誤診で手術された!
40歳台の男性患者さんが、ご夫婦でお越しになりました。
今年の5月から左右の鼠径部と左右の睾丸の痛みで、地元の有名な医療機関にかかっていました。最初の病名が「慢性前立腺炎」と診断され、抗生剤を処方されましたが治りませんでした。そこで、超音波エコー検査とMRI検査を行ったら、先天性の奇形である「ミュラー管嚢胞」が認められ、それが膿の溜まっていtる膿瘍だから、その症状だろうと診断されたのです。(写真は別の患者さんのミュラー管嚢胞です。黒い丸がそうです。)
そこで、ミュラー管嚢胞を内視鏡手術で切除されました。術中に間質性膀胱炎の所見が認められたので、膀胱水圧拡張術までされたのでした。しかし、症状は変わりませんでした。逆に頻尿になり毎日10回の排尿回数です。インターネットで色々調べて高橋クリニックに来院したのです。
早速、超音波エコー検査を行いました。この写真は前立腺の側面像です。手術をされて手術をされてしまったので、以前の所見は分りませんが、この写真でも異常所見は認められます。先ずは、膀胱出口と膀胱三角部に硬化像が認められます。そして膀胱縦走筋が、膀胱出口に向かっていません。そして側面像では見られない筈の膀胱括約筋がハッキリと確認できます。これは、全て排尿機能障害の後遺症による変形です。
次に前立腺の正面像です。二つの「目」のように見えるのが前立腺周囲の静脈が、排尿機能障害で毎日毎日圧迫されたために変化する静脈瘤です。そして膀胱括約筋が前立腺の中央まで繋がって見えます。これは排尿機能障害で膀胱括約筋が肥大した結果です。
以上の事から分かることは、この患者さんには排尿機能障害が隠れていたのです。にもかかわらず、それまでの1日の排尿回数は3回~4回でした。本来ならば、頻尿になる筈です。その頻尿が症状として出ないので、患者さんの脊髄神経回路が工夫をして痛み感覚にすり替えたのです。その結果、左右の鼠径部疼痛・睾丸痛になったのです。
また、手術中な発見された間質性膀胱炎の所見である点状出血・ハンナ型潰瘍は、前立腺肥大症の患者さんの手術中によく見られる所見です。つまり、間質性膀胱炎の所見は、排尿機能障害の後遺症なのです。それを点状出血やハンナ型潰瘍を見つけると、間質性膀胱炎と原因不明の病名をつけて、頻尿になっている過敏な膀胱を無理やり膨らませているのです。真面目な医学とは思えません。
さて手術された患者さんは、ある意味で誤診による手術された被害者です。先ずは、排尿機能障害の治療薬であるα1ブロッカーとβ3作動薬を処方しました。
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