第31噺 (145噺中) 「IgA腎症」
慢性腎不全の原因で一番多いのが、現在では糖尿病性腎炎ですが、昔は糸球体腎炎が一番でした。
糸球体腎炎で注目を浴びているのが「IgA腎症・IgA腎炎」です。
IgAと聞き慣れない言葉ですが、正式名称はイムノグロブリンAの略語で、免疫抗体物質です。糸球体腎炎の病理組織を顕微鏡で観察すると、腎臓の糸球体という組織にIgAを主体とする免疫抗体物質が沈着(写真の濃い紫の部分)して腎臓の機能を傷害する病気です。下の正常の糸球体の写真と比較すると異常さが分かります。
ただこの病気は急激に悪化するのではなく、20年間ほどの長期間を掛けて進行していくというものです。そしてIgA腎症は20年経過すると38%の人が腎不全・透析患者さんになるというのです。
その原因として、ウィルス感染、細菌感染、食物アレルギー、自己免疫など諸説があり、結論に達してはいません。しかし、典型例として、風邪症状の後に、タンパク尿と肉眼的血尿で発見されることが多いのも事実です。早期発見で、日本では扁桃腺摘出+ステロイドパルス療法で効果を上げています。
20年という長いスパンで経過を観察をしなければならないのと、早期治療が重要であることから、小学校・中学校での定期的な学校検尿が大切になります。私はこの学校検尿にかかわる大田区学校保健会の腎臓疾患委員会の委員長です。
【参考図表】
解明病理学 医歯薬出版
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