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どこにいても医師

平成20年の夏に、パリに家族旅行しました。
飛行機は、エアフランスで12時間ほどの旅です。離陸して4時間経過した時のことです。私たちの座席よりも4~5席前の列にいた男性が気分が悪くなったのか、スチュワーデスに抱えられてスタッフルームにつれていかれました。
Eaeft0095aしばらくしてアナウンスです。フランス語と英語と最後に日本語で「機内で気分の悪くなった方がおられます。」
「医師の方がおられましたら、至急、後部控え室においで下さい。」とのアナウンスです。

英語のアナウンスの時点で、妻や子どもたちの視線が私に向いているのです。『早く行ってあげなさい、パパ』と、・・・目だけではなく、口に出して次々に言うのです。妻や子どもたちが、そのように思う気持ちはとても分かります。夫であり父である私は、救急医療に身を置いていた経歴があるからです。しかし、装備・施設が備わった場所で活躍できた医師です。このような状況では、自分の実力を発揮できる訳でもなく、もしも私が診断や処置を誤り患者さんを死なせた場合には、その全責任は私一人にかかるのです。何億円もの賠償金を請求されるかも知れません。人の気持ちも知らないで・・・。
そういえば、以前に航空機内でドクター・コールされた場合の心得を飛鳥田一郎先生(日本宇宙航空環境医学会・前理事長、日本航空健康管理センター長)に講義されたことを思い出しました。「どんなことが起こっても、航空機会社が責任を取る」との言葉を・・・。

以上のことを走馬灯のように頭の中を駆け巡り、気がついた時には、日本語のドクター・コールをアナウンスをしている最中(医師の方がおられましたら、至急、・・・ここでスチュワーデスと目が合う)のスチュワーデスの前にいました。

医師であることを告げ、具合の悪い乗客を診ました。30歳前後の男性で、酸素マスクを口に当てられ、両膝は立てた状態です。ショック症状の時のポジションです。すでに意識はあり、私の言葉に正常に反応します。脈は触れ不整脈もなく呼吸も安定しています。持病もないとのこと。恐らく旅の嬉しさから、機内の無料のアルコールを一気に飲み、気圧の関係で酔いが進んだのでしょう。その状態で立ち上がった時に交感神経が十分に機能せず、下半身に血液が流れ、脳貧血で軽いショック状態になったと診断しました。その後、循環器の医師が駆けつけ、同様の診断で無事に事件は収拾です。ドクターコールで集まったのは私を含め2人でした。

このような状況下では、人間の品性が露呈します。私が走馬灯のように一瞬に思った事柄は、とても俗物的です。医師の使命からすれば、何も考えずに脱兎の如く駆けつけなければならないでしょう。心の狭い私を救ってくれた妻と子どもたちに感謝・・・です。

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