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データ改ざんの報道

明治の文豪、森鷗外は、本名・森林太郎として、陸軍軍医総監にまで上りつめる。長く日本人を苦しめてきた「脚気」をめぐり、森と真っ向から対立したのが、海軍医官の高木兼寛だった。森の細菌説は誤りで、高木が唱えた白米原因説が正しかったことは、現在では常識となっている。

乗組員376人のうち、169人が脚気にかかり25人が死亡した。明治15年から翌年にかけて、太平洋で約9カ月にわたって行われた軍艦の練習航海は、惨憺たる結果に終わる。高木は、炭水化物に偏っていた乗組員の献立を、タンパク質を多く含んだものに変えた。するとほぼ同じ航路をたどった17年の航海では、脚気の患者はわずか14人にとどまり、死者は一人も出なかった。高木はこの大がかりな実験から、自説の正しさを確信したのだ。

その高木が創設者の一人に名を連ねる、東京慈恵医大の不祥事が発覚した。製薬大手ノバルティスファーマの降圧剤「ディオバン」の効果を調べる臨床研究で、京都府立医大に続いて、データ操作の不正が確認された。

権威ある英医学誌に発表した論文も撤回する。日本の研究に対する信頼が損なわれかねない。何より、留学先の英国で実証を重んじる医学をたたき込まれた高木に対する、最大の裏切りである。

調査委員会によると、ノバルティスの元社員が、解析の段階で改竄に関与した疑いが強い。この会社から慈恵医大には、8400万円もの寄付金が渡っていた。一企業のために、研究効果がゆがめられたのだろうか。

少なくとも、薬効に望みを託し闘病する人たちの姿は、関係者の眼中になかった。「病気を診ずして病人を診よ」。
この高木の医師としての信念が、見学の精神だったはずだ。
(2013年8月1日産経新聞「産経抄」から原文のまま)

私は慈恵医大出身です。この記事を読んで悲しい。

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コメント

高橋先生も慢性前立腺炎患者にとってはかなり影響力があります
アルファブロッカーにしろデパス 大豆イソフラボンなどなど 製薬会社にも影響力はあります
【回答】
高々いち開業医です。
影響があると言っても、一部の人間だけです。
私は吹けば飛ぶような存在です。
ただひたすら情報発信しているだけです。

投稿: | 2013/08/23 20:38

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