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海馬と認知症

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認知症のMRI検査で典型的な所見が、脳の深部に位置する海馬の萎縮所見です。

海馬は、脳の機能の中で、記憶に関与しています。海馬自身は、短期記憶を担っており、大脳皮質の長期記憶にも関与しています。見方を変えれば、大脳皮質の各領域がたくさんのパソコンで、海馬がそれの連絡網のインターネットになります。

このインターネットである海馬が壊れると、大脳皮質の各領域同士のコンタクトに障害が出ます。それが、認知症の症状になるのです。海馬には、あらゆる情報が入力しますが、その情報が大脳皮質に十分に伝達されなくなるので、直前に経験したことも忘れてしまうのです。

Img_0964一般的に中枢神経は一度死んだら再生しないとされていました。しかし、海馬には例外があるそうです。海馬と直接繋がっている神経組織があるのです。それが、嗅球を代表とする嗅脳です。
認知症の人は、当然のように嗅覚が麻痺します。逆に嗅覚神経刺激すると、嗅覚が再生するのです。つまり、嗅覚が再生したと言うことは、嗅覚に直接繋がっている海馬が再生したと言うことです。この結果から、海馬と嗅覚は夫婦一体なのです。嗅覚の言いなりになる海馬が仕事のできる夫で、嗅覚が奥さんなのでしょう。つまり海馬は恐妻家か愛妻家なのです。高齢者になったら、まめに嗅覚を刺激するのです。以前に紹介した日中の香水と就寝中の香水は、その例です。
再生能力の長けた緑豆エキスが有効かも知れません。

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嗅覚と海馬

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香りを感じるのは、ヒトの脳です。その香りとヒトの脳を結びつけているのは、嗅脳(嗅球・嗅索・嗅三角)です。その代表が嗅球です。このイラストのウナギの脳で示すように、嗅球は終脳の付属品です。終脳は進化とともに大きくなり大脳になります。この事実から考えると、嗅覚神経は、他の神経と比較して、大脳の一部ということです。新しい大脳を作り終えた終脳は、海馬という組織になり脳の深部に存在します。
後から産まれた視覚、聴覚、味覚は、大脳以外の下の中枢神経から発生したので、すべて視床を介して大脳皮質に次のように連絡しているのです。
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眼→視神経→視床→大脳皮質視覚野
耳→聴神経→視床→大脳皮質聴覚野
舌→舌神経→視床→大脳皮質味覚野
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香りの薬理作用から考察すると、嗅球と連絡している脳の深部に存在する海馬(かいば)が重要な位置を占めています。
香りの神経伝達経路は、【香りの分子→嗅上皮→嗅球→嗅索→嗅内野+海馬→大脳皮質嗅覚野】という経路を辿っています。


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嗅神経深部の嗅内野と海馬が直接繋がっています。海馬は記憶システムの重要な位置にあります。この海馬は、一時的な記憶(短期記憶・記名力)が主な使命で、その他に長期記憶の補助をしています。
海馬が萎縮すると認知症になるのは有名な事実です。認知症の患者さんは嗅覚が衰えて食欲もなくなります。逆に認知症の患者さんに、意図的に嗅覚を刺激すると、海馬が再生され認知症が改善するという事実もあります。

最近の文献を調べると、海馬について、とんでもない事実が分かったのです。海馬は内分泌腺でもないのに、男性ホルモンのテストステロンと女性ホルモンのエストロゲンを産生分泌することが分かりました。日本生化学会

一般的に内分泌腺は、例えば、甲状腺・膵臓・副腎皮質・睾丸・卵巣は内胚葉由来の臓器です。ところが、脳下垂体・松果体・副腎髄質は、外胚葉由来の神経が変身した類似分泌腺です。したがって、脳の深部にある海馬も、この神経が変身した類似分泌腺として捉えることができます。
動物は、異性のフェロモンを嗅ぐこと=その香り刺激で、嗅覚神経と直接連結している海馬を刺激して、オスであればテストステロンをメスであればエストロゲンが分泌されて発情・興奮するのです。
マリリン・モンローで有名なシャネルNo.5の香りを嗅ぐと、過去の私が少しムラムラとしたことがありました。恐らくこの香りは人間にとってはフェロモンなのです。海馬を刺激して男性ホルモンが分泌されるのでしょう。この香水は「イランイラン」という薬草から抽出したアロマエキスです。

また、嗅覚と連絡しているのは、海馬の他に扁桃体という神経の集まった部分があります。この扁桃体はヒトの情動(喜び・恐怖・不安)に関与する機能を持っています。すなわち、香りの刺激でこれら情動が誘因されるのです。

結論として、香りはヒトの欲望(食欲・性欲)、感情(喜び・好き・嫌い・恐怖・不安)、記憶などヒトの人間らしい気持ちに影響しています。

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