カテゴリー「慢性前立腺炎の考え方・生活習慣」の記事

慢性前立腺炎ブログのガイド

このブログは、「慢性前立腺炎」に関して、私の独断の考え方で理論展開しています。あくまでも私の趣味の世界だと思って下さい。しかし、真実しか掲載していません。私はインターネットの中で真理を発信するように心がけています。
真理はどのような状況であっても真理です。真理について信じようとする必要はありませんし、信じてもらおうと説得する必要もないのです。真理が見える人にだけ理解していただければ結構です。(・・・だんだん宗教じみてきた。)
泌尿器科医で、私の考え方に賛同されるのであれば、実践してみて下さい。直接コンタクトを取っていただければ、診断・検査・治療のコツをお教えできます。遠慮なく。地方の患者さんのためです。

テーマが多く、2009年6月上旬現在で280テーマにもなりました。書いている私でさえも、どこに何が書いてあるか分からなることがあります。下記のようにカテゴリーに分類しています。知りたいカテゴリーをクリックして下さい。

ニュース・学会報告・文献報告
新しい知見や私の学会報告を納めています。ブログの中だけでの報告では信用が置けないと中傷されたので、年に2回のペースで学会報告しています。

メール相談
多くの悩み相談をメールでいただきます。内容から代表的なものを掲載しています。

初期の考え方
現在の慢性前立腺炎に関する診断・検査・治療にたどり着く前の考え方を納めています。誤った考え方もしています。比較の意味で貴重だと思っています。

心と体
分類ができないものや「こころ」に関するテーマを納めています。

患者さんからのレポート
私の治療、薬・手術を受けた方の生の声を納めています。レポートをお読みになれば、必ずしも理想的な経過の方ばかりではないことがお分かりでしょう。

慢性前立腺炎と周辺疾患
慢性前立腺炎とは無関係と思われた病気が、実は本質的には同じであったことが理解できるでしょう。
例として、非淋菌性非クラミジア性慢性尿道炎、難治性の亀頭包皮炎などです。

慢性前立腺炎と手術
私が実施している慢性前立腺炎=膀胱頚部硬化症の内視鏡手術について解説しています。

慢性前立腺炎と薬
慢性前立腺炎をα-ブロッカーで治療するのが、第一選択の治療法です。

慢性前立腺炎の検査
単なる炎症であれば、検査で見つかることはなかなかない慢性前立腺炎ですが、慢性前立腺炎=膀胱頚部硬化症と考えれば、ハッキリした所見が検査で得られます。

慢性前立腺炎の症状
多彩な慢性前立腺炎の症状を一つ一つ解説しました。

慢性前立腺炎の考え方・生活習慣
ここに行きつくまで様々な試行錯誤の上に出た結果、考え方です。ご賞味ください。

慢性前立腺炎CPの実例
患者さんの実例を多く挙げています。しかし、私から目線だけでは客観性に問題があるので、治療を受けた患者さんにレポートを書いただくようになりました。

書籍・雑誌
私が関連した雑誌などを紹介しています。ハッキリ言って私の宣伝ですネ。

統計的考察
EBM(面識もない赤の他人が作った公の過去のデータを根拠に考えられた医療)を主張する方が世の中では多いので、私ができる範囲の統計的根拠を掲載しています。忙しい診療の中で、データを収集して意味づけをするのはかなりのエネルギーが必要です。ところがEBNを主張する吾人は、ご自分ではエビデンスを作らない傾向にあります。エビデンスを収集して喜んでいるだけみたいです。人のふんどしで・・・。

診療時間と休診のお知らせ・アクセス
たまに臨時休診することがあるので、ここで掲示しています。

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親子の慢性前立腺炎患者さん

お父上は65歳、ご子息は34歳の患者さんです。お二人でご一緒に来院されました。


お父上は、20年前に心臓のカテーテル治療を受けました。その際の膀胱留置カテーテル(俗にいうバルーンカテーテル)を抜いてから、慢性前立腺炎症状が出現しました。20年間慢性前立腺炎と闘ってきたことになります。
症状は、会院陰部痛・肛門痛・坐骨痛です。N医大病院・T大病院・J大病院・C大病院の泌尿器科と地元の泌尿器科クリニック・横浜の泌尿器科クリニック・飯田橋の泌尿器科クリニックをまわりました。肛門の病気?と思い、新宿の肛門科で有名な病院とA肛門科にも診察を受け治療しました。
最近、手と足のしびれがひどく気になり、頚椎手術で有名なD大病院で頚椎の手術をしましたが、しびれはまったく取れませんでした。

ご子息は、平成20年12月から早朝の下腹部の痛みを感じます。地元の泌尿器科クリニックで前立腺マッサージ後の検尿で白血球が1視野に17個認められ、細菌性慢性前立腺炎と診断されました。ガチフロ、クラビット、セルニルトンの投薬を受けましたが、軽快しません。飯田橋の泌尿器科クリニックで桂枝茯苓丸を処方されていますが、やはり治りません。

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マインド・マップ 慢性前立腺炎編

Cpmap最近、マインド・マップなる思考テクニックに興味があり、実践しています。
ここで、慢性前立腺炎に関する私の考え方の全体像をお示しします。この図示は刻々と変化しますから、時々ご覧になって下さい。

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★ 慢性前立腺炎の要約#3 ★

このブログの全てを読めば、私の考えている「慢性前立腺炎」の真実が分かる筈です。しかし、ほとんど読まないで質問する方が多いので、「要約#3」として解説します。以前にも解説した「慢性前立腺炎の要約#1」「慢性前立腺炎の要約#2」もご一緒にお読み下さい。理解が深まるでしょう。

難治性の慢性前立腺炎は微細で慢性的な排尿障害が本当の原因だと、私は信じています。本当の慢性前立腺炎は細菌性の炎症で、抗生剤の投与にて容易に治るものだと考えています。
長期に渡って治療しても治らないのは、細菌などの病原体が原因ではなく、全く違う原因であろうと私は考えます。その原因が患者さん本人も気がつかないささいな排尿障害です。

難治性の慢性前立腺炎には、大きく2つ(痛み・頻尿)、細かく5つのタイプが存在します。
【1】痛みタイプ
【2】頻尿タイプ
【3】自律神経タイプ
【4】混在タイプ
【5】うつ病タイプ
です。

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脊椎麻酔の後遺症 専門家のご意見

宮崎在住の麻酔科医師です

脊椎麻酔による前立腺炎の可能性を興味深く読みました。
日本では、神経毒性が強いために他国では使用していない塩酸ジブカイン製剤が使用されていることをご存知かと思います。
2001年に世界的に安全性が確認されている脊麻用塩酸ブピバカインが日本でも発売されて使えるようになりましたので、それいらいジブカインの使用量は激減したとおもわれますが、それでもまだ発売中止にはなっていません。
わたしは個人的に局所麻酔薬の神経毒性もしくは膜破壊作用を研究してきた麻酔科医ですが、しらべた結果ジブカインは現在日本でつかわれている局所麻酔薬のなかでおそらく最強の膜破壊作用を持っていました。3年前の学会発表のときに過去10年くらいさかのぼって調べたのですが、毎年1-2例は脊椎麻酔による馬尾症候群が日本でも報告されていおり、原因薬剤はペルカミンエスかネオペルカミンエスでした。どちらも塩酸ジブカインが主成分です。ブピバカインによる症例もありましたが、2000年の論文でしたので、おそらくバイアル入のマーカインを使用したものとおもわれます。ただし、脊麻用の塩酸ブピバカインでも一過性の神経障害の報告がないわけではないのですが、ジブカインにくらべてはるかに安全と信じられています。

神経障害だけでなく、最近思うのですが、従来脊椎麻酔は喘息の患者には禁忌としてきたのですが、あれはジブカインを使っていたからぜんそく発作を誘発していたのではないか?と最近思うようになりました。ひょっとするとブピバカインでは喘息患者での脊椎麻酔は問題がないのではないかと疑っています。
脊椎麻酔が喘息発作を誘発するということが理論的に説明しにくいこと(○○○○先生による)、外国の文献で喘息患者での脊椎麻酔の是非をどう考えているのかを調べても、ほとんど文献がないからです。

日本でもジブカインによる神経障害の報告は確かに数が少なく、論文もめったにかかれず、おそらく発生頻度は非常に少ないので問題にならないとされているのかもしれませんが、ブピバカインというより安全な薬があるのに危険な薬がいつまでも使われつづけるのは問題だと思います。報告例では必ずこれと同じ言葉で結語がむすばれているのに、結局自分が痛いめにあわなければその結論にいたらないというのが麻酔科医においても現状のようです。

脊椎麻酔による神経障害の一つとして、先生がご指摘のように前立腺炎の発症にも関係するとしたら別の観点からジブカイン製剤の使用を控えようというアピールができるのではないかと思いました。もちろんブピバカインの脊椎麻酔でも同様に前立腺炎を誘発する可能性もあるのでしょうが。

○○○○

【補 足】
非細菌性慢性前立腺炎の患者さんの中に、脊椎麻酔で行なった手術歴の患者さんが多く感じたので統計を取ってみました。
慢性前立腺炎の患者さんには、経腹的超音波エコー検査を実施するので、必ずお腹を見ます。その際に虫垂炎手術の傷跡を見ることが多く、脊椎麻酔の後遺症=排尿障害=慢性前立腺炎症状を思いつきました。実際に患者さんに写真を撮らせていただきブログに掲載しました。
今回、陰嚢掻痒症の統計でも、脊椎麻酔の病歴のある患者さんが34%(3人に1人以上の確率)でした。

なお、ジブカインは脊椎麻酔で今でも一般的に使用されている商品名ペルカルミン・ペルカルミンエス・ネオペルカルミンSです。
ブピバカインは商品名マーカインで、私も仙骨神経ブロック・硬膜外神経ブロックの際に頻繁に使用しています。

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入力と出力

慢性前立腺炎・間質性膀胱炎の病態を来院する患者さんに、外来の短時間に説明し納得していただくのは、とても難しいことです。
また、慢性前立腺炎や間質性膀胱炎のブログの中で、手を変え品を変え何度ともなく、くどく(功徳?)解説していますが、来院される患者さんの未だ完全な理解に至っていません。
また、今回も観点を変えてご説明しましょう。

Inputoutput2森羅万象のあらゆる事柄には、入力と出力に区別できます。すなわち原因と結果です。
イラストで示すように非常に単純です。例えば、転倒して手を付いたら手首を骨折したというようにです。

Inputoutput3ところが、転倒したから必ずしも骨折する訳ではありません。
転倒する際の姿勢、タイミング、足の位置、歩行速度、重力加速度などがすべてそろって骨折という結果に結び付くのです。イラストで示すように、原因と結果を結び付ける一定の法則なるものが存在します。

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★ 慢性前立腺炎の要約 #2 ★

このブログの中で、どんなに詳細に解説しても、「私は慢性前立腺炎ではないのですか?細菌はいないのでしょうか?抗生剤治療をしなくてもよいのでしょうか?それとも本当に膀胱頚部硬化症なのですか?」と、再診の患者さんに何度も質問されます。

私から言わせていただくと、難治性の「慢性前立腺炎」は病名ではなく、「症状名」あるいは「症候群名」と思っていただいて結構です。
本当の細菌性の慢性前立腺炎は抗生剤・抗菌剤で容易に治ります。治らないのは、症状が細菌性慢性前立腺炎と同じであっても、細菌性の慢性前立腺炎ではないということです。慢性前立腺炎と同じ症状で細菌が原因でない場合には、全く違う病気だと考えてよいでしょう。検査に引っ掛からない細菌が前立腺に隠れていて、非細菌性の慢性前立腺炎になるのだとは考えずに、全く異なる原因が慢性前立腺炎に似た症状を発現していると考えた方がよいでしょう。バイオフィルムなどと呼ばれるカエルの卵のゼラチン物質のような存在をわざわざ持ち出す必要もないでしょう。

私は、非細菌性の慢性前立腺炎を次のような病態生理で成り立つものだと考えています。
【第1のステップ】
10代後半からの成長期の発育不良・発育不全あるいは脊椎麻酔の後遺症で膀胱頚部が障害を受け、機能性の排尿障害になる。

【第1.1のステップ】
機能性排尿障害=神経因性膀胱と同じ病態と考えられるので、この病態自体をどんな手段を講じても完治させることは原則としてできない。

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急性前立腺炎から慢性前立腺炎という誤解

年間400人近い慢性前立腺炎の新患の患者さんを診察しますが、急性前立腺炎から慢性前立腺炎に移行したという患者さんにほとんど遭遇しません。
急性前立腺炎から慢性前立腺炎に移行したという患者さんは、存在しても1%足らずでしょう。初めから慢性前立腺炎症状の方がほとんどです。恐らく「急性」と「慢性」という言葉のイメージから「急性→慢性」という根拠のない病態生理が常識となったのでしょう。誤解というものは恐ろしいもので、急性前立腺炎は細菌性ですから、慢性前立腺炎は「急性→慢性」という荒唐無稽の根拠から、細菌性でなければならなくなったのです。
慢性前立腺炎で悩んでおられる読者の中で、発熱があって、血尿があって、尿の出しぶりがあって、残尿感が強く、尿の最後の強い排尿痛がある急性前立腺炎になった方がどのくらいいるでしょうか。そのような記憶のある患者さんはほとんどいないでしょう。中には気がつかないうちに急性前立腺炎にかかったと言われる人もいますが、症状のない急性前立腺炎はありません。

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★ 慢性前立腺炎の要約 ★

このブログをお読みになった難治性の慢性前立腺炎の方から、地元の泌尿器科医を紹介して欲しいという内容のメールが頻繁に届きます。
このブログに掲載されている慢性前立腺炎に関する考え方や治療法は、私独自のもので一般的ではありません。ですから鹿児島県鹿屋市の倉内先生以外に、ご紹介できる医師を存じません。
このブログの内容は210テーマ以上になりますから、全てを印刷(A4で500ページ以上の量)して主治医に手渡しても要領を得ませんし、現実的ではありません。
そこで、私の考え方や治療法を以下にまとめます。これを印刷して主治医にご相談下さい。質問があれば、医師からの電話での直接の質問もお受けします。
(院長直通:03-3771-8034 ただし午前9時~12時まで)

【考え方】
【1】何らかの原因で、膀胱出口や膀胱頚部の機能が不完全で、排尿時に膀胱出口が十分に開放しない。
【2】膀胱出口の周囲は粘膜・筋肉で構成され、ある程度の柔軟性がある。膀胱出口が十分に開放しないため、排尿時に下部尿路(膀胱三角部・膀胱出口・膀胱頚部)が振動する。その振動は自覚できない。
【3】その振動が慢性化し繰返し起きると、生体の防御・適応反応で、膀胱出口の線維化あるいは膀胱括約筋の過形成を促され膀胱出口が硬くなる。広い意味での「膀胱頚部硬化症」である。狭義の膀胱頚部硬化症は内視鏡手術後の線維化を意味する。
【4】硬くなったため、膀胱出口は柔軟性が欠如し、排尿時の下部尿路はさらに一層激しく振動することになる。
【5】この激しい振動は、刺激エネルギーとして下部尿路全体を絶えず刺激する。
【6】膀胱刺激知覚症状(特に膀胱三角部において)として、残尿感・頻尿症状がある。
【7】下部尿路の神経支配の脊髄を絶えず刺激することで、脊髄内の神経ネットワークが発達し、他の知覚経路や自律神経経路と接続するために、関連痛・自律神経症状が出現する。
【8】下部尿路の振動エネルギーによる器械的刺激により、前立腺は物理的炎症を起こす。細菌感染やアレルギーの炎症ではなく「物理的炎症」である。前立腺マッサージによる前立腺液検査で白血球・常在菌が認められても「物理的炎症」を否定できる根拠にはならない。
【9】前立腺内の白血球も常在菌も、物理的炎症の補助的存在であって、慢性前立腺炎の本質ではない。抗生剤・抗菌剤投与により白血球・常在菌が減少しても慢性前立腺炎の治癒には結びつかない。また、抗生剤・抗菌剤が効果があったとしても、補助的要素を加減しただけであって、本質の解決にはならない。
【10】白血球・常在菌の証明で「細菌性慢性前立腺炎」、白血球のみの証明で「非細菌性慢性前立腺炎」、白血球も常在菌も証明されない場合に「前立腺症」「慢性前立腺炎様症候群」、痛み症状が強い場合を「前立腺痛症」あるいは「慢性骨盤疼痛症候群」、抗うつ剤で自律神経症状が緩和されるので「うつ病」「陰部神経症」「自律神経失調症」と診断が篩い分けられているに過ぎない。また原因が不明なので頻尿・尿失禁があると「過活動膀胱」、さらに痛みが加わると「間質性膀胱炎」と診断されてしまう。真の「細菌性慢性前立腺炎」は存在するかも知れないが、あってもホンの一握りの患者であろう。医師の短絡的な病気定義分類という呪縛の犠牲者が多く出ないことを祈るしかない。

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膀胱括約筋過形成症候群 Bladder-Sphincter Hyperplasia Syndrome

慢性前立腺炎や間質性膀胱炎の患者さんの超音波3D画像をいくつも検討していくうちに、「膀胱括約筋過形成症候群 Bladder-Sphincter Hyperplasia Syndrome」という考え方が私の頭を占拠しています。もちろん私の造語です。常識ではありませんから、そのおつもりで・・・。
この考え方は、形態学的な観点からの名称ですが、機能面から見れば、前立腺肥大症も含めて「膀胱括約筋過緊張症候群 Bladder-Sphincter Supertension Syndrome」という名称が適切なのかも知れません。これもまた私の造語です。

慢性前立腺炎・膀胱頚部硬化症・膀胱出口閉塞症・膀胱頚部機能低下症・膀胱排尿筋内尿道括約筋協調不全・神経因性膀胱・前立腺肥大症・間質性膀胱炎・過活動膀胱・心因性頻尿・慢性骨盤内疼痛症候群・前立腺痛症・膀胱疼痛症など、これら全ての疾患が、自力・他力にかかわらず、膀胱括約筋の機能亢進に集約されます。

Bladdsphinc_2前立腺肥大症の場合は、腺腫が大きく膀胱側に突出するので膀胱括約筋はドーナツ状に周囲に追いやられ塊りとなって、常に前立腺を圧迫するようになります。図の右のように膀胱括約筋は、肥厚した堤防のようです。見かけ上膀胱括約筋の過形成ですが、筋肉が寄せ集まり団子状態になっただけで、本当の過形成ではありません。この状態は他力的な膀胱括約筋の機能亢進になります。
すると、前立腺肥大症がどんなに大きくても、膀胱内に突出しなければ(図の左)、膀胱括約筋は正常に働くので排尿障害にはならないのです。図では、左の前立腺肥大症の方が明らかに大きい前立腺ですが、小さい前立腺の方が排尿障害が強く出てきます。ここに前立腺肥大症の大きさだけでは排尿障害を評価できない根拠があるのです。

Wnlmorifice正常な男性の3D画像です。
膀胱括約筋が膀胱出口ギリギリまでありますから、正円の穴として膀胱出口が確認できます。
前立腺肥大症がたとえ大きくても、膀胱内に突出しなければ、上図の左の場合は、この正常の3D画像と同じように見えます。膀胱括約筋に開くだけの余裕があるのです。

Bph3d11624m5037ccpsa49これは前立腺肥大症の3D画像です。中央の大きなくぼみには前立腺が存在します。膀胱括約筋を明確に描写すると、前立腺組織はエコー画像上透明になってしまうので、このような映像になります。
中央のくぼみが大きければ大きいほど、前立腺が膀胱内に突出し、膀胱括約筋は周囲に追いやられドーナツ状になります。ドーナツ状に塊りになった膀胱括約筋は、これ以上緩みようがないので、常に膀胱出口を圧迫する形になり排尿障害になります。

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教科書の常識

インターネットでネットサーフィンしていると、たまに掲示板を見ます。
慢性前立腺炎の掲示板の中に、私の慢性前立腺炎の考え方や治療法が話題になることがあります。
泌尿器科の医師と思われる掲示板の主催者が、私の考え方や治療法に対して否定的であることが容易に分かります。

この医師に限らず、日本の泌尿器科医のほとんどが私の考えに否定的でしょう。その根拠に教科書に掲載されていないからという理由がありました。
教科書とは、広辞苑によると、「学習用教材として使用される図書」と定義されています。つまり、現在常識と思われる必要最低限の知識を得るための「学習用」の教材ということです。すなわちその分野で素人同然の者が学習するための教材です。ここには確定したことしか記述してはいけないことになります。信憑性が疑わしい新しい知識は当然書かれていません。

私は、泌尿器科医の医師になって29年、来年で満30年になります。この私が教科書通りの診断や治療を踏襲せずに、オリジナルのことを考えたとしてもとやかくいわれる筋合いではないでしょう。

さて、教科書に準じて行なう検査や診断及び治療は、世界共通の検査や診断及び治療になります。・・・

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排尿のメカニズム 膀胱輪状筋の真実

Bph3d11624m5037ccpsa49右の写真のように、前立腺肥大症の場合は、輪状筋がドーナツ状に確認できます。
健常者の膀胱底部は輪状筋の形がブーメラン状に観察でき、それが正常だと思っていました。
しかし、前立腺肥大症になると膀胱輪状筋がなぜ突然ドーナツ型の形状になるのかを疑問に感じていました。
Wnlmorificeそこでいろいろ考えた挙句、膀胱三角部と輪状筋の傾斜角度が異なるため、輪状筋の形は、その名の通り本当はドーナツ状の形状で、通常は膀胱三角部のために3D4D画像ではブーメラン状に観察されるのではないかと考えるようになりました。

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排尿のメカニズム 膀胱三角部の重要性#2

膀胱三角部の重要性について、前回はその動きの詳細について解説しました。
ただ、この説明だけでは、慢性前立腺炎や間質性膀胱炎の症状を説明する上では、その根拠がまだ希薄です。
今回は#2として、膀胱三角部の存在価値の本質について考察しようと思います。もちろん、私の空想的な仮説ですから、程ほどに信じて下さい。
Trgncycle前回の膀胱三角部の動きをまとめて上図のようにイラストにしました。

【膀胱三角部の横軸伸展】
蓄尿されると、膀胱の伸展と共に排尿筋(輪状筋)は横に伸展します。膀胱三角部も三角の底辺と平行に横軸方向に伸展します。この伸展刺激が脳中枢(あるいは脊髄中枢)に伝わると「尿意」になります。ここでは「尿意信号」と呼びましょう。

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ドラマ

慢性前立腺炎や間質性膀胱炎のさまざまなテーマの中で、いかにももっともらしく、客観的にさらに論理的に私は解説していますが、それは「私なり」の思考スタイルです。ある意味、「独りよがり」の考え方です。私の考え方は一般的でも、正しいとも限りません。私が医師だからといっても、くれぐれも注意して下さい。このブログは私の考え方の情報発信の場であり、私の世界観を皆さんにご紹介しているだけです。

医学は科学だから「とても客観的で真実は一つだ」と、あなたは思われているでしょう?その中に従事している医師を含めた医療従事者も真実のみに身も心も捧げているとお思いでしょう?

ところが常に真実は一つではありません。ん~・・・少し言い過ぎかも知れません。真実は一つかも知れませんが、多面性があり、さまざまな顔を持っているかも知れません。科学はその一つ一つを調べては確認し、再現性を確証しては、一つの真実・命題を見つけます。多面性がいくつ存在するか分からない場合は、延々と調べては確証しなければならず、ある意味真実の正確な全体像を見つけ出すのは困難なことにもなります。

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排尿のメカニズム 膀胱三角部の重要性

【3D4D画像による臨床的事実】
Wnlmorifice膀胱頚部の3D画像を観察すると、今まで私が知っていた解剖学的景色とまったく違うことに、戸惑いました。
なぜなら、膀胱三角部がもっと厚いものだと思っていたからです。ところが、右の写真の如く、膀胱三角部と思われる部分は、周囲の膀胱平滑筋に比較して明らかに薄いのです。

【想像的解剖図】
Bnclose右の図は、上の写真をイラストにしたものです。上の写真と比較して下さい。理解しやすくなります。
臨床医は、膀胱底部の輪状筋(膀胱平滑筋・排尿筋)はドーナツ状に輪になっているものと思っていました。「輪状」という名称からそのようにしか理解できません。ところが実際は図のようにドーナツではなく、ブーメラン状なのです。ブーメランの両端を輪状筋脚(排尿筋脚)と記載していますが、解説の都合上私が命名した造語です。
さて、ブーメランの内角の部分に膀胱三角部がテント状に張っています。すなわち膀胱三角部はテント状に張り詰めた存在であって、生理学や解剖学専門書に記載されているような、積極的に収縮する排尿筋ではないのです。

Bnclose2この部分を縦断面にしたのが、右のイラストです。
膀胱三角部は赤く着色しています。
輪状筋と輪状筋脚はブーメラン状につながっています。膀胱三角部は上図のイラストでは表現できていませんが、実は膀胱・膀胱頚部から尿道内までの構造になっています。
次のCampbell-Walsh Urologyに掲載されているイラストで説明します。・・・

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因果応報 #2

因果応報の続きで書いたものを長文になったので、「因果応報#2」として別テーマにしました。

Inga2_3

因果応報の模式図を利用して、具体的に慢性前立腺炎について考えたのが、上の模式図です。初めの因果応報の模式図に比較してさらに複雑になります。
赤い破線は見かけ上の原因・結果の流れです。白い実線は真実の原因・結果の流れです。青い矢印は、事実関係から推理した流れです。
赤い四角マスは重要ポイントで、緑の四角マスは発生学的・解剖学的・生理学的事実です。

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因果応報

因果応報(いんがおうほう)とは、ご存知のように仏教用語です。
端的に言えば、原因があるからこそ必然的に結果が存在するということです。逆に言えば、この世に原因のない結果は存在しないとも云えます。原因を「気のせい」とする医師の何と多いことか!
私がこうして医師として生きていけるのも、私が医師になろうと思い、その道を進んだからこそ、医師としての私が存在するのです。
私が糖尿病であるのも、父の糖尿病の遺伝子が脈々と私に受継がれたからこそ、インシュリンを打っている私が存在するのです。
一見原因のない唐突な事件や事故であっても、必ず原因がある。100歩譲って現世で原因がなければ、前世に原因があったと考えるのです。私は特定の宗教を信じている訳ではありませんから、お話の内容は右から左に聞き流して下さい。

さて、慢性前立腺炎や間質性膀胱炎の表向きの原因が、細菌・ウィルス・アレルギーで、その結果が慢性前立腺炎症状・間質性膀胱炎症状になるというのが、現在の考え方でしょう。

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未病

慢性前立腺炎や間質性膀胱炎の原因が明確にできない理由があります。
それは医師も人間だからです。人間としての常識的な思考の呪縛から逃れられないからです。
人間の本能的判断は、通常、二者択一です。例えると、白と黒、右と左、善と悪、陰と陽、病気と健康、暑いと寒い、空と海、左翼よ右翼などなどです。
ところがお分かりのように、世の中はそんなに単純ではありません。本能ではなく理性的に熟慮すれば、白・灰色・黒、右・正面・左、善・偽善・悪、陰・中庸・陽、病気・未病・病気、暑・暖・寒、空・山・海、左翼・ノンポリ・右翼などなど、いくらでも細分化することは可能です。

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膀胱平滑筋の謎と秘密

前回、平滑筋というテーマでお話をしましたが、テーマが大きく内容が多方面にわたり専門的だったりして分かりにくかったかも知れません。
そこで、今回は膀胱平滑筋にしぼってお話しましょう。慢性前立腺炎の病態に、前立腺ではなく膀胱平滑筋に本質が隠れていると私は思っていますから、慢性前立腺炎の方は「何だぁ・・・前立腺じゃないのか・・・」などと思わないで下さい。
私は泌尿器科医ですから、平滑筋の専門家からすれば素人同然です。プロの切り口ではない素人の切り口で膀胱平滑筋を見ていきたいと思います。詳細に知りたい方は、日本平滑筋学会で調べて下さい。
平滑筋について分かりやすく解説のある専門書Cellular Aspects of Smooth Muscle Function (CAMBRIDGE)から、写真をお借りして説明します。

Cellaspsmfuncfig2p4【正常の膀胱平滑筋】
前回も使用した、ネズミの膀胱平滑筋の正常な電子顕微鏡組織像です。
F:筋線維芽細胞、Nとn:神経線維です。他はすべて膀胱平滑筋です。
これからの説明で、常に比較していただきたい正常組織像です。
細胞は瞳(ヒトミ)型あるいは紡錘(ぼうすい)型でほぼ均一です。細胞の一個一個に核が存在します。細胞の中に複数の黒っぽい●を見つけることができます。これが有名なミトコンドリアです。エネルギーを産生する細胞の中のシステムです。ミトコンドリアは母親のミトコンドリアのみが遺伝します。父親のミトコンドリアは遺伝しません。
組織写真は横断面なので、紡錘型の断面を観察していますから、紡錘型には見えません。大きく見える細胞は紡錘型の中央の断面で核が見えます。小さく見える細胞は紡錘型の端の部分ですから、丸みをおびて核が見えません。下のイラスト(Campbell-Walsh Urologyから)を参考に立体的に想像して下さい。

Smimagej組織標本のスライスの仕方で、すべての細胞が同じ形に見えませんし、細胞のすべてに核が入っているようにも見えませんが、本当はそうなのです。また細胞の辺縁もとても滑らかです。
細胞と細胞の間(細胞間隙さいぼうかんげき)も狭く、細胞間の情報が伝達しやすくなっています。
正常の組織像を見て、くどくどと解説しているのは、異常所見があったときに理解しやすいからです。組織が正常の構造を保つためには、整った環境でなければならないということが、後の解説で理解できると思います。

Bladderhyperrat【膀胱平滑筋の病的変化】
この図は、上の電子顕微鏡の同じ種類のネズミに実験的に排尿障害を作り、その後検査した所見です。
膀胱平滑筋の形が大きくなり、細胞内の核も腫大し染色も均一になっています。細胞質に空胞構造や切れ込み(陥入)が散見できす。平滑筋細胞の間(細胞間質)に、今までなかった物質(コラーゲン線維?)が出現しています。
排尿障害があると、このように膀胱平滑筋は変化するのです。しかし、臨床では排尿障害があっても、膀胱平滑筋は疲れているだけ程度にしか思われていないのです。医師の頭の中の想像と現実の間には、このようにギャップがあるのです。このギャップから生じる患者さんの訴えは、「気のせい」と片付けられることが多いのでしょう。

【考え方 その1】
細胞と核の形が正常時と異なるということは、生命現象にとってはとても大変なことです。
この状態を理解する方便として、膀胱平滑筋細胞を大きな工場として説明すると理解しやすくなります。
膀胱平滑筋全体が大きなオートメーション工場だと仮定すると、核は工場の中枢にあるコントロールセンターです。核が大きくなっているということは、コントロールセンターがフル稼働していているということです。コントロールセンターのコンピューターがフル稼働しているかどうかは、現実の世界では外見上は分かりません。しかし、生命活動の世界では核が大きくなっている、あるいは染色が正常ではないというのは、核が正常の状態ではないということが外見的に判断できるのです。
また、細胞が腫大している=工場がフル生産していることになります。この状態は一時的なら問題ありませんが、長期の場合には、工場の過剰生産あるいは工場内機械がオーバーヒートを起こすでしょう。従業員は過労のために次々と倒れるかも知れません。工場内の機械はオーバーヒートで発火し火事になるかも知れません。工場内には工業製品があふれ、足の踏み場もありません。工業製品の搬送もできません。
資材を調達する資金は枯渇し、工業製品の運搬路も崩壊し、この工場を持つ会社は倒産寸前です。
一枚の組織写真からここまで推理できると、病理組織学は奥行きが出てとても面白くなります。

組織学・病理学は形態学的検査ですが、上記のように、その背景にある生理学・機能学を想像しなければ生きた学問や検査にはなりません。しかし、最近の診断医は目の前の形態的異常のみに目を奪われ、その奥に潜む病態生理を見逃すことがあります。
話がずい分と横道にそれてしまいました。
この組織像から、表向きは上記のように説明がつきます。しかし、世の中は一方向からの観点からだけでは、誤った判断をすることがあります。チョッと視点を変えてみましょう。

Smimagej_2【考え方 その2】
イラストの膀胱平滑筋が収縮した絵を再度ご覧下さい。この収縮した膀胱平滑筋を中央の位置で切断すると、どのように観察できるでしょうか?
そうです、収縮していない膀胱平滑筋に比べて、細胞も核も大きく観察できるのです。つまり上の写真の【膀胱平滑筋の病的変化】は、膀胱平滑筋がすべて収縮している組織の断面図とも解釈できるのです。
核も細胞質も腫大していると判断することは、膀胱平滑筋細胞が静止状態でバカになってしまったという印象になりますが、収縮しているとなるとダイナミックな活動時の平衡状態のような印象で、全く正反対の印象です。

このネズミの膀胱組織を採取する状況を考えると、この異常さが容易に理解できます。排尿障害を作ったネズミをまず屠殺(とさつ)します。屠殺した時点ですべての筋肉、骨格筋も内臓筋も弛緩します。もちろん膀胱平滑筋もです。ところが、その後採取した膀胱平滑筋が収縮したままの形態で観察されているとすれば・・・異常でしょう?
つまりは、死んでもなお、筋肉が弛緩しない膠着状態の生きた膀胱平滑筋であったという事実に驚くばかりです。膀胱平滑筋の仕事は収縮することですから、死んでもなお収縮していると考えると、前記の【考え方 その1】の工場がフル稼働で破滅寸前という考え方にも共通するものがあります。

次に述べる専門書の実験結果は、これまでの考えを強調するものです。

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平滑筋の謎と秘密

膀胱や前立腺に存在する平滑筋は、解明されているようで実は完全には分かっていません。
私の本当の治療相手は、前立腺でもなく膀胱でもなく、実はこの平滑筋だと思っています。
この平滑筋について、少し詳細に述べようと思います。(私の空想・仮説も時々混じっていますから、だまされないように客観的にご自分の心の目でお読み下さい。)

1【α-ブロッカーとαレセプター】
私がよく前立腺肥大症や慢性前立腺炎にα-ブロッカーを処方します。α-ブロッカーは何に作用するかご存知ですか?
前立腺平滑筋や膀胱平滑筋のαレセプターに作用するのです。
αレセプターは、交感神経から放出されるノルエピネフリンに反応して、平滑筋を収縮させます。α-ブロッカーはこのノルエピネフリンとαレセプターの間に邪魔に入り、その作用を弱め、平滑筋の収縮を抑制し弛緩させるのです。
平滑筋は、心臓を除くすべての内臓や血管に分布します。その部位によってレセプターの種類が異なります。
血管はα1b、前立腺はα1aとα1d、膀胱はα1dレセプターにすみわけができます。(図ではα1dは?になっていますが・・・)

Mcomparison【筋肉の種類】
平滑筋はどのような特徴があるのでしょうか?
この図は、平滑筋・心筋・横紋筋の特徴を示した表です。平滑筋は内臓筋で、横紋筋は骨格筋です。心筋は筋肉の種類からすると横紋筋ですが、働きは力強い内臓筋の作用を持っています。要するに心筋=(横紋筋+平滑筋)÷2の性格を持っています。
横紋筋の収縮は神経に完全に依存しています。そして緊張度は筋紡錘という特別な装置でコントロールされています。
心筋は、多数の心筋細胞がペースメーカーの働きで全体として一つのまとまった動きをします。しかしペースメーカーの働きが弱いと、それぞれの心筋が勝手に収縮します。それが不整脈です。心筋は隣り合う筋肉同士の電気的情報のみでコントロールされていて、緊張度をはかる感覚器(筋紡錘)はありません。
平滑筋は、神経に完全にコントロールされたグループ(血管など)と、筋肉の電気的結合によって一つが全体に、全体が一つにまとまった動きをするグループ(胃・膀胱・子宮など)とに分けられます。平滑筋の緊張度をはかる感覚器がないにもかかわらず、平滑筋は緊張・収縮を適度に保っています。これが不思議なのです。

Smoothmb【平滑筋の仕組み】
平滑筋は、神経刺激や化学伝達物質、ホルモン、物理的伸展刺激などにより、カルシウムイオンを細胞内に取り込み、収縮をします。すなわち平滑筋内のカルシウムイオン濃度が高まると収縮するのです。
刺激が強いと、当然収縮するのですが、生理的には一定の緊張度を保ちながら我慢するのです。感覚器がないのに緊張度をはかれないのに我慢するのです。これが不思議な現象です。
例えば、オシッコがいっぱいたまったのに我慢できるシステムの詳細が、生理学でも臨床医学でも完全に解明されていないのです。

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お答えしましょう。#2

727 :病弱名無しさん:2007/08/06(月) 22:19:19 ID:l9iMNv0D0
>713
>私は排尿障害が原因だと思いますが、なぜ膀胱頸部が硬化するのかが疑問です
>Tクリのブログの説明でもその点は納得できません。
>もちろん生まれつきや、成長過程の不具合などもあると思いますが、それにしては人数が多い気がします。
なんで硬化するんだろうね。自分もこれは不思議に思う。
成長過程で硬化するような原因があるんだろうか?
排尿という生物にとって大事な行為でこういう症状が起こるのは本当に勘弁してほしい。

【高橋クリニックからの回答】
例えば、「ペンだこ」ができて、「何故ペンだこが出来たのだろう?」と思いませんよね?
空手家のこぶしに「たこ」が出来ているのは当たり前ですよね?
お神輿をかつぐのが大好きな人は、肩に「神輿だこ」が出来ています。
窮屈な靴を履いたのをきっかけに、「魚の目」「たこ」が出来ることがあるのは日常的です。
皮膚組織に関してだけの例えですが、臓器を含めて動きのある組織に慢性的で無理な物理的刺激があれば、「たこ=組織の硬化」は発生するのです。

ある製薬会社と学会が共同で大規模な統計発表をしています。それによると、40歳以上の日本人男女のうち800万人に「オシッコの悩み」があることが分かりました。
もしこの統計対象を20歳まで下げて実施したら、恐らく1千万人は超えるでしょう。日本人の10人に1人は「オシッコの悩み」があることになります。並みの数字ではありません。
「人数が多い気がします」と言われますが、事実、上記の統計のように膨大な人数になるのです。

話が違うけど、小さいときに盲腸手術などで下半身麻酔している人に排尿障害の人が
多いとブログ゛に書いてあったね。
ちなみに、自分はそんな経験ありません。

【高橋クリニックからの回答】
慢性前立腺炎症状で来院する4人~5人に1人が虫垂炎手術や脊椎麻酔の既往があるということです。
虫垂炎手術は、日本では15人に1人の割合ですから、慢性前立腺炎患者さんは異常に多いことになります。
ただ、言い換えれば慢性前立腺炎患者さんの75%~80%は虫垂炎手術は受けていません。虫垂炎手術を受けているということは、十分条件ではありますが、必要条件ではありません。

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お答えしましょう。

このブログをすべて読めば分かると思いますが、一部を読んで、理解できないと否定されるのは癪に障るものです。
掲示板で次のような疑問が掲載してあったので、お答えしましょう。
=====================================================================
711 :病弱名無しさん:2007/08/04(土) 01:50:58 ID:amqVxw420
αブロッカーいろいろ試しました。
確かに尿の出は良くなります。
しかし全く痛みは取れません。。。

【高橋クリニックからの回答】
短期間の服用では効かないことがあります。同じ薬を3ヶ月以上服用しましたか?
水分を取り過ぎるとα-ブロッカーを服用しても効きません。
また、ハルナール・ユリーフが効くタイプとフリバス・アビショットが効くタイプがあります。どちらもお試しになりましたか?
服用したα-ブロッカーはジェネリック(後発品)ではありませんか?ジェネリックは先発品と比較して作用が50%~30%以下にしか過ぎません。α-ブロッカーに関しては、値段が安くて作用が落ちるのがジェネリックです。
そうでないとすると、α-ブロッカーの効果が出る時期を過ぎて病気が進んだと考えます。
病気が深くなると、簡単な治療では治せなくなるからです。

T先生の理論って正しいのか疑問。
でもやってみないと分からないしなぁ。

【高橋クリニックからの回答】
正しいのかどうかは、私にも分かりません。
病気で苦しむ患者さんから得られたデータを論理的に(私の独断ですが)組み立てて見出した理論です。方法が論理的だから正しい理論とは限りません。
論理には必ず落とし穴があって、それを無視すると間違った理論になることは周知の如くです。
疑問がある内は実施しない方がよいでしょう。私の治療結果は100%ではない訳ですから・・・。

ホントに治る人が多いのなら、BLOGのコメント欄に
もっと書き込みあっても良い筈。

【高橋クリニックからの回答】
実際に書き込みがない訳ですから仕方がないですね。
貴方はひどい風邪をひいて地元の開業医を受診し治った時に、「お陰さまで」と御礼に行ったことがありますか?
人間は喉下(のどもと)を過ぎると、過去のことはどうでもよくなるのです。
私の存在は走馬灯の「馬」に過ぎません。

もっと賛同する医者もいる筈。
【高橋クリニックからの回答】
同業者が読む訳ないでしょう。
貴方は、自分のお仕事の中で疑問に思ったこと、あるいは常識だとお思っていて他人はどのように考えているだろうと詳しくインターネットで探して常に勉強していますか?インターネットの情報価値は、その専門家が調べるような情報源ではありません。
畑違いの人が読む情報源に過ぎません。このブログを読むのは慢性前立腺炎で苦しむ患者さんだけです。

学会に発表しないのは何故?
【高橋クリニックからの回答】
年間に500人以上の慢性前立腺炎の患者さんと150人以上の間質性膀胱炎の患者さんを私一人で診察・検査・治療しています。年間の手術件数は内視鏡手術を含めて約400件以上です。すべて一人で行なっています。私のクリニックは、標榜科目が泌尿器科以外に外科・整形外科・内科・胃腸科・リハビリです。要するに総合診療を目標に診療を行なっています。医師会の仕事、代替医療団体の理事の仕事も行なっています。
それらのことを放置して、慢性前立腺炎の学会発表にエネルギーを向けるだけの余裕はありません。私はそれ程能力のある人間でもありませんし時間もありません。高々街中の開業医です。

デパスなんて出して誤魔化すのは何故?
【高橋クリニックからの回答】
デパスは脊髄神経と自律神経の興奮を抑える目的で処方しています。理由はブログに記載されている通りです。
これを誤魔化しと茶化すのであれば、精神科や心療内科で処方する薬はすべて誤魔化しなのですか?
肩こりの筋弛緩を目的にする整形外科のデパスの処方も誤魔化しですか?

痛み系と頻尿系の処置が同じのは何故?
【高橋クリニックからの回答】
排尿障害が「始めに在りき」で、その後病気が長期になるに従い様々な症状が出現します。
ですから、痛み系と頻尿系の治療法が同じであることに何の疑問はないはずですが。
例えば、結核という病気の際に、「微熱と体重減少」の患者さんもいれば、「咳と痰」の患者さんもいます。治療法はどちらも結核菌の駆除です。同じ治療です。
痔、クモ状血管腫、腹水、食道静脈瘤、黄疸、これら一つ一つは肝硬変の初発症状です。肝硬変の治療は、これら異なる症状であっても、治療は原則的には同じです。
目先の症状だけに目が曇り、本質を治療できないのは患者さんにとって不幸です。痛みだけの治療、頻尿だけの治療で慢性前立腺炎が治っているのなら、このような掲示板はない筈です。
====================================================================
【患者さんからの励ましのお便り】

高橋知宏  先生
やっと夏本番となりました。
カルテNO.・・・89の○○です。

さて、ココログほぼ毎日楽しみに拝見させて頂いております。
近日の先生のブログ、2ちゃんねる書き込みに向けての回答ですよね。
拝見しましたら結構先生に対して癇に障るコメントが書き込まれていますよね。

回答は先生のおっしゃる通りだと思います。
今までの治療で、何の効果も無いのなら間違っているか、別のところに原因があると考えるのが筋だと私も思います。
ただ、人によって考え方が違いますし、既成概念の範囲内治療を済ます方、病気そのものに対しての理解力しいてはブログに対しての読解力の差がありますから、なかなか上手く伝わらないのかもしれません。

私は先生のところに伺う前と比べると、ずっと病状は改善じてきているのですが・・・
ネット上では中々伝わらないですよね。

今回先生の回答で、一定の読解力のある方には伝わると思います。
私は先生の考え方に賛同いたします。

私事ですが、勤め先の院長(京大卒)も私の病気に対して理解しておりません。
やはり頭が邪魔をするのでしょうか?

柔軟な発想で、治療を続けて頂いて本当に感謝いたします。
患者の一人として、また医療従事者の一人として応援いたします。

6月にフリバス処方していただいて、今現在はかなり悪化した時よりだいぶ関連痛は収まっております。
また、過敏性腸症候群の方もだいぶ上手くコントロールできています。
やっぱり互いに関連してますね。

11月は3回目のOPとなりますが、宜しくお願いいたします。

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宮崎県○○○○
○○○○
E-mail: ○○○○@○○○○.jp
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水分のとり過ぎに注意!

Img14_water巷では、水分健康法なるものがあります。大量の水を飲むことにより血液をサラサラにして健康になりましょうというものです。
その影響で、老若男女がお茶やミネラルウォーターのペットボトルを片手に、常に水分補給しています。
尿路感染症や尿路結石の患者さんの日常生活の注意点として、医師は患者さんに大量の水分摂取を奨励します。
慢性前立腺炎は尿路感染症の病気とされていますから、泌尿器科医は当然のように大量の飲水を強要します。
しかし大量の水を飲んで慢性前立腺炎症状が改善した患者さんが本当に存在するのでしょうか?

Photo_2例えば、あなたが高級スポーツカーそのものだと仮定してみてください。時速250kmで走れる自動車だとするのです。
車の調子を維持するためには、たまには時速250kmの最高速度で走行しなければなりません。
3ところが、そんな高級車でも、ひとたびタイヤがパンクした場合には、そんなことは言ってられません。
たとえタイヤが1個パンクしただけでも、時速250kmは出せません。もしもタイヤのパンクを無視して高速で走行したら命取りになります。容易に想像できるでしょう。

排尿障害が存在して、慢性前立腺炎症状になった患者さんは、満足な排尿ができません。それなのに細菌性慢性前立腺炎の治療と同じように、大量の水分を摂取して頻回に排尿するとすれば、タイヤがパンクした状態で最高速度で走行するスポーツカーとどこか似ていると思いませんか?
治りの悪い慢性前立腺炎の患者さんには、水分摂取を控えるように私は指導しています。1日3回の食事に含まれる水分と1日多くて2回のお茶の時間の水分摂取で十分です。すると、水分制限だけで半数の患者さんは症状が軽くなります。
水分を好きなだけ摂取してよいのは、排尿障害のない本当の細菌性慢性前立腺炎の患者さんだけです。
細菌性慢性前立腺炎も非細菌性慢性前立腺炎も、治療や生活上の注意点が同じだと思っている医師が存在するのは悲しい事実です。

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慢性前立腺炎の病気深度と治療深度

慢性前立腺炎や間質性膀胱炎の患者さんを診察し治療すると、様々なパターンに遭遇します。
簡単に治る人もいれば、正直なかなか治らない人もいます。
私の治療の技量によるところも当然ありますが、病気の進み具合(病気深度)に関係する所が大きいように思えます。病気深度が深ければ、治療も深く掘り下げなければなりません(治療深度)。

例えば、火傷・熱傷の治療と比較すると分かりやすいです。
熱傷Ⅰ度は、表皮の発赤程度を示しますが、冷却のみで治療も容易です。後遺症も残さず、正常な皮膚になります。
熱傷Ⅱ度は、水泡やびらん状態のやけどです。細菌感染に注意しながら表皮や皮下組織の再生を促すように積極的な治療が必要です。やけどの跡は残り、場合によっては引きつれやケロイドになります。2次的な形成手術が必要になります。
熱傷Ⅲ度は、熱障害が筋層まで及ぶ状態で、極端な場合、炭(炭化)した状態です。壊死した組織を切除して、皮膚筋肉血管移植が必要になります。移植した部分も移植で切除された部分も、大きな傷になり、後遺症として傷が残ります。
「やけど」とごく普通に聞きなれた障害でも、熱の深達度によっては、治療法も全く異なるのです。

慢性前立腺炎や間質性膀胱炎を点や平面で考えると、病気の本質も治療法も点や平面で行われて出口が見つからなくなります。三次元・立体的に病気を考えると、出口が見つかるかも知れません。

現在、私の頭の中のイメージを下記のように図式化しました。

Depth_2

排尿障害から来る本来の症状(尿が出にくい・残尿感・軽い頻尿)であれば、ハルナールやエブランチルなどのαブロッカー服用で症状がコントロールできます。その時点で内視鏡手術を希望されれば、単純な手術で治療できます。

しかし、自覚・無自覚のまま排尿障害を長く放置すれば、病気が深く進行します。すなわち度重なる排尿障害の刺激で膀胱三角部が肥厚します。膀胱三角部の肥厚は常に脊髄神経を刺激します。そうなると脊髄神経ネットワークが発達して、関連痛症状が出現します。会陰部痛・ペニス痛・肛門痛・大腿シビレ・足痛などなどです。
αブロッカーや単純な内視鏡手術では症状が改善しません。
例えば、前立腺肥大症患者さんが内視鏡手術で前立腺を切除しても、症状が改善しないことがあるのはこのためです。この場合、さらに一歩進んで、膀胱三角部減張切開手術を行なわないと症状の改善をみないのです。

さらに病気が深く進行すると、脊髄神経ネットワークの発達から脊髄神経ネットワークの混線・混乱を招きます。脊髄神経内に関連痛発作の爆弾を抱えているようなものです。高度な内視鏡手術で膀胱三角部減張切開手術を行なっても、膀胱の感覚のすべてが消失するわけではないので、わずかな膀胱刺激が出現しても脊髄内の爆弾回路にスイッチが入ってしまうとイメージしていただければよいでしょう。
その場合は、デパスなどの精神科・心療内科領域のお薬の処方や定期的な仙骨神経ブロックなどを行なわなければなりません。
また、2度目・3度目の内視鏡手術の可能性もあります。

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慢性前立腺炎に関する私の考え

慢性前立腺炎に関するご質問が多いので、ここに私の考え方を簡単にまとめました。
さらに詳しくはブログ内のそれぞれのページをご覧下さい。(2005年4月の記事です)

【基本概念】
難治性慢性前立腺炎・前立腺症・前立腺痛・慢性骨盤疼痛症候群・非淋菌性非クラミジア性尿道炎は原因が排尿障害であると私は信じている。
排尿障害の治療をしないで、原因不明の細菌性感染症や心因性疾患として、抗生剤・抗うつ剤で治療するから、いつまで経っても治らない。
健康食品や機能性食品は一時的な改善はあるかもしれないが、治療目標がずれているので完全な軽快にはならない。
日常生活をどんなに健全なものにしても治らない。

【病気の本質】
ほとんどの原因が、機能性膀胱頚部硬化症、膀胱排尿筋内尿道括約筋協調不全、膀胱出口閉塞症、前立腺中葉肥大のいずれかである。
基本的には、発育期の膀胱の発育不全がほとんどであろう。
4人に1人が虫垂炎手術のための脊椎麻酔の既往があるので、脊椎麻酔の後遺症も原因の一つとして疑っている。
これらの病気による長期間にわたる慢性的軽微な排尿障害が、慢性前立腺炎にそっくりな症状を作る。症状が同じだから慢性前立腺炎として治療される。

【症状】
下半身の症状であれば何でも起こりうる。
尿道痛・睾丸痛・会陰部痛・肛門痛・尿漏れ感・太もも内側痛・腰痛・背部痛・足の裏痛などである。痛みの他にそれぞれの部分の熱感・しびれ・痒みなどでも同じである。
頻尿・残尿感・排尿障害などもある。
射精時あるいは射精後の痛みもある。
上半身の症状も起こりうる。

【検査】
排尿障害を直接的・間接的に証明できればよい。
1.超音波エコー検査(膀胱粘膜の肥厚・膀胱壁の静脈うっ血・膀胱出口のハイエコー・出っ張り・前立腺結石)
2.尿流量測定ウロフロメトリー検査(息み時間が長い・勢いが弱い・グラフの山がギザギザ排尿曲線)
3.残尿量測定検査(残尿が10ml以上の存在)
上記の検査でいずれか一つでも異常があれば、排尿障害とする。
排尿障害が確認できれば、内視鏡検査はあえて行う必要はない。
尿検査・レントゲン検査・EPS検査は参考程度である。
細菌培養検査を行っても、健常者と慢性前立腺炎患者さんとの間に有意差がないという報告(2003年J.URO)もある。

【治療】
排尿障害治療薬であるα-ブロッカーのハルナール・フリバス・アビショット・ユリーフ・エブランチルを使用する。
薬剤で効果が得られなければ、仕方がなく内視鏡手術を行う。
排尿障害を改善しても症状が改善しない場合がある。その時点で仙骨神経ブロックや抗うつ剤を利用する。

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振動エネルギーと前立腺症状

ある時、フッと気が付いたことがありました。
一人の患者さんの膀胱頚部硬化症の内視鏡手術の際にです。手術器械がなかなか挿入できないほど、膀胱頚部が硬くて狭いのです。排尿障害になって当然の所見です。
ところが、この患者さんは、ハルナールを服用して、症状がとても軽快していたのです。しかし、一生薬を服用したくないということで、内視鏡手術をすることになったのでした。
αブロッカーであるハルナールを服用すると、前立腺内の収縮緊張している平滑筋αレセプターを阻害して、平滑筋の緊張をゆるめ、その結果、排尿の際に前立腺が軟らかくなるから尿道抵抗が減少して排尿が楽になるという筋書きです。
この内容からは、なるほどなるほどと思ってしまうでしょう?
でも、もし膀胱出口に前立腺の代わりに、前立腺と同じ形大きさの穴の開いた軟らかいコンニャクを装着した場合と、穴の開いた前立腺と同じ形大きさの金属を装着した場合とを比較してみましょう。
膀胱が収縮して排尿する時に、コンニャクと金属とどちらが楽に排尿できるでしょうか?軟らかいコンニャクの方が出やすくて、固い金属の方が出にくいでしょうか?何とも言えないでしょう?固い金属の方の出が良いことがあるかも知れないと思われる人もいるでしょう。さて、このようにαブロッカーの尿道抵抗低下という治療理論だけでは、真実をすべて表現している訳ではないと、私は考えています。

そこで、思いついたのが振動と振動エネルギー仮説です。
以前に振動原因説で述べたように、膀胱頚部硬化症は、膀胱出口の振動が症状形成に重要な働きをします。
振動する理由に関しても、テコの原理から説明もしました。
膀胱出口の振動が、症状に結び付くのが、今ひとつピンと来ないでしょうから、ここで詳しく述べたいと思います。

Topics072501p180espana3 【愛・地球博でフラメンコギターを弾くパコ・デ・ルシアさん】

Herz【ウィキペディアから】

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増幅装置としての病気

心身症・神経症・ノイローゼ・気のせいだと、誤解されがちな多彩な慢性前立腺炎の症状を関連痛という概念で今まで解説してきました。しかし、この概念の根本は、病気を中心にした考え方です。つまり非日常的な考え方なので、一般の方には今一ピンと来ないでしょう。
そこで、正常な状態を中心にした考え方を解説しましょう。
【正常な生理的神経の流れ】
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上図は健康時の正常な神経の伝達経路を分かりやすく図示したものです。
日常生活で、体外の環境から受ける様々な刺激を、体中のあらゆるセンサーが受信して、脊髄神経を介して脳中枢に伝達されます。脳中枢では適度な感覚で、自覚しない時もあるほどの感覚です。

【増幅装置としての病気の存在】
Zofuku
しかし、内臓などに病気が存在すると、慢性前立腺炎では排尿障害ですが、脊髄神経の正常な流れの中にその病気の刺激が割り込んできます。割り込んでくるだけなら良いのですが、その刺激が脊髄神経に複雑な回路を形成し、まるで増幅装置(アンプやブースター)のように働くのです。末梢の感覚センサーから来た電気的信号の情報は、この増幅装置で電気的に増幅・脚色され、脳中枢に異常感覚として認識されてしまいます。
異常事態と判断した脳中枢は、運動神経や自律神経を介して、末梢の感覚センサーの内外周囲の環境を変化させます(フィードバック刺激)。センサーの感度を高めたり、血流を変化させるのです。その結果、末梢の感覚センサーの情報は、実質的にも増加して脊髄神経に流入します。すると脊髄神経の増幅装置でさらに情報が増幅され脳中枢に伝達される、というエンドレスの悪循環が形成されます。病気の原因が、些細な排尿障害であっても、慢性前立腺炎の症状が辛くてどうしようもない原因がここにあるのです。

【排尿障害が脊髄神経増幅回路の原因の場合】
Zofukut2
脊髄神経内の増幅回路形成の原因として、理論的にはいろいろな病気がある筈です。ここは慢性前立腺炎をテーマにしているブログなので、排尿障害を例に上げましょう。
私が提唱している機能性の膀胱頚部硬化症や前立腺肥大症などの排尿障害が存在すると、膀胱三角部は排尿時の膀胱出口の振動により生理的反応で硬い組織になります。膀胱三角部が硬くなるためには、硬くなるための成分が存在する訳で、その成分が膀胱三角部のセンサーを狂わせ、センサーが常にオンの状態(壊れて鳴り続ける非常ベル)になり脊髄神経を刺激し続けます。脊髄神経内のニューロン(神経細胞)は細胞の樹枝突起を張りめぐらし、手当たり次第に様々なニューロンの樹枝突起シナプス結合をします。そのニューロン同士の複数の結合が、一定の意味を持った神経回路を形成し、それが増幅回路として働き、他の感覚センサーからのニューロンを刺激し、脳に誤解させるような大量の情報を送るのです。
大量の情報を送られた脳は、複雑な手順を踏んで末梢の器官・臓器・感覚センサーにフィードバック刺激として繰返し情報を返します。
フィードバック情報は、末梢の器官・臓器・感覚センサーを過敏にし変容させます。その例が膀胱三角部の肥厚硬化現象です。そのため膀胱三角部は益々過敏になり、脊髄神経を刺激し増幅回路は確固たる存在になるのです。

【治療方針と戦略】
Zofukut_1
上記の病態生理を十分に理解した上で、治療方針や治療戦略を立てなければ、意味のない治療を続けることになります。上で示した慢性前立腺炎という病態には、病原菌は登場しません。ですから抗生剤を治療手段として長期間使用しても効果のない無駄な治療を行なっていることになるのです。
治療として①~⑧までの目標部位があります。
①は排尿障害の治療です。内服薬としてハルナールやエブランチルなどのα-ブロッカーを利用します。しかし排尿障害が、可逆的ではなく非可逆的な場合には、内服薬が無効です。その際には内視鏡手術が適応になります。
②は膀胱三角部の過敏さの治療です。膀胱三角部の伸展レセプターを抑える治療になります。内服薬としてブラダロン・ポラキス・バップフォ・デトルシトール・ベシケア・ポララミン・IPDなどがあります。しかし伸展レセプターを目標として正面から治療する薬は存在しないので、効果は不安定です。内服薬が無効の場合には、内視鏡手術として膀胱三角部減張切開手術を行ないます。伸展レセプターは、膀胱三角部の筋肉内に存在するので、電気メスで筋層まで十分に切開しないと伸展レセプターを破壊することはできません。
③~⑧までの治療は、内服薬の保存的治療しか存在しません。治療目標は、末梢神経・脊髄神経・脳中枢神経の神経です。この領域は未知の領域でブラックボックスです。脳神経外科・心療内科や精神科で使用するお薬が、候補として処方されます。
抗うつ剤(ドグマチール・グラマリール・トフラニール・トリプタノール・デプロメール・トレドミン)、
抗不安剤(デパス・リーゼレキソタン・メイラックス)、
抗てんかん・抗ケイレン剤(リボトリールデパケン)、
自律神経調節剤(ウブレチド・グランダキシン)などです。
外科系の泌尿器科医としては、本当に苦手の領域になります。

【内視鏡手術してもなかなか治らない原因】
Zofukut3
さて、このブログの「患者さんからのレポート#∞」でご紹介しているように、すっきり治らない人、何回も手術を必要とする患者さんがおられます。図で示すように、手術を行なっても脊髄神経内の増幅装置・回路が、すでに確固たる地位を築いている場合には、感覚センサーからの情報が、手術前と同じように誤解されて脳中枢に伝達されるからです。
このような場合には、③~⑧の治療薬剤を使用します。私が多く処方するのが、ご存知のデパスです。

【新しい沈静神経回路の誕生】
Zofukut4_3
デパス(図の中のD記号)を使用し続けるのは、重要な意味があります。脊髄神経内に新たな神経回路が形成されるのを期待しているからです。
排尿障害がなくなり、膀胱三角部も落着いてくれば、増幅回路を支える刺激はなくなります。デパスなどの神経作動薬で、脊髄神経内の増幅回路に刺激が入らなければ、増幅回路のニューロン・シナプス結合は、ゆるみ・外れて回路自体は不完全になります。その間に、感覚センサーからの刺激が他の回路を経由してくれれば、そちらが沈静回路ともいうべき存在になります。
「デパスをいつまでも一生服用しなければなりませんか?」という質問を受けます。増幅回路に対抗できるだけの沈静回路が確立すれば、服用しなくてもよいのです。

沈静回路形成をただひたすら当ても無く待つのは、あまりにも消極的です。最近では、もっと積極的にこの神経回路を作りたいと考えています。その方法として、仙骨神経ブロックと低周波治療があります。
仙骨神経ブロックは内視鏡手術の際に行なう麻酔です。もちろん手術と同じ程度・深さの麻酔は外来ではできません。麻酔の濃度を薄くし麻酔量も少なくして定期的に(1週間に1回~2回)行ないます。仙骨神経ブロックを行なうと、感覚センサーからの脊髄神経内へ注ぐ情報が激減します。それまで常に大量の情報が脊髄神経内の増幅回路に注がれていましたから、増幅回路もビックリです。ビックリしたショックで増幅回路も調子を崩してしまうのです。それを定期的に行なえば、沈静神経回路の形成を促せるというのです。
低周波治療による下半身の刺激療法は、以前から存在しています。膀胱三角部からではない他の刺激を繰り返し行なうことで、沈静神経回路を作るのです。全国の施設で慢性前立腺炎や間質性膀胱炎の患者さんに積極的に使用していますが、今ひとつ効果が上がらないのです。理由は簡単です。排尿障害や膀胱三角部を治していないからです。これらの部分を治さなければ、膀胱三角部からの刺激は脊髄神経内の増幅回路に常に注ぎますから、低周波治療での定期的な刺激では、増幅回路に勝てるだけの沈静回路ができる訳がありません。
最近では、個人が購入できる低周波治療器が発売されています。チョッとお高いようですが、試してみる価値がありそうです。刺激する部位は、痛みや不快感ある場所とは異なる場所にして下さい。例えば、会陰部痛であれば、仙骨部や大腿内側(太ももの内側)を刺激するといった具合です。試行錯誤して、ご自分に合った箇所を見つけます。
鍼治療・お灸・トリガーポイント注射なども、同じ理由で脊髄神経内の沈静回路形成に役立つ筈です。


私が現在、慢性前立腺炎や間質性膀胱炎の患者さんに対する治療戦略は、上述の如くです。決して単純ではないでしょう?未完成です。揺るぎない病態と診断と治療法が確立するまで、道のりは長そうです。これからも無い頭を絞ってアイデアを出します。高橋クリニックに通院・治療中の患者さん、私は頑張ります!

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ポーカー・ゲーム

Casino【007 カジノロワイヤルのポーカー・ゲーム場面より】
慢性前立腺炎で来院される患者さんは、その多彩な症状について疑問を持たれる方が大勢おられます。その際、私はポーカー・ゲームを例えにして説明しています。
ポーカー・ゲームは、参加者が各々引いた5枚のカードの内容に応じた優劣が決められていて、その勝敗を決めるものです。公式の場面では、中央に親がいます。
さて、ここに「慢性前立腺炎」というゲームがあります。患者さんはもちろんゲームの参加者です。ゲームの流れを作る親は「排尿障害」です。ゲームテーブルは脊髄神経中枢です。親が配る5枚のカードの内容に応じて患者さんの症状が決まる訳です。

カードにはトランプカードと同様に様々なマークや意味が印刷されています。
排尿障害カードには、息み時間が長い、尿線分裂、尿線噴水、なかなか切れない、尿道に尿が残る、残尿感と種類があります。
頻尿カードには、1日3回、5回、8回、16回、20回と種類があります。
痛みカードには、会陰部痛、鼠径部痛、尿道痛、肛門痛、陰茎痛、睾丸痛、足痛、腰痛、と種類があります。
自律神経カードには、冷え、火照り、汗、EDと種類があります。
ジョーカーは、どんな症状でもOKの万能カードです。蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、尿臭、シビレ、痒みなど様々です。

患者さん:太郎さんのカードを拝見しましょう。頻尿カード3枚と痛みカードが2枚です。頻尿カードには3回、3回、8回のカードです。痛みカードは会陰部痛と鼠径部痛の2枚です。したがって太郎さんの症状は、1日14回の頻尿と会陰部痛と鼠径部痛ということになります。親が「排尿障害」にもかかわらず、排尿障害カードを配られていないので、排尿障害症状は認めません。

患者さん:次郎さんのカードを拝見しましょう。頻尿カード(5回)1枚に痛みカード(会陰部痛)1枚に、何と!ジョーカー3枚です。ゲームの親は勝敗を早く終わらせたいので、万能カードであるジョーカーをたくさん配ります。次郎さんの症状は、会陰部痛・陰嚢の痒み・尿臭・蕁麻疹です。1日5回の排尿回数は正常なので症状にはなりません。

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慢性前立腺炎と「ベルヌーイの定理」と「てこの原理」

難治性の慢性前立腺炎の原因として、膀胱出口閉塞症、膀胱頚部硬化症、小さな前立腺肥大症などの排尿障害が大本の原因だというのが私の自論です。(ご批判も多いようですが・・・)
排尿障害といえば、男性の前立腺肥大症が代表的な病気ですが、この前立腺肥大症の排尿障害については、別のブログでご説明していますので、そちらを参照して下さい。

【正常の排尿メカニズム】
Vernmlstこの図は、尿をためている際の下部尿路の状態です。膀胱・前立腺・尿道の順に図式されています。
黒い矢印は、上から順に、内尿道括約筋(膀胱平滑筋)、前立腺内平滑筋、外尿道括約筋(骨格筋)です。
平常時は、これら筋肉は閉まっていて尿を外に出さないようにしています。

Vernml_1さて、ひとたび排尿命令が脳中枢から伝達されると、これら筋肉はいっせいに開放されて、排尿になります。
自分の意志でゆるむのは骨格筋である随意筋の外尿道括約筋で、他の二つ筋肉は不随筋の内臓筋ですから、自律神経を介して自動的にゆるみます。
白い矢印は各筋肉がゆるんでいる状態を示します。
勢いよく青い矢印のように排尿されます。前立腺部尿道を尿流が勢い良く流れますが、ここに流体力学的な負の要素が出現します。それがベルヌーイの定理です。

【ベルヌーイの定理】
Bernui_1排尿障害を説明するのに必要な物理学の法則として、ベルヌーイの定理があります。この定理は流体力学に必ず出てくる重要な法則です。排尿の尿流は流体力学の素材でもありますから、この定理を知った上で、前立腺肥大症や慢性前立腺炎(膀胱頚部硬化症)の排尿障害を考えると、とても理解しやすくなります。
空気や水などの粘性のない流体が、一定の閉ざされた空間を流れる時、どの時点においても流体の全エネルギーは常に一定であるという法則です。
大雑把で正確ではありませんが、理解しやすい式として表すと、
P1+V1=P2+V2=P3+V3=・・・=Pn+Vn=K(一定)
P:流体の圧力、V:流体速度の二乗の1/2

になります。つまり、流れがゆるやかな時には圧力が増し、流れが速い時には圧力が低下するというのです。
電気掃除機の吸引口とゴミをためるダストボックスを考えれば、ベルヌーイの定理の応用だということが理解できます。吸引口は狭いので空気の流れが速く、そのため圧力が低下してゴミを吸い上げます。掃除機の本体の中では広いスペースに空気の流れが入りますので、流れの速度は遅くなり、圧力は増すので、ゴミを置いて行きます。
また、ソバを食べる時に、口元をすぼませてソバをすする自然な行為は、ベルヌーイの定理を無意識に利用していることになります。

【膀胱出口閉塞症の場合】
Verboo膀胱出口が十分に開放しない膀胱出口閉塞症や神経因性膀胱の場合、流体である尿は狭い穴を通過するので流れが速くなり、前立腺部尿道を流れる尿は急流(ジェット流)になります。流れが速くなると、ベルヌーイの定理で説明したように圧力が急激に低下して、吸引力(赤い矢印)が作用して前立腺が引っ張られ、尿道が狭くなります。
高齢の男性は前立腺が硬いので、前立腺の拡張する力が弱く吸引力に負けて、排尿障害が強く出ます。
若い男性は前立腺が軟らかいので、前立腺は十分に拡張して尿道は広くなりますから、尿道粘膜に陰圧がかかり渦流が生じます。その渦流が前立腺部尿道粘膜にポリープ結石を発生させるのです。
ここには、それ以外に紫の疑問符?で示した黒い矢印の力が、膀胱出口にかかります。

Verboo2排尿時に、膀胱出口=前立腺入り口が開きが悪く狭いままですが、前立腺出口は外尿道括約筋の働きで十分に開きます。すると、前立腺出口が力点になり、膀胱出口が作用点になるような前立腺内に仮想のてこが出現します。そして、ますます膀胱出口を狭めるのです。
そして、機能性ではない器質的な病気、膀胱頚部硬化症に進んでいくのです。

【膀胱頚部硬化症の場合】
Verboo3排尿のたびに、この状態が続く訳ですから、膀胱出口はその刺激に耐えうる生理的形態をとろうとします。筋肉組織が発達し線維組織が増殖し、遂には膀胱頚部硬化症という状態になるのです。すると、ますます膀胱出口は狭くなり、前立腺部尿道を流れる尿流は速くなるので、吸引力はさらに強大となり、排尿障害が強くなります。この状態は、膀胱や前立腺に物理的負荷を掛け続けますから、症状として現れると、慢性前立腺炎症状になるのです。

【ハルナール・フリバスが効くメカニズム】
Verboo4この仮想のてこの原理を想定すると、ハルナールやユリーフなどのαーブロッカーが排尿障害の治療薬として作用する理由が分かります。
αーブロッカーは前立腺組織内の平滑筋の緊張をやわらげる薬理作用があります。つまり前立腺を柔らかくするのです。すると、前立腺内の仮想のてこは、軟らかいてこ、あるいは関節を持った中途半端なてこになってしまうので、作用点が消失します。あとはベルヌーイの定理で生じた吸引力のみが排尿障害の原因になるので症状が軽減するのです。
しかし、膀胱頚部硬化症の硬いタイプにまで病気が進むと、膀胱出口が非常に狭いので、吸引力が強くなりハルナールでも対処できなくなります。

【補 足】
掲示板の質問にお答えします。
ロシアの文献の「前立腺導管の開口部が塞がり慢性前立腺炎の原因になる。前立腺部尿道を吸引すれば導管が開放されて治療できる。」という趣旨の文献に関しての質問だったと思います。
私の提唱する排尿障害→膀胱頚部硬化症→慢性前立腺炎という病態では、ここでご説明したように前立腺部尿道内は常に強力な吸引力が働いていますから、経尿道的吸引療法では前立腺導管開口部は開かないという考えです。
また、膀胱出口が狭くなく正常でも、前立腺部尿道を流れる尿流速度はとても速いので、前立腺部尿道には常に陰圧の吸引力が働き、前立腺はそれに負けないように開こうと常に努力しています。

Verboo5_1もしも、吸引力が支配している前立腺部尿道内に、陰圧ではない陽圧的な要素があるとすれば、キャビテーションという現象が考えられます。
船の下の水面下で回転しているスクリューを観察すると、細かい泡が発生しています。これがキャビテーション現象です。
これは、急速の流体中の急激な圧力の低下により、水の沸点が低下して、水分子の運動が活発になり、水が気化し水蒸気の気泡ができる現象です。発生した気泡はすぐに消滅しますが、気泡の発生・消滅の過程で超音波や衝撃波が発生します。ポンプやスクリューなどが壊れる原因の一つとしてキャビテーション現象は、設計技師のとって避けて通れない難問です。それが、前立腺部尿道の粘膜に陽圧的な刺激を与えるのかも知れません。
この現象は、私がベルヌーイの定理を勉強している際にたまたま知った現象です。左図は、私が想像したキャビテーション現象です。

ここまでは、膀胱出口閉塞症・膀胱頚部硬化症の排尿障害について説明しました。ご理解できましたか?
次に小さい前立腺肥大症で排尿障害が生じるメカニズムを説明しましょう。

【小さい前立腺肥大症の場合】
Verbph小さい前立腺肥大症の場合、排尿障害を来たすのは、前立腺の位置が問題になります。すなわち、前立腺の入り口が膀胱の内腔に突出している形の人の場合に、前立腺肥大症が小さくても排尿障害になります。
前立腺の入り口が膀胱の内腔に突出すると、排尿の際に内尿道括約筋(膀胱出口平滑筋)が開こうとしても、膀胱出口は十分に開放できません。膀胱に突出している部分に膀胱の圧力が前立腺の入り口を閉じるように作用するので、いっそう開かなくなります。
狭い膀胱出口=前立腺入り口から尿が尿道に流れるので、尿流はジェット流状態になります。流体の運動エネルギーは増加しますから、圧力は極端に低下して前立腺に対して吸引力が働きます。そのため、ますます前立腺部尿道は狭くなり、排尿障害は悪化します。
ここでさらに排尿障害を悪化させる力(紫の疑問符が示す黒い矢印)が作用します。

Verbph2何となく想像できるでしょう?大きな前立腺肥大症のところで説明した仮想のてこがここでも登場するのです。
小さな前立腺肥大症の場合は、前立腺の出口部分は十分に開いています。すると前立腺内の仮想のてこが、その部分で力点になり、膀胱出口=前立腺入り口部分を閉じるような力の作用点が生じます。
大きな前立腺肥大症の排尿障害と違う所は、ギーコンバッタンのシーソー運動にならないということです。すなわち、常にこの形のままなのです。もしかすると、大きな前立腺肥大症よりも排尿障害が強いのかも知れません。

Verbph3αーブロッカーであるハルナールが、仮想のてこを壊してくれますから、膀胱出口の作用点の力は消滅します。ですからこのタイプの前立腺肥大症にもハルナールは効くのですが、いかんせん、前立腺の膀胱内突出はなくなりませんから、構造欠陥による排尿障害は残ります。
前立腺肥大症が小さく、ハルナールが効かないので、「治療の必要なし」「気のせい」「年のせい」と誤診されるのが、このタイプの前立腺肥大症です。
また、膀胱にとって、無理やり吹けないトランペットを吹いているようなものなので、膀胱や前立腺に物理的負荷がかかります。そのため、膀胱刺激症状・前立腺刺激症状が顕著に出現する場合には、慢性前立腺炎と誤診されてしまいます。

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膀胱出口「魔の三角関係」

多くの非細菌性慢性前立腺炎患者さんを拝見していく内に、思いついたことを思いつくままにこのブログで掲載していますが、最近の内容をまとめると下図の模式図のような関係が成り立つのではないかと考えるようになりました。題して「膀胱出口:魔の三角関係」です。

【模式図の解説】
【1】慢性前立腺炎の患者さんに脊椎麻酔の既往が多い(健常者の3倍)こともあり、膀胱出口神経中枢の脊髄仙骨部2番~4番の機能不全が生じる。
【2】膀胱出口の開放が不十分で、患者さんが気がつかない程度の排尿障害が起こる。
【3】排尿中に膀胱出口は十分に開放されていないので、声帯のようにブルブルと振動する。
【4】生体は振動に負けないように硬くなって耐えようとする。そのため膀胱出口が硬化する。
【5】膀胱出口が硬化すると、膀胱出口は益々開放しにくくなるので、膀胱出口は振動する。この悪循環が繰返される。

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【6】膀胱出口の振動は、隣接する膀胱三角部を刺激し、膀胱三角部の肥厚・硬化を促進する。
【7】膀胱三角部の肥厚・硬化は膀胱三角部を過敏にし、脊髄を常に刺激し続ける。
【8】膀胱三角部からの情報であふれた脊髄は、隣接する感覚ニューロンを誤って刺激するので、関連痛という生理学的反応を作る。
【9】一見無関係とも思える関連痛症状は、細菌性慢性前立腺炎症状に酷似するので、細菌が検出されなければ、非細菌性慢性前立腺炎と診断される。
【10】関連痛の痛み症状が強ければ、慢性骨盤疼痛症候群と診断される。
【11】膀胱三角部の過敏さが正規のルートで脳中枢に到達すると、頻尿・尿意切迫になり最終的には過活動膀胱になる。
【12】膀胱出口の硬化は、膀胱出口の内腔を狭くするので、排尿時にジェット流が噴出する。
【13】ジェット流は乱流・渦流を発生させ、尿道壁に石灰沈着を促進させる。
【14】沈着した石灰は尿道粘膜から前立腺内に吸収され、前立腺結石として臨床的に診断される。前立腺結石が非細菌性慢性前立腺炎の原因と誤診する医師も多く存在する。
【15】前立腺部尿道内に発生した乱流・渦流は、前立腺液排出孔から刺激すれば、急性前立腺炎になり、射精管孔を刺激すれば、精管を上向して急性副睾丸炎になる。
【16】膀胱出口の硬化は、排尿時の膀胱内圧を上げさせる。要するに気張る状態になる。この状態は膀胱・前立腺周囲の静脈を圧迫してうっ血・充血させる。
【17】膀胱の真裏に位置する精嚢腺も充血するので、精嚢腺内の精液が射精されるときに血液が混じり、血精液症の状態になる。前立腺炎・精嚢腺炎が原因と、抗生剤や止血剤を処方されてもなかなか治らないのは当然。

【膀胱出口理論から考えられる治療戦略】
まずこの三角関係の悪循環を断たなければならないことは、容易に思いつくでしょう。
脊髄仙骨部の中枢不全を治すことは、現代医療では到底不可能ですから、脊髄中枢神経は触りません。
【1】保存的治療
膀胱出口が十分に開放しないのであれば、ハルナールなどのα-ブロッカーを試みます。α-ブロッカーは平滑筋の緊張をゆるめる作用がありますから、膀胱出口の振動も抑えてくれます。膀胱出口の振動が少なければ、膀胱出口の硬化も抑えられる訳です。
【2】外科的治療(内視鏡手術)
初期の状態で来院された患者さんの場合は、上記の保存的治療で日常生活が支障ないまで症状の軽快をみます。
しかし潜伏期も含めて経過が長いと、本人が気がついているいないは関係なく、膀胱出口の硬化は進み膀胱出口は狭くなり、隣接する膀胱三角部もすでに肥厚・硬化してしまった場合には、保存的治療は残念ながら手遅れです。ここでみなさん恐怖の内視鏡手術の出番となる訳です。
硬く狭くなった膀胱出口を内視鏡手術で切開・切除します。ここで注意しなければならないのは、膀胱出口をただ広げるだけでは不十分です。手術後、膀胱出口が振動を起こさないような配慮が必要になります。従来の経尿道的前立腺手術(TUR-P)では、膀胱出口を円状・筒状に切除するので、円状・筒状構造では振動してしまうからです。ポイントは切除だけではなく、膀胱出口の輪状の平滑筋までを充分に切開することです。
内視鏡手術で排尿障害を改善させても、膀胱三角部の肥厚・硬化はなかなか元に戻りません。そのため膀胱三角部減張切開手術が必要になります。この治療によって脊髄を経由した関連痛症状はかなり軽快します。

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慢性前立腺炎の誤解#2

以前に「慢性前立腺炎の誤解」というテーマで述べていますが、作成してから3年を経過し、私の考えも少し変化しているので、ここで改めて作成します。

Ingaohogosin人は物事に対して表面的なことしか理解できません。それは私も含め医師もそうです。(もちろん例外的に賢い医師は存在しますが・・・)表面的な現象に目を奪われ、真実の姿が見えてこないのです。現実に人はそんなに賢くないのです。油断をすると表面的な現象にコロッとだまされるのです。分かってみると可笑しいくらいにコロッとだまされるのです。目の前で起きている現象の表面的な原因しか理解できないのです。もしも目の前の現象が多数の手順を踏んだ結果として発症しているのであれば、益々分かりません。
困難さを回避するためには、病気に関して考えられる様々なパターンの仮説と検査手順をまず立てます。検査結果を一つ一つ吟味し論理的に矛盾するのであればその仮説を排除します。論理的に矛盾しない仮説であれば、それをトコトン追求していきます。病原性の細菌が検出されないのに(常在菌は論外)、細菌性慢性前立腺炎や非細菌性慢性前立腺炎と診断しダラダラと患者さんを抗生剤やセルニルトンで引きずり回すのは、医師としてどうかと思います。ましてや精神科治療薬で治療をごまかすのは言語道断です。簡単に精神科治療薬を処方するのは外科医である泌尿器科医として、治療放棄以外の何ものでもありません。安易に「気のせい」という診断がこのような風潮を作り上げたのでしょう。泌尿器科医は外科医です。もっと論理立てて病気を攻略する方法を考えましょう。また、安易に過活動性膀胱や間質性膀胱炎などと原因不明の病名を付けて逃げないこと。「原因不明だからしょうがない!」という流れが現場の泌尿器科医にあるように思えて仕方がありません。泌尿器科学会のコンセンサスを得られる前に、現場の医師が根性を据えて治療に当たれ!と言いたい気持ちです。

さて、怒りからいくらでも文句は書き綴れるのですが、ここで本題に入りましょう。
慢性前立腺炎で悩まれる症状は、普段の外来で多くの患者さんを拝見していると、性状的に大きく4つに分類することができます。(海外の文献では、排尿症状と痛み症状の2つしか分類していませんが・・・。)この4つの症状が単独あるいは複数混在して非細菌性慢性前立腺炎の症状を形成しています。
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1つ目は、排尿症状です。頻尿・残尿感・尿意頻拍・遷延性(せんえんせい:なかなか出てこない状態)排尿・苒延性(ぜんえんせい:チョロチョロしか出ない状態)排尿・尿線分裂などです。
2つ目は、痛み症状です。排尿痛・会陰部痛・尿道痛・睾丸痛・肛門痛・恥骨痛・射精痛などです。
3つ目は、陰部を中心としたあらゆる不快感の症状です。尿道のムズムズ感・実際には濡れていない尿漏れ感覚・陰嚢の痒み・内股の痺れ・ED(インポテンツ)などです。
4つ目は、前立腺と一見無関係と思われる痛みや不快感などの症状です。極度の尿臭・首の痛み・アトピー性皮膚炎・原因不明の蕁麻疹・全身倦怠・多汗症・自律神経失調症などです。
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貴方が医師だとして、これらの症状を訴える患者さんを目の前にして、一つの病気だと言い切れるでしょうか?そして尿や前立腺液の培養検査・生化学検査を行なって異常が出なかった場合、また抗生剤や諸々の症状に対する考え付くあらゆるお薬を処方して改善がみられなかった場合、医師である貴方は、「気のせいでしょう」と患者さんに告げない自信がおありですか?
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18467m20【1つ目】の排尿症状の場合は、前立腺が原因?と素人でも因果関係が容易に思い付くでしょう。でも、前立腺肥大症の年齢でもない若い男性患者さんを、前立腺が大きくもなく、触診で圧痛もない場合、何と診断しますか?
「若い男性に排尿障害は絶対にない」と思い込んでいる多くの医師や患者さん周囲の家族・学校・社会に問題があるのです。そして家族も含め無理解な方々が患者さんを精神的に追い詰めるパターンが多いように思えます。
また泌尿器科医も含め医師の方にも「男性の排尿障害は前立腺肥大症しかない」「前立腺肥大症は前立腺が必ず大きい」という2つの非常識が存在し、この非常識に漏れた患者さんは、良くて非細菌性慢性前立腺炎、悪くて「気のせい」「年のせい」になってしまうのです。
前立腺肥大症でも中葉肥大型の場合は、膀胱出口だけが硬く拡がらないので排尿障害になりますし、若い男性の機能性膀胱頚部硬化症の場合には、前立腺の大きさは正常大です。
【写真】は20歳男性の超音波エコー検査像です。前立腺肥大症の患者さんの所見のように、膀胱出口が膀胱側にくちばしのように突出しています。

220【2つ目】の痛み症状の場合、患者さんが排尿異常に触れずに痛みの訴えしか告げない時には、炎症所見がなければ「前立腺痛・前立腺症・陰部神経症・慢性骨盤疼痛症候群」としか診断できないでしょう。
痛み症状の原因は膀胱・前立腺を中心とした臓器の関連痛です。関連痛は生理学的な常識であるにもかかわらず、臨床現場の医師が医学生時代に習得した筈のこの常識を忘却、患者さんに「気のせい」「精神的なもの」と誤診したところに誤解が生じるのです。
関連痛として表現される症状があり、その原因となる臓器の痛みが生理学的に必ず存在する筈なのに、十分調べもしないで安易に「気のせい」と診断する医師に腹が立ちませんか?
【図】生理学の教科書に掲載されている関連痛の説明図(一部改変)

【3つ目】の不快感の症状の場合、例えば尿道のムズムズ感があり尿沈渣検査や尿培養で異常がなければ、非淋菌性非クラミジア性慢性尿道炎と診断されるでしょう。実際に濡れていない尿漏れ感覚は、医師に訴えてもノイローゼと片付けられてしまいます。
尿道のムズムズ感や尿漏れ感覚は、関連痛と類似しています。私たちの感覚は痛い・熱いなどの単純な感覚と幾つかの感覚の集合体で構成された複雑な回路感覚に分けることができます。
ムズムズ感覚の本質は、非常に弱い痛み感覚が正体です。ですから、単純な感覚として分類でき関連痛と全く同じ原理で感覚が生じます。
皮膚科の専門書(実践 皮膚病変のみかた 日本医師会雑誌第134巻特別号2S48ページ)には、皮膚掻痒症(ひふそうようしょう)という病気があります。皮膚にハッキリした所見がなく痒くなる皮膚の病気です。その専門書に前立腺肥大症患者さんの中に陰嚢掻痒症(いんのうそうようしょう)が見受けられるという記事があります。この知見は一般泌尿器科医の知らない常識です。前立腺肥大症という排尿障害があると、陰嚢の皮膚が痒くなるのです。何か示唆するものがあるでしょう?
尿漏れ感覚は、尿道中を尿が通過する時に捉えられる連続性の深部感覚、皮膚に液体が付着する感覚、液体が重力によって皮膚の表面を移動する際の連続性の深部感覚がワンセットで感覚を作っています。ですから回路感覚に分類されます。これらの一連の感覚は神経ネットワークの1個の回路として記録あるいは記憶され脊髄に存在します。関連痛の病態と同じく、膀胱・前立腺の刺激が脊髄でこの回路を刺激するので、実際に濡れていない尿漏れ感覚としてリアルに感じてしまうのです。感覚の性状は異なりますが、関連痛と全く同じ機序で発症します。

【4つ目】の一見前立腺とは無関係な症状の場合、それぞれの部位の診療科にかかるでしょう。そして治りの悪いノイローゼ患者さんとして烙印を押されてしまうのです。
例えば、実際の慢性前立腺炎の患者さんが治療前に、手足のしびれを訴えていました。足のしびれは関連痛で説明できますが、手のしびれは説明が困難です。なぜなら関連痛の発生機序の考え方からすると、手の神経支配の脊髄の高さ(レベル・位置)と前立腺支配の脊髄の高さが一致しなければなりません。ところが手の神経支配は頚髄の4番~8番ですが、前立腺の神経支配は仙髄の2番~4番で全く異なるからです。なのに治療を行なうと、何と!手足のしびれが同時に消失したのです。
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高橋クリニックに来院する慢性前立腺炎の患者さんの多くは、上記のエピソードのいずれかのパターンでドクターショッピングなさっています。
ここで強調したいのは、隠れた排尿障害が原因の非細菌性慢性前立腺炎の患者さんには、「排尿障害がきっとあるに違いない!」という信念で診察・検査しなければ診断できません。表面的な症状に応じた一般的な検査で診断できるほどこの病気は甘くはないのです。排尿障害を明確に証明するためには、検査のコツが必要になります。知恵を絞って検査法を考えなければ異常がでません。

漢方薬は本来急性疾患に処方すべき薬です。日本の漢方薬概念のより所である中国の古い医書「傷寒論」は、意味の通り「怪我とインフルエンザ」治療のためのバイブルです。当時の中国人庶民は怪我やインフルエンザが原因でコロコロ亡くなって行ったのです。当面の脅威である怪我やインフルエンザから逃れるために考え出された医書が「傷寒論」だったのです。
ですから「傷寒論」では慢性疾患には原則として論じていませんし、不得意の分野になります。なのに慢性の病気である慢性前立腺炎に漢方薬を処方し治療するのには無理があると思われませんか?

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前立腺結石の成り立ち

慢性前立腺炎の患者さんの多くに前立腺結石を発見できることは、先に例を挙げて説明しました。
では、なぜ前立腺結石が出来るのかを模式図を利用してもう少し詳細に述べましょう。
模式図をクリックすると大きな画面になります。
Calgenerate【1】正常
正常・健常な排尿では、前立腺部尿道内に何の障害も起こりません。

Calgenerate2【2】ジェット流の発生
ところが、膀胱頚部硬化症・膀胱出口閉塞症・前立腺肥大症中葉肥大では、膀胱出口が十分に開放しません。すると、前立腺部尿道内にジェット水流が生じます。

Calgenerate3【3】渦流の発生
ジェット水流は、尿道内の水圧分布に不均一を作ります。尿道内の水圧分布の不均一により、尿道粘膜に沿って渦流が生じます。渦流は、尿道粘膜にわずかですが障害を与えます。
渦流については以前に流体学的発想で詳細に述べていますから、興味があったらご覧下さい。

Calgenerate4【4】粘膜障害と石灰沈着
尿道粘膜障害部にさらに複雑な渦流が生じ、傷害された粘膜が中心核となり石灰が沈着し始めます。

Calgenerate5【5】石灰の増大・結石化
尿成分のリン酸塩・シュウ酸塩・カルシウムなどが次々に沈着し、石灰は結石状の大きな塊になります。大きくなった石灰・結石によってできた粘膜の凸凹により、渦流は消え、尿流は整流化します。

Calgenerate6【6】結石の前立腺内埋没
粘膜外に頭を出している石灰・結石は生体の修復適応作用により、粘膜に取り囲まれ、遂には粘膜下の前立腺組織内に埋もれてしまいます。すると、尿道粘膜は平坦になるので、再び渦流が発生し【3】の状態に戻ります。【3】から【6】の繰り返しが起き、結石の数が次第に増えていきます。

17139m46bns5【7】粘膜に取込まれる結石
内視鏡手術の際に偶然捉えた像です。【6】で説明したように、結石が粘膜下→前立腺組織内へと埋没する瞬間です。

Calc17902m60bns2【8】顕微鏡像
結石となった石灰は前立腺組織内に取り込まれ、右の顕微鏡写真のようになります。

ここで強調したいのは、前立腺結石が慢性前立腺炎の原因ではないということです。一般的に泌尿器科医は慢性前立腺炎の患者さんを診察する際に、レントゲンや超音波エコー検査で前立腺結石を発見すると、「これが原因です!」と指摘します。私の考えではこれは嘘です。本末転倒です。排尿障害があるために前立腺結石ができたのです。ですから、排尿障害を治さない限り慢性前立腺炎症状は治りません。前立腺結石を除去しても治りません。

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虫垂炎手術と慢性前立腺炎 誰も知らなかった脊椎麻酔の後遺症?

慢性前立腺炎の患者さんを何人も何人も拝見していると、フッと気がつくことがあります。
お腹に虫垂炎の手術の傷跡を見かけることが多いのです。印象としては慢性前立腺炎患者4人~5人に1人の割合です。一般的に先進国の急性虫垂炎の生涯罹患率は7%前後(15人に1人)ですから、確率的にはかなりの頻度です。この事実は慢性前立腺炎の本質を暗示しているのかも知れません。
虫垂炎の手術は、一般的に脊椎麻酔(通称:腰椎麻酔・下半身麻酔)で行います。では、「脊椎麻酔を行なうと慢性前立腺炎になりやすい」という大胆で無謀な仮説を立て、推理してみましょう。
虫垂炎手術の際の脊椎麻酔は、一般的に腰椎4番と腰椎5番の間から脊髄腔に針を穿刺して麻酔薬を注入します。麻酔薬は少量ですが強力で注入した部分の脊髄を一時的ではありますが薬理学的に完全に遮断します。痛覚・触覚・温覚・冷覚・深部知覚・運動神経・自律神経の中枢を完全に麻痺させるのです。
薬理作用は一時的ですから、麻酔薬が次第に吸収分解されて脊髄の麻痺はやがて取れます。ただし、一時的ではありますが、たまにオシッコがうまく出なくなる男性がいます。それでも1ヶ月もすれば出るようになります。この現象は脊椎麻酔による排尿神経の一時的麻痺(一過性の神経因性膀胱)とされています。実は、この現象がヒントになるのです。
排尿に関わっている神経は、骨盤神経・陰部神経・下腹神経の3つが知られています。
骨盤神経の中枢は仙髄2番~4番に存在し、膀胱の収縮に関与します。
陰部神経の中枢も仙髄2番~4番に存在し、外尿道括約筋を支配します。
下腹神経の中枢は胸髄11番~腰髄2番に存在し、膀胱の弛緩よ括約筋の収縮に関与します。
上記の脊髄中枢が三つ巴になって排尿をコントロールするのです。そしてどれか一つでも中枢が支障を来たすと排尿はうまくいきません。
虫垂炎手術に必要な麻酔の範囲は、胸髄7番~腰髄2番の間ですが、通常に脊椎麻酔をかけると胸髄7番から下の脊椎の全てが麻痺してしまいます。つまり、骨盤神経・陰部神経・下腹神経の全てが麻痺するのです。
麻酔薬が時間と共に吸収・分解されて麻痺は完全に戻る!と医師は都合よく思っていますが、本当は誰も正確には確認できません。先ほど説明した麻酔後の神経因性膀胱のようにハッキリとした症状が認められれば、一時的にしろ麻痺は残ったと判断できます。そしてタマタマだろうと思い込んでしまうのです。もしも麻痺が残っていて100%の機能が30%くらいまで落ち込んでいれば顕在症状として確認できるのですが、仮に70%~80%程度の低下では症状として現れません。そしてこの状態が回復せずに後遺症として残ってしまった場合、数年であればそれ程問題にはならないでしょう。しかし10年、20年と経過した時に積もり積もった膀胱や前立腺にかかった負荷を身体がいつまでも黙っていられるでしょうか?程度の軽い排尿障害が、排尿時の膀胱出口の振動を作り、その振動が膀胱出口・膀胱頚部を硬化させ、遂には器質性膀胱頚部硬化症となり、益々排尿障害を強くし、それが非細菌性慢性前立腺炎症状として顕在化するのではないでしょうか?

下記に、慢性前立腺炎症状、下部尿路症状があり、平成18年3月13日~4月12日までの1ヶ月間高橋クリニックに来院した患者さん(初診・再診を含めた95人中)で虫垂炎手術した方の写真(撮れなかった方もいます)を掲載します。
虫垂炎の生涯罹患率は7%(15人に1人)です。95人中22人(23%)の虫垂炎手術既往のある患者さんを集めるためには、一般的にはその15倍の315人診察をする必要がある訳です。虫垂炎手術と慢性前立腺炎の間にただならぬ関係を疑うのは不思議ではないでしょう?痔の手術を含めれば脊椎麻酔を行なったことのある患者さんは、95人中27人(28.4%)にもなります。

app15188m69bph1.69歳男性
12歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。33歳・42歳の2回ヘルニア(脱腸)の手術を脊椎麻酔で行う。
PSA5.5とやや高値で高橋クリニックを紹介される。以前から頻尿と夜間頻尿がある。排尿障害を認める。

app16111m88turp2.88歳男性
45歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。
平成11年に前立腺肥大症?の診断で内視鏡手術を受けている。平成15年頃から尿線が細くなる。

app16964m50bns3.50歳男性
17歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。
平成14年より尿の出が悪いので泌尿器科受診、「慢性前立腺炎」の診断でクラビット処方された。
平成17年1月、3月とやはり尿が出にくいく、尿意頻拍があり国立国際医療センター受診する。やはり「慢性前立腺炎」の診断でセルニルトン・クラビットを処方される。

app17507m30app4.30歳男性
18歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。
平成16年より会陰部のムズムズ感を訴える。「慢性前立腺炎」と診断されセルニルトン処方されるも改善せず。

app18863m49app5.49歳男性
15歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。
平成14年より会陰部痛、左太もも内側の痛みを訴える。佐久総合病院で「慢性前立腺炎」と診断される。心療内科で脳電気通電によるECT治療なるものを全身麻酔下で計8回行われ、症状は改善せず、記憶障害の後遺症のみ残る。

app15987m466.46歳男性
16歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。
平成12年より両鼠径部痛、会陰部痛が出現、「前立腺痛」の診断で桂枝茯苓丸を処方されるも症状は一進一退であった。

app17195m607.60歳男性
35歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。
午後からの30分~1時間に1回の頻尿で苦しむ。前立腺の大きさは13cc(正常は20~25cc)なので、一般的な意味での前立腺肥大症は否定される。

app18901m758.75歳男性
20歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。25歳頃から、飲酒すると頻尿になることに気付く。最近、夜間頻尿3回で高橋クリニックを受診する。前立腺の大きさは28ccで若干大きい程度。超音波エコー検査上は膀胱頚部硬化症である。

app12713m70bns26cc209.70歳男性
20歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔を行なう。10年前から頻尿で悩む。前立腺の大きさは26ccでほとんど正常の大きさ。写真撮影時蕁麻疹を認める。

app18657m26bns2310.26歳男性
23歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。
会陰部痛、両側睾丸痛、太もも内側しびれ、腰痛を訴える。地元のクリニックで慢性前立腺炎と診断される。

App18155m44bns1011.44歳男性
10歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。
平成15年より3日間続く突然の尿意頻拍が年に3回起きる。平成17年8月頃より睾丸の痛みを感じる。ご自分で性行為感染症・STDを疑い病院を転々とする。排尿後の残尿が340ml認める。ハルナールの服用で症状軽快する。

App15068m60bns20hemo312.60歳男性
20歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。
20年前から頻尿(1時間半に1回)、夜間頻尿5回で悩み当院素受診する。前立腺の大きさは19ccで正常以下である。痔の手術を21歳、31歳、53歳の計3回行なっており、いずれも脊椎麻酔で手術をしている。

App18971m37bns2013.37歳男性
20歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。
10年前から残尿感と頻尿を訴える。岐阜のある市民病院で「気のせい」、ターミナルビル泌尿器科で「慢性骨盤内静脈うっ滞症候群」、個人病院で「細菌性膀胱炎」と診断されるも改善せず、高橋クリニックを受診する。

App18976m44bns514.44歳男性
5歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。
10歳から頻尿で現在1時間に2回の頻尿と夜間4回~10回の頻尿である。20歳の時に前立腺生検を2回も行われ、非細菌性慢性前立腺炎と診断される。

App18446m45bns515.45歳男性
5歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。
慢性前立腺炎の診断で治療されるも軽快せず、高橋クリニックを受診する。ハルナールの服用で症状が消失する。

App16418m82bns3616.82歳男性
36歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。夜間頻尿5回を訴え来院する。前立腺の大きさは28ccで若干大きい程度。超音波エコー検査上は膀胱頚部硬化症の所見であった。ハルナール服用で夜間頻尿3回に減少する。内視鏡手術の適応であるが、患者さん本人がその気にならない。

App18996m77bns2017.77歳男性
20歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。
平成13年、近くの泌尿器科で前立腺肥大症手術を行っている。平成17年9月から頻尿が再発し、高橋クリニックを受診する。

App18230m41bns1918.41歳男性
19歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。
平成11年に慢性前立腺炎の診断でクラビット・セルニルトン・八味地黄丸の処方を受けるも改善せず。症状は下腹部の痛み・全身倦怠感・手足のしびれ・頻尿(1時間1回)・夜間2回頻尿。
手術を強く希望し行なった。症状は全て消失。

App12085m62bns2019.62歳男性
20歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行なう。
夜間頻尿5回で苦しむ。

App13103m62bns4020.62歳男性
40歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。

App19336m90bns21.90歳男性
会陰部痛を主訴に来院した患者さんです。40歳の時に十二指腸潰瘍を脊椎麻酔で手術、55歳の時に虫垂炎を脊椎麻酔で手術、65歳の時にヘルニア(脱腸)を脊椎麻酔で手術しています。何と3回も脊椎麻酔を受けているのです。

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慢性前立腺炎に関する考え方の変遷

今までに難治性の慢性前立腺炎の患者さんを多く診察治療してきました。その中で、この病気の病態生理に関していろいろと試行錯誤しました。このブログを始めからお読みになれば、私の考え方が変化(発展)しているのがよくお分かりになると思います。現在の考え方と過去の考え方とでは考え方に差異があります。ブログの中で過去の考え方を消去していないのは私の試行錯誤を知っていただきたいからです。慢性前立腺炎は単なる炎症という簡単な病気ではありません。
現在までの所、私の考え方の変遷は下記のように大きく3期に分けることができると思います。

第1期の考え方 【排尿障害】原因説
慢性前立腺炎の治療に情熱を燃やし始めたのは、慢性前立腺炎で苦しむタクシードライバーの男性患者さんに排尿障害を認め、その内視鏡手術での成果を得たのがきっかけでした。それからは慢性前立腺炎で苦しむ患者さんの排尿障害を見つけては、排尿障害の治療を行なってきました。
ところがこの観点からの治療だけでは、どんなに頑張って手術を行っても患者さんの症状を100%改善させることができませんでした。約70%くらいです。そこで他の原因やファクターを追求しなければなりませんでした。

第2期の考え方 【排尿障害と膀胱三角部】原因説
膀胱三角部は膀胱の知覚センサーとしての役目を担なっていることは、生理学的に知られてはいました。しかし臨床現場での治療には直接結び付かない無駄な(?)知識でした。慢性前立腺炎の患者さんの症状の多くは、膀胱三角部の刺激による関連痛という考え方に達していたので、排尿障害の治療と合わせて膀胱三角部のレーザー光線照射治療を行いました。すると、かなり慢性前立腺炎症状は軽快してきました。
しかし、排尿障害、すなわち前立腺肥大症や膀胱頚部硬化症を含めた膀胱出口閉塞症があると、なぜ膀胱三角部が過敏になるのかは不明でした。

第3期の考え方 【振動】原因説
最近では、膀胱出口閉塞症が排尿時に膀胱出口を振動させるではないか?という仮説を立てて治療の精度を高めることができました。
なぜこの考えにたどり着いたかというと、ある患者さんの膀胱頚部硬化症の手術の際にひらめいたのです。慢性前立腺炎症状で来院したこの患者さんに、ハルナール(αブロッカー)を処方したところ、症状が30%まで減少したのですが、一生服用したくないということで内視鏡手術になりました。案の定、膀胱頚部硬化症だったのですが、内視鏡手術の器具がなかなか入らないほど狭いのです。麻酔がかかっている条件下でさえこんなに狭ければ内服薬(ハルナール)がとても効くとは考えられませんが、現実には劇的に効いたのでした。ハルナールが膀胱出口を格段に開かせたとは考えられませんから、他に考えられることといえば、ハルナールが膀胱出口の筋肉緊張を緩めるので、膀胱出口の振動を制御しているとしか考えられなかったのです。
膀胱出口の開きが悪いと、排尿時に膀胱出口を含めた膀胱頚部が振動します。膀胱頚部の振動は膀胱出口とつながった膀胱三角部をも振動させます。振動エネルギーを何度も被爆すると、生体は衝撃に耐えるように硬くなろう(生体の適応反応)とします。そのため膀胱出口と膀胱三角部が硬くなります。膀胱出口が硬くなると、膀胱出口の開きはさらに悪くなり、また膀胱頚部も硬いので振動数も多くなります。振動数が多くなると振動エネルギーが高くなり、さらに膀胱出口と膀胱三角部がますます硬くなるので、負の連鎖が続き悪循環となります。
硬くなった膀胱三角部は、センサーとして誤作動し続けます。誤った情報を流し続けるのです。それが関連痛の元凶です。

【振動が原因の病態生理 模式図】
boo-vib
程度の差こそあれ、排尿障害が存在すると排尿の際に膀胱頚部は振動します。この振動は、膀胱出口や膀胱三角部を硬くしてしまいます。硬くなるとさらに膀胱出口は開きが悪くなり振動はさらに増強するのです。また、膀胱三角部は嘘の情報を頻繁に流すようになり、それが関連痛の原因になります。
<注>この振動理論は、私のオリジナルの考え方で泌尿器科学会の共通の概念ではありません。このような考え方をしないと、説明がつかないので仮説を立てながら試行錯誤しています。

【膀胱三角部の肥厚と誤作動 模式図】
triangle-short
膀胱三角部の筋層内には伸展レセプターが存在します。尿がたまり膀胱壁が伸ばされるとスイッチが入り電流が流れる仕組みがあり、間接的に尿がたまったことを情報として知らせます。
膀胱三角部に断続的にあるいは継続的に負荷がかかると、膀胱三角部の筋層内に様々な物質が沈着し膀胱三角部が硬くなります。この謎の沈着物質が伸展レセプターを電気的に狂わせるショート物質となるのです。すると、膀胱壁が伸展されなくても常に電流が流れ、誤った情報が脊髄に流れます。脊髄の中枢では、膀胱三角部からの頻繁な情報に対処しきれなくなり、他の脊髄経路に情報を伝達してしまうので、それが関連痛になります。
<注>この膀胱三角部の病態生理に関して、解剖学・生理学・病理学・泌尿器科学の全てを詳細に調べてもどこにも記載がありません。伸展レセプターに関しては、文言と概念の記載がありますが、それ以上の詳細な文献はありません。横紋筋の伸展レセプターの写真は存在しますが、膀胱などの臓器平滑筋の伸展レセプターに関しては模式図すら見当たりません。ここに掲げた理論は全て私のオリジナルであって、泌尿器科学会の共通の概念ではありません。

【横紋筋の筋紡錘の模式図 図解生理学 医学書院から】
kinbosui筋紡錘(きんぼうすい)とは横紋筋の伸展レセプターのことです。横紋筋が引き伸ばされて断裂しないように適度に筋肉収縮させるためのセンサーの働きがあります。横紋筋の伸展レセプターである筋紡錘については生理学の教科書に詳細な記載はあります。しかし、膀胱平滑筋の伸展レセプターに関しては、概念の記載はありますが詳細に記載がありません。ですから、横紋筋の筋紡錘を平滑筋の伸展レセプターに近い構造かそれよりも単純な構造だろうと想像するしかありません。
横紋筋の筋紡錘は核(緑のだ円)を多く含み袋状になっている核袋線維(かくたいせんい)と核(緑のだ円)が鎖状に並んでいる核鎖線維(かくさせんい)の2種類の線維構造で構成されていて、その構造に神経線維がらせん状に取り囲んでいます。構造は複雑です。
もしも膀胱平滑筋の伸展レセプターが、横紋筋の筋紡錘よりも不完全な構造であったり、もっと単純構造であれば病的障害を受けやすいと容易に理解できます。

【筋紡錘の顕微鏡像 カラーアトラス機能組織学 南江堂から】
kinbosui2I:錘内筋の横断面で伸展レセプターそのものです。IC:内被膜、OC:外被膜です。上図の模式図の横断面がこの顕微鏡像です。核が幾つか集合しているのが核袋線維で、核が1個ずつしか確認できないのが核鎖線維です。
膀胱平滑筋の伸展レセプターについての図や写真の文献がないことから、膀胱三角部の病態生理に関して医学的興味が持たれていないことが容易に分かりますね。

【手術のポイント】
以上の考え方の観点から、慢性前立腺炎症状で苦しむ膀胱頚部硬化症患者さんの手術のポイントがだんだん見えてきます。
排尿障害を治すだけでは慢性前立腺炎の患者さんは治りません。排尿障害を治すのはもちろんですが、排尿時に膀胱頚部が振動しないように処置しなければならないことが分かります。膀胱出口を電気メスで切除して尿路のスペースを確保するだけでは、膀胱頚部の振動を抑えることは出来ません。そのためには、切除の他に膀胱出口の輪状筋を切開して膀胱出口の緊張をゆるめることに治療目標ができました。
また、膀胱頚部の振動を低減させるだけでは慢性前立腺炎症状は改善しません。なぜなら関連痛の元凶である膀胱三角部の肥厚を治療しなければならないからです。
膀胱頚部の長年の振動で硬く肥厚した膀胱三角部の平滑筋には、常にショートし続ける伸展レセプターが存在しています。このレセプターの存在する平滑筋を電気メスで切断しなければ、誤った情報が発信し続けるのです。

【感想】
慢性前立腺炎をわずかな細菌による慢性炎症だと決め付けて、闇雲の前立腺マッサージにクラビットなどの抗生剤やセルニルトンの長期投与、治りが悪ければ「日常生活を改めなさい」「体を冷やさないようにしなさい」「長時間座らないようにしなさい」「気にしないようにしなさい」「精神科の病気です」「一生付き合っていきなさい」と指導する医師の何と多いことか!「見ザル・聞かザル・言わザル・しザル」ではないけれど、患者さんをよく見ないで、話を聞かないで、十分な説明もしないで、根拠のない治療では、「未必の故意」と判断されてもおかしくない医師が多いのです。私はあえて「火中の栗を拾う」ような診断と治療を行なっています。アクションを起こさないで他人を批判するだけの医師にはなりたくないのです。
漫然とした治療で治らないのであれば、診断が間違っているか、治療が誤っているかとなぜ考えないのだろう?
住宅街の研究生活とはほど遠い一開業医が、一つの病気にこれだけ一生懸命に取り組んでいるのに、何十年も前からの診断と治療を何の疑問も持たずに漫然と行っている大学病院や大病院の医師の医師としての資質を疑います。
私の考え方に賛同して、1期から3期にわたって複数回も手術をなさった患者さんが数人おられます。手術の回を重ねるごとに症状の改善がみられるので、結果的に複数回になってしまったのです。私を信用されている患者さんに深く感謝したします。
私としては慢性前立腺炎を手術で治すという命題にこれからも精進します。50歳を超えた私が「患者さんが医師を育てる」という有名な言葉を実感する今日この頃です。

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Slow FoodならぬSlow Diseaseという考え方

最近、Slow Foodなる言葉をよく耳にします。伝統的な食事やチーズ・ワイン・納豆などの発酵食品を示す言葉と思っていたら、実は「食事くらいゆっくり食べましょうよ。」という考え方だそうです。世界中どこでも画一的な均一なファーストフードがとれる現代で、食材に限らず、食生活を中心としたライフスタイルを見つめ直そうという運動のようです。

さて、ここで上記のSlow Food と意味合いは異なりますが、病気にも Slow Diseaseという概念を提唱したいと思います。対照的な病気にFast Diseaseという概念の存在があります。

Fast Diseaseという概念は、病気の原因と結果が短時間で1次的な病気を指します。例えば、細菌やウィルスが原因で肺炎になる、転倒して足を骨折する、癌細胞ができ胃癌になる等などです。原因の直接的な作用で比較的短時間に症状が出現する病気のグループです。ほとんどが器質的病気で、簡単な検査で容易に原因を発見することができます。医学教科書に掲載されている病気のほとんどが、この種の病気です。医師のみならず素人の人にも容易に理解・診断できる病気です。

Slow Diseaseという概念 は、病気の原因と結果の時間的経過が非常に長く、結果に至るまで様々な要因が介在する、2次的3次的な病気を指します。そこに介在する要因の一つ一つは取るに足らない程度の事象ですが、病気としての症状が発現した時点で、原因が分かりにくい病気になります。

例えば、ヘリコバクタ・ピロリ菌(HP菌)が常在菌として胃の粘膜に棲んでいます。しかし、胃の中は強酸である塩酸の胃液が充満しています。HP菌は自分の周囲に弱アルカリであるアンモニアを産生して、塩酸を中和して水とアンモニウム塩にしてしまい、塩酸から自らを守っています。ところがHP菌の産生するアンモニアが胃粘膜に障害を与え、長年かかって胃潰瘍や胃癌の原因となるのです。随分前から胃液の中で行き続ける謎のHP菌の存在は知られていましたが、胃潰瘍の原因として脚光を浴びて治療標的とされるようになったのは5年前ぐらいからです。ここまでは経過が長いのですが、この病気は原因と結果が明白なのでFast Diseaseとして考えることが出来ます。

ところが、このHP菌が難治性の蕁麻疹の原因ではないかという疑惑があります。経過が長いのでHP菌を殺菌しようと免疫システムが働きますが、胃粘膜という特殊な環境で十分に殺菌できません。しかし、免疫抗体はたくさん作られてしまうので、行き場がなくなり皮膚を攻撃して、原因不明の蕁麻疹になるというのです。複雑な要因が絡んでくるこの例こそ、Slow Diseaseの例として考えていいでしょう。

さて、このブログで問題の難治性の慢性前立腺炎は、細菌やウィルスが検出されないので非細菌性慢性前立腺炎という得体の知れない原因不明の難病です。ところが難病の割には、難病指定されていない不思議な病気です。診察した有名な医師でさえ「一生この病気と付き合って行きなさい。」「気にしないように」「規則正しい生活を」「体を冷やさないように」「長時間座らないように」などと全く論理的根拠もなく無神経に告知・指示するのが多い病気でもあります。医師の指示通りに一生懸命に努力しても、決して治らない病気です。医師の指示を守っても治らないということは、医師の指示が見当違いだということです。

非細菌性慢性前立腺炎と診断されて、抗生剤の長期間投与や繰り返し投与を受ける患者さんが非常に多い現実に、科学的医学的根拠のないことを誰一人気付かないのが不思議です。前立腺炎というFast Disease の病名に惑わされ、非細菌性慢性前立腺炎をその延長疾患と誤解するので、Fast Diseaseの治療から抜けられなくなり、患者さんを肉体的にも精神的にも苦しめることになるのです。「また来たョ!何べんも気のせいだと言っているのに!しょうがない患者だなぁ!」と思う医師がしょうがない医師なのです。非細菌性慢性前立腺炎は単純なFast Diseaseではなく、たくさんの要因がタップリ時間をかけて複雑に転回して発症するSlow Diseaseなのです。

ではここで、典型的な非細菌性慢性前立腺炎の男性患者さんを例に挙げ、非細菌性慢性前立腺炎がSlow Diseaseとして至るまでの道のりを説明しましょう。以前のブログで、デジタル的な図式(フローチャート)をお示ししましたから、今回はアナログ式、箇条書きに説明しましょう。

3年前から会陰部の痛みで苦しんでいるAさんは、泌尿器科を転々としています。病院で行われる尿検査、前立腺液検査、超音波エコー検査、MRI検査、尿路造影検査の全てにおいて異常なく、「非細菌性慢性前立腺炎」あるいは「気のせい」と診断されてしまいました。小さい頃から、人よりもおしっこが近く、授業の休み時間のたびにおトイレに行っていましたが、ご自分も周囲も生まれつきだと思っていました。たまに公衆トイレで用をたす時に、背後に人が立つとおしっこが出にくいことがたびたびありましたが、緊張のせいだと思っていました。

難治性の慢性前立腺炎は排尿障害が本当の原因だと、私は信じていますから、そこを重点的に説明します。
【1】
オシッコの時に息むと、前立腺遠位部の尿道括約筋が開きます。
【2】
尿道括約筋が開くと同時に、前立腺と膀胱出口が、自律神経の働きで自動的に開く筈なのですが、何かの原因で膀胱出口が十分に開きません。開きにくいので、緊張するとおしっこが出にくくなるのです
【3】
膀胱収縮して膀胱出口に水圧がかかりますが、十分に開いていないので、膀胱出口に必要以上の圧力がかかることになります。
boo-system
【4】
膀胱出口は中心に穴が開いた薄い膜構造になっています。ちょうど発声するための声帯構造に似ています。そこに流体としての尿が流れ込む訳ですから、気管からの気流に振動する声帯と同じように膀胱出口は振動します。
【5】
この振動を毎日何回も繰り返されるわけですから、振動するために出来ている声帯と違って膀胱出口はたまったものではありません。その振動に耐えられるように、膀胱出口の周囲が丈夫になろうとします。つまり粘膜や筋肉内部に線維化が始まり、厚くなる(肥厚)のです。
【6】
膀胱出口周囲が肥厚すると、膀胱出口の開きはますます悪くなり、硬い膀胱出口となり、いわゆる膀胱頚部硬化症になります。
【7】
膀胱頚部硬化症になると、膀胱出口は硬いままですから、尿流がジェット流になります。ジェット流は、尿道の全行程を位相を少しずつずらしながら尿道口から排出されます。そのため、まとまった太い尿線ではなく、分裂したり噴水状におしっこが出るので、便器を汚すことしきりです。「尿線が割れるでしょう?」と患者さんに質問すると、医師に伝えていないご自分の症状を指摘されて大そう驚かれます。
【8】
膀胱三角部と膀胱出口は平面状に連絡していますから、膀胱出口周囲の肥厚は膀胱三角部の肥厚に波及します。
【9】
膀胱三角部の平滑筋内には伸展レセプターという感覚器が多数存在しています。これは膀胱の伸展で尿量をチェックするセンサーの働きをするところです。膀胱出口周囲の肥厚で膀胱三角部も硬くなり、伸展レセプターのほとんどが常にスイッチが入っている状態になります。
【10】
すると、膀胱三角部の情報は、電気エネルギーとなり自律神経求心路を上向し、脊髄に到達しさらに脳中枢に情報が流れて行きます。膀胱三角部の肥厚によってできた誤った絶え間ない情報は、頻尿尿意頻拍感覚の原因になります。
【11】
膀胱三角部伸展レセプター→自律神経ニューロン→脊髄神経ニューロン→脳中枢という神経伝達の流れを本流とすれば、わずかながらですが何本かの支流の流れが存在します。生命は、事故や緊急事態に備えて、支流の流れを前もって設置しています。もしも本流が何かの事故で途切れてしまった時には、本流が1本しか存在しなければ、情報の流れは全く脳中枢には伝わりません。ところが細いながらも何本かの支流を準備しておけば、本流が完全に途絶えたとしても、支流を通じて脳中枢に不完全ながらも情報を流すことができます。膀胱三角部の情報に限らず、あらゆる神経に関してこのシステムは存在します。
【12】
この患者さんの場合でいえば、膀胱三角部からの自律神経ニューロンは、会陰部痛の脊髄神経ニューロンに支流として接続していました。そのため、膀胱三角部の情報が多いと、会陰部痛として感じるようになるのです。この現象を関連痛といいます。
【13】
この関連痛は、会陰部痛だけではありません。膀胱三角部からの自律神経ニューロンが接続している脊髄の場所近くに存在する、複数の感覚器からの脊髄神経ニューロンと支流として接続している可能性があります。この患者さんの場合は、会陰部の脊髄神経ニューロンが近くにあったのですが、人によっては、亀頭、尿道、睾丸、太もも、足の裏、恥骨、坐骨、臀部、背中の感覚などいろいろです。下半身の様々な症状のために患者さんは神経症やノイローゼのように思われることがしばしばです。

いかがですか?排尿障害が原因で難治性慢性前立腺炎症状が発症するまで、長い時間と様々な要因が複雑に絡んでいることがご理解いただけましたか。非細菌性慢性前立腺炎がSlow Diseaseであることがお分かりいただけたことと思います。

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病気の原因・結果・誤診

ここで病気の成り立ちに関して、簡単に説明しましょう。
一つの原因が存在し、その原因が臓器や組織を障害すると病気が発生します。とても単純ですね。

下の図は、そのことを簡略に表現したものです。★印の原因が、ある臓器を障害すると★型の病気になります。同じように■印の原因が、同じ臓器を障害すると■型の違う病気になります。さらに、▲印の原因が、またまた同じ臓器を障害すると▲型のこれも異なる病気になります。

★型の病気は原因が★印、■型の病気は原因が■印、▲型の病気は原因が▲印ということが、容易に診断できます。それぞれの原因を治療すれば、それぞれの病気を治すことが出来る訳です。ここまでは簡単に理解できますよね。とても教科書的な典型例ですから、これでは簡単過ぎて誤診したくてもしようがありません。

癌・悪性腫瘍の発生とその障害を受ける臓器の場合は、この教科書的な典型例に当たります。胃に潰瘍を伴った胃癌が出来た、脳に脳腫瘍(癌)ができて神経症状が出現した、肺癌で咳が止まらない、膀胱癌で尿に血が混じる、大腸癌で便に血が混じる便秘気味だ、等などです。
これら患者さんの多くは大学病院や超有名病院で診察・検査・治療を受ける例がほとんどです。言い換えれば、大学病院や超有名病院の医師たちは、これら教科書的な典型例の患者さんしか診ていないことになります。これが後々、彼らの考え方の盲点になるのです。


ingaoho

ところが、生命現象はそんなに単純ではありません。実際の臨床現場では、教科書的で典型例ばかりの患者さんが来院する訳ではありません。

★印の原因が、医師が問題ないと考える程度(小さな★印)の障害の時に、★型の病気になれば、結果的に原因が★印と何とか診断が出来ます。
しかし、もしもこの時に障害を受けた臓器や組織の反応が予想に反して変幻自在で、★型とは異なる■型の病気症状や▲型の病気症状になった時に、果たして容易に原因が★印と診断できるでしょうか。■型の病気は■印が原因、▲型の病気は▲印が原因と誤診してしまう可能性が多々あるのです。

また、病気症状が★型にもかかわらず、原因の★印が微々たるもので発見できずに、あるいは発見できても無視をされ、★型の病気にもかかわらず「気のせい」と診断されてしまうことの多いことは、このブログに登場した患者さんをご覧になれば、ご理解いただけるでしょう。

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非細菌性慢性前立腺炎の成り立ち

私が考えている非細菌性慢性前立腺炎の成り立ちを下図のようにまとめました。
慢性前立腺炎の様々な症状を理解する上で役立つ筈です。また、いろいろな周辺疾患に誤診される理由も理解いただけるものと思います。
このフローチャートからは、細菌やウィルスなどの病原性微生物が関与するのは急性前立腺炎・急性副睾丸炎だけだということが分かります。
ただし、この理論展開は私のオリジナルですから、他の医師に強要してもその医師が迷惑に思うだけです。

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骨盤内静脈うっ滞症候群・非淋菌性非クラミジア性尿道炎・ED・自律神経失調症・非細菌性慢性前立腺炎・老化・急性前立腺炎・急性副睾丸炎の全てが、排尿障害という原因から発生するメカニズムがお分かりいただけたでしょうか。

この複雑な病気のネットワークの中で、病気の本質を分かりにくくしているのが、男性・女性ともに排尿障害が原因の膀胱三角部の肥厚性過敏症という状態です。
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流体力学的発想

大学の泌尿器科学教室同門会会誌に以下の文を投稿しました。
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将来の泌尿器科学に流体力学の発想を  昭和54年卒 高橋 知宏

炎症性ポリープ
polyp31日20回以上の頻尿で苦しむ若い女性が時々来院することがあります。慢性膀胱炎・神経性頻尿・気のせいとすでに診断されており、決まって何箇所もの有名な医療機関をドクターショッピングされています。そのようなご婦人に膀胱鏡検査を行うと、膀胱頚部の炎症性ポリープと膀胱三角部の白苔・ビロード状変性を見つけることがしばしばです。前医において膀胱鏡検査をされている場合が極たまにありますが、どういう訳か異常なしと診断されているのがほとんどです。
研修医の頃(25年前)、炎症性ポリープを観察されても特に重要な意味として論議された記憶がありません。炎症性ポリープの存在価値は何?という質問に明確に答えることが出来る泌尿器科医がこの日本に何人いるでしょうか?「慢性の炎症だから」などと意味不明の回答をするのが関の山でしょう。慢性の炎症があるとポリープがなぜ出来るのでしょうか?
さて、皆さん、ご婦人の膀胱鏡検査の時にパンエンドスコープを行ったことがありますか?写真はドクターショッピングされたご婦人3人を撮影したパンエンドスコープの所見です。膀胱鏡検査の時に、膀胱頚部にチラッと見える炎症性ポリープは、パンエンドスコープで観察すると、膀胱鏡で見るのと随分違って見えます。実に偉そうに内尿道口のかなりのスペースをポリープが占拠していることがお分かりでしょうか。

後部尿道炎
uethritis320代から40代の比較的若い男性で会陰部の疼痛、睾丸の不快感、恥骨部の痛みなどで来院される方が時々おられます。すでに他の有名医療機関で非細菌性慢性前立腺炎・慢性前立腺炎・前立腺症・前立腺疼痛症候群・骨盤内静脈うっ滞症候群などと診断され6ヶ月から10年以上治療を続けておられる方がほとんどです。かなりドターショッピングをされているこれらの患者さんに膀胱鏡検査を行うと、写真のような後部尿道炎なる所見をたびたび観察できます。後部尿道炎という呼称は、慈恵医大泌尿器科だけの呼び方なのかもしれません。なぜならある東大出身の先生が、そのような呼称は聞いたことがないとインターネットで明言されていましたから。
ご婦人の炎症性ポリープよりも数多いポリープが集族的に膀胱頚部・前立腺部尿道・尿道括約筋部粘膜に密集しています。まるでイソギンチャクのような外観、易出血性で細かい石灰沈着を認めることもしばしばです。ただしこの所見は粘膜麻酔下では修飾されて判別できませんから、必ず仙骨神経ブロック下で行います。

ウィングレット
winglets炎症性ポリープや後部尿道炎の所見のある患者さんは、若いのですが調べてみると決まって排尿障害を認めます。排尿障害とこの事実の因果関係を調べていくうちに、あることに気付きました。それは泌尿器科学の分野ではなく物理、特に流体力学と呼ばれる専門分野に出てくる「乱流」という考え方です。流体が液体であれば乱水流、流体が気体であれば乱気流とよばれるものです。

fig52最近のジャンボジェット機などの航空機の主翼の端にウィングレットなる小さな垂直翼を見かけることが多くあります。ウィングレットは航空機の翼に生じる乱気流を減じる働きがあります。この乱気流は航空機の進行方向と逆向きの力が作用するので、航空機の飛行効率が低下します。ウィングレットの装着により乱気流はなくなり、航空機の燃費効率が約2%改善するそうです。

ECN-4242下の写真はウィングレットの装着されていない航空機の飛行場面です。翼の両端やジェットエンジン部に乱気流が生じて飛行機雲を作っているのがわかります。飛行機雲を見上げて海外に思いを馳せることが多かったのですが、この事実を知ってからは、飛行機が飛行機雲にまとわりつかれて困っているように見えてしまう今日この頃です。

パンタグラフとフクロウ
500-881時速300kmを超える新幹線500系の製作段階でパンタグラフの風切り音による騒音が問題となり、当時の技術者を悩ませていました。

fukuro-wingある時フクロウの翼の前面にある「風切羽」に消音効果があることを技術者は知りました。地上にいるネズミなどの獲物を滑空して捕らえる時に、一般の鳥では翼の風切り音で獲物が察知して逃げてしまいます。しかしフクロウの場合は全くの無音状態で飛来するので易々と獲物が捕まってしまうのです。風切り音は翼に生じるShort Bubbleと呼ばれる「気流の泡」が原因で、細かいノコギリのような逆羽毛の風切羽がこのShort Bubbleを消してくれるのです。

sinkansen500pantagraphこれをヒントに500系のT字型パンタグラフのマスト(支柱)の側面にボルテックス・ジェネレーターと呼ばれる細かい突起を作ったところ、風切音は低減して500系の騒音問題は解決したのでした。

美浜原発事故
rapture040811この事故は去年の8月ですから、皆さんもまだご記憶に新しいでしょう。テレビや新聞報道で分かるように、配管の途中にオリフィス(オリファイス)という流れを調節する狭い部分があり、その下流に乱流が生じ金属疲労を起こして配管が破裂したのでした。事故後の調査報告によると配管の壁の厚さは元々10mmなのですが、破断した部分は1.4mmと極端に薄くなり「減肉現象」が認められました。配管内のオリフィスからの強烈なジェット流が乱流を作り、その結果配管の金属壁にかなりの負荷を掛けた結果でした。

真意
さて、長々と一見支離滅裂に説明しましたが、私が言いたいのは、炎症性ポリープも後部尿道炎の所見もすべて尿道内の尿ジェット流による乱流が引き起こした生体の生理的適応現象ではないかということです。下部閉塞性尿路障害である機能性膀胱頚部硬化症や神経因性膀胱では膀胱内尿道口の開きが不十分で、尿道内や前立腺部尿道に強いジェット流が流れます。すると尿道内壁近傍に乱流が生じます。乱流は尿道内壁を吸引し尿道内腔径を狭めます。また乱流の吸引刺激は尿道粘膜の部分的な成長を促し、その結果、「ウィングレット・ボルテックスジェネレーター・風切羽」のような形状の炎症性ポリープが形成され、結果として乱流を抑える整流装置になると考えると、下部閉塞性尿路障害の中で発見される炎症性ポリープの存在価値が理解できます。つまり炎症性ポリープ・後部尿道炎を見たらジェット流を伴う閉塞性排尿障害と疑うのです。
しかし、尿道内のジェット流による乱流の発生を直接的に証明することは難しいでしょう。経直腸的カラードップラーエコー検査で排尿させると、映像として確認できるかもしれません。興味がある方は研究してみて下さい。

最後に
尿検査やEPS検査で異常ないから「心因性」「気のせい」「間質性膀胱炎」「非細菌性慢性前立腺炎」などと安易に診断をする泌尿器科医がとても多いのが残念です。泌尿器科医の検査方法は多岐にわたっており、そのすべてを駆使して患者さんに臨んでいただきたいと思うのは私だけでしょうか。癌などの診断は器質的証明で専門外の医師にも容易ですが、泌尿器科的な機能性疾患で悩んでいる患者さんに対して明解に証明することこそが、プロである泌尿器科医の仕事です。また、長期に渡って同じ治療を行い、訴えが改善しない患者さんに、「気のせい」などと色メガネで見ないで、現在の診断・治療に疑問をもち、もう一回見直して他のアプローチから進めてみようと努力していただきたい。機能性疾患は画像診断として表現しにくいのですが、今ある検査方法をいくつか併用することで間接的には診断可能です。今回の炎症性ポリープや後部尿道炎所見は、泌尿器科医の基本技術である内視鏡検査で簡単に観察できます。ドクターショッピングをなさる患者さんを拝見するたびに思うことですが、内視鏡検査も行わずに、尿検査だけで「気のせい」と安易に診断する泌尿器科医の何と多いことか!慈恵医大の後輩の先生方には、もっと繊細なアプローチで患者さんに臨機応変に接していただきたいと思います。「病気を診ずして患者を診る」の精神に返って...。


【参考】
NASA航空写真:http://www002.upp.so-net.ne.jp/a-cubed/aero-misc/winglet.html
レイルウェイフォトアルバム:http://www1.harenet.ne.jp/~nishi-da/
nagashi2-11/shinkan-500.htm
飛翔の力学:http://www.kyoto.zaq.ne.jp/morioka/supplement-08.html
東大航空部OB会誌「翼友」Short Bubble:http://www.mos.t.u-tokyo.ac.jp/
~taka/utsc/yokuyu/11bubble.txt
野鳥博士入門 唐沢孝一著 全国農村教育協会

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膀胱頚部と膀胱三角部

膀胱頚部と膀胱三角部の関係を明らかにすると、排尿障害がなぜ非細菌性慢性前立腺炎の様々な症状を形成するのかの謎が解けます。

【膀胱三角部】
膀胱三角部という名称は、左右の尿管口と膀胱出口(膀胱頚部)を結んだ線が、malebladder三角形になるのでこう呼ばれます。【ネッター解剖学アトラス図353 南江堂から参照】
さて膀胱三角部の一番の役目は膀胱内の尿の溜まった程度を感覚器として感じ、脊髄(主に仙骨脊髄神経2番~4番に相当)に情報として流すことです。膀胱三角部の感覚器はテンション・レセプター(伸展感覚受容器)と呼ばれる構造になっています。

【伸展感覚受容器】
その仕組みは簡単に表すと【模式図】で示すようになっています。模式図中の左図は、尿がたまっていない状態の膀胱粘膜です。膀胱粘膜下・膀胱筋層内の伸展感覚レセプターは、図のような電気回路になっています。尿が溜まっていない・ゆるんでいる時には、回路中の青の接点は離れていて回路には電流が流れていません。
triangleneckところが、尿が充満して粘膜や膀胱筋肉が引き伸ばされると、次第に回路の接点が近づき、遂には接点同士が付きスイッチが入り、回路に電流が流れます。この状態が脳脊髄中枢に膀胱内の尿量情報として伝達され、尿意になります。この接点間の距離にはバリエーションがあり、少し伸展してスイッチの入るものからかなり伸展しないとスイッチの入らないものまでいろいろあります。すべての伸展感覚受容器にスイッチが入ると、尿意の限界になります。
伸展感覚レセプターのこの原理が分かれば、次のことが容易に推論できます。もし尿貯留ではなく、病的な原因で膀胱三角部の伸展が余儀なくされれば、尿意や膀胱刺激症状が簡単に形成されることです。

【膀胱頚部と膀胱三角部の密接な関係】
膀胱三角部の延長に膀胱頚部が存在します。正常であれば膀胱頚部は適度に閉まっています。そして、排尿時には、目いっぱい開大して気持ちよくオシッコを出します。bnsimage.jpg
ところが膀胱頚部硬化症の場合、膀胱出口の組織が上に吊り上っていてBar in the sky 柵形成の所見を呈していると、膀胱頚部が膀胱三角部の組織を引っ張り上げる形になります。引っ張られた膀胱三角部は伸展感覚レセプターを常時接続状態にします。ですから膀胱三角部が常に過敏になり慢性前立腺炎の膀胱刺激症状で苦しむ患者さんに対しては、膀胱頚部を一部切除・切開を行い、膀胱三角部と膀胱頚部を引き離し、膀胱三角部の緊張を解除することに治療の主眼を置かなければなりません。


【実例】
24歳の男性患者さんです。1年前から会陰部のズキンズキンと感じる痛みと、両側陰嚢の痒みがありました。地元の病院と某国立大学病院、東京の某私立大学病院の泌尿器科を受診しましたが、「慢性前立腺炎」「気のせい」という診断でした。薬の処方内容は、セルニルトン・クラビット・ロキソニン・桂枝茯苓丸などでしたが、全く効き目がありませんでした。
高橋クリニックでの検査では、尿流量測定ウロフロメトリー検査・残尿量測定検査では異常を認めませんでしたが、超音波エコー検査では、膀胱粘膜の肥厚をわずかに認めました。
エブランチル(αーブロッカー)という排尿障害改善剤を処方したところ、今まで苦しかった症状が40%程に軽快しました。エブランチルを休薬すると、症状が元に戻ります。
患者さんご本人の強い希望もあり、膀胱鏡検査を行ったところ、やはり膀胱頚部硬化症の所見を認めました。

患者さんが手術を希望され実施しました。
手術直前の膀胱頚部の所見です。15729m24cp6時の手前に見えるのが、精丘で精液が噴出する場所です。左右に三角形に見えるのが前立腺です。奥の黒く見えるのが、膀胱出口=膀胱頚部です。脊椎麻酔がかかった状態で、すぼまって見えます。いわゆる膀胱頚部硬化症の所見です。この所見はBar in the sky 柵形成と呼ばれる所見です。

膀胱内の膀胱三角部の所見です。15729m24cp4血管が集まっていて、膀胱三角部炎状態です。この写真では判別しにくいのですが、膀胱頚部が盛り上がっていてつっぱている印象です。つまり膀胱三角部が常に引っ張られていて、伸展レセプター接点が常時接続状態です。

膀胱内壁の接線方向から観察した所見です。15729m24cp5段々状態が観察できます。「肉柱」と呼ばれる所見です。排尿障害が長く続くと、膀胱内壁が凸凹して肉柱が観察できます。逆に肉柱を証明できれば、排尿障害が証明できたことのなります。

手術直後の所見です。
15729m24cp2

【続く】

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