認知症と健康回復
認知症(俗に云う痴呆)になったとたんに、それまでわずらっていた病気が軽快したという現象があるのをご存知ですか?
例えば、それまで高血圧・狭心症・皮膚掻痒症などでいつも悩んでいた方が、認知症になってから、血圧は正常に狭心症発作は起こらず、身体の痒みもなくなるのです。
こんなエピソードがあります。
ある病院の癌病棟に入院していた癌末期の患者さんが、入院中に認知症を発症しました。癌病棟のスタッフでは患者さんが手に余り、発症間もなくしてその病院の認知症病棟に患者さんは移りました。認知症病棟に移ってからはそれまで悪化の一途だった癌の進行が、何とストップしたのです。癌が消滅したり、小さくなることはありませんでしたが、兎にも角にも癌の進行が止まったのです。そしてその患者さんは、かなり長生きをして結果的には老衰でお亡くなりになりました。癌が原因で亡くなったのではなかったのです。
このような現象、認知症の方の肉体的な健康回復はどうして起きるのでしょうか?
その解説の前に、まず病気の成り立ちを考えてみましょう。
ある臓器・器官の機能が何らかの原因で低下します。するとその低下したという情報は中枢神経に伝達されます。脳を初めとする中枢神経はその情報を元に、一生懸命に対策を立て対処しようとします。それが、免疫反応・血管収縮・ホルモン分泌などの生体反応です。加齢と共に、その生体反応は強く出ます。正確に言うとただ単に強くというよりも、バランスを欠いた状態で強く出ます。当然、対処の仕方に行き過ぎが出てもおかしくはありません。その結果、機能の低下程度であった臓器・器官の障害が、元に戻すことが出来ないほどの器質性の障害に進行するのです。それが病気として発症・発現すると考えられます。ですから成人病(=生活習慣病:私の嫌いな病名)は高齢者ほど罹患率が高くなるのです。
ところが認知症の場合は、どんな風に変化しるのでしょう。
臓器・器官の機能低下や更に進んで病気の発症として器質障害はすでにあり、その情報が中枢神経に伝達されます。ところが大脳皮質に認知症の原因である神経細胞・ニューロンの消滅、すなわち脳に萎縮が起きると、その情報の一部を処理できなくなります。前回も述べたように神経細胞はパソコン・ソフトのプログラム言語そのものですから、病気を発現させるためのソフトが壊れた、あるいは不完全なものになったことになります。臓器・器官からの情報を的確に処理できなくなるので、生体反応の出力も低下し、臓器・器官を今までのように攻撃できなくなるのです。これが健康回復の病態生理でしょう。
先に、認知症になってから癌の進行が止まったというエピソードを紹介しました。このエピソードから次のようなことが考えられます。
癌の発育・増殖・進行・転移には、生体反応、特に免疫反応が絡んでいるのではないか?ということです。この免疫反応は癌細胞を攻撃し抹殺してくれるものだと、常識的には考えられています。しかし、その逆の現象が起きているのかも知れません。医師は癌細胞を抑えるために、免疫力を高めようとします。それが逆効果になっているのかも知れないのです。例えば、高齢者が風邪程度ですぐに肺炎になるのは、気管や肺に存在する肺炎双球菌などの常在菌に強く反応して強い炎症反応が起きるので、その結果肺炎になるのです。例えば、癌末期の患者さんの治療に抗癌剤として免疫抑制剤やステロイドを使用することは、臨床の現場ではある程度確立した事実です。癌の治療に免疫抑制剤を使用する?まるで逆の治療と思えませんか?
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