旬と賞味期間と賞味期限
自然界には季節による旬の食べ物が必ずあり、賞味期間や賞味期限がある。人生も同じである。
私にも医師としての賞味期限がある。手術を行う外科医としては、61歳の私はとっくに賞味期限を過ぎている。旬は30代〜40代であったろう。
内科医としては、80歳を過ぎても益々円熟し、賞味期間内であろう。
健康も同じで旬や賞味期限がある。
「健康」は体の全ての臓器、器管や機能が、支障なく完璧に働いている状態を示す。
そのような絶妙な状態は人生の中で、ほんの一瞬、つまり少年期青年期の若い時だけである。
だから、健康診断や医師にかかろうとする時点で、健康の賞味期限はとうに過ぎている。
健康であり続ければ永遠に死ぬ事がないかというと、そのような事はない筈だから、健康にも旬や賞味期限が必ずある。
だから、健康とは実体のない幻想であり、私も含め医療は「健康」という「幻想」を患者に提供している事になる。ある意味、医師は夢を見せ、その夢を食べる「バク」みたいな存在である。
見方を変えれば、病気にも旬や賞味期限がある。
決して食べたくはないが、私たちは賞味期間内に、つまり旬の内にこの病気を完食しなければならない。
賞味期間内に完食しなければ、すなわち病気に負ける。
癌に対する中途半端な対策や治療が、癌の完食を事実上妨げている。前立腺ガンのPSA検診や針生検は、その最たる物である。ただひたすら前立腺ガン患者を増やし、その予後を悪化させているに過ぎない。前立腺ガンに完成された治療は未だないので、発見されなくても良い、害の少ない比較的良性のガンが偶然発見され、結局、完食出来ない、つまり予後を悪くしているのである。
人生にも恐らく旬があるであろう。人生の価値は長生きする事ではなく、旬の内に完食する、充実した人生を送るかである。
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コメント
一般的には外科医にも旬 脂ののりきった時があるかもしれませんが 先生には旬を超えた円熟した技術経験があると思います 慢性前立腺炎内視鏡手術でまだまだ患者さんを助けて下さい
投稿: 慢性前立腺炎患者 | 2013/07/22 20:02
なるほどです。先生のご意見から察するに余分な早期発見の検査がさらなる精密検査の結果により返って健康を害している、という事もあるということでしょうか。
人間ドックなどにいくと早期発見でよい場合もありますが何か指摘されてまた再検査になりお金と心配が増えて、異常事態でもないのに寝た子を起こすような気がします。
長生きしたければ人間ドックなど受けないほうがいい、という意見も納得するものがあります。 かく言う私今までドックを受けてきたのでやめるのは勇気が要ります・・
この頃大腸内視鏡検査を受ける方が多くポリープ取ったよ、という方が多いですね。 私もですが。
取ってくれた先生いわくポリープなんて老化現象だから60過ぎればできるよ、との事。潜血検査やるから内視鏡になる
、私の場合は大腸の形に先天的な異常があるからよほどのことがない限り内視鏡はやるな、腸に穴が開く危険もあるよ、とのことで早期発見のためにかえって健康被害があるというアドバイスでした。 家の姑は100歳、父は92歳、ポリープだってピロリ菌だってあると思います。 水だって1日1リットルも飲んでないでしょう。 結局健康でないにしろ寿命なんて天から与えられたものであって早期発見で得られるものではないと思います。 しかし長年会社で健康診断をやってきた私にとって退職後検査受けないで過ごすことは不安があるのでできませんね。困ったもんです。
投稿: ふくちゃん | 2013/07/23 06:42
高橋先生は症状がでない限り人間ドッグや健康診断を受けるべきではないと考えますか?
【回答】
受けてもOKです。
ただし、結果は今後の参考程度にすれば良いでしょう。』
巷で有名な近藤誠先生が医者にはかかるなと言っています ガンも治療するな 人間ドッグも放射線被爆するので受けるな など
【回答】
絶対にこうだと言う方法や考え方は存在しません。
私の考え方も近藤先生の考え方も、一時期真理であるかも知れませんが、やはり旬が存在し、時期がずれれば陳腐な理論となる可能性はあります。
投稿: | 2013/07/23 11:30
上の先生の回答に治療や理論には旬があると答えてらっしゃいますが 高橋先生の頸部硬化理論や内視鏡手術にも旬があるということでしょうか? 私は先生の内視鏡手術は将来的にも拡大していくと思ってますが
【回答】
私の考えやテクニックにも、もちろん旬があり、時代の変遷とともに駆逐される可能性は常に存在します。
高々個人の理論です。
真理さえも旬があるのです。
投稿: 慢性前立腺炎患者 | 2013/07/24 10:46
高橋先生
今週発売の週刊誌に世界一のブラックジャック天才脳外科の神奈川県の佐野先生が載っていました 68才で今なお一線で外科医をしていらっしゃいます
その先生が手術前に丁寧に患者の手術のイメージを作るとおっしゃてます 以前高橋先生から内視鏡手術された患者から同じことをききました やはり高橋先生や佐野先生のような一流の外科医にはイメージが大切なんだなと思いました
投稿: 慢性前立腺炎患者 | 2013/07/28 20:15