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癌の進行・転移と免疫の関与

癌細胞は出来初めからしばらくの間は一ヵ所に固まっています。しかし、ある一定の数・大きさになると、周囲の組織に浸潤・進行・転移します。そのため一ヵ所の臓器に留まらず、越境して周囲の臓器あるいは遠隔の臓器・骨に転移し、機能障害を起こし最終的には全身の悪液質(全身の機能障害)で最後を迎えることになります。
その間、身体からは癌細胞を抑えるために免疫システムが強く働くと考えられます。免疫抗体・リンパ球・マクロファージ・白血球などなど、私が理解できないくらいの多くの細胞とサイトカイン・化学物質が放出され癌細胞と戦うとされています。

癌末期の患者さんが認知症(俗に云う痴呆症)になったとたん、それまで悪化の一途だった癌の進行が停止し、最後には癌死ではない臨終だったエピソードを知り、癌の臨床上の悪化に疑問を感じるようになりました。

もう一つエピソードをご紹介しましょう。これは私の体験談です。
ある高齢のご婦人で国立病院で大腸癌を手術した患者さんが、時々私のクリニックに通院していました。病気のことなどを相談されていました。一見して健康状態は良かったのですが、一年ほど通院するうちに、鎖骨上のリンパ節が触れるようになりました。消化器癌で有名な「ウィルヒョーの転移」です。国立病院の外科の主治医はリンパ節の組織検査を行い、癌細胞を培養し抗癌剤の感受性をみて治療に応用しようと患者さんに提案しました。転移部位を検査のために処置すると病状が悪化することを経験上知っていましたから、避けるようにアドバイスしました。ところが国立病院の主治医の熱意に負けて、そのご婦人は組織検査を承諾したのです。街の小さな開業医よりも国立病院の新進気鋭の外科医に従ったのでしょう。私は仕方がなく、主治医に組織の採取は一部だけにしてもらいなさいと患者さんにアドバイスしました。そして主治医にそのように伝え検査を受けました。
組織検査後1ヵ月ほどしてご夫人が来院しました。組織検査した部分は、以前にも増して大きくなっています。皮膚の色も暗赤色です。患者さんにお聞きすると、「腫れたリンパ節を全て除去された。2週間もするとリンパ節は元の大きさに戻り、今では前よりも大きくなっている。」というのです。そして抗癌剤の感受性の結果は、効果のあるものはないというのです。ご婦人は失意の上、病状はますます悪化して1ヵ月後他界されました。結果的には患者さんは、国立病院の主治医の興味本位の無責任な治療と無智による被害者です。

さて、真逆のエピソードを二つ紹介しました。無自覚の患者さんの身体の一部に癌が発見され治療始めると、それまで静かにしていた癌細胞が、人が変わったように腫大・進行・浸潤・転移と大騒きをするのです。こんな短期間に細胞の性格・性質が変わることに不思議でなりません。癌細胞だからそのように変化するのだと思い込んでいましたが、細胞生物学的には不思議な現象です。細胞の核には、たとえ癌細胞であっても情報元であるDNAが存在し、細胞としての機能を制御しています。細胞分裂の際の核分裂は、正常な細胞に比較して完全なコピーはできませんから、不完全な細胞分裂になります。DNAの情報も正常に伝達されません。だから悪性化するとの考え方もありますが、DNAが不完全だから細胞は死滅するという考え方も50%の確率である訳です。ところが現実的には悪化がほとんどです。これはどのように考えたらよいのでしょうか?

Cameta2そこで、右のイラストを作りました。
癌の初期には、癌細胞は集団で一つの塊りとして集合しています。身体の免疫システムに探知されると、癌細胞は攻撃を受けます。免疫システムによる攻撃は癌細胞を全て抹殺できるものと、私たちは思い込んでいます。あるいは順次攻撃を加えて端から順に癌細胞を抹殺していると思っています。それが免疫システム攻撃の本当の姿なのでしょうか?

Cameta実は、免疫システムで確かに癌細胞が抹殺されますが、全てではないのでしょう。本音を言えば、抹殺されるのはホンの一部の癌細胞だけでしょう。なぜなら、癌細胞が塊り(腫瘍)としてCTや他の検査で発見されるためには、何十万個もの癌細胞の集団になっている必要があるのです。時系列から考えれば、数十個・数百個単位の癌細胞の小さな集団の時にさえ探知あるいは抹殺できなった訳ですから、何十万個もの癌細胞の大集団を殺せる訳もありません。

免疫の攻撃にもかかわらず、残念なことにほとんどの癌細胞は無傷で残り、しかも大きな塊りは免疫の中途半端な攻撃により分解バラバラにされます【注1】。バラバラにされた癌細胞の一部は仲間から開放されて血流・リンパ液に乗って他の臓器に移動します【注2】。いわゆる「転移」です。さらに、それまで密集していたために狭くて増えることができなかった癌細胞は、バラバラにされ隙間ができたので細胞分裂を繰返し癌細胞が増殖します。つまり免疫システムの中途半端な攻撃が癌の「悪化」の張本人になるのです。この現象は免疫システムに限ったことではありません。効きの悪い抗癌剤治療や放射線治療も同じでしょう。癌細胞の完全抹殺ができないのであれば、このように癌を「悪化」させるだけの逆の治療になるのです。
【注1】癌細胞の塊りは立体的な構造物ですから、平面的なイラストで考えるよりも2倍以上にバラバラに分解されます。
【注2】癌細胞は臓器・組織の細胞から癌化して生じたものですから、癌細胞自らが自力で移動できる訳もありません。恐らく免疫システムの掃除担当の免疫細胞が癌細胞の移動に手助けをしているのでしょう。

代替医療のおもな目的は免疫力を上げることです。患者さんも医師も免疫力を上げることで癌細胞を抑えることができると信じています。あるいは免疫力を強力に上げることが代替医療の最終目標・夢と思われているかも知れません。では免疫力を上げるとはどのようなことでしょう?
1203667177451具体例をあげて解説しましょう。戦争の前線で敵の戦車を前にして、1人の歩兵が22口径のピストルで攻撃しても歯が立ちません。ところが同じ銃でも対戦車用徹甲弾ライフルがあれば、1人の歩兵が弾丸一発で戦車を止めることができます。敵の戦車を癌細胞、歩兵の武器が免疫力だと想定します。免疫力を上げることが、22口径のピストルから対戦車用徹甲弾ライフルに持ち替えたことであるなら、癌細胞である戦車に立ち向かうことは勝算のある選択です。しかし、もしも免疫力を上げることが22口径の弾丸を1万発補充されることであれば、戦車に立ち向かうことは無謀でしょう。(ちなみに最近の戦車は装甲が頑丈で徹甲弾を跳ね返すらしいですが・・・)
私たちは免疫力を上げることは可能でしょうが、22口径の弾丸を1万発補充することに相当する治療であるならば、癌細胞には決して勝つことはできません。

Ied_sim現実に目を向ければ、イラク戦争でアメリカの猛攻撃でフセイン政権は崩壊しアメリカが勝利したかに思えましたが(写真参考ブログ)、フセイン支持派は隠れ、国は未だに安定していません。今では自爆テロなどでアメリカ兵も罪もない一般住民も犠牲者としてその数は増える一方です。収拾がつかないのが現実です。まるで免疫システムや抗癌剤で攻撃を受けた癌細胞の動向に似ていませんか?収拾がつかない癌末期の患者さんの状態に似ていませんか?

以上の仮説が正しいとすれば、癌の治療方針がもう少し繊細なものになるでしょう。ここで、免疫システムに影響を与えるものを考えてみましょう。
【食事】
タンパク質やカロリー摂取が多いと、免疫抗体やリンパ球の働きが盛んになります。
逆に、タンパク質やカロリー摂取が少ないと白血球の働きが盛んになります。
水分のとり過ぎは、免疫抗体・リンパ球・白血球の全ての働きを盛んにします。
【薬剤】
抗生剤や消炎鎮痛剤の服用は、白血球の働きを抑えます。
ステロイド剤は、免疫抗体・リンパ球・白血球の働きを抑えます。特に免疫抗体の働きが抑えられます。
抗アレルギー剤は、リンパ球の働きを抑えるものと白血球の働きを抑えるものに分かれます。
【生活環境】
高気圧の下では、白血球の働きが盛んになります。
逆に低気圧の下では、免疫抗体・リンパ球の働きが盛んになります。
運動を頻繁に行なっている人は、白血球の働きが盛んになり、免疫抗体・リンパ球の働きが抑えられます。

さてさて、話しが長くなりました。
まとめると、ひとたび癌にかかった方の免疫システムは、癌治療には役に立ちません。それどころか足を引張ります。免疫力を上げることが癌の進行・増殖・浸潤・転移を手助けしていると考えた方が理にかなっている考えるからです。
では胃癌・大腸癌・肝臓癌などの固形癌の場合、癌として発見されてからは、どのような対処をしたら得策なのでしょうか?
現代医学では、まず第一選択として外科手術を否定することはできないでしょう。しかし、あくまでも最低限の姑息的な手術が最適です。根治的手術は患部の所属リンパ節の除去を目的とします。一見理想的に思えますが、リンパ節の除去により患部周囲のダメージは強く、術後の物理的炎症により不必要な免疫を刺激し手術範囲を超えている癌細胞を刺激するだけです。
術後の抗癌剤の使用は価値が無いでしょう。
白血球の興奮を抑えるために、習慣で運動している人は減らすようにしましょう。天候が高気圧の際には、少量の抗生剤や鎮痛消炎剤を服用するとよいでしょう。
免疫抗体・リンパ球の興奮を抑えるために、食事のタンパク質(肉類)やカロリー摂取は、病後といっても程ほどにしましょう。しかし摂取しないと白血球が興奮しますから注意を要します。
水分の過剰摂取は免疫全体を興奮させますから、食事以外で取る水分は500ml~1㍑に抑えましょう。
免疫全体の興奮を穏やかにするため、少量のステロイド注射を定期的に接種する方法もあります。

【注意】以上の仮説と対処法は、私の独善的考えですから、話し半分として理解して下さい。

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