べれば、性ホルモンの力関係は理解できる筈です。
生理学の専門書・教科書で調べると図の様なフローチャート図になっています。
・・・で、私のホルモンの値を調べるとテストステロン=男性ホルモンは正常範囲内ですが、どういう訳かエストラジオール=卵胞ホルモンが高めなのです?そして、上位ホルモンであるLHとFSHも高めなのです。さあ理由が分かりません。
ここで熊本悦明先生の本の中にヒントがありました。
私の人差し指は、薬指に比較して短いのです!
熊本悦明先生の著書によれば、イギリスの統計で証券会社の有能な高額所得者は、テストステロン値が高く、そして人差し指が薬指に比べて短いという身体的な特徴があるそうです(23~26ページ)。企業トップや会社のリーダーになる人も同じ特徴があるそうです。これは、母親の体内にいた胎児の時に、どれだけ多くのテストステロンに暴露されたかによるそうです。すると、人差し指が短くて現在テストステロンが正常だとすると、その人にとっては現在テストステロンは低いと考えられます。
したがって、私のように人差し指が短くてテストステロン値が正常範囲の場合でも、このテストステロンの補充が必要になる場合があると考えます。だから上位ホルモンのLHとFSHが「テストステロン高くなれ!」と号令していたと理解で出来ます。
そこで、テストステロンを自分に注射してみました。結果はまだ先ですが、さてさて、吉と出るか凶と出るか・・・オソロシイ!
「治療してはいけない人」に関しては、そのうち解説します。
取りあえず、更年期障害の治療適応のある患者さんは次の3パターンになります。
1)テストステロン値が明らかに低下している人
2)テストステロン値が正常範囲内であっても、人差し指が短い人
3)テストステロン値とは無関係に、臨床症状で男性更年期障害が強く疑われる人
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