痔のレーザー光線手術
専門は泌尿器科の私は、時々、患者さんのご希望で痔の手術を行うことがあります。
今回お示しする患者さんは46歳の男性の方です。以前より排便後にイボ痔が飛び出てしまい、いわゆる脱肛状態になり、その都度自分で収めなければならないと訴えておられました。
【概念1】
一般的にイボ痔(痔核)は、肛門の3箇所に出来ます。それは痔動脈が解剖学上、図のように3時・7時・11時に分岐しているからです。
【痔核手術 p15 前田昭二著 医学書院より改変】
【概念2】
典型的な手術は、図のように3本の痔動脈を結紮切断し、静脈瘤であるイボ痔を3箇所切除する方法です。切除した傷は、縫合すると肛門狭窄になることがあるので、縫合せずに開放創(赤い部分)のまま皮膚が自然に出来上がるのを待つのです。
【痔核手術 p85 前田昭二著 医学書院より改変】
一般的な痔の手術ですと、縫合をしない開放創のため痛みが強く、一週間程度の入院を余儀なくされます。また、毎日のガーゼ交換が痛みを増強させます。
私は痔の手術をレーザー光線を利用して日帰り手術で行っているので、患者さんの希望が強い場合、お引き受けします。通院も手術の翌日を除いて週に1回程度、ガーゼ交換は行いません。麻酔は、私の得意な仙骨神経ブロックです。
手術【1】
手術前の大きく腫れたイボ痔です。脱肛状態です。画面の右側(患者さんにとって左側3時の位置)のイボ痔が特に大きく、画面の左側(患者さんにとって右側7時の位置)のイボ痔は比較的小さなものです。
手術【2】
レーザー光線の吸収率を上げるために、3時・7時の位置のイボ痔に色素剤を注入します。
手術【4】
左側から見えている白い筒がレーザー光線照射器です。レーザー光線が当たっている場所に、赤いレーザー目印が確認できます。レーザー光線の照射された組織が白く変化しています。
手術【5】
レーザー光線照射が終わったイボ痔の成れの果てです。今回は、3時と7時のイボ痔のみを手術しました。11時のイボ痔は小さいので今回は行わず、次回もし大きくなるようであれば、行いましょうと患者さんには説明しました。
手術【6】
手術4週間後の肛門の様子です。大きく腫れた左右のイボ痔はつぶれてしまいました。まだ浸出液が出ている状態です。痛みは大分治まったとのことです。
手術【7】
手術6週間後の肛門の様子です。大きなイボ痔は消失し、わずかにびらん状態の傷が確認できます。11時の手をつけなかったイボ痔が目立ちますが、脱肛はしなくなったと、患者さんは大喜びです。しばらくこのまま経過観察としました。
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