第23噺 (145噺中) 「消毒と治癒力」
私がチョッとした怪我で縫合しない方法を採用することがあります。(ほとんどそうですが・・・)
外傷手術の概念からは非常識ですが、創傷学的に考えれば理由があります。それを一般治療にも応用しているので、ここで紹介しましょう。
82歳の高齢のご婦人がある年の4月14日に転倒して左親指を怪我しました。
4月16日になって心配になり、懇意にしている内科の開業医を受診しました。かなりの傷であったので、開業医の先生から同じ医師会の私の所に紹介されました。
左親指の腹の部分にかなりの傷を負っています。皮膚がめくれ上がり、あるいは裂けた状態です。こういう場合は消毒したり縫合したりしては絶対にダメです。まず、水で軽く洗います。そして私のオリジナルの軟膏で処置します。
患者さんのご自宅で私の処置を2週間続けた5月2日の患部です。
裂けていた部分に新しい皮膚らしき組織が再生されています。まだ傷は痛々しく見えますが、全体的に乾燥傾向で皮膚らしくなろうとしています。あともう少し軟膏処置を続けていただきます。
怪我から6週間を過ぎた5月31日の患部の所見です。
初診時の親指を想像できない位に良くなっています。私のオリジナルの軟膏の効き目はすごいでしょう?実は一般の薬局で購入できる「白色ワセリン軟膏」が正体です。もちろんその中に、私のオリジナルのチョッとした味付けはしていますが、ほとんどがワセリン成分です。私の軟膏の効き目もすごいですが、82歳のご婦人の治癒力もすごいですね。
82歳のご婦人がこのように改善するのです。若い人であれば傷が治らない訳がありません。一般的に行われる消毒処置と乾燥は、バイ菌を殺菌してくれますが、同時に皮膚になろうとする細胞の芽も殺してしまうのです。若い細胞は乾燥にも消毒にも弱いのです。すると身体からは消毒にも乾燥にも強いコラーゲン線維が作られて怪我を保護しようとします。それが、結果的に傷、瘢痕、ケロイドになるのです。
怪我を消毒してはいけません。身体に備わった治癒力を妨害するからです。
| 固定リンク
コメント