アンチエイジングの薬
前立腺肥大症の患者さんの新しい処方薬であるザルティアは、アンチエイジングの治療薬でもあります。
ザルティアは、一酸化窒素NOの分解酵素を抑える主作用があります。一酸化窒素は、窒素酸化物の範疇の物質で、一昔前であれば、光化学スモッグの原因物質とされていたものです。
人間の体には、いたるところに一酸化窒素が存在します。
まずは、血管壁に認められます。血管内皮細胞から一酸化窒素が放出されると、血管壁の平滑筋の緊張が緩み、血管が柔らかくなります。血管が緊張したままであると、次第に動脈硬化へと器質的に変化してしまうのです。動脈硬化の進展・悪化の最も重要な原因は、生理的あるいは病的理由による内皮細胞の傷害・障害であることが分かります。そのため、ザルティアの内服などで一酸化窒素で常に血管壁の緊張を緩めてあげれば、動脈硬化を予防することができるのです。心筋梗塞や狭心症の治療薬であるニトログリセリンは、内服することで体内に一酸化窒素の絶対量を増加させる作用があるのです。
白血球の中の細菌を分解するのが、やはり一酸化窒素NOです。ここでは、光化学スモッグの原因である、本来の窒素酸化物としての働きです。敗血症という病的状況は、血液中に大量に増えた細菌に強く反応した無数の白血球が大量の一酸化窒素を放出するため、血管壁が極端に緩み、血圧が下がってショック状態になるのです。
人間の体内には、このある意味、劇薬物質である一酸化窒素NOをすぐに分解する酵素を持っていて、一酸化窒素NOをコントロール・管理しているのです。しかし、この管理の行き過ぎが、老化を促進すると思われるます。実際、一酸化窒素NOを服用すると、血管年齢が若くなるという実験(加速度血管伝搬速度)結果があります。つまり、一酸化窒素NOは、使い方によっては、毒にも薬にもなるという良い例です。(ちなみに、私のブログでの情報発信は、世の中のヒトを惑わす毒なのか?それとも福をもたらす薬なのか?)
実際に、泌尿器科学会の研究会(ザルティア発売記念1周年記念講演会 in 京都)では、参加の泌尿器科専門医が、アンチエイジングのためにザルティアを服用していると、公の場で力説している医師が何人もいました。製薬会社の関係者の方々が、保険適用外(前立腺肥大症の治療薬)の使い方なので、困った顔をしていました。
でも、恐らく将来的には、アンチエイジングの薬剤として保健適応になるでしょう。