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慢性前立腺炎の所見

当院には慢性前立腺炎で何年も苦しみ悩まれている患者さんが、日本全国からたくさん来院されます。それらの患者さんはそれまでいろいろな検査を行い特に異常がないと診断され、最後には「気のせい」「ストレスが原因」とまで言われてしまうのです。

Cpecoh2 そこで私が超音波エコー検査を行うと、異常所見だらけです。先ずは、正常の前立腺の超音波エコー検査所見をイラストで示します。

これは側面像のイラストです。膀胱縦走筋は細く、そして膀胱出口に向いおり、膀胱出口のすぐ近く5㎜に位置しています。これが正常の所見です。

Cpecoh1_20200612123901 今度は慢性前立腺炎の患者さんの超音波エコー検査所見をイラストで示します。どうです?正常所見とは全く違うでしょう?
❶膀胱出口がVの字に大きく開いています。通常は凹み程度。
❷前立腺内に前立腺結石が認められる。排尿障害が長期間だと、前立腺に石灰が沈着する。
❸膀胱三角部が厚くなっている。膀胱三角部は尿意を感じるセンサーだから、厚ければ厚いほど、頻尿や痛みが強くなる。
❹膀胱三角部の粘膜が硬化している。膀胱出口が十分に開かないで、排尿するので、出口が強く振動する。その結果、振動する膀胱三角部の粘膜が硬く肥厚する。
❺膀胱出口の粘膜が硬化している。膀胱三角部と同じ理由。
❻膀胱縦走筋が縮み変形している。排尿障害のため、骨格筋である尿道括約筋に強く引っ張られ、変形し方向が異常になる。
❻膀胱括約筋が顕著に認められる。膀胱括約筋は膀胱出口の左右に存在するが、排尿障害が長期間だと、膀胱括約筋が太り、側面像の中心にまで観察できる。

❼静脈瘤が認められる。排尿障害で膀胱内圧が高くなり、前立腺に圧力がかかるので、周囲の静脈が圧迫され拡張する。
以上が、慢性前立腺炎の患者さんのエコー所見です。一般の泌尿器科の医師は、こんなに大きく拡大して観察しないのです。このイラストの8分の1程度の大きさで、エコー所見を読むので、このような細かい異常所見があっても、正常範囲内と誤認するのです。

一般の医師に強調したいのは、エコー所見を通常の大きさだけで観察するな!と言いたいです。


D450d27d39cc4e089388a6a2625f57f0  この写真は実例です。ご覧のように、膀胱三角部が硬化像があります。縦走筋は出口に向いていません。膀胱括約筋も肥大して正中に見えます。



Fb664f546e834980a1aa6b7f1b9be8f9  次の写真も実例です。縦走筋が膀胱出口ではなく、縮んで塊になっています。膀胱三角部はが厚くなって中葉肥大と思われます。膀胱括約筋も確認できます。

 

 

 

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コメント

 おそらく慢性前立腺炎(尿道口発赤湿潤過敏<包茎状にすると症状減>・会陰部不快感<骨盤下部が重い>・深酒で症状増<前立腺のむくみ?>)で、病院を転々としながら、抗生剤、セルニルトン、漢方を服用して(たまに運動)1年近く苦しんでいます。
 先生のブログを最近発見しまして、頻尿症状はありませんが、おそらく題名「難治性の慢性尿道炎」のシナップス結合かもしれないと思い、診察や超音波エコー検査などしていただきたく、すぐにでも貴院に駆けつけたいところですが、遠方なためタイミングを見計らっております。

①予約はできないとのことですが、遠方から訪問して確実に診察していただくためにはどのようにすればよろしいでしょうか?また、所要時間はどの程度みておけばよろしいでしょうか?

 第1の治療は、α1ブロッカーとのことで、中でもユリーフ(ユリーフは排尿障害中心、フリバスやハルナールは膀胱過敏性寄り?)をお勧めされているように感じました。ただ、ユリーフの副作用には逆行性射精があり、現在妊活中なので逆行性射精は困る状況です。

②となりますと、ハルナール、フリバス、エブランチルとのことですが、中でも最適なものはどちらになりますでしょうか? (ちなみに高血圧ではありません)

③第2でベータ3作動薬、第3で抗コリン剤、第4で抗男性ホルモン剤(5α還元酵素阻害薬)となり、「医師としても患者さんとしても、服用する薬は少なくしたいだけです。」とのことで、段階を経るのが標準とのことですが、少しでも早く症状を無くしたいので、最初から4種類服用したいと思うのですが、いかがでしょうか?
その場合のリスクは、副作用と費用と、一体どれで効いたのか分からない、の3点でしょうか?

④ザルティア(PDE5阻害薬)についてです。ブログにおきまして、「新しい薬剤として、ザルティアがあります。」と投薬候補に挙げられているようなニュアンスのものや、コメントで実際に処方薬として出されているケース、がある一方で、「調味料的な補助効果」と効果に懐疑的かのようなニュアンスのもの(提示された第1~4の治療薬の中にも含まれておりません)、があるように感じております。ご教示くださいませんでしょうか?

⑤ザルティアも効果があるとされる場合、③の4種類に加えて5種類服用することについていかがでしょうか?

⑥上記の全ては根本原因に作用するけれども持続性が無く完治はしない、ということなのでしょうか?
それでも例えば、服用間隔が空いてくる、というケースはあるのでしょうか?
また、アボルブで前立腺が小さくなり症状が出なくなっても止めれば必ず再び大きくなる、ということでしょうか?

⑦「慢性前立腺炎の症状♯23 精子運動率の低下」を拝読しました。現在、精子運動率が基準を下回ることがあり慢性前立腺炎との因果関係は不明ですが、服用することで精子運動率が改善する可能性がありますでしょうか?

⑧マルチビタミン等のサプリメントを常用しております。上記の薬と何か問題のある飲み合わせはありますでしょうか?また、前立腺に悪影響なサプリメントはありますでしょうか?

⑨内転筋のストレッチや骨盤底筋(肛門挙筋)の運動で症状が軽快、の事例についての先生のご見解はいかがでしょうか?

⑩慢性前立腺炎が専門の鍼灸院で症状が軽快、の事例についての先生のご見解はいかがでしょうか?

⑪水分の目安は1L以内とのことですが、脱水しない限り少なければ少ない方が良い、ということなのでしょうか?また、そうすることによって腎機能への影響はいかがでしょうか?

質問が多く大変恐縮ですがよろしくお願いします。

投稿: アドルフ | 2020/07/02 22:02

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