カテゴリー「慢性前立腺炎の考え方・生活習慣」の記事

尿意の秘密

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膀胱や前立腺の数々の病気を調べ研究して治療するに当たって、基本的な概念を明らかにする必要があります。その対象が「尿意」です。
泌尿器科学会で名だたる先生たちが唱える、尿意のメカニズムは次のようです。
まずは、膀胱の基本的構造をイラストで示しました。膀胱粘膜があり、その下に粘膜下組織、平滑筋層、神経組織のC線維があります。
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①オシッコがたまり膀胱が膨らむと、当然、膀胱粘膜が引き伸ばされます。
②すると、膀胱粘膜からATPやアセチルコリンなどのさまざまな「生物活性物質」が放出されます。
③それら生物活性物質が膀胱粘膜のすぐ下に存在するC線維を刺激して、それが脊髄神経回路に伝達されて尿意になるのです。
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もしも、この通りだとすると、説明できない現象があります。
頻尿や尿意切迫感を抑えるβ3作動薬のベタニスや抗コリン剤のベシケア・ステーブラ・トビエースなどは、膀胱の平滑筋を緩める働きがあります。そのお陰で、頻尿や尿意切迫感の患者さんが、オシッコを我慢できるようになるのです。しかし、もしそうだとしたら、平滑筋が緩み、膀胱がさらに膨らみ、膀胱の粘膜はなお一層伸びて、生物活性物質が大量に放出される筈です、すると、頻尿の尿意切迫感が強くならなければなりません。したがって、この理論は、間違いです。
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では、どのように考えればいいのでしようか?
ヒントは、β3作動薬や抗コリン剤が平滑筋にしか効かないことにあります。そして、平滑筋を緩める=尿意が低下する点にあります。平滑筋細胞は、細胞間が電気結合=ギャップ結合で繋がっていて、1個の細胞の情報がすべての細胞に伝わります。つまり、1個の細胞の意識が、すべての細胞の共通の意識になるのです。膀胱が膨らむと、平滑筋は引き伸ばされて緊張(赤いギザギザ線)し、平滑筋全体に伝達されます。その緊張情報=膀胱内圧=尿意情報が神経に伝達されて尿意になるのです。この仕組みは、ほぼ神経細胞と一緒です。神経は線状なので1次元ですが、平滑筋は立体的なので3次元です。膀胱平滑筋は、収縮と弛緩する物理的な動力装置としての働きと、機能的な感覚センサーとしての働きがあるのです。

実は平滑筋には他にも違う働きがいろいろあります。動脈壁の中膜にある平滑筋は、動脈壁の内膜に溜まった悪玉コレステロールを食べて泡沫細胞になります。これはマクロファージ=貪食細胞と同じです。また、動脈壁の内膜に集まった泡沫細胞を固めるために平滑筋がコラーゲンを作ります。これは線維芽細胞と同じです。

以上のように平滑筋には、多彩な能力があるのです。その平滑筋には、私たちが知らない能力があるかもしれません。その不明の能力が原因不明の病気に関与しているかもしれません。そういう意味では、平滑筋の興奮を抑える大豆イソフラボンが、さまざまな病気の予防に役立つ可能性があります。

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誤解

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今まで解説してきた下部尿路症は、基本的考え方は恐らくこうでしょう。

①前立腺肥大症は、前立腺肥大症が膀胱を刺激して、頻尿・残尿感・尿意切迫感が出現する。前立腺の手術をしても治らない人がいる。
②急性膀胱炎は、バイ菌が刺激して、膀胱粘膜が過敏に反応して、頻尿・残尿感が出る。若いご婦人のこの病気はセックスの後に起こる。しかし、高齢者の場合は原因不明である。
③慢性前立腺炎は、前立腺の炎症が膀胱を刺激して、頻尿・排尿痛・陰部の痛みが出る。抗菌剤を長期間投与しても治らない。
④間質性膀胱炎は、膀胱の粘膜に原因不明の炎症が起きで、頻尿・膀胱の強い痛みになる。萎縮した膀胱を水圧拡張しても治らない。
⑤過活動膀胱は、原因不明で頻尿・尿意切迫感・切迫性尿失禁になる。
⑥膀胱疼痛症候群は、原因不明で軽い頻尿程度がある程度、主症状は排尿に関係なく膀胱の痛み。麻薬の痛み止めを服用しても治らない。

結局は、すべての病気の原因を膀胱が受け止めて、下部尿路症状を作っているのだろうという考え方です。その割には、原因と思われる病態を治療してもなかなか治りません。さらに原因が別としても、膀胱は同じですから、同じ症状でもいいと考えられませんか?何故いろいろと違う症状なのでしょう。明らかな膀胱粘膜の炎症である細菌性急性膀胱炎と同じ頻尿・残尿感・排尿痛にならないのでしょう?……どうしてでしょうか?
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これには、理由があるのです。
前回解説したように、疫学的調査で症状を比較すると、尿勢低下のみが「機能障害」です。一般的に、病気の症状は、機能障害が原因で、その他の症状を作っていると考えられます。機能障害で排尿時に膀胱括約筋と膀胱三角部が弛緩しないため、膀胱出口が開かないために排尿障害になります。弛緩しない膀胱括約筋と膀胱三角部は、縦走筋と力比べするために、膀胱括約筋・膀胱三角部が肥大化・肥厚化し、ますます排尿障害を悪化します。
①排尿障害が悪化すると、
ⅰ.膀胱内圧のエネルギーが、長期間前立腺を刺激したため、前立腺が対応反応して肥大化→「前立腺肥大症」になる。
ⅱ.膀胱内圧が長期間に渡って上昇するので、膀胱自身が疲弊する。疲弊の結果、
a)膀胱が弛緩する→「神経因性膀胱」
b)膀胱が萎縮する→「間質性膀胱炎」

さらに膀胱三角部は尿意を知覚するセンサーですから、肥厚化によって尿意エネルギーは大量に産生されるために、脊髄神経回路を介して、頻尿・残尿感・尿意切迫感・切迫性尿失禁・膀胱の痛み・陰部の痛み・シビレ・痒みになるのです。
①男性で不定愁訴があって、前立腺が大きくないと、→「慢性前立腺炎」
②尿検査で白血球/細菌が見つかると、→「慢性膀胱炎」
③検査結果がほぼ正常で精神的に落ち込むと、→「心因性頻尿」
④検査結果が多少異常があっても、痛みがとても強いと、→「膀胱疼痛症」
⑤痛みの領域が広いと、→「慢性骨盤疼痛症候群」
⑥検査結果がほぼ正常だと、→「過活動膀胱」

ご覧のように、下部尿路症で付けられた診断名の根拠が、如何にいい加減か分かります。診断名から治療しても、病気が治るとは思えません。診断名を考案した医師たちの短絡的な発想が情け無い。表向きの症状だけで病名を作るのは、素人でも作れることです。
イラストで示すように、病気の根本的原因は、排尿障害と膀胱括約筋・膀胱三角部の肥大化と異常興奮が原因です。そのために、排尿障害の治療薬であるα1ブロッカーと、膀胱三角部の興奮を抑えるβ3作動薬と抗コリン剤が必要になるのです。

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下部尿路症のいろいろ

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「下部尿路症」には、次のようないろいろな病気があります。
①前立腺肥大症
前立腺が大きいから頻尿になる。
でも、手術で前立腺を除去しても、頻尿が治らない患者さんが存在する。「歳のせい」にされる。
②急性膀胱炎
バイ菌が原因で膀胱粘膜が炎症を起こし頻尿になる。頻尿=炎症?=バイ菌と単純に思われる。
③慢性膀胱炎
バイ菌はいないのに、繰り返し膀胱炎症状の頻尿になる。頻尿=炎症?=見つからないバイ菌=不潔にしている
④過活動膀胱
バイ菌も明確な原因もなく、頻尿になる。ダメな膀胱
⑤間質性膀胱炎
膀胱粘膜下の間質に炎症所見が認められる。バイ菌はいない。アレルギーが原因と思われている。頻尿と痛みが併発する。
⑥膀胱疼痛症
バイ菌はいない、膀胱粘膜に炎症もない。頻尿±ただ痛みが前面に出る。
⑦非細菌性慢性前立腺炎
前立腺に明確な原因もなく、頻尿や痛みが出る。只ひたすらに抗生剤とセルニルトンを処方するだけ。
⑧慢性骨盤疼痛症候群
男女問わず、原因不明で痛み±頻尿で苦しむ。
⑨神経因性膀胱
排尿直後にもかかわらず、残尿が50㎖以上も残っている。そして頻尿±残尿感±不快感が出る。原因は膀胱の神経がダメになった➡︎治せない。
⑩前立腺がんの手術後の頻尿
手術前には、なかった頻尿が手術後から頻繁に出る。主治医は、手術の後遺症だからと言って、何もしてくれない。理由は、膀胱と尿道を接合縫合する際に、膀胱三角部を縫ったからです。

以上の病気の原因はいろいろだったり、不明ですが、症状は似たり寄ったりの頻尿・残尿感・尿意切迫感です。しかし同じような症状なのに、症状を作る明確な原因が突き止められていません。何となく膀胱が過敏になっているから、という対症療法で済ませるので、すべての病気をいい加減にしか治せないのです。こんな事で、よく偉そうに泌尿器科学会を専門医がリードしていますよね?

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これらの下部尿路症の患者さんのいろいろな症状のうち、ある一定の確率で尿勢低下=排尿機能障害を認めます。機能障害が病気の原因で、膀胱を苦しめていると考えるべきです。治療としては、排尿機能障害を中心にα1ブロッカーであるユリーフ・ハルナール・フリバスを処方して、膀胱三角部の過敏反応を抑えるために、β3作動薬のベタニスと、抗コリン剤であるベシケア・ステーブラ・トビエースを処方します。
世間では、頻尿や尿意切迫感だけに振り回されて、原因を追求せずに、β3作動薬や抗コリン剤だけを処方しています。もちろん、それだけでも症状が落ち着く患者さんもおられますが、繰り返し症状は出てきて、次第に治療が困難になるほど症状が強くなります。なぜなら、患者さんの脊髄神経回路がバージョンアップするからです。そして、過活動膀胱➡︎間質性膀胱炎➡︎膀胱疼痛症➡︎慢性骨盤疼痛症候群という表面的な病名に診断されてしまうのです。そも病名に流れる根底には、ただ一つ「排尿障害」があるのです。

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膀胱出口閉塞症・症候群と言う考え方

アメリカには膀胱出口閉塞症と言う考え方がありますが、具体的に明確な定義がありません。日本では、膀胱に関する病気がたくさんあります。膀胱の病気には、アレルギー性膀胱炎・細菌性急性膀胱炎・慢性膀胱炎・心因性頻尿・過活動膀胱・膀胱疼痛症・間質性膀胱炎・うっ血性骨盤疼痛症候群・慢性骨盤内疼痛症候群・神経因性膀胱などです。ところが、すべての病気が原因不明です。
この中で、ハッキリした原因があるのはアレルギー性膀胱炎と細菌性急性膀胱炎の2つだけです。この2つ以外の病気の原因は、とてもいい加減です。

①慢性膀胱炎:
陰部を不潔にしている、お尻を拭く時に後ろから前に拭くので不潔になる、などの理由で膀胱炎になるとされる。患者さんが一生懸命に陰部を清潔にしても治らない。
②心因性頻尿:
ストレスなどで神経が過敏なった結果、頻尿になる。
③過活動膀胱:
原因不明で頻尿・尿意切迫感・切迫性尿失禁の総合的病名。
④膀胱疼痛症:
原因不明の膀胱を中心とする痛みの病気。他の膀胱の病気に併発することがある。
⑤間質性膀胱炎:
極端な頻尿と痛みを伴う病気である。アレルギーと思われている。膀胱粘膜の所見で確定診断をする。
⑥うっ血性骨盤疼痛症候群:
ご婦人の原因不明の下半身疼痛を示す病名。うっ血所見(静脈血の低下・静脈瘤)があります。
⑦慢性骨盤内疼痛症候群:
慢性前立腺炎の別名。
⑧神経因性膀胱:
膀胱に力がなくなったからオシッコが出ない・・・その理由は不明。

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これらの患者さんを調べると、多かれ少なかれ、排尿障害が隠れています。ところが、極端な排尿障害ではないので、診察している医師が重要視せずに無視するので、結果、原因不明になるのです。その根源は、排尿の仕組みを正確に理解していないからです。尿道括約筋が開くから、連動して(白い破線矢印⇕)膀胱出口が自動的に開いて排尿すると思っているのです。生身の生体の扉が、そんな単純な仕組みで出来ていると思う方がおかしいでしょう。

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尿道括約筋は開くのではなく、引っ張っている(けん引)のです。特に膀胱三角部が尿道括約筋のギリギリ手前まで伸びていますから、前後方向に開きます。同時、に膀胱括約筋が収縮することで、膀胱出口がロート状に開くので尿がスムーズに出るのです。

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膀胱括約筋は内臓の筋肉=平滑筋です。尿道括約筋は体を動かすための骨格筋=横紋筋です。
力強さは、横紋筋>>>平滑筋ですから、年齢を重ねる毎に平滑筋=膀胱括約筋は疲労困憊して十分に収縮できなくなります。すると、力強い横紋筋=尿道括約筋だけが頑張るので、イラストの如く、膀胱出口が逆に狭くなり(ガチン)、オシッコが出にくくなるのです。

その状態が、繰り返し繰返し、長期間に渡って繰り返されると、膀胱出口は硬くなります。また、膀胱三角部もその振動で硬くなります。組織が硬くなると言う事は異常現象ですから、情報収集のためにセンサーが生まれ、脊髄神経回路と密接の繋がります。これがすべての病気の症状出現と結びつくのです。
膀胱三角部が過敏になれば、頻尿・残尿感・尿意切迫感・尿失禁になります。それぞれの症状の程度と組合せにより、慢性膀胱炎・過活動膀胱・間質性膀胱炎と診断されるのです。
膀胱三角部と連結している脊髄神経回路がバージョン・アップすると痛み症状が強くなり、膀胱疼痛症・間質性膀胱炎・慢性前立腺炎,慢性骨盤疼痛症候群と診断されるのです。
膀胱出口の硬さが増して、膀胱全体が疲弊すると、神経因性膀胱と診断されるのです。神経因性膀胱の専門医は、ダメになった膀胱をいろいろな検査で分類分けするのです。ダメになった理由を追求しないで、……「神経がダメになったのだから、治せませんね。」と、安易な診断をするのです。本当に無能です。
このように考えれば、極端なオシッコの出の悪さを自覚しなくても、病気が作られるのは理解できるでしよう。


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未病と病気

病気には必ず原因があります。
だからと言って、必ず症状が出るわけではありません。
しかし、ひとたび症状が出ると、なかなか治らない病気もあります。
その理由を簡単に示すと、右のイラストのようです。
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原因と脊髄神経回路が密接に繋がるから、症状が発現するのです。
ところが、原因と神経回路が十分にリンクしていない、あるいは、神経回路が未完成であると、症状は出ないのです。それが、いわゆる「未病」です。
症状が出ないから安心とは言えません。例えば、慢性前立腺炎や間質性膀胱炎の患者さんは、病気が発症する前から、軽度の頻尿や冷え症があります。

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それらの症状が極端に悪化して、極端な頻尿や足のシビレや痛みなどが出て、慢性前立腺炎や間質性膀胱炎と初めて診断されるのです。
脊髄神経回路は、ある意味で、ブラック・ボックスです。医学がどんなに進歩しても、神経回路を認識・把握することはできません。

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未病の状態が長く続くと、神経回路が完成されて、ある日突然に症状が出現するのです。患者さんの多くが、「それまで何でもありませんでした。ある日、突然です。」とおっしゃいます。何でもなかったのが「未病」だったのです。
神経回路が完成されて、症状の強度が高まったり、複数の症状が出たりするのです。排尿障害が原因の場合は、イラストのような症状、頻尿・残尿感・尿意切迫感・痛み・かゆみ・シビレ・違和感などになるのです。
これらの症状の強さと組合せにより、現場の医師が、慢性前立腺炎、慢性膀胱炎、過活動膀胱、間質性膀胱炎、膀胱疼痛症候群、前立腺症、慢性骨盤疼痛症候群と、簡単なパズルゲームの解答のような診断をするのです。医師は、もっと想像力を働かせて診断・治療しなければならないのです。

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平滑筋のスイッチ

前立腺肥大症・慢性前立腺炎・過活動膀胱・間質性膀胱炎などの治療に使用される薬剤のほとんどが、平滑筋に影響する薬理作用を持っています。
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平滑筋は、すべての内臓を構成する筋肉です。体を動かす時に使う筋肉は骨格筋(横紋筋)です。内臓の筋肉とはいえ、筋肉ですから、収縮と弛緩を繰り返します。収縮=緊張、弛緩=リラックスの状態です。その動きの典型的なものが胃や大腸の蠕動運動です。これらの動きは、骨格筋に比べてとても複雑です。その理由は、たくさんの平滑筋細胞がお互い密接に連絡しあって情報交換をしているからです。一部の平滑筋は自律神経(交感神経・副交感神経)と連絡しており、そこから得た情報を隣接する平滑筋に次々と伝達するのです。まるで、伝言ゲームのようです。

自律神経に関わらないのが、一酸化窒素NOです。一酸化窒素が平滑筋にそばに存在すると、受容体を介さないで無条件で平滑筋内に侵入します。一酸化窒素は、平滑筋をリラックスさせる作用があるのですが、平滑筋の中で、直ぐに消滅してしまいます。
何の受容体かは不明ですが、大豆イソフラボンの受容体、正露丸の受容体、タガメットがブロックする受容体(H2レセプター)なども、長年の臨床経験上ある筈です。

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交感神経に反応するのが、膀胱・前立腺の平滑筋のα₁−受容体、β₃−受容体です。
副交感神経に反応するのが、平滑筋のM−受容体です。
交感神経が興奮すると、膀胱出口・前立腺にあるα₁−受容体を刺激し、オシッコを出にくくします。さらに、膀胱三角部にあるβ₃−受容体を刺激し、尿を我慢させます。受容体は平滑筋に変化を促す【スイッチ=受容体】です。逆に副交感神経が興奮すると、膀胱体部の平滑筋にあるM−受容体を刺激して膀胱を収縮させます。

この仕組みを考慮して病気の治療を考えると、次のようです。
排尿障害が病気の原因ですから、膀胱出口・前立腺をリラックスさせるために、α₁−受容体をブロックするクスリとして、ユリーフ・ハルナール・フリバスを使用するのです。
また、膀胱三角部をリラックスさせるために、β₃−受容体刺激剤のベタニスを使用するのです。
さらに、膀胱体部をリラックスさせるために、M−受容体をブロックするクスリとして、ベシケア・ステーブラ・ウリトス・トビエースを使用します。
ただし、平滑筋の数々の受容体の分布は、患者さんの膀胱や前立腺の位置によって異なるので、その組合せの影響で、とても効くヒトもいれば、まったく効かないヒトもいます。

平滑筋の緊張をリラックスさせることで、膀胱や前立腺の過敏な症状が軽減できるのかと言えば、平滑筋は筋肉としての動力装置でもありますが、実はセンサー・感覚器でもあるのです。

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病気と症状と治療のタイミング

慢性前立腺炎、慢性膀胱炎、間質性膀胱炎、過活動膀胱、前立腺肥大症、神経因性膀胱、PSA高値などの患者さんが全国からお越しになります。
その理由は、地元の病院やクリニックでは治らないからです。
治らない原因の第一は、まずは病気の本質を治療しないからです。例えば、慢性前立腺炎や慢性膀胱炎は、「炎」という取りあえずの病名に合わせた治療しかしないからです。また、間質性膀胱炎や過活動膀胱は原因不明の病気ですから、頻尿や痛みに対する治療しかしないからです。更に、前立腺肥大症は、頻尿の出現理由を考えないで治療するからです。
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病気の本質は、「排尿障害」です。
排尿障害→膀胱三角部の過敏→脊髄神経回路の構築→症状(頻尿・尿意切迫感・残尿感・痛み・シビレ・かゆみ)の発現です。それぞれの病気の仕組みは、下記の通りです。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
★慢性前立腺炎=排尿障害➕膀胱三角部の過敏➕脊髄神経回路の完成
★慢性膀胱炎=排尿障害➕膀胱三角部の過敏➕脊髄神経回路の完成
★間質性膀胱炎=排尿障害➕膀胱三角部の過敏➕脊髄神経回路の完成
★過活動膀胱=排尿障害➕膀胱三角部の過敏➕脊髄神経回路の完成
★前立腺肥大症=排尿障害➕膀胱三角部の過敏➕前立腺の肥大➕脊髄神経回路の完成
★神経因性膀胱=排尿障害➕膀胱出口の硬化→→→排尿障害の強化
★PSA高値=排尿障害±炎症±前立腺肥大症±先天性±前立腺ガン
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ご覧の通り、すべての病気に排尿障害が絡んでいます。その排尿障害の程度はピンからキリまであります。なかには、患者さん自身が自覚しない程度、あるいは医師が評価しない程度の排尿障害のため、まったく治療しないので中々治らないのです。

病気はイラストのように4つの時期に分けて判断します。
★1期は排尿障害があるにもかかわらず症状の出ない状態です。いわゆる「未病」の状態です。
★2期は、脊髄神経回路が完成して症状がで始めた状態です。
★3期は、排尿障害が治療されないために、脊髄神経回路がバージョンアップしてしまい、症状が強く出ている状態です。
★4期は、脊髄神経回路が排尿障害から独立・独り立ちして、神経回路がますます複雑になり、完成度が極めて高くなった状態です。排尿障害を治療しても治リません。信じられないほどの強い症状になります。頻尿が毎日80回以上、突然あるいは持続性のナイフで刺されたような痛み、血が出るくらい何遍掻いてもカユミが収まらない状態です。

治療する医師は、この状態を十分に把握して治療しなければなりません。
★排尿障害に対してはアルファブロッカー(ユリーフ、ハルナール、フリバス、エブランチル)です。
★膀胱三角部の過敏さに対しては、ベタニス、ベシケア、ウリトス、ステープラ、アボルブ、タガメット、サプリメント(イソフラボン、ノコギリヤシ、カボチャの種、正露丸)です。
★脊髄神経回路に対しては、トラムセット、リリカ、カロナール、仙骨神経ブロック、サプリメント(グリシン)です。

世間では、患者さんを十分に調べもせずに、病名だけで治療する輩の何と多いことか!親身になって、患者さんの言葉を真摯に受け止めて治療しようと努力する医師が、もっと増えて欲しいと思います。


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前立腺の基礎医学♯4(臨床医学的観点)

【臨床学・泌尿器科学的観点】
前立腺の病気で問題になるのが、次のものです。
❶急性前立腺炎
❷慢性前立腺炎
❸膀胱頚部硬化症
❹前立腺肥大症
❺前立腺ガン
❻男子不妊症
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❶急性前立腺炎
突然の細菌感染と誤診されることが多いのが現実です。急性前立腺炎になる患者さんには、必ず排尿障害が隠れています。一般的には、膀胱頚部硬化症です。排尿障害があると、排尿の度ごとに前立腺は圧迫と振動を繰り返し受けます。その物理的刺激により前立腺内の白血球は過剰に反応し易くなります。そのため、前立腺内の常在菌に過剰反応すると、急性前立腺炎になるのです。

❷慢性前立腺炎
急性前立腺炎を繰り返す患者さんに、慢性前立腺炎症状が発症することが多いのが現実です。理由は、急性前立腺炎と同じで、膀胱頚部硬化症による排尿障害が慢性的に繰り返し繰り返し前立腺を刺激する結果です。この慢性的刺激により、前立腺が神経的に過敏になり、慢性前立腺炎症状になるのです。ですから、抗生剤や抗菌剤を服用しても本質の治療にはなりません。興奮した白血球や常在菌を抑えるだけです。

Img_0904❸膀胱頚部硬化症
生まれつき、膀胱頚部が排尿時に漏斗状に開き難い人が、一定の確率で存在します。そのため、膀胱出口が十分に開きません。膀胱出口が排尿の度ごとに、膀胱出口が振動します。結果、膀胱出口が硬くなり膀胱頚部硬化症になり、前立腺に振動負荷がかかり、前立腺の機能低下や前立腺の膀胱内への突出を促すため、なお一層排尿障害が強くなります。前立腺ガンの腫瘍マーカーであるPSA値が高くなります。この写真は、慢性前立腺炎と診断された患者さんのエコー所見です。膀胱三角部の突出=膀胱の魚の目が確認出来ます。

Img_0902❹前立腺肥大症
食生活の向上により、前立腺肥大症の要素である平滑筋が大量に造られ易くなります。
また、先の膀胱頚部硬化症による物理的振動エネルギーが刺激になって、前立腺肥大症を促進します。ですから、前立腺肥大症の患者さんの多くが、もともと膀胱頚部硬化症があり、排尿障害症状の主な原因が、前立腺肥大症の大きさではなく、膀胱頚部硬化症なのです。その証拠に、前立腺肥大症の症状の強い患者さんに膀胱出口の緊張を和らげるαブロッカー(ユリーフ・ハルナール・フリバス)服用するだけで、前立腺の大きさを無視しても、症状が軽減することが多いのです。前立腺肥大症の大きさが、正常の2倍であれば、PSA値も2倍になります。

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❺前立腺ガン
発生学で解説したように、前立腺外腺はいくつもの刺激を受けます。
⑴胎児期に性別分化のための一時的なテストステロンの刺激
⑵出産直後の大量のテストステロンの刺激
⑶思春期の大量のテストステロンの刺激
⑷更年期以降のテストステロンの減少の刺激
⑸中高年以降の前立腺肥大症による圧迫と排尿障害の排尿時の振動刺激
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少なくても5つの刺激要素で、前立腺の外腺は一生かけて5回の刺激を受けるのです。これほど物理的・ホルモン的刺激を受ける分泌腺が他にあるでしょうか?その結果、癌細胞が発生しても不思議ではないでしょう。この写真は、PSA値が高く来院された患者さんのエコー所見です。小さな前立腺ガン(赤い矢印)が外腺に認められます。

❻男子不妊症
生理学で解説したように、前立腺の分泌する前立腺液は、精子の活動にとって必須の要素です。排尿障害による前立腺の物理的疲労は、分泌腺としての前立腺液が質・量ともに十分に分泌されなくなります。その結果、男子不妊症になるのです。したがって、男子不妊症の患者さんに遭遇いたら、排尿障害を見つけ出して治療して、前立腺の負担を解除し、前立腺液が正常に快復させるのです。
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私の考え方は、とても偏向的です。何にが何でも膀胱頚部硬化症が原因だという考え方です。私は完璧な人間ではありませんから、誤診した時はご免なさい。

【参考文献】
男の更年期 日東書院

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前立腺の基礎医学♯3(生理学的観点)

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前立腺は、4つの役目を担っています。
❶射精器としての前立腺。前立腺を収縮して、その収縮力で精液を体外に噴出させる。射精の押し出す力である。
❷分泌腺としての前立腺。前立腺液を分泌して、子孫繁栄に必要な精子の活動を援助する。
❸ミキサーとしての前立腺。精嚢腺液と前立腺液と精子をミックスする場となる。
❹整流装置としての前立腺。
❺ホルモン反応臓器として前立腺
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❸前立腺液の成分は次の通りです。
⑴弱酸性
精嚢腺液は、強アルカリ性pH7.5で、精子の活動を抑える作用があります。女性の膣内には殺菌作用のある乳酸菌の出す強酸性の乳酸に負けないように、弱酸性pH6.5の前立腺液と強アルカリの精嚢腺液が、適度に混ざって、弱アルカリ性の精液になるので、精子が元気に活動できるのです。
⑵アデノシン三リン酸ATP
精子はエネルギーの蓄えがありません。ミトコンドリアは持っているので、周囲の環境からミトコンドリアにエネルギーの補給の必要があります。そのエネルギーがATPなのです。
⑶PSA
精液の粘り気をサラサラにするのが、PSAというタンパク分解酵素です。精液をサラサラにすることで、精子の活動範囲が広くなって、卵子との遭遇する可能性が高くなる=妊娠し易くなるのです。このPSAが前立腺から漏れ出て血液中の濃度が高くなる事を前立腺ガンの目安=腫瘍マーカーになるのです。
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Img_0899❹整流装置としての前立腺
4センチという短く真っ直ぐな女性の尿道に比べ、男性の場合場合は約20センチと長い(膀胱出口から尿道出口)上に、少なくとも二カ所屈曲しています。前立腺から直ぐ出た所(尿道球部)で約90度曲がり、陰茎の根元(振子部)でまた90度曲がります。そのため、尿道が単なるホースであると、各曲がりの個所で流れの位相差が生じます。その結果、尿道出口から尿が出るときには尿が散ってしまいます。

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乱流・渦流を防止するために、スムーズな流れを作るための施しが、前立腺と尿道に工夫されています。
このイラストは、ある整流装置の説明図です。
何もしない管の中を流れる流体は、管の近辺に乱流・渦流が生じます。ちょうど、電車のホームに立っていて、急行や特急列車がそばを通過すると、電車に引き込まれるような突風が吹きます。あの突風が乱流です。乱流にしないためには、このイラストのような整流装置が必要になります。

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①整流装置としての精丘
前立腺の尿道括約筋手前に精丘(精阜せいふ)と呼ばれる突起が存在します。
ここを尿が流れると、先程の整流装置のように内側・中心部へ向かう渦が出来ます。すると、流れに速い部分と遅い部分になり、層流が出来ます。層流は整流になり、尿道近辺に渦が出来なくなります。
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この写真は、手術後の前立腺内部の内視鏡所見がです。丸い部分が精丘です。
②尿道全体が整流装置
排尿中は、膀胱出口の膀胱頚部や尿道全体がある一定の間隔で直径が変化・拍動します。直径が拍動することで渦流・乱流が出来なくなります。動脈が拍動するのは、乱流を防止して血栓を作らないためです。
前立腺肥大症になると拍動が起きないので、オシッコが散ったり割れたりするのです。
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Testgraf
❺ホルモン反応臓器としての前立腺
男性は生涯をかけて、このぐラグのように男性ホルモン=テストステロンの変化のピークが4回あります。
①胎児期、②出産直後、③思春期、④更年期です。
①胎児期:
第6週の胎児期に、性別を分けるためにテストステロンが予想以上に大量に分泌されます。その結果、前立腺芽が成長して前立腺になるのです。その際に、中心領域と辺縁領域が形成されます。しかし、前立腺肥大症の原因組織である移行領域は、いつ出来るのか不明です。
②出産直後:
出産後数ヶ月で再びテストステロンがピークを迎えます。おそらく、この時期に移行領域が発芽するのでしょう。そして、男としての骨格や筋肉の作られるキッカケにもなるのでしょう。
③思春期:
皆さんもご存知のように、十代後半から男性ホルモン=テストステロンが盛んに分泌され二十代でピークになります。この時期に男の子は男らしくなるのです。そしてある日、精液が出せるようになります。つまり、前立腺が完成するのです。恐らく、この時期に移行領域が成長発達し、エコー所見でも確認できる程の大きさボリュームになるのです。
④更年期:
それまで高かったテストステロン濃度も、45歳頃から分泌が徐々に低下していきます。50代で60%、60代で50%、70代で40%です。その分泌変化が刺激になり、前立腺の移行領域が前立腺肥大症に変化して行くのです。
⑤圧力も刺激?
思春期③を過ぎてから前立腺の移行領域は成長して体積が増えます。前立腺は、すでに存在する辺縁領域の外腺が、移行領域の内腺と硬〜い線維性の前立腺被膜の間に挟まれて圧迫されます。さらに更年期④を過ぎると内腺はますます大きくなり結果、前立腺肥大症になります。外腺はなお一層圧迫されます。ホルモン変化の刺激を4回、圧力刺激を2回もさらされて、外腺はトコトン刺激を受けます。この刺激が前立腺ガンを誕生させるキッカケになるのかも知れません。

【参考文献】
解剖学アトラス
男の更年期 日東書院

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前立腺の基礎医学♯2(解剖学的観点)

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【解剖学的観点】
今まで私たちが学んだ前立腺の知識は、構造的に内腺と外腺に分類されていました。前立腺肥大症は内腺から、前立腺癌は外腺から発生すると信じられています。

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しかし、新しい知識として、前立腺は移行領域、中心領域、辺縁領域に分けることが出来ます。
既存の知識である内腺は、移行領域と中心領域が融合して作られています。外腺は尿道括約筋付近から発生し外側に発育する辺縁領域です。移行領域は前立腺の前面から、中心領域は膀胱頚部から誕生するのです。尿道に沿って発育し、外腺の内側に存在します。つまり、尿道の周囲であるので、排尿の善し悪しに直接関わることになります。前立腺は尿道を挟んで、後側の上下からと前側の真ん中から発生するのです。
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内腺は、思春期の男性ホルモンであるテストステロンの分泌が盛んな思春期以降に更に発育し、更年期の男性ホルモン分泌が低下するタイミングで、その変化が刺激になって前立腺肥大症に変化するのは、納得できる反応です。しかし、移行領域と中心領域由来の内腺からの前立腺肥大症は、尿道に直結しているので、排尿障害に当然関与します。また、内腺部分が大きく発育しても、以前から存在する外腺に周囲を阻まれますから、抵抗のない膀胱側に発育するので、それが膀胱突出型の前立腺肥大症(中葉肥大型)になるのです。このタイプは、極めて排尿機能が低下します。

【参考文献】
解剖学アトラス
An Atlas of Prostatic Diseases 3rd edition


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