コレステロールから動脈硬化へ#4 「治療のエビデンス」
植物性のエストロゲン(女性ホルモン)として大豆イソフラボンが有名です。
神戸女学院大学のネズミを使った実験では、イソフラボンの投与が動脈硬化の原因の一つである平滑筋の遊走を阻止してくれることが分かりました。
同じ実験で、大豆イソフラボンは病的平滑筋が産生するⅤ型(脆弱型)コラーゲンの産生量を減らすことも分かっています。
大豆イソフラボンは人間の女性ホルモンに比較してマイルドなので、男性の動脈硬化にも利用できそうです。
【②コレステロールの治療】
コレステロールの治療薬はいろいろあり、どの薬剤を服用してもコレステロール値は下がります。しかし、動脈硬化の判定で利用される脈波伝播速度の観点から見ると、動脈硬化の進展を抑えることができる薬剤は「ローコール」だけです。
【③血圧の治療】
高血圧の治療は最高血圧140以下を目標に治療しますが、150前後であっても現場の医師はそれほど気にしません。しかし、血圧をキッチリ140以下に下げているグループと、あいまいにしているグループとを比較すると、血圧をキッチリ140以下に下げているグループの方が、明らかに動脈硬化の進展が抑制されています。
【④心拍数の治療】
心拍数(脈拍数)の数によって様々な病気(主に心血管系)での死亡率に違いが出ることが分かっています。
1分間の心拍数が多ければ多いほど死亡率は明らかに高くなっています。現場の医師は心拍数を少なくても80以下に減らすような薬剤を患者さんに処方すべきでしょう。
【⑤内皮細胞の補助】
血圧の治療薬であるARB(アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬)で治療すると、動脈硬化が進展して起きる脳卒中や狭心症の発現率(イベント発生率)が下がることが分かっています。
その理由は、ARB薬剤が内皮細胞に働き、内皮細胞の機能を高めてくれる能性があるからです。
【⑥NOの補充】
ニトログリセリンを服用する前(左)と服用した後(右)の変化を観察した血圧脈波では、ニトロの服用により、血圧は下がり、波形も正常に近づきます。
ニトログリセリンは心筋梗塞や狭心症治療の特効薬として有名です。ニトログリセリンは体内でNO一酸化窒素に変化して、血管平滑筋の緊張を緩めてくれます。つまりNOを介して内皮細胞の仕事を援助してくれることになります。
【⑦糖尿病の治療】
高血糖によりAGEs(最終糖化生成物)が内皮細胞に障害を与えるのは前述したとおりです。
糖尿病をキッチリ治療すると、動脈硬化の進展が進まないことも知られた事実です。
コレステロールから動脈硬化へ#1 「更年期とコレステロール」
コレステロールから動脈硬化へ#2 「コレステロールと動脈硬化」
コレステロールから動脈硬化へ#3 「動脈硬化の進行・悪化」
コレステロールから動脈硬化へ#4 「治療のエビデンス」
コレステロールから動脈硬化へ#5 「動脈血管生理の本質と誤解」
コレステロールから動脈硬化へ#6 「接着分子の存在価値」
【参考文献】
新しい血圧測定と脈波解析 MEDICALVIEW
PWVを知るPWVで診る 中山書店
新・心臓病診療プラクティス11 高血圧を識る・個別診療に活かす 文光堂
新・心臓病診療プラクティス15 血管疾患を診る・治す 文光堂
新・心臓病診療プラクティス16 動脈硬化の内科治療に迫る
神戸女学院大学誌 2005年
久山町研究 2005年
日本循環器科学会誌 1997年
血管内皮細胞をめぐる疾患 真興交易㈱
血管内皮細胞研究フロンティア メディカルレビュー
NOと医学 共立出版
NOでアンチエイジング 日経BP
組織細胞生物学 南江堂
ハーパー・生化学 丸善
アンダーウッド病理学 西村書店
解明病理学 医歯薬出版
標準生理学 医学書院
図解生理学 医学書院
カラーアトラス機能組織学 南江堂
| 固定リンク
コメント