病は気から
みなさんが良く耳にする「病は気から」という言葉について解説しましょう。
われわれ日本人が「病は気から」という言葉を聞くと、ほとんどの人が、「病気は気持ちの問題だ」あるいは「気にするから病気になるんだ」と思ってしまいます。しかし、この考えは間違いです。
「病気」という言葉をよく見てください。気の病(やまい)と書いてあります。では胃がんは気の病でしょうか?肺ガンは気の病でしょうか?糖尿病は気の病でしょうか?コレステロールが高い高脂血症は気の病でしょうか?高血圧は気の病でしょうか?おかしいですね。では、なぜこのような「病気」という言葉が存在するのでしょう。
これは中国で成立した名称です。中国では、病はすべて「気」というエネルギーが関係していると思われています。気が足りない状態を「気虚」、気が滞っている状態を「気滞」といいます。
人がもともと持っている気を「元気」と言います。大気から肺に蓄えられた気を「宗気」と言います。宗気と食べ物から脾が造り出した気が合成したのが、「営気」と「衛気」です。営気と衛気は同じもので属性が異なります。陰に属するのが営気であり、陽に属するのが衛気になります。それぞれの臓器にも特徴付けられた気が存在し、心気、腎気、肝気などと呼びます。
日本人は目に見えないものには価値を認めません。ですから、病気は「気」が原因だと中国から輸入した知識を一部の知識人には理解されたとしても、その常識が日本の一般の人々に広まるころには、「目に見えないエネルギーという気」から「気持ちの気」に変化して、病気は気持ちの問題だと誤解されてしまったのです。
病気には必ず原因があります。原因がなくて病気にはなりません。
右のイラストで示すように、病気の原因があると、それを感知・認識する心・魂・知性・脳が存在します。そして心と病気の原因との間でキャッチボールを行うようになります。初めの頃は、大したキャッチボールではありませんが、次第に、そのやり取りが激しいものになります。その状態が病気になるのです。
その病気の原因が不明瞭の場合には、心の病気と誤診されるのです。慢性前立腺炎や間質性膀胱炎の患者さんの中には、排尿障害がその原因であることがとても多いのです。しかし、排尿障害の検査もしなければ、もちろん排尿障害の治療もしないので、この病気は治らないで苦しみます。多くの患者さんが心因性や神経性と誤診されるのです。
心や魂や知性は、脳という場が存在しなければ機能を果たせません。脳動脈硬化症や脳血管障害などで脳という場が正常に保てないと、心は機能を果たせなくなります。すると、病気の原因と頻繁にキャッチボールができなくなりますから、病気は次第に改善し、ついには病気がなくなります。その典型的な例が、認知症の病気の自然治癒です。
逆説的な見方をすれば、病気を悩まれている方は、心が健常である証です。
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