第21噺 （145噺中） 「血管年齢」

巷では血管年齢を若返らせようと、サプリメントや健康法が取りざたされています。流行りの「血管年齢」について解説しましょう。
「血管年齢」は、動脈の硬さで判断します。動脈が硬ければ老化現象が進んだと判断しますし、動脈が軟らかければ若いと判断します。動脈の硬さを判定する検査法はいくつか存在します。

その中で、加速度脈波を測定することで、現在の血管年齢を推定できます。
写真のような検査器械が簡便で、開業医でも設置できる機器です。
さて、加速度脈波の算出した血管年齢と実際の年齢（実年齢）が一致していれば理想的ですが、血管年齢の方が実年齢よりもはるかに高齢であった場合は問題です。

例えば、59歳の男性で、血管年齢71歳とすると仮定します。
すると、この男性の実年齢・血管年齢直線は左方に移動し角度が急峻になります。血管年齢の寿命が80歳であれば、この男性は実年齢65歳くらいで天寿を全うすることになります。血管年齢の寿命が90歳であれば、この男性は75歳くらいで天寿を全うすることになるのです。

血管年齢が非可逆的な代物であれば、打つ手はないのですが、実は治療により血管年齢を若返らせることができます。血管年齢を若くできれば、実際の寿命も延ばすことが出来る筈です。
実例として、実年齢59歳で血管年齢71歳の男性患者さんについて解説しましょう。
特にハッキリした原因もなく「老衰」で亡くなられる方は90歳代が多いので、老衰年齢＝血管年齢寿命と考えて、血管年齢寿命を仮に90歳とします。上のグラフを利用して算出すると、この患者さんの現時点での推定実年齢寿命は73歳になります。現代の男性平均寿命80歳には遠く及びません。

そこで、ニトログリセリンを服用していただいた翌日に検査しました。
すると、血管年齢は何と65歳になりました。このデータをもとに推定実年齢寿命を計算すると81歳になります。何とか平均寿命を超えることができました。つまり、シッカリした治療の継続により寿命を延ばす可能性があるともいえます。

地元の循環器科を受診して、このような血管年齢測定検査があれば受けてみて下さい。血圧やコレステロールの測定だけでは、血管年齢を診ることはできません。

猫も杓子も血管年齢を若くすれば良いかと言うと、そういう訳ではありません。血管年齢が若過ぎると癌になりやすいという事実があります。機会があったら、「血管年齢と癌」と言うテーマでお話しましょう。

【参考】
【実年齢・血管年齢相関表】
検査で血管年齢が判明したら、実年齢と交差する点をグラフに記入します。その点と20歳の点を結んだ直線が、あなたの実年齢・血管年齢相関直線になります。
理想的には、実年齢と血管年齢は一致しますから、表の青い直線になる筈です。この線よりも角度が強いと短命になりますし、緩やかだと長生きをすると考えます。
血管年齢の終着点を仮に90歳として、記入した実年齢・血管年齢相関直線が90歳と交叉した点の真下の実年齢が、推定実年齢寿命と考えます。