最近の創傷処置事情
怪我を負ったりすれば、その傷の消毒が当たり前だったのですが、現在は事情が変わりました。消毒をしません。「えっ!」とお思いでしょう?
医師や一般の人が行っていた消毒という行為は、傷を治り難く、更に傷が瘢痕・ケロイドにするための治療・処置であることが最近分かってきたのです。
最近、外来で昔の傷が化膿した患者さんが来られました。その治療経過をお示ししましょう。
患者さんは52歳男性で右足首の上の部分の傷です。
2年前に出来た傷が化膿して来院されました。硬い黒いカサブタが出来ていて、その周囲が紅く腫れ、蜂カ織炎の状態でした。悪臭が漂い、腐敗臭で会社の同僚に臭いといわれ来院しました。右の写真は、初診1週間後の所見です。カサブタが溶け始めています。
腐敗したカサブタをハサミで切除します。痛そうですが、腐敗した組織には神経も死んでいますから無痛です。
初診から2週間経過した所見です。悪臭が減ってきました。傷の縁に腐敗した組織がまだあります。
前回と同じように死んだ組織を切除します。生きている組織がピンク色で生き生きとしています。傷そのものの面積は以前よりも広がっていますが、これから次第に縮小していきます。
初診から3週間経過した所見です。ピンク色のきれいな組織が上がってきました。腐敗した組織はホンのわずかです。
1ヶ月経過しました。壊死組織がなくなり、傷の底の組織がボコボコと盛り上がっています。傷と皮膚との境目がなだらかになっています。治っている来ている証拠です。
治療開始から5週間経過しています。画面の傷の上の部分(体の前)は、傷と正常皮膚との境がいっそうなだらかになりました。分泌物も少なくなり、腐敗臭がなくなりました。創面の凸凹からは、これからの傷の治るエネルギーを感じます。
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