カテゴリー「慢性前立腺炎と薬」の記事

ユリーフ、ハルナール、フリバスの違い

 Subtype 排尿障害の治療薬であるα1ブロッカーには、ユリーフ(シロドシン)、ハルナール(タムスロシン)、フリバス(ナフトビジル)があります。患者さんによっては、効果が同じ人もいれば、特定のものしか効果の出ない人もいます。

その理由は、表を見れば分かります。α1ブロッカーには、作用するα1受容体のサブタイプが微妙に違うのです。

❶ユリーフは、α1受容体のサブタイプA>>>B・Dにしか効果がないのです。
❷ハルナールは、α1受容体のサブタイプA>Dに効果があるのです。
❸フリバスは、α1受容体のサブタイプD>>Bに効果があるのです。

Yurif 人によって、α1受容体のサブタイプ分布が同じ比率ではないので、クスリも人によって合う合わないが存在します。サブタイプAが分布のほとんどの人には、ユリーフがダントツに効果が得られますが、フリバスは当然ながら効果が得られません。その場合には、ハルナールは、ほどほどの効果が得られます。

α1受容体は、交感神経の分泌するアドレナリンに反応する受容体なのです。α1ブロッカーは、この受容体であるスイッチをブロックするのです。イラストは、3種類の木が受容体のサブタイプです。交感神経である太陽からの日光がアドレナリンです。日傘をさして受容体に日陰を行なっているのがα1ブロッカーです。イラストは、日傘がユリーフでα1−Aサブタイプに日陰を作っているのです。

Yurif2 サブタイプ受容体が、毎日α1ブロッカーで抑制されると、体は他のサブタイプを増やそうとします。例えばAタイプが多かった人にユリーフを続けると、Dタイプが増えるので、今度はフリバスの方が効くようになるのです。病気と言うのは常に一定ではないので、変化を気配りしなけれなならないのです。まるで政治の変化と同じでしょう。代議士が隠れて、主流の政治グループから、他のグループに移行すると主流グループが困る事があるのと同じです(笑)。

 

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過活動膀胱の治療薬

 過活動膀胱の治療薬である頻尿治療薬である、抗コリン剤(トビエース・ベシケア)とβ3作動薬(べオーバ・ベタニス)があります。一般の医師は、単なる頻尿治療薬としか思わないで、処方しているだけです。

 抗コリン剤の作用するムスカリン受容体と、β3作動薬の作用するβ3受容体は、膀胱に均一に分布している訳ではなく、また人によって同じではありません。ですから、この事を常に想像して患者さんに工夫して処方をするべきです。

 しかしながら、それぞれの受容体(ムスカリン受容体・β3受容体)の分布が人によって違うという事は、実証はされてはいません。ムスカリン受容体もβ3受容体も膀胱全体にあると思われていますが、臨床経験上、そうではないと私は考えています。ムスクあリン受容体おはほぼ全域に存在し、β3受容体は膀胱三角部を中心に存在すると考えています。そこで、私が40年以上も患者さんと接すると、思い付いてだんだんと予想できることがあるのです。

Juyotaim_20200903102201❶イラストのように、🅰️ムスカリン受容体は膀胱のほぼ全体に分布する人と、🅱️膀胱の体部だけに分布する人に分かれます。
🅰️の患者さんに抗コリン剤を服用すると、膀胱全体と出口の平滑筋の緊張が緩むので、腹圧をかけると、尿がスムーズに出ます。
しかし、🅱️の患者さんが抗コリン剤を服用すると、膀胱大部だけが緩むのですが、膀胱出口は緩まないので、腹圧をかけると、相対的に膀胱出口が収縮してしまうので、オシッコが出にくくなったり、尿閉になる人が出て来ます。

Juyotaib_20200903102201❷β3受容体が🅰️膀胱三角部周囲から出口まで分布する人と、🅱️膀胱出口には分布しない人がいます。
🅰️の患者さんがβ3作動薬を服用すると、膀胱出口周辺が緩むので、腹圧がかかるとオシッコはスムーズに出ます。
しかし、🅱️の患者さんがβ3作動薬を服用すると、膀胱三角部だけが緩んで膀胱出口が緩まないので腹圧をかけると膀胱出口が閉じてしまい、尿が出にくかったり、尿閉になることがあります。

以上のパターンの組み合わせ、❶🅰️🅱️と❷🅰️🅱️との組み合わせで、2✖️2=4タイプの人が存在します。最近では、抗コリン剤とβ3作動薬の併用で、頻尿を抑える効果が期待されていますが、必ずしも上手くいくとは限りません。特に【❶🅱️+❷🅱️】タイプの人は頻尿が減るかも知れませんが、オシッコの出が悪くなる可能性が高くなるのです。

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慢性前立腺炎で悩まれている方に

私のブログにたくさん記載されているように、慢性前立腺炎と呼ばれる病気は、患者さんが自覚しない排尿機能障害が原因です。本当の炎症ではありません。

ですから、炎症止めの治療薬を飲んでも効きません。治療薬は排尿機能障害の効果のあるαブロッカー(エブランチル・ハルナール・ユリーフなど)とβ3作動薬(ベオーバ・ベタニス)、それと水分を控えてください。水分はコーヒー・紅茶・お茶・ジュース・牛乳・アルコールを含めて1日1リットル以下です。

一般の医師はこの病気を理解していませんから、症状が治らないのです。

医師に嘘を言って薬を処方してもらってください。そして次のように言ってください。
オシッコが出るまで時間がかかる。」「オシッコが出てもチョロチョロです。」「オシッコが終わっても、追っかけ漏れがあり、下着が濡れる。」
「頻尿の回数は1日10回以上です。」「水の音を聴くと突然オシッコに行きたくなる。」「電車に乗ると、すぐに行きたくなるので、各駅停車にしか乗れない。」「映画や劇場では終わるまで何回かトイレに行ってしまう。」

バカな医師はだましても構いません。無知が患者さんを苦しめているからです。

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オシッコがゼロの患者さんの頻尿

Rf34858m46頻尿を訴え、千葉から40代の男性患者さんが平成28年8月の初めに来院されました。症状は3月頃より発症し、膀胱炎の診断で、抗生剤と抗コリン債を処方されましたが治りません。頻尿の程度は、1時間に1回のペースです。

実は、この患者さんは、私と同じで慢性腎不全が原因で、血液透析を実施しており、尿が1滴も出ない人でした。それでも、頻尿と残尿感が出るのです。不思議でしょう? 膀胱内に尿がたまっていないので超音波エコー検査ができません。そこで患者さんに許可を得て、尿道からカテーテルを入れ、水を100ml注入し、超音波エコー検査を実施しました。膀胱と前立腺が描出され、診断のための貴重な判断材料が確保できました。

Rf34858m462すると、膀胱三角部が肥厚し、膀胱三角部の粘膜の硬化像がハッキリとしていました。この所見は、膀胱三角部の過敏さを示唆しています。つまり、過去において排尿障害が潜在していたことが予想できます。過去の既往をお聞きすると、膀胱尿管逆流症で、両側の尿管膀胱再吻合手術をされていました。そのため、両側の腎臓がダメになり、その後、慢性腎不全になった経緯がありました。

このことから、実は排尿障害が以前からあって、そのために膀胱内圧が極端に高くなり、膀胱尿管逆流症になったと推察もできます。もしかすると、過去の主治医は、形態学的な異常に目を奪われ、膀胱尿管逆流症のみを治し、膀胱内圧の上昇の原因である排尿障害に手を付けなかったために、腎臓がさらに悪くなったのかも知れません。ある意味で、医療による被害者かも知れません。

前立腺の過敏さを抑える意味でαブロッカー(エブランチル・ハルナール・ユリーフなど)を、膀胱三角部の過敏さを抑える意味でβ3作動薬(ベオーバ・ベタニス)を処方しました。1か月後患者さんが来院しました。予想通り、頻尿は改善し、2時間に1回のペースになったと大喜びです。

余談がありました。地元の薬局で処方箋を渡したら、そこの薬剤師の先生が、「おしっこが作られないのに、何故、おしっこの出やすくする薬を処方されたのですか?」と質問されたそうです。腎臓内科の主治医にも同じ質問を受けたそうです。私の説明をその患者さんは、しどろもどろにしましたが、「???」と分かってもらえなかったそうです。

薬剤師も医師も、クスリと表面的な適応病名のことしか考えないのです。クスリの薬理作用とその対応する生体反応を詳細に考えれば容易に理解できる筈です。ユリーフをはじめとするαブロッカー(エブランチル・ハルナール・ユリーフなど)は、前立腺肥大症の排尿障害のクスリですが、実は膀胱出口の膀胱括約筋や膀胱三角部の緊張と興奮を抑える薬剤です。緊張がゆるめば、おしっこが出やすくなり、興奮が収まれば頻尿が改善するのです。β3作動薬は主に膀胱三角部の興奮を鎮めて頻尿を改善するのです。クスリの作用機序の本質を考えないで、病名とクスリの保険適応で薬剤を決める悪しき慣習があるのが、治療を妨げるというエピソードです。

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抗コリン剤の効果

 Smmechm_20190921100001 膀胱平滑筋の細胞膜にムスカリン受容体(レセプター)というスイッチがあります。このスイッチを入れと平滑筋は収縮するのです。

ムスカリン受容体の多い平滑筋は、膀胱壁の筋肉(膀胱縦走筋+膀胱輪状筋)です。副交感神経から放出されるアセチルコリンがムスカリン受容体のスイッチに入ると、膀胱壁の平滑筋が収縮して、膀胱は小さく収縮し、オシッコが出るのです。このアセチルコリンは脳神経中枢でも利用されている生物活性物質です。

「頻尿」の患者さんに、抗コリン剤を処方すると、ムスカリン受容体がブロックされて平滑筋を弛めようとします。膀胱の収縮を阻止する訳ですから、膀胱内の水圧が低下して、尿意が抑えられ頻尿が少なくなるとされています。抗コリン剤(ベシケア・トビエース・ネオキシテープ)が過活動膀胱の治療薬になるのです。

尿が溜まった状態で、膀胱内圧が上昇すると尿意を感じ、それが何らかの原因で極端になるから頻尿になると一般的に思われています。過活動膀胱や頻尿の患者さんに抗コリン剤を処方すると、頻尿が確かに治ります。しかし、数十パーセントの確率で、オシッコが出なかったり出にくくなったりすることがあります。これは、抗コリン剤が膀胱壁(膀胱縦走筋+膀胱輪状筋)を収縮させないので、尿意が強くてもオシッコが出なくなり苦しむのです。そこに一般的な「尿意理論」の矛盾があります。オシッコが出なくなるほど膀胱の緊張がゆるんで、内圧が下がっているのに、なぜ尿意が強く出るのでしょうか?オシッコが出ないほど膀胱がゆるんでいるのに…実は、この理論が間違っているとしか思えません。

「尿意」とは、学会の常識では《膀胱粘膜が内圧を感じていている》とされています。しかし、おそらく昔からある見かけ上の間違った概念で、本当は《膀胱出口の膀胱括約筋と膀胱三角部の平滑筋が主に感じている》と、私は考えています。そこが過敏になると、内圧に関係なく尿意を強く感じるのです。その括約筋と三角部の平滑筋にムスカリン受容体が豊富であれば、その興奮を抗コリン剤でゆるめることが出来き、そうでなければ、尿意は無くならないのです。

Bladside2抗コリン剤の的であるムスカリン受容体は、膀胱を収縮させるための膀胱壁(膀胱縦走筋+膀胱輪状筋)に多く分布していると思われます。要するに、動力装置のスイッチなので、抗コリン剤が膀胱を収縮しないように抑える作用が強く出るのです。膀胱内圧が少し低下するので、尿意が落ち着くと考えますが、副作用として尿閉や尿が出にくくなってしまいます。膀胱が収縮しないので、膀胱に腹圧をかけても、膀胱の形がオシッコの出にやすい形にならないからです。本来、オシッコの際に膀胱は漏斗状になるのですが、膀胱壁が収縮しないので、漏斗状になれなくなります。

抗コリン剤は脳神経中枢にも作用しますから、また、認知症の副作用も最近では懸念されています。極力避けるべきだと言う専門家もいます。ムスカリン受容体に作用するアセチルコリンは副交感神経から放出されます。見方を変えると、アセチルコリンを共通とする、脳神経中枢と副交感神経の繋がりを強く感じます。内臓を積極的に動かす副交感神経の方が、自律神経のサブ=副ではないのではと思えて仕方がありません。逆に交感神経の方がサブ=副なのでは?と思えます。

 

 

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α1ブロッカーの効く理由

Smmech_20190921100001前立腺肥大症や排尿障害の患者さんにα1ブロッカーと呼ばれるクスリを私たち泌尿器科医は使用します。

どのような作用なのか、イラストで表しました。平滑筋細胞の細胞膜にα1受容体(α1レセプター)というスイッチが存在しています。自律神経である交感神経の末端から放出されるアドレナリン(カギ)が、このスイッチに作用するのです。α1受容体にスイッチが入ると、平滑筋は収縮します。

例えば、膀胱出口の 括約筋は平滑筋で作られていて、交感神経が緊張・収縮させて膀胱出口を閉じて、尿を貯めるのです。オシッコをする時に、交感神経のアドレナリン刺激がストップするので、膀胱出口はゆるんでオシッコが出やすくなるのです。

ところが、人によって交感神経の指示が止まらずに、膀胱出口が完全にゆるまない人がいます。それが排尿障害なのです。交感神経の末端からアドレナリンが放出し続けるのです。そこで、ユリーフやハルナールなどのα1ブロッカーを服用すると、α受容体のスイッチをブロックするのです。結果、膀胱出口の緊張がゆるんでオシッコが出やすくなるのです。

このα1受容体は、膀胱出口ばかりではなく、前立腺・尿道・膀胱三角部にも存在します。分布・配分は人によって異なりますから、薬の効果に差が出て来るのです。頻尿の原因は膀胱三角部の過敏=平滑筋の緊張ですから、前立腺肥大症で頻尿症状のある人に、α1ブロッカーを処方すると、オシッコの出が良くなるばかりでなく、頻尿も改善する患者さんもいます。そのような人は、膀胱三角部にもα1受容体が多く存在していることになります。

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慢性前立腺炎すなわち、自覚しない「排尿障害」

慢性前立腺炎と診断され、なかなか治らない患者さんが、無料相談の電話やブログのコメント相談や実際に来院される患者さんがたくさんおられます。

その患者さんたちの症状は、陰部の痛み・不快感・カユミ・シビレ・頻尿・尿意切迫感・尿道分泌液の過剰・肛門の痛み・カユミなどさまざまです。人によっては、胃の痛み、首の痛み、手足の痛み・シビレ・震えなどさまざまです。……症状だけで判断すると、自律神経失調症?ストレス?うつ病?と診断されてしまうのです。症状に振り回されることなく、本質を見極めなければ、永遠に続くのです。

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以前に解説したように、排尿障害がベースにあり、何年も何十年も排尿障害で負担を受けた膀胱括約筋や膀胱三角部か、肥大し過敏になり、脊髄神経回路を振り回すために、さまざまな症状が出るのです。
一般的な医師は、その症状に注目して本質を考えないで治療するために、なかなか治らないのです。

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治療標的で一番重要なのが、過敏になっている膀胱三角部です。
膀胱三角部が過敏になったのは、排尿障害が原因ですから、排尿障害の治療薬であるα1ブロッカーを先ず、処方します。
症状がα1ブロッカーだけでは不十分であれば、膀胱三角部の興奮を抑えるβ3作動薬であるベタニスを併用処方します。
さらに、もう1つという状態であれば、抗コリン剤であるベシケアを併用処方します。
前立腺が大きくなって、膀胱括約筋に負担を掛けているようであれば、前立腺を軟らかくするアボルブわや併用します。
したがって、重症度に応じて、
❶α1ブロッカー単独
❷α1ブロッカー+ベタニス 2剤併用
❸α1ブロッカー+ベタニス+抗コリン剤 3剤併用
❹α1ブロッカー+ベタニス+アボルブ 3剤併用
の4通りの処方があります。

これらの薬で十分な効果が得られなければ、手術を選択しなければなりません。
事前に膀胱括約筋と膀胱三角部の腫れ具合を調べて、そこを内視鏡手術で切開あるいは切除するのです。通常、その腫れた部分が症状を作る感覚装置・センサーですから、それを破壊すれば症状は軽快するのです。

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新たなβ3作動薬

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近々、新たなβ3作動薬が販売されることになりました。
キッセイ薬品と杏林製薬の併売です。これまでは、アステラス製薬のβ3作動薬のベタニスしかありませんでした。ベタニスも画期的なクスリでしたが、全ての人に均一に効果があるとは限りませんでした。
治療する側の医師としては、下部尿路症の患者さんにいろいろなお薬で治療しますが、その人に合う薬を見つけるのが大変です。少しでも選択肢が増えると、医師も助かるし、患者さんにとっても有益です。

これまで、ベタニスの効果が得られなかった人や副作用のために中止された人にとっては、朗報です。

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平滑筋の秘密

膀胱炎や慢性前立腺炎患者さんの頻尿や残尿感などの知覚異常の症状が、平滑筋に作用する抗コリン剤やβ3刺激剤で緩和することに疑問を感じませんか?知覚異常に対して平滑筋という筋肉をゆるめるクスリです。

一般的に人体には知覚神経の末端に特有な形状のセンサーがあります。痛みセンサー、圧力センサー、熱センサー、冷感センサー、触覚センサーなど本当にいろいろです。しかし、……しかしです、膀胱には尿意を感じるセンサーが発現されていないのです。センサーがないのに、何故、尿意を感じることができるのでしょうか?
泌尿器科学会で超有名な専門医たちは、そこに「C線維」という裸の神経線維があり、そこに膀胱粘膜から放出された化学伝達物質が、C線維という裸の神経を刺激して「尿意」を感じると説明しています。……裸の神経?そのような神経は、自律神経の末端だけです。体性神経なのにセンサーなしで、裸はおかしいだろう!膀胱だけが、センサーがなく、こんな原始的な形状とは、その考え方に絶対に無理があります。電話機がないのに、電話線に向かったしゃべると情報が伝わるというマンガの様なお話しです。

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組織学的に平滑筋は、無数にある細胞の一つ一つがつながっているのです。1つの細胞の意識➡︎無数の細胞の意識と同じなのです。それが細胞間結合(電気結合・ギャップ結合)です。その無数にある平滑筋の一部に自律神経が付着しています。自律神経からの情報・命令を一部の平滑筋が受け取ると、その情報を細胞間結合を介して、次々に無数の平滑筋に伝達します。つまり、平滑筋は動力装置としての働きの他に、伝達装置としても働くのです。

Semi2016sensorこの形状を見ていると、何かに見えませんか?……そうなんです、……知覚神経とセンサーの組合せです。実は、平滑筋そのものが「センサー」なのです。ですから、膀胱の平滑筋が緊張すると、尿意が強くなり、平滑筋が緩むと尿意がなくなるのです。教科書的な知識だけが全てだと思っている、貧弱な発想の専門医師が原因です。抗コリン剤やβ3作用剤が尿意を抑える作用があるのは、平滑筋の緊張を低下させてくれるからです。つまり、抗コリン剤とβ3作用剤の2つは、どちらもセンサーに直接作用するのです。同じ意味で、ユリーフ・ハルナール・フリバスなどのα1-ブロッカーも、平滑筋の緊張を低下させるので、頻尿・残尿感を軽快させることになります。

以上のように排尿障害し続くと、何故に頻尿・残尿感・尿意切迫感などの症状が発現するのでしようか?実は、膀胱三角部の括約筋は、圧力センサーでもあるのです。通常は蓄尿で膀胱内圧が高まると、その圧力が膀胱三角部の圧力センサーを刺激して尿意を感じるのです。ところが、膀胱三角部が肥厚したために膀胱三角部の組織密度が高まり、膀胱内圧の反応閾値に関係なく、圧力センサーが過剰に反応してしまうのです。

治療としては、膀胱括約筋の緊張を緩めて上げれば良いのです。そのために、ユリーフ・ハルナール・フリバスなどのα1-ブロッカーの処方です。ご婦人の場合は、エブランチルしか処方できません。
次に膀胱三角部に特異的に作用するベタニスなどのβ3刺激剤が有効になります。
また、膀胱内圧を下げることで、膀胱三角部の圧力センサーを二次的に刺激しないように、輪状筋の過敏性収縮を抑えることです。そのために、ベシケア・ステーブラ・トビエースなどの抗コリン剤が必要になります。
一般的に、抗コリン剤で膀胱収縮力が低下するというデータはありませんから、縦走筋には抗コリン剤の作用するムスカリン受容体は、おそらく分布が少ないのでしょう。ですから、膀胱内側の薄い輪状筋だけに抗コリン剤が作用するのです。

ところが、抗コリン剤にもβ3作用剤のも「副作用」として排尿障害が起こることがあります。抗コリン剤では服用した患者さんのうち5%未満程度、β3作用剤の場合は1%未満程度でしょう。これには、理由があります。
本来は、膀胱内側の輪状筋だけにあるはずのムスカリン受容体が、膀胱外側の縦走筋にまで及ぶ人がいるのです。同じくβ3受容体も縦走筋にまで及ぶ人がいるのです。そのため、排尿時に膀胱出口を開こうとする縦走筋が収縮できなくなってしまうからです。

縦走筋のムスカリン受容体やβ3受容体の分布が少なければ、副作用が出る確率は低いです。前立腺肥大症が大きく成長して、排尿時に縦走筋の負担が大きいと、縦走筋はとても疲弊します。そのため、受容体の分布がわずかであっても収縮しにくくなるので、排尿障害が顕著に出ます。

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α1-ブロッカーの速効性の理由#2

M3umecha実は、尿道括約筋の他に、膀胱括約筋と言う排尿に深く関わる括約筋が存在します。さらに、尿管の延長線上にある膀胱三角部が尿道括約筋近くまで延びています。この2つの括約筋と膀胱三角部の協同作業が排尿メカニズムの本質なのです。
尿道括約筋は、人の意思で動く骨格筋=横紋筋です。膀胱括約筋は、人の意思とは無関係の自律神経支配の内臓筋=平滑筋です。人がオシッコをしようと力むと、
①尿道括約筋(赤い大勢のヒト型モデル)が収縮して引っ張りながら開きます。
②次に、自律神経を介して、オートマチックに膀胱括約筋(白い二人のヒト型モデル)が収縮して膀胱出口が開くのです。
③尿道括約筋に膀胱三角部が引っ張られます。
④そして、
(イ)腹筋
(ロ)内臓の重さ
(ハ)膀胱の収縮
(ニ)膀胱内のオシッコの重さ
で尿が流れ出るのです。
この3つの筋肉の動きと4つの圧力でオシッコが出るのです。膀胱の力がないから、オシッコが出ないという神経因性膀胱の単純な診断にとても疑問を感じますよね?

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筋力の強さは、尿道括約筋>>>膀胱括約筋です。何故ならば、尿道括約筋は骨格筋で、膀胱括約筋は内臓の筋肉だからです。横紋筋・骨格筋は「赤い筋肉」で、マグロと同じです。平滑筋・内臓筋は「白い筋肉」でタイやヒラメと同じです。マグロの方が長時間力強く動けますが、タイやヒラメは短時間の動きしかできません、この状態が長期間続くと、中年以降に内臓の筋肉である膀胱括約筋(青いヒト型モデル)は疲れ果てます。そのため、排尿の際に膀胱括約筋の収縮力が弱くなり、上記の排尿メカニズムがスムーズに作用しなくなります。その結果、膀胱出口が開かずに、膀胱三角部・尿道・前立腺が引っ張られて尿道側にペコッと凹むように狭くなります。それが、中年以降の排尿障害になります。
排尿障害と診断されると、
①前立腺が大きいと「前立腺肥大症」
②前立腺が小さいと「神経因性膀胱・慢性前立腺炎」
③ご婦人だと、やはり「神経因性膀胱」、不定愁訴が強い「過活動膀胱・間質性膀胱炎」
と誤診されるのです。膀胱出口が狭まるので、排尿障害の患者さんの膀胱出口から流出した尿はジェット流になるので、尿道口から出る尿は、分裂したり散ったりします。

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α1-ブロッカー(ハルナール・ユリーフ・フリバス)を服用すると、前立腺・尿道・膀胱三角部の平滑筋の緊張が緩むために硬さが取れ、膀胱出口にかかる尿道括約筋のけん引力が低下して、膀胱出口が凹んで狭くならなくなります。また、前立腺の硬い被膜が尿道括約筋によって引っ張られるので、膀胱出口が逆に開きやすくなります。その結果、膀胱出口が間接的にある程度開くので、排尿がスムーズに流れ出るのです。

しかし、前立腺肥大症で前立腺の組織密度がきわめて高いと、いくらα1-ブロッカーを使用しても、前立腺の硬さは取れません。そうなると、この排尿メカニズムだけでは、オシッコがスムーズに出ません。

オシッコという普通、ヒトが誰も意識もしない生理現象を当たり前だと思うので、いい加減な病態生理で病気を治療するのです。もっと、基本にかえって分析するべきです。そうすれば、誤診されて苦しむ患者さんが少なくなります。
人間の身体の基本構造(解剖学的・生理学的)を詳細に考慮することで、病気の本質が見えてきます。

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