カテゴリー「慢性前立腺炎の考え方・生活習慣」の記事

★ 慢性前立腺炎の要約 #2 ★

このブログの中で、どんなに詳細に解説しても、「私は慢性前立腺炎ではないのですか?細菌はいないのでしょうか?抗生剤治療をしなくてもよいのでしょうか?それとも本当に膀胱頚部硬化症なのですか?」と、再診の患者さんに何度も質問されます。

私から言わせていただくと、難治性の「慢性前立腺炎」は病名ではなく、「症状名」あるいは「症候群名」と思っていただいて結構です。
本当の細菌性の慢性前立腺炎は抗生剤・抗菌剤で容易に治ります。治らないのは、症状が細菌性慢性前立腺炎と同じであっても、細菌性の慢性前立腺炎ではないということです。慢性前立腺炎と同じ症状で細菌が原因でない場合には、全く違う病気だと考えてよいでしょう。検査に引っ掛からない細菌が前立腺に隠れていて、非細菌性の慢性前立腺炎になるのだとは考えずに、全く異なる原因が慢性前立腺炎に似た症状を発現していると考えた方がよいでしょう。バイオフィルムなどと呼ばれるカエルの卵のゼラチン物質のような存在をわざわざ持ち出す必要もないでしょう。

私は、非細菌性の慢性前立腺炎を次のような病態生理で成り立つものだと考えています。
【第1のステップ】
10代後半からの成長期の発育不良・発育不全あるいは脊椎麻酔の後遺症で膀胱頚部が障害を受け、機能性の排尿障害になる。

【第1.1のステップ】
機能性排尿障害=神経因性膀胱と同じ病態と考えられるので、この病態自体をどんな手段を講じても完治させることは原則としてできない。

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急性前立腺炎から慢性前立腺炎という誤解

年間400人近い慢性前立腺炎の新患の患者さんを診察しますが、急性前立腺炎から慢性前立腺炎に移行したという患者さんにほとんど遭遇しません。
急性前立腺炎から慢性前立腺炎に移行したという患者さんは、存在しても1%足らずでしょう。初めから慢性前立腺炎症状の方がほとんどです。恐らく「急性」と「慢性」という言葉のイメージから「急性→慢性」という根拠のない病態生理が常識となったのでしょう。誤解というものは恐ろしいもので、急性前立腺炎は細菌性ですから、慢性前立腺炎は「急性→慢性」という荒唐無稽の根拠から、細菌性でなければならなくなったのです。
慢性前立腺炎で悩んでおられる読者の中で、発熱があって、血尿があって、尿の出しぶりがあって、残尿感が強く、尿の最後の強い排尿痛がある急性前立腺炎になった方がどのくらいいるでしょうか。そのような記憶のある患者さんはほとんどいないでしょう。中には気がつかないうちに急性前立腺炎にかかったと言われる人もいますが、症状のない急性前立腺炎はありません。

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★ 慢性前立腺炎の要約 ★

このブログをお読みになった難治性の慢性前立腺炎の方から、地元の泌尿器科医を紹介して欲しいという内容のメールが頻繁に届きます。
このブログに掲載されている慢性前立腺炎に関する考え方や治療法は、私独自のもので一般的ではありません。ですから鹿児島県鹿屋市の倉内先生以外に、ご紹介できる医師を存じません。
このブログの内容は210テーマ以上になりますから、全てを印刷(A4で500ページ以上の量)して主治医に手渡しても要領を得ませんし、現実的ではありません。
そこで、私の考え方や治療法を以下にまとめます。これを印刷して主治医にご相談下さい。質問があれば、医師からの電話での直接の質問もお受けします。
(院長直通:03-3771-8034 ただし午前9時~12時まで)

【考え方】
【1】何らかの原因で、膀胱出口や膀胱頚部の機能が不完全で、排尿時に膀胱出口が十分に開放しない。
【2】膀胱出口の周囲は粘膜・筋肉で構成され、ある程度の柔軟性がある。膀胱出口が十分に開放しないため、排尿時に下部尿路(膀胱三角部・膀胱出口・膀胱頚部)が振動する。その振動は自覚できない。
【3】その振動が慢性化し繰返し起きると、生体の防御・適応反応で、膀胱出口の線維化あるいは膀胱括約筋の過形成を促され膀胱出口が硬くなる。広い意味での「膀胱頚部硬化症」である。狭義の膀胱頚部硬化症は内視鏡手術後の線維化を意味する。
【4】硬くなったため、膀胱出口は柔軟性が欠如し、排尿時の下部尿路はさらに一層激しく振動することになる。
【5】この激しい振動は、刺激エネルギーとして下部尿路全体を絶えず刺激する。
【6】膀胱刺激知覚症状(特に膀胱三角部において)として、残尿感・頻尿症状がある。
【7】下部尿路の神経支配の脊髄を絶えず刺激することで、脊髄内の神経ネットワークが発達し、他の知覚経路や自律神経経路と接続するために、関連痛・自律神経症状が出現する。
【8】下部尿路の振動エネルギーによる器械的刺激により、前立腺は物理的炎症を起こす。細菌感染やアレルギーの炎症ではなく「物理的炎症」である。前立腺マッサージによる前立腺液検査で白血球・常在菌が認められても「物理的炎症」を否定できる根拠にはならない。
【9】前立腺内の白血球も常在菌も、物理的炎症の補助的存在であって、慢性前立腺炎の本質ではない。抗生剤・抗菌剤投与により白血球・常在菌が減少しても慢性前立腺炎の治癒には結びつかない。また、抗生剤・抗菌剤が効果があったとしても、補助的要素を加減しただけであって、本質の解決にはならない。
【10】白血球・常在菌の証明で「細菌性慢性前立腺炎」、白血球のみの証明で「非細菌性慢性前立腺炎」、白血球も常在菌も証明されない場合に「前立腺症」「慢性前立腺炎様症候群」、痛み症状が強い場合を「前立腺痛症」あるいは「慢性骨盤疼痛症候群」、抗うつ剤で自律神経症状が緩和されるので「うつ病」「陰部神経症」「自律神経失調症」と診断が篩い分けられているに過ぎない。また原因が不明なので頻尿・尿失禁があると「過活動膀胱」、さらに痛みが加わると「間質性膀胱炎」と診断されてしまう。真の「細菌性慢性前立腺炎」は存在するかも知れないが、あってもホンの一握りの患者であろう。医師の短絡的な病気定義分類という呪縛の犠牲者が多く出ないことを祈るしかない。

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膀胱括約筋過形成症候群 Bladder-Sphincter Hyperplasia Syndrome

慢性前立腺炎や間質性膀胱炎の患者さんの超音波3D画像をいくつも検討していくうちに、「膀胱括約筋過形成症候群 Bladder-Sphincter Hyperplasia Syndrome」という考え方が私の頭を占拠しています。もちろん私の造語です。常識ではありませんから、そのおつもりで・・・。
この考え方は、形態学的な観点からの名称ですが、機能面から見れば、前立腺肥大症も含めて「膀胱括約筋過緊張症候群 Bladder-Sphincter Supertension Syndrome」という名称が適切なのかも知れません。これもまた私の造語です。

慢性前立腺炎・膀胱頚部硬化症・膀胱出口閉塞症・膀胱頚部機能低下症・膀胱排尿筋内尿道括約筋協調不全・神経因性膀胱・前立腺肥大症・間質性膀胱炎・過活動膀胱・心因性頻尿・慢性骨盤内疼痛症候群・前立腺痛症・膀胱疼痛症など、これら全ての疾患が、自力・他力にかかわらず、膀胱括約筋の機能亢進に集約されます。

Bladdsphinc_2前立腺肥大症の場合は、腺腫が大きく膀胱側に突出するので膀胱括約筋はドーナツ状に周囲に追いやられ塊りとなって、常に前立腺を圧迫するようになります。図の右のように膀胱括約筋は、肥厚した堤防のようです。見かけ上膀胱括約筋の過形成ですが、筋肉が寄せ集まり団子状態になっただけで、本当の過形成ではありません。この状態は他力的な膀胱括約筋の機能亢進になります。
すると、前立腺肥大症がどんなに大きくても、膀胱内に突出しなければ(図の左)、膀胱括約筋は正常に働くので排尿障害にはならないのです。図では、左の前立腺肥大症の方が明らかに大きい前立腺ですが、小さい前立腺の方が排尿障害が強く出てきます。ここに前立腺肥大症の大きさだけでは排尿障害を評価できない根拠があるのです。

Wnlmorifice正常な男性の3D画像です。
膀胱括約筋が膀胱出口ギリギリまでありますから、正円の穴として膀胱出口が確認できます。
前立腺肥大症がたとえ大きくても、膀胱内に突出しなければ、上図の左の場合は、この正常の3D画像と同じように見えます。膀胱括約筋に開くだけの余裕があるのです。

Bph3d11624m5037ccpsa49これは前立腺肥大症の3D画像です。中央の大きなくぼみには前立腺が存在します。膀胱括約筋を明確に描写すると、前立腺組織はエコー画像上透明になってしまうので、このような映像になります。
中央のくぼみが大きければ大きいほど、前立腺が膀胱内に突出し、膀胱括約筋は周囲に追いやられドーナツ状になります。ドーナツ状に塊りになった膀胱括約筋は、これ以上緩みようがないので、常に膀胱出口を圧迫する形になり排尿障害になります。

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教科書の常識

インターネットでネットサーフィンしていると、たまに掲示板を見ます。
慢性前立腺炎の掲示板の中に、私の慢性前立腺炎の考え方や治療法が話題になることがあります。
泌尿器科の医師と思われる掲示板の主催者が、私の考え方や治療法に対して否定的であることが容易に分かります。

この医師に限らず、日本の泌尿器科医のほとんどが私の考えに否定的でしょう。その根拠に教科書に掲載されていないからという理由がありました。
教科書とは、広辞苑によると、「学習用教材として使用される図書」と定義されています。つまり、現在常識と思われる必要最低限の知識を得るための「学習用」の教材ということです。すなわちその分野で素人同然の者が学習するための教材です。ここには確定したことしか記述してはいけないことになります。信憑性が疑わしい新しい知識は当然書かれていません。

私は、泌尿器科医の医師になって29年、来年で満30年になります。この私が教科書通りの診断や治療を踏襲せずに、オリジナルのことを考えたとしてもとやかくいわれる筋合いではないでしょう。

さて、教科書に準じて行なう検査や診断及び治療は、世界共通の検査や診断及び治療になります。・・・

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排尿のメカニズム 膀胱輪状筋の真実

Bph3d11624m5037ccpsa49右の写真のように、前立腺肥大症の場合は、輪状筋がドーナツ状に確認できます。
健常者の膀胱底部は輪状筋の形がブーメラン状に観察でき、それが正常だと思っていました。
しかし、前立腺肥大症になると膀胱輪状筋がなぜ突然ドーナツ型の形状になるのかを疑問に感じていました。
Wnlmorificeそこでいろいろ考えた挙句、膀胱三角部と輪状筋の傾斜角度が異なるため、輪状筋の形は、その名の通り本当はドーナツ状の形状で、通常は膀胱三角部のために3D4D画像ではブーメラン状に観察されるのではないかと考えるようになりました。

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排尿のメカニズム 膀胱三角部の重要性#2

膀胱三角部の重要性について、前回はその動きの詳細について解説しました。
ただ、この説明だけでは、慢性前立腺炎や間質性膀胱炎の症状を説明する上では、その根拠がまだ希薄です。
今回は#2として、膀胱三角部の存在価値の本質について考察しようと思います。もちろん、私の空想的な仮説ですから、程ほどに信じて下さい。
Trgncycle前回の膀胱三角部の動きをまとめて上図のようにイラストにしました。

【膀胱三角部の横軸伸展】
蓄尿されると、膀胱の伸展と共に排尿筋(輪状筋)は横に伸展します。膀胱三角部も三角の底辺と平行に横軸方向に伸展します。この伸展刺激が脳中枢(あるいは脊髄中枢)に伝わると「尿意」になります。ここでは「尿意信号」と呼びましょう。

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ドラマ

慢性前立腺炎や間質性膀胱炎のさまざまなテーマの中で、いかにももっともらしく、客観的にさらに論理的に私は解説していますが、それは「私なり」の思考スタイルです。ある意味、「独りよがり」の考え方です。私の考え方は一般的でも、正しいとも限りません。私が医師だからといっても、くれぐれも注意して下さい。このブログは私の考え方の情報発信の場であり、私の世界観を皆さんにご紹介しているだけです。

医学は科学だから「とても客観的で真実は一つだ」と、あなたは思われているでしょう?その中に従事している医師を含めた医療従事者も真実のみに身も心も捧げているとお思いでしょう?

ところが常に真実は一つではありません。ん~・・・少し言い過ぎかも知れません。真実は一つかも知れませんが、多面性があり、さまざまな顔を持っているかも知れません。科学はその一つ一つを調べては確認し、再現性を確証しては、一つの真実・命題を見つけます。多面性がいくつ存在するか分からない場合は、延々と調べては確証しなければならず、ある意味真実の正確な全体像を見つけ出すのは困難なことにもなります。

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排尿のメカニズム 膀胱三角部の重要性

【3D4D画像による臨床的事実】
Wnlmorifice膀胱頚部の3D画像を観察すると、今まで私が知っていた解剖学的景色とまったく違うことに、戸惑いました。
なぜなら、膀胱三角部がもっと厚いものだと思っていたからです。ところが、右の写真の如く、膀胱三角部と思われる部分は、周囲の膀胱平滑筋に比較して明らかに薄いのです。

【想像的解剖図】
Bnclose右の図は、上の写真をイラストにしたものです。上の写真と比較して下さい。理解しやすくなります。
臨床医は、膀胱底部の輪状筋(膀胱平滑筋・排尿筋)はドーナツ状に輪になっているものと思っていました。「輪状」という名称からそのようにしか理解できません。ところが実際は図のようにドーナツではなく、ブーメラン状なのです。ブーメランの両端を輪状筋脚(排尿筋脚)と記載していますが、解説の都合上私が命名した造語です。
さて、ブーメランの内角の部分に膀胱三角部がテント状に張っています。すなわち膀胱三角部はテント状に張り詰めた存在であって、生理学や解剖学専門書に記載されているような、積極的に収縮する排尿筋ではないのです。

Bnclose2この部分を縦断面にしたのが、右のイラストです。
膀胱三角部は赤く着色しています。
輪状筋と輪状筋脚はブーメラン状につながっています。膀胱三角部は上図のイラストでは表現できていませんが、実は膀胱・膀胱頚部から尿道内までの構造になっています。
次のCampbell-Walsh Urologyに掲載されているイラストで説明します。・・・

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因果応報 #2

因果応報の続きで書いたものを長文になったので、「因果応報#2」として別テーマにしました。

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因果応報の模式図を利用して、具体的に慢性前立腺炎について考えたのが、上の模式図です。初めの因果応報の模式図に比較してさらに複雑になります。
赤い破線は見かけ上の原因・結果の流れです。白い実線は真実の原因・結果の流れです。青い矢印は、事実関係から推理した流れです。
赤い四角マスは重要ポイントで、緑の四角マスは発生学的・解剖学的・生理学的事実です。

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因果応報

因果応報(いんがおうほう)とは、ご存知のように仏教用語です。
端的に言えば、原因があるからこそ必然的に結果が存在するということです。逆に言えば、この世に原因のない結果は存在しないとも云えます。原因を「気のせい」とする医師の何と多いことか!
私がこうして医師として生きていけるのも、私が医師になろうと思い、その道を進んだからこそ、医師としての私が存在するのです。
私が糖尿病であるのも、父の糖尿病の遺伝子が脈々と私に受継がれたからこそ、インシュリンを打っている私が存在するのです。
一見原因のない唐突な事件や事故であっても、必ず原因がある。100歩譲って現世で原因がなければ、前世に原因があったと考えるのです。私は特定の宗教を信じている訳ではありませんから、お話の内容は右から左に聞き流して下さい。

さて、慢性前立腺炎や間質性膀胱炎の表向きの原因が、細菌・ウィルス・アレルギーで、その結果が慢性前立腺炎症状・間質性膀胱炎症状になるというのが、現在の考え方でしょう。

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未病

慢性前立腺炎や間質性膀胱炎の原因が明確にできない理由があります。
それは医師も人間だからです。人間としての常識的な思考の呪縛から逃れられないからです。
人間の本能的判断は、通常、二者択一です。例えると、白と黒、右と左、善と悪、陰と陽、病気と健康、暑いと寒い、空と海、左翼よ右翼などなどです。
ところがお分かりのように、世の中はそんなに単純ではありません。本能ではなく理性的に熟慮すれば、白・灰色・黒、右・正面・左、善・偽善・悪、陰・中庸・陽、病気・未病・病気、暑・暖・寒、空・山・海、左翼・ノンポリ・右翼などなど、いくらでも細分化することは可能です。

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膀胱平滑筋の謎と秘密

前回、平滑筋というテーマでお話をしましたが、テーマが大きく内容が多方面にわたり専門的だったりして分かりにくかったかも知れません。
そこで、今回は膀胱平滑筋にしぼってお話しましょう。慢性前立腺炎の病態に、前立腺ではなく膀胱平滑筋に本質が隠れていると私は思っていますから、慢性前立腺炎の方は「何だぁ・・・前立腺じゃないのか・・・」などと思わないで下さい。
私は泌尿器科医ですから、平滑筋の専門家からすれば素人同然です。プロの切り口ではない素人の切り口で膀胱平滑筋を見ていきたいと思います。詳細に知りたい方は、日本平滑筋学会で調べて下さい。
平滑筋について分かりやすく解説のある専門書Cellular Aspects of Smooth Muscle Function (CAMBRIDGE)から、写真をお借りして説明します。

Cellaspsmfuncfig2p4【正常の膀胱平滑筋】
前回も使用した、ネズミの膀胱平滑筋の正常な電子顕微鏡組織像です。
F:筋線維芽細胞、Nとn:神経線維です。他はすべて膀胱平滑筋です。
これからの説明で、常に比較していただきたい正常組織像です。
細胞は瞳(ヒトミ)型あるいは紡錘(ぼうすい)型でほぼ均一です。細胞の一個一個に核が存在します。細胞の中に複数の黒っぽい●を見つけることができます。これが有名なミトコンドリアです。エネルギーを産生する細胞の中のシステムです。ミトコンドリアは母親のミトコンドリアのみが遺伝します。父親のミトコンドリアは遺伝しません。
組織写真は横断面なので、紡錘型の断面を観察していますから、紡錘型には見えません。大きく見える細胞は紡錘型の中央の断面で核が見えます。小さく見える細胞は紡錘型の端の部分ですから、丸みをおびて核が見えません。下のイラスト(Campbell-Walsh Urologyから)を参考に立体的に想像して下さい。

Smimagej組織標本のスライスの仕方で、すべての細胞が同じ形に見えませんし、細胞のすべてに核が入っているようにも見えませんが、本当はそうなのです。また細胞の辺縁もとても滑らかです。
細胞と細胞の間(細胞間隙さいぼうかんげき)も狭く、細胞間の情報が伝達しやすくなっています。
正常の組織像を見て、くどくどと解説しているのは、異常所見があったときに理解しやすいからです。組織が正常の構造を保つためには、整った環境でなければならないということが、後の解説で理解できると思います。

Bladderhyperrat【膀胱平滑筋の病的変化】
この図は、上の電子顕微鏡の同じ種類のネズミに実験的に排尿障害を作り、その後検査した所見です。
膀胱平滑筋の形が大きくなり、細胞内の核も腫大し染色も均一になっています。細胞質に空胞構造や切れ込み(陥入)が散見できす。平滑筋細胞の間(細胞間質)に、今までなかった物質(コラーゲン線維?)が出現しています。
排尿障害があると、このように膀胱平滑筋は変化するのです。しかし、臨床では排尿障害があっても、膀胱平滑筋は疲れているだけ程度にしか思われていないのです。医師の頭の中の想像と現実の間には、このようにギャップがあるのです。このギャップから生じる患者さんの訴えは、「気のせい」と片付けられることが多いのでしょう。

【考え方 その1】
細胞と核の形が正常時と異なるということは、生命現象にとってはとても大変なことです。
この状態を理解する方便として、膀胱平滑筋細胞を大きな工場として説明すると理解しやすくなります。
膀胱平滑筋全体が大きなオートメーション工場だと仮定すると、核は工場の中枢にあるコントロールセンターです。核が大きくなっているということは、コントロールセンターがフル稼働していているということです。コントロールセンターのコンピューターがフル稼働しているかどうかは、現実の世界では外見上は分かりません。しかし、生命活動の世界では核が大きくなっている、あるいは染色が正常ではないというのは、核が正常の状態ではないということが外見的に判断できるのです。
また、細胞が腫大している=工場がフル生産していることになります。この状態は一時的なら問題ありませんが、長期の場合には、工場の過剰生産あるいは工場内機械がオーバーヒートを起こすでしょう。従業員は過労のために次々と倒れるかも知れません。工場内の機械はオーバーヒートで発火し火事になるかも知れません。工場内には工業製品があふれ、足の踏み場もありません。工業製品の搬送もできません。
資材を調達する資金は枯渇し、工業製品の運搬路も崩壊し、この工場を持つ会社は倒産寸前です。
一枚の組織写真からここまで推理できると、病理組織学は奥行きが出てとても面白くなります。

組織学・病理学は形態学的検査ですが、上記のように、その背景にある生理学・機能学を想像しなければ生きた学問や検査にはなりません。しかし、最近の診断医は目の前の形態的異常のみに目を奪われ、その奥に潜む病態生理を見逃すことがあります。
話がずい分と横道にそれてしまいました。
この組織像から、表向きは上記のように説明がつきます。しかし、世の中は一方向からの観点からだけでは、誤った判断をすることがあります。チョッと視点を変えてみましょう。

Smimagej_2【考え方 その2】
イラストの膀胱平滑筋が収縮した絵を再度ご覧下さい。この収縮した膀胱平滑筋を中央の位置で切断すると、どのように観察できるでしょうか?
そうです、収縮していない膀胱平滑筋に比べて、細胞も核も大きく観察できるのです。つまり上の写真の【膀胱平滑筋の病的変化】は、膀胱平滑筋がすべて収縮している組織の断面図とも解釈できるのです。
核も細胞質も腫大していると判断することは、膀胱平滑筋細胞が静止状態でバカになってしまったという印象になりますが、収縮しているとなるとダイナミックな活動時の平衡状態のような印象で、全く正反対の印象です。

このネズミの膀胱組織を採取する状況を考えると、この異常さが容易に理解できます。排尿障害を作ったネズミをまず屠殺(とさつ)します。屠殺した時点ですべての筋肉、骨格筋も内臓筋も弛緩します。もちろん膀胱平滑筋もです。ところが、その後採取した膀胱平滑筋が収縮したままの形態で観察されているとすれば・・・異常でしょう?
つまりは、死んでもなお、筋肉が弛緩しない膠着状態の生きた膀胱平滑筋であったという事実に驚くばかりです。膀胱平滑筋の仕事は収縮することですから、死んでもなお収縮していると考えると、前記の【考え方 その1】の工場がフル稼働で破滅寸前という考え方にも共通するものがあります。

次に述べる専門書の実験結果は、これまでの考えを強調するものです。

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平滑筋の謎と秘密

膀胱や前立腺に存在する平滑筋は、解明されているようで実は完全には分かっていません。
私の本当の治療相手は、前立腺でもなく膀胱でもなく、実はこの平滑筋だと思っています。
この平滑筋について、少し詳細に述べようと思います。(私の空想・仮説も時々混じっていますから、だまされないように客観的にご自分の心の目でお読み下さい。)

1【α-ブロッカーとαレセプター】
私がよく前立腺肥大症や慢性前立腺炎にα-ブロッカーを処方します。α-ブロッカーは何に作用するかご存知ですか?
前立腺平滑筋や膀胱平滑筋のαレセプターに作用するのです。
αレセプターは、交感神経から放出されるノルエピネフリンに反応して、平滑筋を収縮させます。α-ブロッカーはこのノルエピネフリンとαレセプターの間に邪魔に入り、その作用を弱め、平滑筋の収縮を抑制し弛緩させるのです。
平滑筋は、心臓を除くすべての内臓や血管に分布します。その部位によってレセプターの種類が異なります。
血管はα1b、前立腺はα1aとα1d、膀胱はα1dレセプターにすみわけができます。(図ではα1dは?になっていますが・・・)

Mcomparison【筋肉の種類】
平滑筋はどのような特徴があるのでしょうか?
この図は、平滑筋・心筋・横紋筋の特徴を示した表です。平滑筋は内臓筋で、横紋筋は骨格筋です。心筋は筋肉の種類からすると横紋筋ですが、働きは力強い内臓筋の作用を持っています。要するに心筋=(横紋筋+平滑筋)÷2の性格を持っています。
横紋筋の収縮は神経に完全に依存しています。そして緊張度は筋紡錘という特別な装置でコントロールされています。
心筋は、多数の心筋細胞がペースメーカーの働きで全体として一つのまとまった動きをします。しかしペースメーカーの働きが弱いと、それぞれの心筋が勝手に収縮します。それが不整脈です。心筋は隣り合う筋肉同士の電気的情報のみでコントロールされていて、緊張度をはかる感覚器(筋紡錘)はありません。
平滑筋は、神経に完全にコントロールされたグループ(血管など)と、筋肉の電気的結合によって一つが全体に、全体が一つにまとまった動きをするグループ(胃・膀胱・子宮など)とに分けられます。平滑筋の緊張度をはかる感覚器がないにもかかわらず、平滑筋は緊張・収縮を適度に保っています。これが不思議なのです。

Smoothmb【平滑筋の仕組み】
平滑筋は、神経刺激や化学伝達物質、ホルモン、物理的伸展刺激などにより、カルシウムイオンを細胞内に取り込み、収縮をします。すなわち平滑筋内のカルシウムイオン濃度が高まると収縮するのです。
刺激が強いと、当然収縮するのですが、生理的には一定の緊張度を保ちながら我慢するのです。感覚器がないのに緊張度をはかれないのに我慢するのです。これが不思議な現象です。
例えば、オシッコがいっぱいたまったのに我慢できるシステムの詳細が、生理学でも臨床医学でも完全に解明されていないのです。

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お答えしましょう。#2

727 :病弱名無しさん:2007/08/06(月) 22:19:19 ID:l9iMNv0D0
>713
>私は排尿障害が原因だと思いますが、なぜ膀胱頸部が硬化するのかが疑問です
>Tクリのブログの説明でもその点は納得できません。
>もちろん生まれつきや、成長過程の不具合などもあると思いますが、それにしては人数が多い気がします。
なんで硬化するんだろうね。自分もこれは不思議に思う。
成長過程で硬化するような原因があるんだろうか?
排尿という生物にとって大事な行為でこういう症状が起こるのは本当に勘弁してほしい。

【高橋クリニックからの回答】
例えば、「ペンだこ」ができて、「何故ペンだこが出来たのだろう?」と思いませんよね?
空手家のこぶしに「たこ」が出来ているのは当たり前ですよね?
お神輿をかつぐのが大好きな人は、肩に「神輿だこ」が出来ています。
窮屈な靴を履いたのをきっかけに、「魚の目」「たこ」が出来ることがあるのは日常的です。
皮膚組織に関してだけの例えですが、臓器を含めて動きのある組織に慢性的で無理な物理的刺激があれば、「たこ=組織の硬化」は発生するのです。

ある製薬会社と学会が共同で大規模な統計発表をしています。それによると、40歳以上の日本人男女のうち800万人に「オシッコの悩み」があることが分かりました。
もしこの統計対象を20歳まで下げて実施したら、恐らく1千万人は超えるでしょう。日本人の10人に1人は「オシッコの悩み」があることになります。並みの数字ではありません。
「人数が多い気がします」と言われますが、事実、上記の統計のように膨大な人数になるのです。

話が違うけど、小さいときに盲腸手術などで下半身麻酔している人に排尿障害の人が
多いとブログ゛に書いてあったね。
ちなみに、自分はそんな経験ありません。

【高橋クリニックからの回答】
慢性前立腺炎症状で来院する4人~5人に1人が虫垂炎手術や脊椎麻酔の既往があるということです。
虫垂炎手術は、日本では15人に1人の割合ですから、慢性前立腺炎患者さんは異常に多いことになります。
ただ、言い換えれば慢性前立腺炎患者さんの75%~80%は虫垂炎手術は受けていません。虫垂炎手術を受けているということは、十分条件ではありますが、必要条件ではありません。

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お答えしましょう。

このブログをすべて読めば分かると思いますが、一部を読んで、理解できないと否定されるのは癪に障るものです。
掲示板で次のような疑問が掲載してあったので、お答えしましょう。
=====================================================================
711 :病弱名無しさん:2007/08/04(土) 01:50:58 ID:amqVxw420
αブロッカーいろいろ試しました。
確かに尿の出は良くなります。
しかし全く痛みは取れません。。。

【高橋クリニックからの回答】
短期間の服用では効かないことがあります。同じ薬を3ヶ月以上服用しましたか?
水分を取り過ぎるとα-ブロッカーを服用しても効きません。
また、ハルナール・ユリーフが効くタイプとフリバス・アビショットが効くタイプがあります。どちらもお試しになりましたか?
服用したα-ブロッカーはジェネリック(後発品)ではありませんか?ジェネリックは先発品と比較して作用が50%~30%以下にしか過ぎません。α-ブロッカーに関しては、値段が安くて作用が落ちるのがジェネリックです。
そうでないとすると、α-ブロッカーの効果が出る時期を過ぎて病気が進んだと考えます。
病気が深くなると、簡単な治療では治せなくなるからです。

T先生の理論って正しいのか疑問。
でもやってみないと分からないしなぁ。

【高橋クリニックからの回答】
正しいのかどうかは、私にも分かりません。
病気で苦しむ患者さんから得られたデータを論理的に(私の独断ですが)組み立てて見出した理論です。方法が論理的だから正しい理論とは限りません。
論理には必ず落とし穴があって、それを無視すると間違った理論になることは周知の如くです。
疑問がある内は実施しない方がよいでしょう。私の治療結果は100%ではない訳ですから・・・。

ホントに治る人が多いのなら、BLOGのコメント欄に
もっと書き込みあっても良い筈。

【高橋クリニックからの回答】
実際に書き込みがない訳ですから仕方がないですね。
貴方はひどい風邪をひいて地元の開業医を受診し治った時に、「お陰さまで」と御礼に行ったことがありますか?
人間は喉下(のどもと)を過ぎると、過去のことはどうでもよくなるのです。
私の存在は走馬灯の「馬」に過ぎません。

もっと賛同する医者もいる筈。
【高橋クリニックからの回答】
同業者が読む訳ないでしょう。
貴方は、自分のお仕事の中で疑問に思ったこと、あるいは常識だとお思っていて他人はどのように考えているだろうと詳しくインターネットで探して常に勉強していますか?インターネットの情報価値は、その専門家が調べるような情報源ではありません。
畑違いの人が読む情報源に過ぎません。このブログを読むのは慢性前立腺炎で苦しむ患者さんだけです。

学会に発表しないのは何故?
【高橋クリニックからの回答】
年間に500人以上の慢性前立腺炎の患者さんと150人以上の間質性膀胱炎の患者さんを私一人で診察・検査・治療しています。年間の手術件数は内視鏡手術を含めて約400件以上です。すべて一人で行なっています。私のクリニックは、標榜科目が泌尿器科以外に外科・整形外科・内科・胃腸科・リハビリです。要するに総合診療を目標に診療を行なっています。医師会の仕事、代替医療団体の理事の仕事も行なっています。
それらのことを放置して、慢性前立腺炎の学会発表にエネルギーを向けるだけの余裕はありません。私はそれ程能力のある人間でもありませんし時間もありません。高々街中の開業医です。

デパスなんて出して誤魔化すのは何故?
【高橋クリニックからの回答】
デパスは脊髄神経と自律神経の興奮を抑える目的で処方しています。理由はブログに記載されている通りです。
これを誤魔化しと茶化すのであれば、精神科や心療内科で処方する薬はすべて誤魔化しなのですか?
肩こりの筋弛緩を目的にする整形外科のデパスの処方も誤魔化しですか?

痛み系と頻尿系の処置が同じのは何故?
【高橋クリニックからの回答】
排尿障害が「始めに在りき」で、その後病気が長期になるに従い様々な症状が出現します。
ですから、痛み系と頻尿系の治療法が同じであることに何の疑問はないはずですが。
例えば、結核という病気の際に、「微熱と体重減少」の患者さんもいれば、「咳と痰」の患者さんもいます。治療法はどちらも結核菌の駆除です。同じ治療です。
痔、クモ状血管腫、腹水、食道静脈瘤、黄疸、これら一つ一つは肝硬変の初発症状です。肝硬変の治療は、これら異なる症状であっても、治療は原則的には同じです。
目先の症状だけに目が曇り、本質を治療できないのは患者さんにとって不幸です。痛みだけの治療、頻尿だけの治療で慢性前立腺炎が治っているのなら、このような掲示板はない筈です。
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【患者さんからの励ましのお便り】

高橋知宏  先生
やっと夏本番となりました。
カルテNO.・・・89の○○です。

さて、ココログほぼ毎日楽しみに拝見させて頂いております。
近日の先生のブログ、2ちゃんねる書き込みに向けての回答ですよね。
拝見しましたら結構先生に対して癇に障るコメントが書き込まれていますよね。

回答は先生のおっしゃる通りだと思います。
今までの治療で、何の効果も無いのなら間違っているか、別のところに原因があると考えるのが筋だと私も思います。
ただ、人によって考え方が違いますし、既成概念の範囲内治療を済ます方、病気そのものに対しての理解力しいてはブログに対しての読解力の差がありますから、なかなか上手く伝わらないのかもしれません。

私は先生のところに伺う前と比べると、ずっと病状は改善じてきているのですが・・・
ネット上では中々伝わらないですよね。

今回先生の回答で、一定の読解力のある方には伝わると思います。
私は先生の考え方に賛同いたします。

私事ですが、勤め先の院長(京大卒)も私の病気に対して理解しておりません。
やはり頭が邪魔をするのでしょうか?

柔軟な発想で、治療を続けて頂いて本当に感謝いたします。
患者の一人として、また医療従事者の一人として応援いたします。

6月にフリバス処方していただいて、今現在はかなり悪化した時よりだいぶ関連痛は収まっております。
また、過敏性腸症候群の方もだいぶ上手くコントロールできています。
やっぱり互いに関連してますね。

11月は3回目のOPとなりますが、宜しくお願いいたします。

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宮崎県○○○○
○○○○
E-mail: ○○○○@○○○○.jp
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水分のとり過ぎに注意!

Img14_water巷では、水分健康法なるものがあります。大量の水を飲むことにより血液をサラサラにして健康になりましょうというものです。
その影響で、老若男女がお茶やミネラルウォーターのペットボトルを片手に、常に水分補給しています。
尿路感染症や尿路結石の患者さんの日常生活の注意点として、医師は患者さんに大量の水分摂取を奨励します。
慢性前立腺炎は尿路感染症の病気とされていますから、泌尿器科医は当然のように大量の飲水を強要します。
しかし大量の水を飲んで慢性前立腺炎症状が改善した患者さんが本当に存在するのでしょうか?

Photo_2例えば、あなたが高級スポーツカーそのものだと仮定してみてください。時速250kmで走れる自動車だとするのです。
車の調子を維持するためには、たまには時速250kmの最高速度で走行しなければなりません。
3ところが、そんな高級車でも、ひとたびタイヤがパンクした場合には、そんなことは言ってられません。
たとえタイヤが1個パンクしただけでも、時速250kmは出せません。もしもタイヤのパンクを無視して高速で走行したら命取りになります。容易に想像できるでしょう。

排尿障害が存在して、慢性前立腺炎症状になった患者さんは、満足な排尿ができません。それなのに細菌性慢性前立腺炎の治療と同じように、大量の水分を摂取して頻回に排尿するとすれば、タイヤがパンクした状態で最高速度で走行するスポーツカーとどこか似ていると思いませんか?
治りの悪い慢性前立腺炎の患者さんには、水分摂取を控えるように私は指導しています。1日3回の食事に含まれる水分と1日多くて2回のお茶の時間の水分摂取で十分です。すると、水分制限だけで半数の患者さんは症状が軽くなります。
水分を好きなだけ摂取してよいのは、排尿障害のない本当の細菌性慢性前立腺炎の患者さんだけです。
細菌性慢性前立腺炎も非細菌性慢性前立腺炎も、治療や生活上の注意点が同じだと思っている医師が存在するのは悲しい事実です。

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慢性前立腺炎の病気深度と治療深度

慢性前立腺炎や間質性膀胱炎の患者さんを診察し治療すると、様々なパターンに遭遇します。
簡単に治る人もいれば、正直なかなか治らない人もいます。
私の治療の技量によるところも当然ありますが、病気の進み具合(病気深度)に関係する所が大きいように思えます。病気深度が深ければ、治療も深く掘り下げなければなりません(治療深度)。

例えば、火傷・熱傷の治療と比較すると分かりやすいです。
熱傷Ⅰ度は、表皮の発赤程度を示しますが、冷却のみで治療も容易です。後遺症も残さず、正常な皮膚になります。
熱傷Ⅱ度は、水泡やびらん状態のやけどです。細菌感染に注意しながら表皮や皮下組織の再生を促すように積極的な治療が必要です。やけどの跡は残り、場合によっては引きつれやケロイドになります。2次的な形成手術が必要になります。
熱傷Ⅲ度は、熱障害が筋層まで及ぶ状態で、極端な場合、炭(炭化)した状態です。壊死した組織を切除して、皮膚筋肉血管移植が必要になります。移植した部分も移植で切除された部分も、大きな傷になり、後遺症として傷が残ります。
「やけど」とごく普通に聞きなれた障害でも、熱の深達度によっては、治療法も全く異なるのです。

慢性前立腺炎や間質性膀胱炎を点や平面で考えると、病気の本質も治療法も点や平面で行われて出口が見つからなくなります。三次元・立体的に病気を考えると、出口が見つかるかも知れません。

現在、私の頭の中のイメージを下記のように図式化しました。

Depth_2

排尿障害から来る本来の症状(尿が出にくい・残尿感・軽い頻尿)であれば、ハルナールやエブランチルなどのαブロッカー服用で症状がコントロールできます。その時点で内視鏡手術を希望されれば、単純な手術で治療できます。

しかし、自覚・無自覚のまま排尿障害を長く放置すれば、病気が深く進行します。すなわち度重なる排尿障害の刺激で膀胱三角部が肥厚します。膀胱三角部の肥厚は常に脊髄神経を刺激します。そうなると脊髄神経ネットワークが発達して、関連痛症状が出現します。会陰部痛・ペニス痛・肛門痛・大腿シビレ・足痛などなどです。
αブロッカーや単純な内視鏡手術では症状が改善しません。
例えば、前立腺肥大症患者さんが内視鏡手術で前立腺を切除しても、症状が改善しないことがあるのはこのためです。この場合、さらに一歩進んで、膀胱三角部減張切開手術を行なわないと症状の改善をみないのです。

さらに病気が深く進行すると、脊髄神経ネットワークの発達から脊髄神経ネットワークの混線・混乱を招きます。脊髄神経内に関連痛発作の爆弾を抱えているようなものです。高度な内視鏡手術で膀胱三角部減張切開手術を行なっても、膀胱の感覚のすべてが消失するわけではないので、わずかな膀胱刺激が出現しても脊髄内の爆弾回路にスイッチが入ってしまうとイメージしていただければよいでしょう。
その場合は、デパスなどの精神科・心療内科領域のお薬の処方や定期的な仙骨神経ブロックなどを行なわなければなりません。
また、2度目・3度目の内視鏡手術の可能性もあります。

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慢性前立腺炎に関する私の考え

慢性前立腺炎に関するご質問が多いので、ここに私の考え方を簡単にまとめました。
さらに詳しくはブログ内のそれぞれのページをご覧下さい。(2005年4月の記事です)

【基本概念】
難治性慢性前立腺炎・前立腺症・前立腺痛・慢性骨盤疼痛症候群・非淋菌性非クラミジア性尿道炎は原因が排尿障害であると私は信じている。
排尿障害の治療をしないで、原因不明の細菌性感染症や心因性疾患として、抗生剤・抗うつ剤で治療するから、いつまで経っても治らない。
健康食品や機能性食品は一時的な改善はあるかもしれないが、治療目標がずれているので完全な軽快にはならない。
日常生活をどんなに健全なものにしても治らない。

【病気の本質】
ほとんどの原因が、機能性膀胱頚部硬化症、膀胱排尿筋内尿道括約筋協調不全、膀胱出口閉塞症、前立腺中葉肥大のいずれかである。
基本的には、発育期の膀胱の発育不全がほとんどであろう。
4人に1人が虫垂炎手術のための脊椎麻酔の既往があるので、脊椎麻酔の後遺症も原因の一つとして疑っている。
これらの病気による長期間にわたる慢性的軽微な排尿障害が、慢性前立腺炎にそっくりな症状を作る。症状が同じだから慢性前立腺炎として治療される。

【症状】
下半身の症状であれば何でも起こりうる。
尿道痛・睾丸痛・会陰部痛・肛門痛・尿漏れ感・太もも内側痛・腰痛・背部痛・足の裏痛などである。痛みの他にそれぞれの部分の熱感・しびれ・痒みなどでも同じである。
頻尿・残尿感・排尿障害などもある。
射精時あるいは射精後の痛みもある。
上半身の症状も起こりうる。

【検査】
排尿障害を直接的・間接的に証明できればよい。
1.超音波エコー検査(膀胱粘膜の肥厚・膀胱壁の静脈うっ血・膀胱出口のハイエコー・出っ張り・前立腺結石)
2.尿流量測定ウロフロメトリー検査(息み時間が長い・勢いが弱い・グラフの山がギザギザ排尿曲線)
3.残尿量測定検査(残尿が10ml以上の存在)
上記の検査でいずれか一つでも異常があれば、排尿障害とする。
排尿障害が確認できれば、内視鏡検査はあえて行う必要はない。
尿検査・レントゲン検査・EPS検査は参考程度である。
細菌培養検査を行っても、健常者と慢性前立腺炎患者さんとの間に有意差がないという報告(2003年J.URO)もある。

【治療】
排尿障害治療薬であるα-ブロッカーのハルナール・フリバス・アビショット・ユリーフ・エブランチルを使用する。
薬剤で効果が得られなければ、仕方がなく内視鏡手術を行う。
排尿障害を改善しても症状が改善しない場合がある。その時点で仙骨神経ブロックや抗うつ剤を利用する。

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振動エネルギーと前立腺症状

ある時、フッと気が付いたことがありました。
一人の患者さんの膀胱頚部硬化症の内視鏡手術の際にです。手術器械がなかなか挿入できないほど、膀胱頚部が硬くて狭いのです。排尿障害になって当然の所見です。
ところが、この患者さんは、ハルナールを服用して、症状がとても軽快していたのです。しかし、一生薬を服用したくないということで、内視鏡手術をすることになったのでした。
αブロッカーであるハルナールを服用すると、前立腺内の収縮緊張している平滑筋αレセプターを阻害して、平滑筋の緊張をゆるめ、その結果、排尿の際に前立腺が軟らかくなるから尿道抵抗が減少して排尿が楽になるという筋書きです。
この内容からは、なるほどなるほどと思ってしまうでしょう?
でも、もし膀胱出口に前立腺の代わりに、前立腺と同じ形大きさの穴の開いた軟らかいコンニャクを装着した場合と、穴の開いた前立腺と同じ形大きさの金属を装着した場合とを比較してみましょう。
膀胱が収縮して排尿する時に、コンニャクと金属とどちらが楽に排尿できるでしょうか?軟らかいコンニャクの方が出やすくて、固い金属の方が出にくいでしょうか?何とも言えないでしょう?固い金属の方の出が良いことがあるかも知れないと思われる人もいるでしょう。さて、このようにαブロッカーの尿道抵抗低下という治療理論だけでは、真実をすべて表現している訳ではないと、私は考えています。

そこで、思いついたのが振動と振動エネルギー仮説です。
以前に振動原因説で述べたように、膀胱頚部硬化症は、膀胱出口の振動が症状形成に重要な働きをします。
振動する理由に関しても、テコの原理から説明もしました。
膀胱出口の振動が、症状に結び付くのが、今ひとつピンと来ないでしょうから、ここで詳しく述べたいと思います。

Topics072501p180espana3 【愛・地球博でフラメンコギターを弾くパコ・デ・ルシアさん】

Herz【ウィキペディアから】

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増幅装置としての病気

心身症・神経症・ノイローゼ・気のせいだと、誤解されがちな多彩な慢性前立腺炎の症状を関連痛という概念で今まで解説してきました。しかし、この概念の根本は、病気を中心にした考え方です。つまり非日常的な考え方なので、一般の方には今一ピンと来ないでしょう。
そこで、正常な状態を中心にした考え方を解説しましょう。
【正常な生理的神経の流れ】
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上図は健康時の正常な神経の伝達経路を分かりやすく図示したものです。
日常生活で、体外の環境から受ける様々な刺激を、体中のあらゆるセンサーが受信して、脊髄神経を介して脳中枢に伝達されます。脳中枢では適度な感覚で、自覚しない時もあるほどの感覚です。

【増幅装置としての病気の存在】
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しかし、内臓などに病気が存在すると、慢性前立腺炎では排尿障害ですが、脊髄神経の正常な流れの中にその病気の刺激が割り込んできます。割り込んでくるだけなら良いのですが、その刺激が脊髄神経に複雑な回路を形成し、まるで増幅装置(アンプやブースター)のように働くのです。末梢の感覚センサーから来た電気的信号の情報は、この増幅装置で電気的に増幅・脚色され、脳中枢に異常感覚として認識されてしまいます。
異常事態と判断した脳中枢は、運動神経や自律神経を介して、末梢の感覚センサーの内外周囲の環境を変化させます(フィードバック刺激)。センサーの感度を高めたり、血流を変化させるのです。その結果、末梢の感覚センサーの情報は、実質的にも増加して脊髄神経に流入します。すると脊髄神経の増幅装置でさらに情報が増幅され脳中枢に伝達される、というエンドレスの悪循環が形成されます。病気の原因が、些細な排尿障害であっても、慢性前立腺炎の症状が辛くてどうしようもない原因がここにあるのです。

【排尿障害が脊髄神経増幅回路の原因の場合】
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脊髄神経内の増幅回路形成の原因として、理論的にはいろいろな病気がある筈です。ここは慢性前立腺炎をテーマにしているブログなので、排尿障害を例に上げましょう。
私が提唱している機能性の膀胱頚部硬化症や前立腺肥大症などの排尿障害が存在すると、膀胱三角部は排尿時の膀胱出口の振動により生理的反応で硬い組織になります。膀胱三角部が硬くなるためには、硬くなるための成分が存在する訳で、その成分が膀胱三角部のセンサーを狂わせ、センサーが常にオンの状態(壊れて鳴り続ける非常ベル)になり脊髄神経を刺激し続けます。脊髄神経内のニューロン(神経細胞)は細胞の樹枝突起を張りめぐらし、手当たり次第に様々なニューロンの樹枝突起シナプス結合をします。そのニューロン同士の複数の結合が、一定の意味を持った神経回路を形成し、それが増幅回路として働き、他の感覚センサーからのニューロンを刺激し、脳に誤解させるような大量の情報を送るのです。
大量の情報を送られた脳は、複雑な手順を踏んで末梢の器官・臓器・感覚センサーにフィードバック刺激として繰返し情報を返します。
フィードバック情報は、末梢の器官・臓器・感覚センサーを過敏にし変容させます。その例が膀胱三角部の肥厚硬化現象です。そのため膀胱三角部は益々過敏になり、脊髄神経を刺激し増幅回路は確固たる存在になるのです。

【治療方針と戦略】
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上記の病態生理を十分に理解した上で、治療方針や治療戦略を立てなければ、意味のない治療を続けることになります。上で示した慢性前立腺炎という病態には、病原菌は登場しません。ですから抗生剤を治療手段として長期間使用しても効果のない無駄な治療を行なっていることになるのです。
治療として①~⑧までの目標部位があります。
①は排尿障害の治療です。内服薬としてハルナールやエブランチルなどのα-ブロッカーを利用します。しかし排尿障害が、可逆的ではなく非可逆的な場合には、内服薬が無効です。その際には内視鏡手術が適応になります。
②は膀胱三角部の過敏さの治療です。膀胱三角部の伸展レセプターを抑える治療になります。内服薬としてブラダロン・ポラキス・バップフォ・デトルシトール・ベシケア・ポララミン・IPDなどがあります。しかし伸展レセプターを目標として正面から治療する薬は存在しないので、効果は不安定です。内服薬が無効の場合には、内視鏡手術として膀胱三角部減張切開手術を行ないます。伸展レセプターは、膀胱三角部の筋肉内に存在するので、電気メスで筋層まで十分に切開しないと伸展レセプターを破壊することはできません。
③~⑧までの治療は、内服薬の保存的治療しか存在しません。治療目標は、末梢神経・脊髄神経・脳中枢神経の神経です。この領域は未知の領域でブラックボックスです。脳神経外科・心療内科や精神科で使用するお薬が、候補として処方されます。
抗うつ剤(ドグマチール・グラマリール・トフラニール・トリプタノール・デプロメール・トレドミン)、
抗不安剤(デパス・リーゼレキソタン・メイラックス)、
抗てんかん・抗ケイレン剤(リボトリールデパケン)、
自律神経調節剤(ウブレチド・グランダキシン)などです。
外科系の泌尿器科医としては、本当に苦手の領域になります。

【内視鏡手術してもなかなか治らない原因】
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さて、このブログの「患者さんからのレポート#∞」でご紹介しているように、すっきり治らない人、何回も手術を必要とする患者さんがおられます。図で示すように、手術を行なっても脊髄神経内の増幅装置・回路が、すでに確固たる地位を築いている場合には、感覚センサーからの情報が、手術前と同じように誤解されて脳中枢に伝達されるからです。
このような場合には、③~⑧の治療薬剤を使用します。私が多く処方するのが、ご存知のデパスです。

【新しい沈静神経回路の誕生】