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動脈硬化の原因

Aspatho動脈硬化は高血圧をはじめとして、脳梗塞・狭心症・心筋梗塞・脳出血・クモ膜出血・解離性大動脈瘤などの重大な病気と深くかかわっています。その動脈硬化に関する最近の知見を右の図で示します。
これをパッと見て理解することは難しいので、下記に時系列で解説します。

Asstage1血管にかかる物理的な刺激で、血管内皮細胞が障害されます。
内皮細胞は何とかしようと、接着分子(接着剤のような物質)を放出します。すると、血液中にあるLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)を吸着して内膜に吸収します。内膜に吸収されたLDLコレステロールは酸化されて酸化LDLになります。
また、血液中の単球(リンパ球)を吸着して、やはり内膜に吸収します。内膜に吸収された単球はマクロファージというアメーバーのような組織球に変幻し、酸化LDLコレステロールをむさぼり食べます(貪食作用)。酸化LDLコレステロールをたくさん食べたマクロファージは、泡沫細胞になり、動脈硬化の組織成分になります。
ここまでが初期の動脈硬化です。高齢者の加齢による生理的な動脈硬化はここまででしょう。

Asstage2 内皮細胞が障害され続けると、接着分子放出は止まず、次々にLDLコレステロールと単球が吸着・吸収されます。
単球由来のマクロファージは、血管中膜の平滑筋を刺激し、平滑筋を内膜に遊走させます。この遊走した平滑筋が、何とマクロファージ化し酸化LDLコレステロールを本当のマクロファージのように貪食するのです。貪食した平滑筋は、マクロファージの泡沫細胞と同じく、平滑筋由来の泡沫細胞になり、やはり動脈硬化の組織成分になります。
また、遊走した平滑筋はコラーゲン線維を作り動脈硬化を線維性の完全な形にします。これが、粥腫性プラークになり動脈硬化の代表的な形です。ここまでが中等度の動脈硬化です。

Asstage3さらに動脈硬化が進むと、血管内腔の狭さにより、血管壁にかかる振動などの物理的負荷が止まりません。平滑筋の作るコラーゲン線維が丈夫なものであれば問題ないのですが、不良品であるⅤ型コラーゲン線維が多くなると、線維の張力が無くなり、内腔に接する内皮細胞が破綻(はたん)してしまいます。内膜の内容が血液と直接触れることによって、赤血球と血小板が作る血栓が形成されます。これが、不安定型狭心症・心筋梗塞・脳梗塞の原因となります。

Isofyusonoh平滑筋の遊走が動脈硬化の原因の一つです。
遊走能を獲得した平滑筋はマクロファージに変化し、酸化脂質を貪食しで泡沫細胞に変化します。
右のグラフは2005年の神戸女子学院大学の実験結果です。
エストロゲン(E2:女性ホルモン)は、薄い濃度から濃い濃度に渡って平滑筋の遊走を阻止してくれます。また、大豆イソフラボンは、薄い濃度の時に平滑筋の遊走を阻止してくれます。治療として有効な健康食品になります。

Isofvcollagen平滑筋はコラーゲン線維を作ります。
血管壁のコラーゲンには、Ⅰ型・Ⅲ型・Ⅳ型・Ⅴ型に分類できます。Ⅴ型コラーゲンは柔軟性がなく、ある意味不良品のコラーゲン線維です。血栓ができ易かったり、破綻(はたん)し易い動脈硬化のコラーゲン線維は、Ⅴ型のコラーゲン線維です。
右のグラフは、やはり2005年の神戸女子学院大学の実験結果です。
Ⅴ型コラーゲンは、成熟したコラーゲンが血管壁を形作るには不完全なものです。ですから成熟したⅤ型コラーゲンが多い方が危険な動脈硬化を作る可能性が高くなります。大豆イソフラボンは極端に濃度が薄い(10pMピコモル)時には、成熟したⅤ型コラーゲンが多少産生されますが、それ以降の濃い濃度では少なくなります。

Asplaqe実際の動脈硬化の病理組織像です。

線維が厚い動脈硬化は問題ないですが、線維の薄い動脈硬化は、いつ破れてもおかしくはないので危険です。この薄い線維が、成熟したⅤ型コラーゲン線維になります。

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コメント

平滑筋細胞がマクロファージになるという話は聞いたことがないのですが、根拠となる論文はありますか?
【回答】
動脈硬化の専門書には、一般的に記載があります。

投稿: とくめい | 2012/05/08 16:19

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