出会い

出会いのあった人は、すべて教師と思え。
人生を歩む中で、教えを請うた人、世話になった人、恩義を感じた人はもちろんの事、迷惑を被った人や二度と会いたくない人も含め、すべての人が自分の人生の教師と考えることができる。
私事ではあるが、大学の医局に在籍した頃、教授の人事に少なからず腹が立ち、8年目に大学を退職した。教授からは慰留の言葉も無く、すんなりと退職できた。奥さんはとても喜んだが、私の医局での立ち位置を実感した機会でもあった。その後、救急病院で3年間研鑽し、37歳の時に意を決して開業医になった。
しかし嘱望された子飼いの医局員からは、主任教授が出なかったのは何とも情けない話しである。
大学を退職した数年は教授の顔も見たくなかったが、今では学会場で見つけては、思わず声をかけてしまう。
教授のお陰で大学を辞めるキッカケが出来、その流れで開業医になった今の自分がある。まるで「塞翁が馬」である。
教授が私の能力と性格を読んで、人事を行ったとは思えない。おそらく偶然の流れだけれど、私にとってはベストな流れであった。
教授が、その後の続く主任教授を作れなかったことは残念だが、結果として私を開業医に導いてくれた事は、教授の大きな功績である。
ドクターショッピングで辛い思いをした患者さんが、藁をもすがる気持ちで私のクリニックを訪ね、適切な診断と治療で治ることがある。この患者さんにとっては、教授が間接的な功労者である。