ねこ背と高血圧
毎朝、血圧を測るのが日課です。
高血圧の治療では、早朝高血圧が問題になっています。早朝高血圧は、夜間の高血圧を反映しているからです。私も血圧が高めなので、就寝前に血圧の薬を服用しています。
だから、早朝の血圧が気になります。
胸を張って背筋を伸ばして血圧を測ると、127/65mmHgとちょうど良い血圧です。
ところが、その直後に、ねこ背になって血圧を測定すると、157/83mmHgと、上は30mmHgも高くなり、立派な高血圧です。
ねこ背になると胸郭が小さくなり心臓や大血管が圧迫されます。圧迫された心臓や大血管は、その力に負けないように駆出力を高めます。その結果、血圧が上がるのです。
毎日、有酸素運動する習慣をつけると血圧が下がるというデータがありますが、本質的には胸郭を大きくする習慣がつき、それによって血圧が下がるだけとも考えられます。
また、深呼吸によっても血圧が下がります。交感神経やリラックスがもたらす効果だとされていますが、やはり、胸郭が開くからだと考えます。試しにねこ背の状態で深呼吸しても血圧は思ったようには下がりません。
医学の疫学的検証データも、血圧は姿勢によって変わるという事実を念頭に置かないと、陳腐なデータになります。
ですから、血圧が気になる方は、背筋を伸ばして胸を張って生活しましょう。
私も最近、胸を張って生きています。
【備考】
ちなみに、別の日に背筋全体を真直ぐにして血圧を測ると、上は105mmHgです。
胸椎を少し猫背にして腰椎はおへそを突き出すように伸ばした状態で測ると、上は138mmHgです。
最後に胸椎も腰椎も完全な猫背にすると、上は150mmHgになりました。
つまり、血圧のカナメは腰椎にあることが分かります。
【解剖学アトラス文光堂より】
この図は大動脈の位置関係を示したものです。
胸部大動脈は本人から見て脊柱(胸椎)の左よりに位置しています。そして腹部大動脈は脊柱(腰椎)のほぼ真ん中に位置しています。
腹部大動脈は正面に内臓の為の動脈が枝分かれしています。もしも腰を丸めたら、この枝分かれした動脈が圧迫されることになり、血圧を上げなければ十分に血流を維持できなくなります。
逆に、腰を伸ばせば枝分かれした血管にかかる圧迫が取れ、血圧を高く維持する必要がないことが分かります。
この図から、思いつくことがあります。
胸部大動脈は胸椎の左よりに位置していますから、大動脈の左側は空間が狭く、逆に右側は空間が広いことが分かります。ただし、大動脈の右側には心臓が位置しているので、実際は広い訳ではありません。
ですが、上半身を左側にひねると大動脈を狭き空間に追いやるので血圧が上がり、逆に右側に上半身をひねると心臓があるにもかかわらず、大動脈が広い空間に位置するので血圧が下がる筈です。
試しに自分の体で実験してみた。
まずは、背すじをピンと伸ばして測定です。上が107mmHgと出ました。
次に、身体を左側に強く捩じって測りました。
血圧は136mmHgでした。
そして、今度は体を右側に強く捩じって測定しました。
血圧は124mmHgと予想通り下がりました。大動脈の解剖学的位置関係を考えると、予想できる実験結果です。
しかし、一番血圧が下がるのが正面を向いて背すじピンが常に安定した結果になります。
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コメント
今日はありがとうございました。
先生、だいぶお疲れのご様子でしたが。。。
ゆっくりお体を休めて、良い夏休みをお過ごし下さい☆彡
我が家も、私の退院後オムロンの家庭用血圧計を購入しました。
私の家系は血圧の高い家系なので、これを機会に毎朝測ろうと思いつつ、毎朝慌ただしくて血圧計は箱から出されることもなく眠っていたのですが、最近、夫が使い始めました。
毎回測る時間がバラバラなのですが、下が若干高めのようで気にしているようです。
【回答】
毎朝測りましょう。』
胸を張って背筋を伸ばして血圧を測ってみるように伝えてみます!!
それから、胸を張って生きるようにと(^_^;)
【回答】
同感です。
投稿: k | 2013/08/10 17:17
高血圧症の患者さんは猫背の傾向が強いと考えますか? 降圧剤まで必要なくなると考えますか?
【回答】
猫背=高血圧とは考えません。
高血圧の患者さんが、背筋を伸ばして血圧が改善するのであれば、そのような生活習慣をつけることが大事だと考えます。
投稿: | 2013/08/10 21:39
先生の記事を読むと高血圧症は胸郭の問題であるとありますが 食生活で塩分を控えると血圧が下がる患者さんはどう説明しますか?
【回答】
胸郭の問題が全てとは言っていませんよ。
胸郭にも問題がありますよ、と解説しています。
逆に、塩分制限しても血圧が下がらない方はどのように考えますか?
塩分制限によって血液の循環量が低下し、そのため血管抵抗が下がるので血圧が下がるということです。
また、塩分のナトリウム成分が心臓の内分泌代謝に影響するので、心臓の延長線上にある血管にも作用し、血圧にも影響が出てきます。
血圧は様々な要因で上下します。
従来の常識だけでは、血圧の全てを説明できません。
姿勢と血圧に関しての知識は、この世界にはないので、一石を投じました。
投稿: | 2013/08/16 09:31
お世話になっております。血圧のブログ拝見しました。しかし「胸郭と血圧の関係」に着目するとは!!流石,科学者(医者)ですね。正に「目から鱗」でした。私も十数年前から高血圧で「ノルバスク」を服用していましたが,この6月,前立腺肥大(と癌の疑いがかかって)と判断されてから,アグリMAX,豆腐,野菜,野菜ジュースの摂取,並びに動物性脂肪・肉・塩分制限へと食生活を切り替えて約3ヶ月,近頃血圧が下がり,ホームドクターから「血圧の薬はやめましょうか」と言われて現在服用しておりません。これは食生活の改善と同時に,たまたま3ヶ月前から週2~3回テニスで汗を流すようになったのも血圧を下げる大きな要因になったのかも知れません。体育館備え付けの血圧計で毎回測っておりますが,テニス開始直前とテニス終了10分後では最高も最低もそれぞれ15~20は下がります。これは運動直後の一時的現象かも知れませんが,汗をかくくらいの運動も降圧効果があるような気がします。高橋先生が高血圧だと知って参考になればと思い投稿しました。お元気でご活躍を祈っております。
【回答】
ありがとうございます。
投稿: ダンボ | 2013/10/09 15:17
後で思えば「釈迦に説法」的な投稿で大変失礼しました。ただテニス(運動)による降圧効果は事実で,さらに,テニス仲間の間では「テニス後目が良く見えるようになる」とも言われています。全身の血流が良くなり網膜の感度が上がるのか,毛様体の柔軟性が増すのか。また暖かい湯飲み茶碗をお茶を飲む度に目に当てて(目の中へ遠赤外線を輻射し?)目が良く見えるようにするという話も聞いたことがありますが,いずれも医学上のメカニズムや根拠は素人にはわかりません。また「釈迦説法」になってしまいました。お許し下さい。先生のブログ,面白く,時には考えさせられながら(ただで)読ませてもらっております。ありがとうございます。
投稿: ダンボ | 2013/10/11 19:22