癌細胞と貧血
癌患者さんは、往々にして貧血はつきものです。
癌細胞が骨髄抑制物質を分泌するということになっているらしいのです。骨髄を抑制すれば、赤血球は造られなくなるので、体中の鉄分は余る筈です。しかし、癌患者さんから採血すると鉄が余っているどころか、逆で鉄分が欠乏しているのです。つじつまが合いません。しかし、過剰な鉄分摂取が癌と密接な関係があるという文献もあります。真実はとても複雑なようです。
癌の患者さんに大量のビタミンCを投与すると、癌が治るという事実があります。ビタミンCが鉄イオンを還元して水素イオンを放出し癌細胞をたたくという理論です。健康な細胞は問題なく、なぜ癌細胞だけが鉄イオンの反応を受けるのでしょうか?癌細胞と鉄イオンの深いかかわりに疑問を感じたので、ここで論じます。
生体の中で鉄はとても重要な働きがあります。太古の世界では「鉄呼吸」に、現在の生物では酸素呼吸に重要な「鉄の輪」に鉄は欠かせません。正常な細胞が何かの原因で「先祖帰り」をした結果が癌細胞だと考えると、癌の本当の姿が理解できるようになるかも知れません。
そこで、ここから癌細胞と鉄に関して、悠久の地球の歴史にまで話が広がります。内容が脱線するかも知れませんが、私は真実を追求のため真面目に論じます。
【鉄呼吸】
太古の生命は、その劣悪な環境(現在の私たちから見るとです。当時の生命にとっては快適な環境だったかも知れません。)でその命をはぐくんで来ました。そのころの海水には鉄分が多く含まれており、今の海水とは全く違っていました。
当時の生命は何らかしらの方法で鉄分を利用できる仕組みを持っていたに違いありません。当時は海水中にも大気にも酸素はありませんでしたが生命は生きていました。彼らは海水中に豊富に溶けている鉄分を吸収することにより細胞内でエネルギーを作っていました。それが「鉄呼吸」です。
「鉄呼吸」により酸化鉄を大量に含んだ微生物が死滅し海底に沈殿していきます。現在発見される鉄鉱脈は、何億年も沈殿して固まった鉄呼吸微生物の化石です。
今でも鉄呼吸する微生物は存在します。鉄細菌(鉄バクテリア)がそうです。細胞何の鉄分が酸化鉄(Fe2+→Fe3+)に変化します。
時代は経過し、6億年前(先カンブリア時代)から5億年前(カンブリア紀)にかけて海生の海藻・藻が大量繁殖し、その植物細胞が光合成によりたくさんの酸素を放出しました。大気や海水中に溶け込んだ酸素は酸化作用が強く、従来の生命(鉄呼吸をしていた微生物)は生きることができなくなりました。
そこに登場するのが、「酸素呼吸」でエネルギーを獲得することのできる生命の誕生です。この微生物が人間の直接の祖先に当たります。「鉄呼吸」生命から突然「酸素呼吸」生命に変身する訳でもないでしょう。おそらく何億年もかけて、「鉄呼吸」の良い所をそのままに試行錯誤しながら「酸素呼吸」システムを完成させて、生命は変化していったのです。
この完成された「酸素呼吸」は、エネルギー効率が高く生命を飛躍的に進化させました。それがカンブリア生命の大爆発と称される現象です。【画像:カンブリア生命大爆発】
【鉄細菌(鉄バクテリア)と鉄呼吸微生物】
鉄呼吸微生物を調べると、鉄細菌(鉄バクテリア)との区別がハッキリしません。
鉄細菌は、鉄イオンを酸化(Fe2+→Fe3+)させることで、エネルギーを得ているのです。かたや鉄呼吸微生物は鉄イオンを還元(Fe3+→Fe2+)してエネルギーを得ています。
酸化還元反応から見れば、鉄細菌は「鉄酸化細菌」ですし、鉄呼吸微生物は「鉄還元細菌」と呼べます。どちらの微生物も鉄を利用してエネルギーを獲得している訳ですから、総称して「鉄呼吸微生物」といえるでしょう。【鉄イオンの酸化還元反応】
【参考文献】
鉄と生命のかかわり合いについて知りたい方は、鉄のことを知るには、講談社の「鉄理論=地球と生命の奇跡」がとても参考になります。
このブログを書く当たって、大変勉強になりました。
生命発生の系図です。
生存適正温度は、旧い細菌ほど高くなります。中には105℃という細菌も存在します。
癌細胞はこのうちどこの部分に先祖帰りしたのでしょうか?
【鉄の輪】
私たち細胞の中では、酸素呼吸によりエネルギーを産生しています。進化の過程で鉄呼吸から酸素呼吸に変遷しましたが、その完成された酸素呼吸を詳細に調べると、鉄の存在が大きいことに気付きます。TDP(アデノシン2リン酸)にエネルギー(電子e-)が反応してATP(アデノシン3リン酸)という物質でエネルギーを貯蔵しています。必要に応じてATP(アデノシン3リン酸)からADP(アデノシン2リン酸)に変化してエネルギー(電子e-)を放出します。ADPが充電する前の電池でATPが充電した後の電池になります。
右上のイラストで示されたように、ATPの充電量を上げるために、鉄イオンの反応(Fe2+→Fe3+→Fe2+)が重要な位置を占めています。この反応はサイクルを形成しているので「鉄の輪」と呼ばれます。
「鉄の輪」の反応は、鉄細菌の酸化反応と鉄呼吸微生物の還元反応が合体している反応です。すなわちシステム的には鉄細菌と鉄呼吸微生物のハイブリッドといえます。
後述しますが、ビタミンCでガン細胞が死滅するのに、鉄イオンの働きが重要であるが示唆されています。健常細胞も鉄イオンを豊富に持っているにも関わらず、なぜ癌細胞だけの鉄イオンがビタミンCによってそのように振る舞うのでしょう。
こういう仮説を立てることができるかも知れません。健常な細胞は「鉄の輪」を各種酵素の働きでリサイクルしながら効率的に利用できるのです.。ですから細胞内の鉄イオンはそれほど必要ありません。
ところが、癌細胞は酵素が一部欠如しているか、酵素の働きが悪く「鉄の輪」のリサイクルを思うようにいきません。そのため3価の鉄イオン(Fe3+)が癌細胞内に過剰に蓄積します。少量のビタミンCであれば、3価の鉄イオンを適量2価に還元してくれるので問題ありません。しかし、大量のビタミンCを投与されると、その作用で3価の鉄イオンが一気に還元されてしまい水素イオン(H+)が大量に放出されるので癌細胞が死滅するのかも知れません。(内容が前後しますが、思いつくままに加筆しているのでご容赦を)
【ヘモグロビン】
私たちの体の中に太古の生命の名残があります。赤血球がそうです。ヘモグロビンという鉄を含んだタンパク質を持っています。
ヘモグロビンは肺の中で酸素と結合して、組織の中で酸素を放出します。つまりヘモグロビンは酸素濃度が高いと酸素と結びやすく、組織中では酸素濃度が低いので酸素と解離しやすいのです。ヘモグロビンの中心に存在する鉄原子は、一度酸素と結合すれば、酸化鉄になり酸素を切り離すことはできませんが、鉄原子を当時の環境では多かったであろう窒素原子でオブラートのように包んだ、このヘモグロビンの構造が鉄と酸素の結合をゆる目にしてしまうのでしょう。
【鉄の鎧】
では、癌細胞はなぜ鉄分を異常にまで欲しがるのでしょう。それには、以下に挙げる理由があるのです。
癌細胞は生まれた直後から、免疫システムに探知され攻撃を受け続けます。免疫細胞の攻撃は細胞毒性の強い活性酸素(イラスト中のRO)という酸素毒です。イオン化した強い酸化作用の毒素によって癌細胞は次々に殺されます。ところが、ここに鉄イオンが存在すると、鉄イオンは酸化されて(Fe2+→Fe3+)活性酸素の毒性は中和されてしまいます。要するに、癌細胞は生き残るために、太古の細胞に「先祖帰り」して太古の細胞がそうであったように鉄分を細胞内に吸収して酸素の攻撃を受けないようなシステムを作り上げるのです。まさに鉄分が文字通り鉄でできた鎧(よろい)になるのです。
過剰な鉄分摂取が癌になるというy文献がありましたが、前述のことを考えれば理解できます。過剰な鉄分で癌細胞に鉄壁の防御策を補充しているのですから、免疫細胞の攻撃を無力化していることになるのです。
さて、こうなると免疫システムの癌細胞への攻撃は、癌細胞がこの方法を獲得してしまってはほとんど無意味です。鉄欠乏性貧血になるくらいに体中から鉄分を癌細胞は吸収してしまうのです。鉄の鎧をまとった癌細胞を攻撃することはできないのでしょうか?
【鉄の鎧の盲点】
実はこの癌細胞内の鉄分を利用して癌細胞を殺すことができるのです。それは、ビタミンCです。「えっ!ビタミンC?」とお思いでしょう。
実際に私も前立腺癌患者さんをビタミンCの治療で手ごたえを感じています。ビタミンCは、抗酸化剤=強力な還元剤なのです。つまり酸化された物質を還元して元の状態に戻す働きがあります。酸化された鉄イオン(Fe2+→Fe3+)は、還元(Fe3+→Fe2+)されると水素イオン(H1+)を放出します。この水素イオンが細胞毒性が強いので癌細胞がやられてしまうのです。例えると、着用していた鉄の鎧が、突然硫酸に変化して着用している癌細胞を攻撃するというのです。
免疫細胞から攻撃を受けてはいない正常な細胞には、酸化鉄(Fe3+)はほとんどないので、ビタミンCが大量に摂取されても問題ありません。しかし、普段から免疫細胞の攻撃を受け何とか凌のいでいる癌細胞には、酸化鉄(Fe3+)をたっぷり含んでいるので、何気なく吸収した必須栄養素のビタミンCの強力な還元作用(抗酸化作用)により自滅するのです。
この一連の理論は、私の仮説ですから真偽は後世の医学実験で明かにされるでしょう。
藤沼先生(代替医療の情報をおしみなく私に提供して下さる先生)、この理論はいかがですか?私の妄想で終わるでしょうか?それとも真実に近づいているでしょうか?ご意見をお待ちしています。
【藤沼医院のHP】
【参考文献】
地元の同じ医師会の先生の書かれた本をご紹介します。
「あきらめない!その頭痛とかくれ貧血」文芸社 (定価1100円)
血液検査でも分かりにくい「かくれ貧血」が、治りにくい不定愁訴をかかえた患者さんの原因であることを啓蒙されています。現在、鉄イオンに興味がある私にとって、とても参考になりました。
くどうちあき先生、黄書をお贈りいただきありがとうございました。乾いた砂地に水がしみ込むように理解できました。
くどうちあき脳神経外科クリニック
【補足】
ビタミンCの働きは、上に掲げたイラストよりも、もう少し複雑なようです。
ビタミンCが電子を放出して3価鉄イオンを2価鉄イオンに還元します。2価鉄イオンは、酸素と反応して再び3価鉄イオンに戻ります。その際に酸素は酸素イオンになり、水素イオンと反応して過酸化水素(H2O2)が生成されます。
この過酸化水素が強烈な毒性を持っていて、癌細胞が死滅するというのです。
2価と3価の鉄イオンが作る「鉄の輪」は、一定の環境で還元されやすく酸化されやすい特徴を持っているようです。生体はこの気まぐれな鉄イオンを」利用して、この地球上で賢く生きたのです。人間もこれを利用して賢く治療成果を上げたいものですね。
このイラストから考えれば、ガン治療の場合には、過酸化水素を産生させるために十分な酸素が必要になります。
ただ化学反応式は、化学を勉強していれば経験しているでしょうが、あらゆる成分が反応に関与してきます。それまで水の分子を無視していたら、突然【OH-+H+】に分解して反応に参加して『そりゃないだろう!』と驚くことがあります。ですから、ここに挙げた化学反応も、初めに式ありき(過酸化水素H2O2)の仮説からの結果ですから怪しいものです。
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コメント
家族が卵巣癌ステージⅣですが、最近、ひじきを食べると元気がでるようで、毎日食べています。
(レモンも1日5個くらいは絞って飲んでいます。)
鉄分は最低限の摂取とありますが、どれくらいなら摂取して良いのでしょうか?
ほうれん草など食品からも全くとらないほうが良いのでしょうか?
【回答】
食生活で摂取する分であればOKでしょう。
投稿: しょう | 2010/10/29 21:18
いきなりの質問で申し訳ありませんが、何か見解がありましたらご連絡お願いいたします。
上咽頭癌ステージⅣBで抗がん剤・放射線治療後約3年経過しました。治療後のCT等の画像検査では原発部と肺に3カ所影があり、大きくはなっていない状態で維持してきました。
ただ約4ヶ月前から体の筋肉等に異常を感じています!。癌が発症する前の体の異変?ににている感じです。
それに伴うように?、治療後何をしてもずっと低いままだった血液検査での白血球(リンパ球)が1.5倍ぐらいに増えてきました。
また、血清鉄が128μg/dlから43に減少。
最新のSCCマーカも2.3ng/mlまで上昇してきました。担当のDrは、そのあたりについて気にしていないようです。
鉄分補給にメコバラミン錠が処方されましたが、これは癌細胞を強化する逆効果になるのではないでしょうか?。
何かアドバイス頂けると幸いです!
【回答】
ご指摘のように、その可能性はあります。
しかし、現在の癌治療をになう医師にそのような常識はありません。
投稿: 〇〇〇〇トシカツ | 2012/08/31 14:09
上行結腸癌の内視鏡検査を目視して 2月25日手術の日取りの相談を医師とする事になっています。一昨年からフェロミアで
貧血の治療をつづけましたが、改善出来ず、最近坂道での息切れがひどい事に気づいて 転院して 近くの総合病院を紹介されて、精密検査の結果 腺癌と判明しました。治療どころではなく お説だと敵に弾薬を送ってきたような事でした。
ただし貧血だと酸素不足で癌細胞も急速な発達を阻害された面もあって、人間の体の微妙な仕組みに驚いております。
早い頃腎臓機能が不完全で 造血のサインが出ない為の貧血かと思っておりましたが、癌細胞から 骨髄に血液の製造を阻害
する物質が分泌されることを知って、余分な事を考えなくても良くなりました。
医者はまだ鉄剤を消化剤とともに飲めと勧めましたが、丁度院長が病気になって休院になり、私の癌が見つかるきっかけになりました。もう少し置けば手術不能で 癌末期となるところでした。
こわいのは医師の診断です。自分でもかなり首を突っ込んで勉強しないと うっかりしていると殺されてしまいます。人工肛門を宣告されている男です。
【回答】
きっと無事に乗り切れるでしょう。
投稿: きらめき | 2014/02/21 15:13
癌と貧血で 検索していたら、最後に私の 知恵袋の質問が転載されていました。
平成26年3月24日入院して 術後10 日で退院して元気で日常生活を過ごしてい
ます。読み終わった投稿は 大変参考にな りました。術前精密検査で ステージⅢb
リンパ節に軽い腫れを認め、腸管裏側に
穴が開いてるかも知れない。腹膜播種も考 えられる。リンバ隔清31ケ その一コに も癌細胞を認めず、完治の診断を貰いまし た。しかし 切除前日まで輸入血管で 癌
細の周辺を循環していた 血液が 寿命の 120日間吻合部を循環し、一日でも20
万回から 30万回を数えられる 癌の手 術後の再発は 当然過ぎる 問題だと
薄氷を踏むような思いの毎日です。
ビタミンC の癌に対する有効性は 楽し く読ませて貰いました。趣味の事でロスア ンゼルスから訪ねてきた女性がお土産にブ ラジルナッツをくれました。有効成分は セレンです。アメリカらしいお土産でし た。ハトムギと プロポリスも 術後癌の 着床防止には 役だちそうです。
投稿: 松永 | 2015/05/03 14:43
20億年の昔 太古の鉄呼吸について 詳しく説明されて、安保先生の 人が病気に鳴る立った2つの原因 を開いて見ました。
少し違う所もあるようですが、再び 書く公としているのは その頃の 化石が手元にあるからです。ラジオラノヤチャートです。
南アルプス連峰の 赤石岳の 名前の元になった。放散虫の化石です。太古には海底だったのですが、今では3千メートルよりも高い 山の上の方に隆起して 砕けて 大井川
を流れ下ります。沢山見つかるので、珍しくはありません。大きい物は かなりの大きさですが、普通は玉石が多く 砂利くらいから
拳大と いろいろです。チャートと名付けられて 火打ち石の仲間らしいです。癌とは
遠い話になりましたが、鉄分の多い虫が沢山住んでいた時代の名残です。
投稿: 松永 | 2015/05/03 16:02