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第48噺 (145噺中) 「認知症予防とウォーキング」

後輩のリハビリ専門の医師が、酒席でウォーキングをすると認知症予防になると唱えていました。当時は聞き流していましたが、最近の認知症患者さんの増加?で、その効用が気になりだしました。その理屈が知りたいと思いませんか?

認知症にはいくつかタイプがあります。
1.アルツハイマー型(認知症の60%)
アミロイドβタンパクとタウタンパクという謎のタンパク質が脳に蓄積して起こる認知症です。
2.脳血管性(認知症の20%)
脳梗塞や脳出血によって脳神経が死滅して起こる認知症です。
3.レビー小体型
レビー小体という謎のタンパク質が蓄積して起こる認知症です。
4.前頭側頭型
大脳の前頭葉と側頭葉が委縮して起こる認知症です。

原因はともかくとして、大脳の機能異常によって多彩な症状が出現します。その症状を理解するために大脳のことを勉強しましょう。

まず、脳に関して理解してみましょう。解剖学的に大脳は新脳と旧脳に分けることが出来ます。新脳は主に大脳皮質で理性や感情や記憶をコントロールします。旧脳は主に大脳辺縁系で生きるために必要な最低限の生命活動や本能をコントロールします。旧脳は深部に新脳は表層に存在します。お饅頭で言えばアンコが旧脳で皮が新脳になります。

大脳の構造から分かるように、「本能」の中枢である旧脳を「理性」の中枢である新脳が取り囲んでいて、本能を管理下に置いて抑えている形です。大脳皮質が傷害を受けると「理性」はなくなり、「本能」が前面に出現するので、認知症が社会生活を営む上で障壁になります。

心理学の世界では、脳の働きを進化の発達生理学的観点から、ポール・マクリーンの脳の三層構造説を支持しています。その説によると大脳は次のように分類されます。
1.爬虫類脳(脳幹・大脳基底核)
進化の過程において最も古い年代に発生した脳器官であり、自律神経系の中枢である。基本的な生命維持の機能とテリトリー(縄張り)の防衛意識などを発生させる。自己保全の目的の為に機能する脳の構造部位である。
2.旧哺乳類脳(大脳辺縁系)
爬虫類脳に次いで進化した脳器官であり、個体の生存維持と種の保存に役立つ動機を生起させる機能を担い、危険や脅威から逃避する反応、外敵を攻撃する反応を取る、原始的な防衛本能を司る脳の構造部位である。
3.新哺乳類脳(大脳皮質)
最も新しい年代に発生した脳器官であり、言語機能と記憶・学習能力、創造的思考能力、空間把握機能などを軸とする中枢であり、ヒトと高等哺乳類において特に発達した知性・知能の源泉でもある。

この3つの大脳が優劣無関係に、三つ巴で人間の精神活動を形成しています。新哺乳類脳が傷害を受けると、他の2つの大脳が自己主張します。例えば爬虫類脳が優位になると自己保全の性格が強く出て、「お金を盗まれた!」「ご飯を食べさせてもらっていない!」などと言うようになります。旧哺乳類脳が優位になると生存本能や防衛本能が強く出て、看護師さんのおしりを触ったり、攻撃的になります。新哺乳類脳の機能が極端にていますると、言葉が出ない、迷子になってしまうなどの症状が出るのです。

以前にも解説しましたが、脳細胞には150億と数にも限りがあります。そして加齢とともに1日10万個の脳細胞は死んでいます。ですから、健常者であっても大脳の機能は落ちていきます。高齢者になると出不精になり家に閉じこもってしまいます。すると、いつも同じ環境、同じ景色で同じ空気で同じ音の空間に漂っているだけの存在になります。変化がなければ刺激がないのに等しいのです。

私たち生命の特徴は外からの刺激に対して反応することですから、刺激の全くない環境では死んだも同然です。その環境から抜け出すために、ウォーキングや散歩は必要になります。外に出て空気を吸いましょう。季節の香りがします。空を見上げましょう。高気圧であれば空は澄み渡るではありませんか。風が冷たければ鳥肌が立ちます。周囲の音に驚くこともあるかも知れません。足の裏に砂利を感じます。不安定でバランスに集中します。つまり身体の全ての五感で外の空間を感じ、脳細胞を刺激してあげるのです。委縮しかかった途切れ途切れの脳細胞のニューロン・ネットワークも再構築され認知症から逃れられるかも知れません。

認知症になってしまった人に対しても散歩は治療効果があることが分かっています。

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