「言葉」の定義と誤解

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炎症=細菌感染しかないと、医師であるにも関わらず誤解している人がいます。しかし、基礎医学である病理学の教科書をひも解けば、次のように記載されています。
「炎症」とは、生物学的、化学的、物理学的な刺激による生体の反応である。
と、記載されています。したがって、炎症=生物学的刺激=細菌・ウィルス・カビ・寄生虫とは限らないのです。
動脈硬化、蕁麻疹、花粉症、喘息、やけどのすべてが炎症です。つまり、細菌感染だけが炎症ではないという例です。

また、痛み=炎症でもありません。生理学の教科書は、痛みに関して解説していますが、主な炎症による痛みの原因は、プロスタグランジンという化学物質が強く関与しています。
そのプロスタグランジンを抑えるのが、鎮痛剤の役目です。したがって、鎮痛剤が効かない痛みは、プロスタグランジンが関与しない痛みということになります。
そのため、プロスタグランジンが関与しない痛みは、細菌感染による炎症ではない可能性が高くなります。

以上の基本的な知識を医師がチャンと知っていれば、患者さんは長いこと悩むことはありませんでした。医師が基礎医学をないがしろした勉強不足が、悪の根源です。

「炎症症状が軽快しないのは、抗生剤・抗菌剤を使用しても、細菌がなくならないためである。
なぜなら耐性菌が存在するから・・・。」と断言する医師のなんと多いことか・・・。
あるいは、「尿はキレイだから、気のせいです。精神科に行きなさい。」と告げる無知で本当に馬鹿な医師も多数存在します。
炎症症状の原因が、細菌感染ではないと思いつかないのか?だから、抗生剤を投与しても治らないと思いつかないのか?医師の発想の貧弱さに憤りを感じます。

「PSA=前立腺ガンの腫瘍マーカー」と頭に一度インプットされると、PSAの高くなる理由を調べもしないで、前立腺ガンしか思いつかない医師の多いこと多いこと!
ひとたび、「慢性前立腺炎」と診断すると、慢性前立腺炎=炎症=細菌感染、あるいは慢性前立腺炎=治らない病気とインプットされ、延々と抗生剤、抗菌剤、セルニルトンが処方されてしまうのです。
「頻尿=膀胱炎」とインプットされると、他の原因を考えずに、ひたすら抗生剤と抗菌剤を処方するのです。

医師が不正確に覚えた知識やフレーズが、誤解を招き患者さんを長期間も苦しめているのです。
深く考えもせずに、何となく診断した病名や概念が、診断した医師の考え方を限定し、さらには治療法も制限して「独り歩き」してしまうのです。医師も患者さんも言葉の定義に振り回されないようにしましょう!

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第99噺(145噺中) 「充当療法?」

私に例えると、現在、私は慢性腎不全のためにいろいろな薬を服用しています。
腎性高血圧が頑固なために、降圧薬を3種類、尿量の減少とナトリウム排泄を促すために、2種類の利尿剤を服用しています。電解質バランスが悪いため、カルシウム濃度を上昇させるためにビタミンD3活性剤とカルシウム剤を服用し、血中のリンが高いので、毎食後リン吸収剤を服用しています。腎性貧血のためにエリスロポイエチン注射と鉄剤を補給し、おかげで便秘するので少量の下剤と乳酸菌を服用しています。

このような処方や治療法は、症状や検査所見の異常を是正するための方法です。つまり、症状や異常所見の数が増えれば増えるほど、処方する薬剤の数が増えるのです。症状や異常所見に対して充当する治療法なので、「充当療法」というべき治療法になります。現在の医療のほとんどが、この充当療法です。

しかし、病気の根本を治すことができれば、充当療法は存在しなくなります。私も慢性腎不全を治すことができれば、こんなにも薬を飲むこともありません。
週刊誌で、「服用してはいけない薬剤」や「受けてはいけない手術」などとセンセーショナルなテーマで販売部数を伸ばしていますが、この充当療法を否定するのなら、現代医療を否定することになります。

この充当療法は、言い換えれば「対症療法」「姑息的療法」「非根治療法」と言えます。根本原因を治療しないで、派生する様々な症状に対して治療するというものです。
それに対峙する言葉としては、「原因療法」「根治療法」があります。医療は原因療法を実践すればよいのですが、原因の分からない病気が多いので、結局、充当療法になってしまうのです。

例えば、更年期を過ぎると男女ともに血液中のコレステロールが高くなります。血液中のコレステロールが高くなると、動脈硬化が進み、脳梗塞、脳血管障害、狭心症、心筋梗塞の発症率が高くなるので、巷ではコレステロールを下げる治療が主流です。そのおかげでコレステロールを抑制させる薬の売り上げは莫大なものになり、製薬会社はウハウハです。
それでは、更年期を過ぎると、なぜコレステロールが高くなるのでしょう?これは、更年期を過ぎると男性であれば男性ホルモンが、女性であれば女性ホルモンの分泌が低下するからです。男性の場合、更年期を過ぎると、睾丸が委縮し、男性ホルモンを合成できなくなります。中枢神経は男性ホルモンの合成を促すために、ホルモンの材料であるコレステロールを肝臓でたくさん作らせます。しかし、睾丸が委縮しているので、材料が供給されてもホルモンは作れません。そのため、過剰になったコレステロールが血液中に高濃度になり、結果、血管壁にコレステロールが貯蔵され、動脈硬化になるのです。この病態生理の環境の中でコレステロール合成を抑える薬を服用しても、問題解決にはなりません。根本原因の男性ホルモンを投与すればよいことです。女性の場合も、睾丸を卵巣に、男性ホルモンを女性ホルモンに置き換えれば、まったく同じです。

医師は頭を使って、充当療法(対症療法)ではなく、原因療法(根治療法)を積極的に開発すべきです。

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第98噺(145噺中) 「神経因性膀胱と誤診された前立腺肥大症の患者さん」

栃木からご夫婦で来院された60歳代の男性患者さんです。
現在、自力で排尿は50ccほどで、残尿は常に400cc〜500ccも残っています。地元の大学病院では「神経因性膀胱」の診断で、一日6回の自己導尿を指導され実施しています。
しかし、一生自己導尿を行わなければならないことに、患者さん本人はひどく落胆していました。

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いろいろお話をお聞きし、超音波エコー検査を行いました。
前立腺の大きさは32㏄と正常範囲の20㏄前後と比較しても、約1.5倍の大きさです。いわゆる前立腺肥大症の範疇に入ります。

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超音波エコー検査の所見を詳細に観察すると、右の写真の如くです。
赤い矢印の線が、本来の膀胱のラインです。この患者さんは、膀胱のラインよりも膀胱側に前立腺が突出(緑の矢印)しています。いわゆる中葉肥大型前立腺肥大症の所見です。膀胱頚部硬化症の範疇に入ります。

この患者さんが、前の主治医に前立腺肥大症の手術をすれば、導尿しなくてもよくならないか?と尋ねました。
すると、主治医は神経因性膀胱になった膀胱は治らないので、手術をしても無駄だ!と答えたそうです。

前の主治医は試みもしないで諦めてしまう、杓子定規の応用の効かない冒険心のない医師です。前立腺の詳細な検討もしないで出した結果でした。前立腺肥大症でも中葉肥大型は、この患者さんのように強く排尿が障害されます。まずは前立腺肥大症の治療が優先です。

神経因性膀胱はダメになってしまった膀胱の状態を示しているに過ぎません。膀胱がダメになってしまった原因を追究しないで、ダメなものはダメという判断は、医学ではありません。その原因を除去することで、治るかも知れません。この患者さんは恐らく治るでしょう。まずは、排尿障害の治療薬であるユリーフと前立腺肥大症治療薬であるプロスタールを処方しました。この治療で軽快しなければ、内視鏡手術を考慮しました。

下記にセカンドオピニオンの紹介状をお書き頂いた内科の先生への報告書を掲載します。
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診 療 情 報 提 供 書

◇◇◇◇内科クリニック
◇◇ ◇◇ 先生 御侍史

                     平成28年7月23日
高橋クリニック 高橋 知宏
〒143-0027東京都大田区中馬込2-22-16
TEL:03-3771-8000
FAX:03-3771-8033

●患者様情報:
ご 氏 名: ●●●● 様
生年月日:昭和・・年・月17日
ご 住 所:●●県●●市●●・-・-
電話番号:

セカンド・オピニオンでご紹介頂いた上記の患者さんについて、ご報告を申し上げます。

●傷病名:中葉肥大型前立腺肥大症による二次性神経因性膀胱

平成28年7月23日に、当院を受診されました。
超音波エコー検査で、中葉肥大型の前立腺肥大症(32㏄)が判明しました。写真は、この患者さんの前立腺の側面象です。
Nb34820m612赤い矢印が本来の膀胱のラインです。ところが、前立腺中葉部が、このラインよりも膀胱側へ極端に突出しています(緑の矢印)。
このタイプの前立腺肥大症は、通常の前立腺肥大症に比べて排尿機能が強く障害されます。
機能障害の影響を受けた結果、膀胱の極端な疲弊を二次性と考えないで、原発性の「神経因性膀胱」と診断されることが、多々あります。
大学病院泌尿器科での「神経因性膀胱」の今回の診断も、その事例でしょう。
同じ泌尿器科医でも、内視鏡手術を得意としない医師は、姑息的な対症療法に陥る傾向にあります。
今までにも、この患者さんのような事例は、数多く経験しています。
ひとたび「神経因性膀胱」と診断されると、原因は追究せずに、治療方針は自己導尿の一辺倒です。
患者さんの生活のQOLを真剣に考慮しないのが、現代医療の盲点です。
治療方針としては、排尿障害の原因を取り除くことで、二次性神経因性膀胱の改善を図ります。

まずは保存的治療を開始しました。
排尿障害の改善薬として、α1ブロッカーであるユリーフ錠1日2錠
前立腺の縮小を図って、抗男性ホルモン剤であるプロスタール1日2カプセル
3か月ほど上記の薬剤を服用していただき、排尿に改善が認められなければ、つまり、自尿の増加が得られず、残尿量も変化がなければ、後日、内視鏡手術として経尿道的前立腺切除手術(TUR-P)を行います。

ご紹介ありがとうございます。
今後も、今回のような患者さんがいらっしゃいましたら、ご紹介いただけましたら光栄です。
今後とも、よろしくお願い申し上げます。

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第97噺(145噺中)「自律神経失調症という都合の良い病名」

40代後半の男性が来院しました。
患者さんの主な症状は、頻尿と両足の痛みです。これまでの診察を受けてきた数々の医療機関では、自律神経失調症という診断でした。診断はついたのですが、治りません。そこで当院を受診しました。排尿障害が確認されたので、治療を開始しました。しかし、頻尿の症状は少し改善したのですが、両足の痛みや辛さが増すばかりです。さらには、胃がムカムカして、左首まで痛くなってきました。全身が辛くてだるくて仕事になりません。
結果はともかく、内視鏡手術を強く希望され、実施の運びとなりました。

ところが、手術前の検査で検査鏡が挿入できません。つまり尿道狭窄があったのです。膀胱頚部の観察ができませんから、当日の手術は断念しました。後日の手術のために、カテーテルを細いものから順に尿道に挿入し、最終的に18Fr(フレンチサイズ)を留置しました。18Frは直径が約6㎜です。内視鏡手術の太さが直径24Fr8㎜ですから、次回に期待して手術を終えました。

2日後に、再度患者さんの手術を行うことにしました。手術当日、患者さんの顔を拝見したら、明るく元気になっています。尿道にカテーテルが留置されているにもかかわずにです。尋ねると、足の痛みも胃のムカムカも首の痛みも軽減したというのです。カテーテルを留置したことで、排尿に関する膀胱頚部の負荷がなくなったので、関連痛が軽減したと考えられます。内視鏡手術の結果が期待できそうです。

尿道狭窄があったので長めにカテーテルを留置し、手術後6日目に無事にカテーテルが抜けました。その後、排尿状態は改善したのはもちろんのこと、死ぬほど辛かった両足の痛みと胃のムカムカと首の痛みは完全に消失したのです。

自律神経失調症という安易な診断は、何だったのでしょう?
自律神経失調症は、あくまでも症状名と考えるべきです。身体のどこかに震源地があり、その被害が震源地と異なる場所に起きたと考えるべきです。今回の患者さんは、膀胱頚部に病気があり、その関連痛が、両足の痛みに、首の痛みに、胃部不快感になったと考えられます。原因が分からないからと言って、安易に自律神経失調症と診断してはいけません。以前に警鐘を鳴らしたように、「病は気から」と言っているようなものです。

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第96噺(145噺中) 「AGEsとは」

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糖尿病の世界では、AGEsという物質が問題になっています。
AGEsとは最終糖化生成物の略で、過剰なブドウ糖とタンパク質が結合した物質です。
では、血糖が高いと何故体に良くないのでしょう。
消費されないで血液中にさまよっている糖分は、AGEs(最終糖化生成物)に変化して、身体の隅々に付着します。イラストはAGEsが身体に影響する状況を示しています。つまり動脈の細部に至るまで動脈硬化を起こすのです。その結果、高血圧・脳梗塞・心筋梗塞・動脈閉塞症・糸球体腎炎・脳軟化症など、およそ血管に関係するあらゆる病気を併発するのです。

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動脈は、血管の振動、脈波によって絶えずストレスが掛かっています。1回のドッキンという脈波で血管壁の内皮細胞には70回の過速度のストレスが掛かります。1日に10万回の心拍数がありますから、毎日700万回のストレスが血管の内皮細胞に掛かることになります。当然、ダメになる内皮細胞が出てきます。骨髄は、その内皮細胞を補充するために、単球などの細胞を供給します。傷害を受けた場所には接着分子なるものが単球を補足して、内皮細胞に仕立てたり、マクロファージに仕立てて動脈硬化の成分にします。
糖尿病によって生じたこのAGEs(最終糖化生成物)は、内皮細胞になるための接着分子をブロックして、動脈硬化の成分であるマクロファージの接着分子だけになるので、動脈硬化がドンドン進むのでしょう。

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今までの治療では、このAGEsを直接抑える方法はありませんでした。インスリンや血糖降下剤や血糖排泄促進剤や糖吸収阻害剤などで、血糖を下げ、AGEsを産生を間接的に抑える手段しかありませんでした。
ところが、最近、このAGEsを直接下げてくれる新しいサプリメントが登場しました。それが「黒ガリンガル」というサプリです。
イラストのグラフを見て分かるように、ウコンや生姜にもAGEsを低下させる作用がありますが、黒ガリンガルはごく少量でAGEsを半分に低下させる効力を持っています。ウコンや生姜に比較してもダントツです。

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上のグラフは、一般の人には分かりにくいので、私が見方を変えて作ったのが、このグラフです。
中国産の土生姜の効果を基準に、他の生薬と比較してみました。黒ガリンガルは、土生姜の8.7倍の効能があります。

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この黒ガリンガルは東南アジアの山岳地帯で栽培されているウコン系の作物です。これを毎日食している山岳地帯の人たちの平均寿命が驚くべきものです。東南アジアの平均寿命は55歳~58歳なのですが、黒ガリンガルを毎日食している山岳地帯の平均寿命は何と85歳~88歳です。

詳細は、株式会社レーネ電話03-6206-1485 にお問い合わせください。

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第95噺(145噺中) 「夜尿症」

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先日の東京のゲリラ豪雨の際に、夜尿症研究会なるものに参加しました。おかげでビッショリでした。
夜尿症の線、専門家による講演を拝聴しました。
泌尿器科は一般的に夜尿症は、成長とともに自然に治るものだと思い込んでいます。夜尿症が心配な親御さんには、お子さんの成長を見守りましょうと説明していました。

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ところが、専門家による疫学的な調査では、そうではないことが分かってきました。夜尿症の頻度が少なくなるのは、7歳ごろまでで、それを過ぎると、定常状態になり、かなりの年齢まで夜尿症は続くのだそうです。さらに中年以降に過活動膀胱や間質性膀胱炎になる患者が高頻度で出現するらしいとのこと。
統計をさらに詳細に分析して、夜尿症の週の頻度別で分類すると、週7回、つまり毎日夜尿症のあるお子さんの改善は、年長になっても変化していないことが判明しました。毎日夜尿症のお子さんの成長を待つだけの経過観察治療では、期待が持てないことになります。そのようなお子さんには積極的に夜尿症の治療薬を実施しなければなりません。

従来の夜間に覚醒させるという夜尿症の治療は、おすすめ出来ないそうです。今では、抗利尿ホルモンであるバソプレシンの内服薬を積極的に処方します。効果があり、夜尿症の発現率が激減した時点で、薬剤を少しずつ減量し、服薬を中止するという方法です。通常6カ月ほどかかります。バソプレシンの商品名はミニリンメルトといいます。


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第94噺(145噺中) 「夜間頻尿」

先日、夜間頻尿に関する講演会があり、参加しました。
泌尿器科の立場と内科・精神科の立場の、それぞれの専門の先生方が壇上に上がり、総合的な内容の講演でした。

泌尿器科の立場に関しては、すべて私が知る範囲の内容と、私にとっては否定的な内容が混在していました。常識的な範囲を超えない程度の内容でした。
ところが、内科的立場の内容と精神科的立場の内容とは、とても興味が惹かれました。

内科的立場の観点は、こうです。
高齢者になると、体内に貯留したナトリウムを夜間睡眠中に大量に排泄するというのが、高齢者の生理的現象だそうです。
すると、ナトリウムの移動のために水分が一緒に移動します。それが多尿になり、「夜間頻尿」になるそうです。その現象を防ぐためには、ナトリウム摂取量を控えることと、ナトリウム排泄を昼間に促進させなければなりません。
ナトリウムの摂取量を控えるのは、減塩食が勧められます。厚生労働省が推奨するのは、1日6g以下です。
ナトリウム排泄を昼間に促進させるためには、サイアザイド系の利尿剤、例えば、フルイトランを午前中に服用すれば良いとのこと。

夜間頻尿で睡眠時間が短いと、高齢者の死亡率が高くなるという統計結果があります。死亡率が一番低いの6時間半から7時間半の間です。6時間半より少なくても、7時間半より多く寝ても死亡率は高くなるという事実があります。

精神科の立場の観点は、こうです。
睡眠が非常に浅いと、膀胱のチョットした刺激により脳が覚醒するために、「夜間頻尿」になるのだそうです。睡眠が浅くなる理由にはいろいろあり、睡眠時無呼吸症候群などの基礎疾患が原因だそうです。特に睡眠時無呼吸症候は、腹圧がかかり夜間尿失禁になります。そして、抗利尿ホルモンの分泌が低下して多尿になります。

精神科領域にレストレスレッグ症候群Restlessleg syndrome、別名「むずむず病」という病気があります。筋肉の異常感覚を訴える病気です。この病気で、夕方から夜にかけて膀胱炎症状、頻尿夜間頻尿を訴える患者さんがいるそうです。治療はパーキンソン症候群の治療に使用されるドーパミン作動薬が効果的ということ。

夜間頻尿を膀胱と前立腺だけの病気だと思い込んでいると、とんだ誤診になります。
疫学的な調査では、夜間頻尿が3回以上の患者は、6年後の死亡率が断トツに高くなるそうです。ですから、夜間頻尿を軽く見てはいけません。
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【講演会後の懇親会の様子】

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第93噺(145噺中) 「超・栄養学」

栄養学では、牛肉も豚肉も鶏肉も魚も大豆もお米も、栄養素として含まれるタンパク質は、みな同じです。
私が慢性腎不全になったために、一時期タンパク質の制限がありました。1日60g以下という制限食です。私の奥さんは、全ての食材を計算して、献立を考えていました。牛肉100gにタンパク質は10g~20g前後、マグロ100gにタンパク質は20g~30gとうい具合にイメージと現実のタンパク質量にはギャップがあります

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魚のタンパク質量はとても多いのです。栄養学的に考えても、とても優秀な食材です。昔の日本人は、米と、乳酸菌の豊富な漬物と味噌汁と煮野菜と、魚しか食べていませんでしたから、栄養学的には完璧で長生きできた筈です。ところが、このグラフで分かるように、江戸時代はもちろんのこと、昭和の初期であっても平均寿命は50歳を超えていません。戦後でも50歳前後です。

Medianlife
戦後、食事が欧米化して肉食が増えたことで、寿命がグングンと延びたように見えます。しかし、肉の単位当たりのタンパク質は明らかに魚より劣ることが分かっていますから、栄養学的には不思議なことです。しかし、同じ時代の欧米の寿命を比較すると、どの国も団栗の背比べです。日本よりは明らかに肉食の国であっても、さほど変わりないのです。

寿命の統計では、乳幼児の死亡率が左右します。しかし各国のデータが信用できません。なぜなら、戸籍制度を正確に維持しているのは、すべての時代を通して日本だけだからです。戸籍のない乳幼児の死亡率はカウントされません。そのことから考えると、戸籍の正確な日本の乳幼児の死亡率を考慮に入れている日本のデータは信ぴょう性が高く、同時代の世界の寿命に比較しても、おそらく一番だったのでしょう。

では、なぜ日本人の寿命が世界に比較しても急伸したのでしょうか?乳幼児死亡率の低下もさることながら、今までの日本食に肉食が多く入ったからでしょう。魚よりもタンパク質の少ない肉食でなぜでしょう?それは恐らく肉に大量に含まれるコレステロールの含有量が理由でしょう。コレステロールは体内に必要な各種ホルモンの原料だからです。

そう思って、各食材のコレステロール含有量を調べると、驚くことに意外な結果です。100g単位当たりのコレステロール含有量は、
ししゃも250mg、うなぎ230mg、鮎140mg、イワシ110mg、アジ90mgです。
ところが、牛肉80mg以上、豚肉70mg、鶏肉90mgと肉類の方がコレステロール含有量が全般的に少ないのです。ここでも魚が優秀です。

では、肉が魚に勝っている栄養学的な利点は何でしょう?実は脂肪、脂質です。
魚の脂質は次のようです。
ししゃも11.6mg、うなぎ21mg、いわし13.9mg、アジ12.3です。
比較して肉類はどうかというと、
牛肉40mg~50mg、豚肉10mg~30mg、鶏肉4~14mgです。全般的に肉の方が脂質が高いことになります。当然、カロリーも肉の方が高いことになります。つまり、脂質が高い、カロリーは高いことが肉の利点になります。寿命を延ばすためには高カロリーの食材が良いことになります。

Beafporkchikin
しかし、脂質やカロリーだけが長寿の理由なのでしょうか?物事はそんなに簡単なものではない筈です。
そこで、私はこう考えます。以前に「いただきます!」のテーマで解説したように、食材には魂が宿っています。牛肉には牛の、豚肉にはブタの、鶏肉には鶏の、魚には魚の魂=生命力が宿っていると考えることができます。
魂の高さ、生命力の強さを比較すると、牛>ブタ>鶏>魚の順でしょう。つまり魚だけを食するよりも、牛肉を食した方が、生命力を多く取ることができる筈です。

Foodline
だからと言って、牛肉ばかり食しても長生きできるとは限りません。おそらくは、人間はすべての生命の頂点に立っているので、すべての食材をまんべんなく摂取しないと長寿にはなれない生命だとも考えることができます。不自由な生命体とも言えます。この既存の栄養学を超えた考え方なので、「私は「超・栄養学」と名付けました。

Humanembory
この考え方は、あながち根拠のない荒唐無稽な考え方ではありません。
私たち人間か、母親の体内で、何十億の生命の進化を10ヵ月トレースしながら成長し、人間として生まれてきました。写真のように、ヒトは初めは魚のようであり、次第に爬虫類、鶏、哺乳動物と形が変化し、最終的には人間に変身するのです。ですから、何十億年の進化の過程・工程を復習しているのです。おそらくは、それぞれの時代の生き物の記憶が、DNAに深く刻み込まれています。すると、食生活の中に、それぞれの生物の本能の食欲を満足させなければ、人間としては天寿を全うできないのでしょう。

Stake
人によって、肉が大好きな人がいます。そのような人は肉食動物、例えばティラノザウルスという恐竜やオオカミのDNAが自己主張しているのかも知れません。菜食主義の人は、草食動物、例えば羊や牛のDNAが自己主張しているとも言えます。私は肉が大好きです。おそらく肉食獣のDNAが色濃く出ているのでしょう。

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第92噺(145噺中) 「健診の実態」

インターネットに下記のような記事が掲載されていたので、ご紹介します。

「健診「合格」40歳以上は17%…健保連調査 」
(2016年7月6日 (水)配信読売新聞 )

 40歳以上のサラリーマンで、血圧や肝機能など健康診断の主要4項目が全て「基準値範囲内」の人はわずか2割にも満たないことが、健康保険組合連合会(健保連)の調査でわかった。

 健保連は、食事や運動など生活習慣の見直しによる改善を呼びかけている。

 健保組合は、大企業の会社員や家族約3000万人が加入している。このうち、433組合に加入する40~74歳の会社員270万4234人について、2014年度の血圧、脂質、血糖、肝機能のデータを調べた。

 その結果、4項目全て基準値範囲内の人は約45万人で全体の17%しかいなかった。半数にあたる約136万人は、1項目以上が「医療機関の受診を勧める数値」となっていた。「受診は必要ないが保健指導が必要な数値」の人は約89万人(33%)いた。

【備考】
過去に、健康診断について、私なりの考えをご紹介しています。

2014年10月1日の記事「第16噺」です。純粋に統計学的な考察でしたが、現実も同じだったということが分かります。
そういう観点から見れば、PSA値も同じで、高いからと言って極端に心配する必要はないことになります。

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第91噺(145噺中) 「病気と未病」

Tenbin
人間は微妙なバランスの上で成り立っています。

しかし、そのバランスは一つだけではなく、無数のバランスの上にあります。
イメージとしては、大きな天秤の上に小さな天秤が、無数に存在していると想像してみてください。その小さな無数の天秤がバランス良く静止していて、大きな天秤がバランスをとっている状態が健康状態です。

小さな天秤がいくつかバランスを崩しても、大きな天秤のバランスには影響ありません。ところが、たくさんの小さな天秤がバランスを崩したら、大きな天秤もさすがにバランスを崩してしまいます。そうなると、どの天秤を直したら、大きな天秤がバランスを取れるか調整が難しくなります。

人の病気も、この天秤に似ています。小さな天秤がバランスを崩しているうちは、大きな天秤はバランスが保たれていますから病気は発症していません。未病の状態です。小さな天秤がたくさんバランスを崩すと、大きな天秤もバランスを崩すので、病気が発症します。病気の顕在化です。

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