カテゴリー「統計的考察」の記事

慢性前立腺炎に対する大豆イソフラボンの臨床治験募集

大豆イソフラボンが慢性前立腺炎症状に効果があるらしいことは分かっているのですが、公の文献がありません。
そこで、大豆イソフラボンに関与している会社と共同で臨床治験を行うことにしました。
内容は慢性前立腺炎症状の治らない方で大豆イソフラボンを服用してもOKな方を募集しています。治験期間は3ヵ月間で、初回に検査、3カ月間大豆イソフラボンを服用していただき、その3カ月後に同じ検査というシンプルな治験です。
3ヵ月の間は、特別な事がない限り来院する必要はありません。
検査内容は、治験の前後に、国際前立腺スコア・NIH慢性前立腺炎症状スコアの記録と超音波エコー検査・尿流量測定検査(ウロフロメトリー)、前立腺マッサージ後の検尿を行うだけです。
3カ月間分の大豆イソフラボンは無償提供です。

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外来患者さんの内訳

毎日の診療に追われていると、どの病気の患者さんがどのくらい来院しているのか正確には分からなくなります。
そこで、今月11月の1ヵ月間だけ初診の患者さんの統計を取ってみました。(無料の電話相談はカウントしていません。)
毎月の患者さんは総数800人~900人です。その内、初診の患者さんは200人前後ですから、その中で泌尿器科に関する患者さんだけの統計です。
慢性前立腺炎=男性の膀胱頚部硬化症、間質性膀胱炎=女性の膀胱頚部硬化症、PSA値の異常値=前立腺癌の疑い患者さん、性感染症=性感染症の疑い患者さんも含みます。
データには初診の患者さんのみで再診の患者さんは含めていません。

11月 慢性前立腺炎 間質性膀胱炎 PSA値の異常値 性感染症
----------------------------
1日   2人                   1人        1人
2日   6人         1人
5日   2人                   1人
6日   1人                   1人
7日   5人                   1人
8日   3人         2人        1人        2人  
9日   3人                   2人        1人 
10日  3人                   1人
12日  2人                   1人        1人 
13日  4人                   1人        1人
14日  2人         3人                  1人
15日  2人                   1人        1人
16日  2人         1人        2人        1人
17日  1人         3人                  2人
19日  3人                             4人
20日  1人                             2人
21日  4人                             1人
22日  0人!                  1人        1人
24日  2人                             1人
26日  5人                   1人        1人
27日  1人
28日  0人!        1人                 1人
29日  1人 1人
30日  1人                             2人
----------------------------
総数  56人        11人        15人      25人
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11月 慢性前立腺炎 間質性膀胱炎 PSA値の異常値 性感染症

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慢性前立腺炎の統計学的検討#2

以前にも慢性前立腺炎の統計学的検討をしました。
今回は、「尿流量測定ウロフロメトリー検査」のテーマの際に集計した無作為(3ヶ月間に来院した順で、初診・再診の区別なく)の100名の患者さんについて検討したいと思います。
【排尿曲線の分類】
Uroflotype_41.正常型
2.前立腺肥大症型(閉塞型)
3.膀胱頚部硬化症型(慢性前立腺炎型)
4.神経因性膀胱型(無力型)
の4つのタイプに分類できます。
事前に十分尿をためた状態で検査を行っても、尿量が150ml未満の場合は判定不可能です。頻尿の患者さんや膀胱緊満感時に会陰部痛などが著しい患者さん、あるいは緊張すると排尿できなくなる患者さんの場合は、わずかしか排尿出来ないからです。さらに、4つの分類にどうしても当てはまらないような排尿曲線も存在します。そのようなタイプを
5.判定不可・混合型
として分類しました。しかし、このような判定不可・混合型も、明らかに正常型ではないので、排尿障害の排尿曲線には違いありません。
正常型の排尿曲線に似ているが、長年の医師としての勘からすれば排尿障害の排尿曲線と思われても、極力「正常型」として分類しました。なぜなら、慢性前立腺炎の原因が排尿障害だと信じている私が分類するのですから、私情が入ります。それを避けるためです。
排尿曲線分類と年齢分布
Uroflotype_1排尿曲線のタイプ別の集計結果は、上記の表の如くです。
上の表を詳しく読んでみましょう。まず表をクリックしてください。表が拡大します。
100名の患者さんのうち、正常型と分類されたのは10名(10%)です。言い換えれば、慢性前立腺炎患者さんのうち、90%の患者さんには、尿流量測定ウロフロメトリー検査で排尿障害と判定可能な事実があります。判定不可・混合型を除いても、81%と高い確率で排尿障害を認めます。
次に年齢別分布を見て見ましょう。
20歳代23名、30歳代29名、40歳代29名の合計で81名(81%)になります。慢性前立腺炎患者さんは、社会を担う年齢層と一致します。そのため、仕事場で、この病気を理解されない立場に置かれることも多く、精神的にも辛くなる年齢層です。

正常型排尿曲線と残尿量
Uroflonmlru排尿曲線の正常型に分類された患者さんも、残尿量測定検査を行なうと、厳密には正常の排尿をしていないことが分かります。
私は、少なくても10ml以上の残尿は排尿障害と信じていますが、何でもかんでも排尿障害の理由にすると思われるのもしゃくですから、100歩譲って20ml以上を異常所見とします。20mlまでを正常範囲?の残尿量とします。
残尿量の基準を緩めても、正常型排尿曲線の10人のうち、正常範囲であるのはたった3人(30%)で、残る7人(70%)は残尿量は20ml以上(最大84ml)です。
慢性前立腺炎患者さん100名のうち、排尿曲線が正常型で残尿量も正常範囲であるのは、たった3人(3%)で、残る97人(97%)の患者さんは、何らかの排尿障害を認める結果になりました。

【参考】
以前にもご説明したように、正常の排尿では残尿がゼロであるのが正しい姿です。ところが、一般の医師はともかく、泌尿器科医でさえ残尿量は50mlまで正常だと思っているのが現実です。
この残尿量50mlまでは正常だという常識は、何が根拠となったのでしょう。
泌尿器科医の常識として、前立腺肥大症の手術適応があります。手術適応とは、これこれの条件の時には手術を薦めるということです。
1.尿閉(尿がたまってパンパンなのにオシッコが出ない状態)エピソードが一度でもあった場合
2.社会的適応(自宅で安静にしてれば問題ないが)がある場合
3.夜間頻尿などで日常生活に支障がある場合
4.残尿量が常に50mlを超える場合25年以上前の泌尿器科では、前立腺肥大症の手術は、出血などのリスクの高い難しい手術でした。現在のように手術式が確立し、手術器械も安全で精度の高いものではありませんでした。
高齢の患者さんが前立腺肥大症の排尿障害で来院しても、抗男性ホルモン剤の治療で前立腺を小さくする保存的治療が主流でした。現在のようにα-ブロッカーによる排尿障害の治療と異なり、症状はなかなか改善しません。
前立腺肥大症のほとんどの患者さんが高齢者でしたから、保存的治療で経過を見ている間に寿命が尽きる自然経過のパターンでした。
しかし、男性の寿命も延び、いつまでも保存的治療ではらちが明かず、どうしても手術をしなければならない時に、前立腺肥大症による「残尿量が50ml以上であれば、手術をしましょう」と決めたのです。ですから残尿量50ml以上というのは、手術適応のための残尿量なのです。
前立腺肥大症ほどの排尿障害もないのに、残尿量50mlまでが正常ということを決めた泌尿器科医のお偉いさん達の論理の飛躍は、驚くばかりです。


前立腺結石の存在と年齢分布
Calculi_1前立腺結石の存在は、排尿障害の結果だと私は信じています。ですから、慢性前立腺炎の患者さんに前立腺結石が多く認められれば、慢性前立腺炎の原因が排尿障害だと示唆する根拠になります。
全体の46%に前立腺結石を認めました。50歳代は90%、30歳以上で2人に一人の高率で前立腺結石を確認できる結果になりました。
前立腺結石と病歴期間
Calculipiriod病歴期間が長ければ、当然、前立腺結石の患者さんが多く認められるだろうと思い、調べてみると、前立腺結石の有無と病歴期間には有意の相関関係は認められませんでした。予想外れでした。

【膀胱出口の膀胱内突出】
Bnsgrade2超音波エコー検査の膀胱・前立腺の側面像で、膀胱出口の膀胱内突出程度を私は常に観察しています。
膀胱出口の膀胱内突出が認められなくても排尿障害はありますが、経過が長ければ、その突出程度は強くなり、排尿障害の存在と経過の長さを示してしると私は考えています。

膀胱内突出の進展度分類
Bnsgrade_1

突出進展度を上図のように分けます。
平坦を0度、5mmまでの出張りをⅠ度(軽度)、10mmまでをⅡ度(中等度)、10mm以上をⅢ度(高度)として、100名の患者さんの所見から膀胱出口の膀胱内突出の傾向を見てみましょう。
ただし、この分類は私のオリジナル分類であって、泌尿器科医の常識ではありませんから念のため。

膀胱内突出進展度と年齢分布
Beaktype膀胱出口の膀胱内突出がない人は、9人(9%)でした。残りの91人(91%)は、膀胱出口の膀胱内突出が多かれ少なかれ認められました。
膀胱出口の膀胱内突出は、排尿時における膀胱出口の振動が、膀胱出口周囲を硬く変性させ内側に(膀胱側に)盛り上がるのだろうと考えています。前立腺側は密度が高く固いので、膀胱側にしか進展方向が確保できません。また、膀胱内突出の進展度が高い人は、経過が長いか、振動に対しての防御反応が強いのだろうと思っています。

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慢性前立腺炎の統計的検討#1

脊椎麻酔の後遺症が、慢性前立腺炎の原因の一つになっているかも知れないと思い、以前このブログに掲載しました。
その後もコツコツとデータを集めていました。私の取り柄といえば、根気・努力・忍耐です。私は聡明な医師とは違って、「一を聞いて十を知る」人間ではありません。そんな人間がこのような世界で生業としてやって行くには、ひたすらカメに徹して歩み続けなければなりません。時には、華やかなウサギをうらやましく思うこともあります。
Cpspinal2さてさて、私のぼやきはこの辺にして本題に入りましょう。脊椎麻酔と慢性前立腺炎との関係を調べるべく、2006年の3月から始めて9月の現在までの約7ヶ月間に、コツコツとデータを集積すると、慢性前立腺炎症状の患者さんが347名来院していました。(ちなみに、慢性膀胱炎・間質性膀胱炎症状の女性患者さんが146名来院していました。)
30歳代の方が一番多く、84名(24.2%)、次に40歳代75名(21.6%)、50歳代61名(17.6%)の順です。
最高齢者が91歳でした。一番若い方で16歳です。慢性前立腺炎といえば、30歳代から40歳代にかけて多いように感じていましたから、データは予想通りです。
10代後半の患者さんは、慢性前立腺炎という診断ではなく、「心因性」や「気のせい」と診断され、精神科や心療内科の治療を受けていました。
70歳代から上の患者さんは、「年のせい」という診断が下されていました。
会陰部痛と大腿部痛の悩みのある49歳の男性は、心療内科でECT治療(電気ケイレン治療)を全身麻酔で8回も受け、2ヶ月間だけは痛みがおさまったのですが、記憶障害という後遺症をもらってしまいました。2ヶ月経過したら再び痛みがひどくなり、途方に暮れて来院しました。

過去の手術の既往をうかがうと、下記のようなデータになりました。
Cpspinal虫垂炎手術の罹患率は、前回の報告では23%でした。統計を取りはじめ、患者さんの数が増えるのに従い、その率は若干減少し、虫垂炎手術(脊椎麻酔)罹患率は19.3%に落着きました。下がったといっても慢性前立腺炎症状の患者さんのうち、5人に1人の確率で虫垂炎手術を脊椎麻酔で受けているのです。一般的には虫垂炎の罹患率は15人に1人の7%の確率ですから、「!」ですね。
虫垂炎手術も含め、ヘルニア・痔の手術などを脊椎麻酔で手術を経験した患者さんは、347人中88名(25.4%)でした。実に4人に1人が脊椎麻酔を経験しているのです。尋常な数字ではないでしょう?
慢性前立腺炎症状の患者さんのうち、4人に1人の割合で脊椎麻酔を受けているという事実から考えて、慢性前立腺炎という病気の本質が見えてこないでしょうか?ただ単に原因不明の炎症だという考えに、少し疑問を感じます。
ある掲示板に、こんな記述がありました。
「これだけ昔から多く行われている脊椎麻酔で、長期の神経障害が起こっているなんて誰も言っていない事を正当化するには、もう少し理論的な裏付けが必要かと思いますが。」
別に正当化するつもりはありません。ただ単に私の集めた事実から、常識を疑ってみる私の姿勢は、医師としてあるいは科学者として当然の理論展開でしょう。思いついた仮説を誰の気兼ねなく発表できるブログは、在野に埋もれた開業医にとって、絶好のメディアです。学生時代~研修医を経て自分の吸収した常識だけに呪縛された頭脳の人にとっては、とても非常識でしょうが、「誰も言っていない」からこそ、誰かが言うのです。
川崎病で有名な川崎富作先生が、誰も報告したことがないこの症候群について報告した時に、従来の常識に凝り固まった有名な大学教授や大御所たちから、散々な批判を受けました。
現在では常識のピロリ菌を基礎医学者が胃潰瘍の原因として報告した時、ほとんどの臨床医は笑ったのでした。
脚気の原因が感染症と思われていた明治時代、高木兼寛先生は特定の栄養失調を疑いました。その際、東大出身の医師森鴎外たちから攻撃されました。
歴史が示唆するように、科学である医学の領域でも、科学的な根拠で証拠を示してもなかなか受け入れてもらえません。なぜなら、従来の科学的常識を維持し守る科学者と、新しい発見や発明をする科学者とでは人種が異なるからです。悲しいかな同じ人間でも時期が異なれば常識を守る側の科学者になってしまいます。相対性理論を発表したアインシュタインは、その後に発表され今では常識となっている量子力学に対して「神はサイコロをふらない!」と言って反対しました。人間はそのような習性を持つのです。おそらく私もそうなるのでしょう。

ここ10年、医学界では、EBM(根拠にも基づく医療)が賛美されました。しかし最近では、EBM中心の考え方に異をとなえる人が増えてきています。EBMのEとはエビデンス(根拠)ですが、過去の見知らぬ他人が出したエビデンスだけを根拠に理論武装する他力本願的な医師が多くなっている風潮に、不愉快に思うグループが出てきてもおかしくない状況です。自らが根拠を作って、新しい知見を生み出す自力本願的な医師がドンドン出てこないと、日本の医学・医療は進歩しません。過去のエビデンスの上にあぐらをかいて人を批評することは、安全でたやすいことです。自作のエビデンスを無責任な批評に耐えながら作り上げるのは、骨の折れることです。
2008年以降から泌尿器科学会で順次発表していきます。お楽しみに。

掲示板の話ついでに、ご質問にお答えします。
今年の3月から9月までの半年間に慢性前立腺炎症状で内視鏡手術をお受けになったのは、61名の男性患者さんです。私は毎年、年間180件以上の内視鏡手術を行なっています。そのうち慢性前立腺炎の患者さんが130件、慢性膀胱炎・間質性膀胱炎の女性患者さんが40件、前立腺肥大症の患者さんが10件ほどです。

「仙骨麻酔(硬膜外麻酔)と脊椎麻酔は範囲や部位が微妙に異なりますが、同じようなものです。脊椎麻酔の影響で膀胱や尿道の神経が障害されるなら、仙骨麻酔や仙骨ブロックで麻痺した神経にも後遺症が残る可能性があるのではないかと考えるのが普通でしょう。 」
この先生のご意見と私は異なります。麻酔がいったんかかったなら、脊椎麻酔も硬膜外麻酔も仙骨麻酔も同じだから、後遺症は同じだというご意見です。私は麻酔の深さが異なれば、神経に及ぼす薬剤の障害程度は異なると考えます。脊椎麻酔で12時間以上歩行不可能な麻酔深度の状態と、仙骨麻酔後1時間以内に歩行できる麻酔深度状態を同じ障害だというのに納得できません。麻酔がかかれば、0か1かの1だというデジタル的発想です。我々生物はアナログ的反応を示します。ですから麻酔にかかったとしても、麻酔深度を細かく分ければ極端な話し、1から100まで分けることができる筈です。もちろん臨床ではそこまで見分けられませんが、麻酔深度30と麻酔深度100が同じだというのは私は納得できません。0.5%のマーカイン3ml脊椎麻酔で使用すれば、麻酔深度は深く6時間~10時間以上は歩行不可能です。しかし同じ濃度の0.5%マーカイン10ml(脊椎麻酔の3倍以上の量)を同じ高さの硬膜外麻酔として利用した時には、麻酔深度は浅く手術中の電気メスの感覚はある程度感じられ、3時間もたたないうちから通常の歩行で帰宅可能です。さらに、仙骨麻酔の場合は20ml以上使用しても硬膜外麻酔ほど麻酔深度が得られません。麻酔法により麻酔深度=障害が異なります。

「排尿障害が慢性前立腺炎や間質性膀胱炎を引き起こすなら、当然脊椎麻酔で損なわれた排尿障害は、重なる麻酔やブロックによって、ますます悪くなる可能性がある。しかし、内視鏡に仙骨麻酔を、間質性膀胱炎に仙骨ブロックを勧める。 」
内視鏡検査の麻酔や間質性膀胱炎の刺激症状を緩和するために、1%カルボカイン10mlや0.125%マーカイン10mlを使用して仙骨麻酔を行ないます。脊椎麻酔の麻酔深度を100だとすれば、外来でのこの仙骨麻酔は30程度でしょう。この程度であれば、後遺症を残さずに麻酔が覚めると考えるので実行しています。私の思考の中では何の矛盾もありません。

医師が100人いれば100通りの医学の世界観があります。ですから誰が正しいと現時点では断定できません。麻酔に関してだけでも、掲示板の医師と私とでは考え方にかなりの開きがあります。その点を土台にして事象を考えますから、最終的には同じ病気について議論しているとは思えないほどの展開になります。でも議論が尽くされた治らない病気と断定されるよりも、少なくとも議論されるだけでも、病気の正しい本質に近づくのではないでしょうか?私の一見無茶苦茶な仮説で、私以外の常識的なまともな医師が興味をいだいたことに価値があると思います。

過去に慢性前立腺炎と膀胱頚部硬化症との関係を示唆している文献があります。
Textsurgery何と34年前の1972年に発刊されたTextbook of Surgery(クリストファーの外科学として有名)というアメリカの総合外科学教科書の泌尿器科分野-前立腺の項目に記述があります。(1543ページ)
「慢性前立腺炎が膀胱頚部硬化症や前立腺結石を作るほど重症の場合、内視鏡手術をすると慢性前立腺炎の症状が軽快することがある」というものです。
34年も前の常識から脱却できないからこそ、非細菌性慢性前立腺炎が未だに解決できないと思うのは私の独断と偏見でしょうか?過去の常識に何の疑いを持たないまま講義する医師の石頭がいつ柔らかくなるのでしょうか?
私の考えは、排尿障害である膀胱頚部硬化症を治療すると慢性前立腺炎と誤診されていた症状が治るという考え方ですが、クリストファーの外科学では、慢性前立腺炎が引きおこした膀胱頚部硬化症を治療すると、原因であった慢性前立腺炎が治ることがある?という不思議な説明になっています。炎症→排尿障害という根拠で、排尿障害の治療で炎症が治る理由が論理性に欠けます。微細な炎症が器質性(機能性の逆)の膀胱頚部硬化症や前立腺結石を作るという病態に信憑性を疑います。ハルナールなどのαーブロッカーで慢性前立腺炎症状が軽快する事実があっても、排尿障害が改善したからだと、なぜか考えないのと、逆の意味で似ています。排尿障害→炎症(正確には、炎症類似症状)という根拠で、排尿障害の治療で炎症症状が治ると考えた方がスッキリすると思えませんか?
1986年版1682ページにも同じことが記載されていますから、この慢性前立腺炎という病気に関しては、アメリカでもほとんど進歩していないことになっています。

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虫垂炎手術と慢性前立腺炎 誰も知らなかった脊椎麻酔の後遺症?

慢性前立腺炎の患者さんを何人も何人も拝見していると、フッと気がつくことがあります。
お腹に虫垂炎の手術の傷跡を見かけることが多いのです。印象としては慢性前立腺炎患者4人~5人に1人の割合です。一般的に先進国の急性虫垂炎の生涯罹患率は7%前後(15人に1人)ですから、確率的にはかなりの頻度です。この事実は慢性前立腺炎の本質を暗示しているのかも知れません。
虫垂炎の手術は、一般的に脊椎麻酔(通称:腰椎麻酔・下半身麻酔)で行います。では、「脊椎麻酔を行なうと慢性前立腺炎になりやすい」という大胆で無謀な仮説を立て、推理してみましょう。
虫垂炎手術の際の脊椎麻酔は、一般的に腰椎4番と腰椎5番の間から脊髄腔に針を穿刺して麻酔薬を注入します。麻酔薬は少量ですが強力で注入した部分の脊髄を一時的ではありますが薬理学的に完全に遮断します。痛覚・触覚・温覚・冷覚・深部知覚・運動神経・自律神経の中枢を完全に麻痺させるのです。
薬理作用は一時的ですから、麻酔薬が次第に吸収分解されて脊髄の麻痺はやがて取れます。ただし、一時的ではありますが、たまにオシッコがうまく出なくなる男性がいます。それでも1ヶ月もすれば出るようになります。この現象は脊椎麻酔による排尿神経の一時的麻痺(一過性の神経因性膀胱)とされています。実は、この現象がヒントになるのです。
排尿に関わっている神経は、骨盤神経・陰部神経・下腹神経の3つが知られています。
骨盤神経の中枢は仙髄2番~4番に存在し、膀胱の収縮に関与します。
陰部神経の中枢も仙髄2番~4番に存在し、外尿道括約筋を支配します。
下腹神経の中枢は胸髄11番~腰髄2番に存在し、膀胱の弛緩よ括約筋の収縮に関与します。
上記の脊髄中枢が三つ巴になって排尿をコントロールするのです。そしてどれか一つでも中枢が支障を来たすと排尿はうまくいきません。
虫垂炎手術に必要な麻酔の範囲は、胸髄7番~腰髄2番の間ですが、通常に脊椎麻酔をかけると胸髄7番から下の脊椎の全てが麻痺してしまいます。つまり、骨盤神経・陰部神経・下腹神経の全てが麻痺するのです。
麻酔薬が時間と共に吸収・分解されて麻痺は完全に戻る!と医師は都合よく思っていますが、本当は誰も正確には確認できません。先ほど説明した麻酔後の神経因性膀胱のようにハッキリとした症状が認められれば、一時的にしろ麻痺は残ったと判断できます。そしてタマタマだろうと思い込んでしまうのです。もしも麻痺が残っていて100%の機能が30%くらいまで落ち込んでいれば顕在症状として確認できるのですが、仮に70%~80%程度の低下では症状として現れません。そしてこの状態が回復せずに後遺症として残ってしまった場合、数年であればそれ程問題にはならないでしょう。しかし10年、20年と経過した時に積もり積もった膀胱や前立腺にかかった負荷を身体がいつまでも黙っていられるでしょうか?程度の軽い排尿障害が、排尿時の膀胱出口の振動を作り、その振動が膀胱出口・膀胱頚部を硬化させ、遂には器質性膀胱頚部硬化症となり、益々排尿障害を強くし、それが非細菌性慢性前立腺炎症状として顕在化するのではないでしょうか?

下記に、慢性前立腺炎症状、下部尿路症状があり、平成18年3月13日~4月12日までの1ヶ月間高橋クリニックに来院した患者さん(初診・再診を含めた95人中)で虫垂炎手術した方の写真(撮れなかった方もいます)を掲載します。
虫垂炎の生涯罹患率は7%(15人に1人)です。95人中22人(23%)の虫垂炎手術既往のある患者さんを集めるためには、一般的にはその15倍の315人診察をする必要がある訳です。虫垂炎手術と慢性前立腺炎の間にただならぬ関係を疑うのは不思議ではないでしょう?痔の手術を含めれば脊椎麻酔を行なったことのある患者さんは、95人中27人(28.4%)にもなります。

app15188m69bph1.69歳男性
12歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。33歳・42歳の2回ヘルニア(脱腸)の手術を脊椎麻酔で行う。
PSA5.5とやや高値で高橋クリニックを紹介される。以前から頻尿と夜間頻尿がある。排尿障害を認める。

app16111m88turp2.88歳男性
45歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。
平成11年に前立腺肥大症?の診断で内視鏡手術を受けている。平成15年頃から尿線が細くなる。

app16964m50bns3.50歳男性
17歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。
平成14年より尿の出が悪いので泌尿器科受診、「慢性前立腺炎」の診断でクラビット処方された。
平成17年1月、3月とやはり尿が出にくいく、尿意頻拍があり国立国際医療センター受診する。やはり「慢性前立腺炎」の診断でセルニルトン・クラビットを処方される。

app17507m30app4.30歳男性
18歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。
平成16年より会陰部のムズムズ感を訴える。「慢性前立腺炎」と診断されセルニルトン処方されるも改善せず。

app18863m49app5.49歳男性
15歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。
平成14年より会陰部痛、左太もも内側の痛みを訴える。佐久総合病院で「慢性前立腺炎」と診断される。心療内科で脳電気通電によるECT治療なるものを全身麻酔下で計8回行われ、症状は改善せず、記憶障害の後遺症のみ残る。

app15987m466.46歳男性
16歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。
平成12年より両鼠径部痛、会陰部痛が出現、「前立腺痛」の診断で桂枝茯苓丸を処方されるも症状は一進一退であった。

app17195m607.60歳男性
35歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。
午後からの30分~1時間に1回の頻尿で苦しむ。前立腺の大きさは13cc(正常は20~25cc)なので、一般的な意味での前立腺肥大症は否定される。

app18901m758.75歳男性
20歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。25歳頃から、飲酒すると頻尿になることに気付く。最近、夜間頻尿3回で高橋クリニックを受診する。前立腺の大きさは28ccで若干大きい程度。超音波エコー検査上は膀胱頚部硬化症である。

app12713m70bns26cc209.70歳男性
20歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔を行なう。10年前から頻尿で悩む。前立腺の大きさは26ccでほとんど正常の大きさ。写真撮影時蕁麻疹を認める。

app18657m26bns2310.26歳男性
23歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。
会陰部痛、両側睾丸痛、太もも内側しびれ、腰痛を訴える。地元のクリニックで慢性前立腺炎と診断される。

App18155m44bns1011.44歳男性
10歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。
平成15年より3日間続く突然の尿意頻拍が年に3回起きる。平成17年8月頃より睾丸の痛みを感じる。ご自分で性行為感染症・STDを疑い病院を転々とする。排尿後の残尿が340ml認める。ハルナールの服用で症状軽快する。

App15068m60bns20hemo312.60歳男性
20歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。
20年前から頻尿(1時間半に1回)、夜間頻尿5回で悩み当院素受診する。前立腺の大きさは19ccで正常以下である。痔の手術を21歳、31歳、53歳の計3回行なっており、いずれも脊椎麻酔で手術をしている。

App18971m37bns2013.37歳男性
20歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。
10年前から残尿感と頻尿を訴える。岐阜のある市民病院で「気のせい」、ターミナルビル泌尿器科で「慢性骨盤内静脈うっ滞症候群」、個人病院で「細菌性膀胱炎」と診断されるも改善せず、高橋クリニックを受診する。

App18976m44bns514.44歳男性
5歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。
10歳から頻尿で現在1時間に2回の頻尿と夜間4回~10回の頻尿である。20歳の時に前立腺生検を2回も行われ、非細菌性慢性前立腺炎と診断される。

App18446m45bns515.45歳男性
5歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。
慢性前立腺炎の診断で治療されるも軽快せず、高橋クリニックを受診する。ハルナールの服用で症状が消失する。

App16418m82bns3616.82歳男性
36歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。夜間頻尿5回を訴え来院する。前立腺の大きさは28ccで若干大きい程度。超音波エコー検査上は膀胱頚部硬化症の所見であった。ハルナール服用で夜間頻尿3回に減少する。内視鏡手術の適応であるが、患者さん本人がその気にならない。

App18996m77bns2017.77歳男性
20歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。
平成13年、近くの泌尿器科で前立腺肥大症手術を行っている。平成17年9月から頻尿が再発し、高橋クリニックを受診する。

App18230m41bns1918.41歳男性
19歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。
平成11年に慢性前立腺炎の診断でクラビット・セルニルトン・八味地黄丸の処方を受けるも改善せず。症状は下腹部の痛み・全身倦怠感・手足のしびれ・頻尿(1時間1回)・夜間2回頻尿。
手術を強く希望し行なった。症状は全て消失。

App12085m62bns2019.62歳男性
20歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行なう。
夜間頻尿5回で苦しむ。

App13103m62bns4020.62歳男性
40歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。

App19336m90bns21.90歳男性
会陰部痛を主訴に来院した患者さんです。40歳の時に十二指腸潰瘍を脊椎麻酔で手術、55歳の時に虫垂炎を脊椎麻酔で手術、65歳の時にヘルニア(脱腸)を脊椎麻酔で手術しています。何と3回も脊椎麻酔を受けているのです。

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