チャングムの誓い
現在、NHKで再放送をしている「チャングムの誓い」という韓国テレビ物語を、毎週、妻と私が楽しみにしています。
土曜日の午後11時10分になると、2人でソファに座りテレビを凝視しています。
内容は16世紀初めの朝鮮王朝の宮廷料理人の主人公チャングムが、宮廷内の様々な陰謀・謀略に遭遇します。その艱難辛苦を乗り越えて、朝鮮史上、女性として初めての国王の主治医になるという立身出世の物語です。
しかし、立身出世にしては、遭遇する不幸の多さといったら・・・。
さて、チャングムが陰謀に巻き込まれて奴婢(ぬひ)という身分まで落ちます。当時の奴婢の女性が社会的に貢献できる仕事として、芸者と医女という仕事がありました。医女は医師と看護士の中間的身分で、医師の指示で女性を診察することはできますが、男性を診察することはできません。
主人公のチャングムが医女の学校で学んでいる時の教授にイ先生がいました。イ先生は賢いチャングムに辛く当ります。それをチャングムが懇願して理由を問うシーンがあります。
「お前のように聡明な者は、傲慢になる。傲慢なものは思い込みをし、誤診する。人の命をあずかる者として不適格である。」
「医師には深みのある人間がよい。」
「深みのある人間」とは、どのような人をいうのかわかりませんが、医学に限らず、この世のあらゆる現象に対して畏敬の念をもって接し、謙虚で思慮深い人をさすのでしょう。
ドラマ中のこの台詞(せりふ)を聞いて、感激した医師は多いはずです。私も「!」と感嘆の声を(こころの中で)あげました。
現実の医師は「聡明な者」しかなれないような教育システムです。一を聞いて十を知るような人しか医師になれません。そのような人しか中学・高校・大学受験を勝ち抜くことができないからです。ちまたでは医師国家試験が易しいという批判もありますが、大学教授すら、受けてまともに答えられるのは自分の専門分野だけでしょう。医師国家試験のすべてのパートをパーフェクトに答えることのできる臨床医はいないでしょう。
医学分野のあらゆるパートを記憶しなければなりません。医学は完成された学問ではありません。原因が分からず、経験的に治療法が確立されている事柄も多数あります。解明されていないことを記憶して試験で試されるわけですから、それこそ「傲慢」にこじ付け的に記憶しなければならないのが現実です。
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