尿意の秘密
膀胱や前立腺の数々の病気を調べ研究して治療するに当たって、基本的な概念を明らかにする必要があります。その対象が「尿意」です。
泌尿器科学会で名だたる先生たちが唱える、尿意のメカニズムは次のようです。
まずは、膀胱の基本的構造をイラストで示しました。膀胱粘膜があり、その下に粘膜下組織、平滑筋層、神経組織のC線維があります。
①オシッコがたまり膀胱が膨らむと、当然、膀胱粘膜が引き伸ばされます。
②すると、膀胱粘膜からATPやアセチルコリンなどのさまざまな「生物活性物質」が放出されます。
③それら生物活性物質が膀胱粘膜のすぐ下に存在するC線維を刺激して、それが脊髄神経回路に伝達されて尿意になるのです。
もしも、この通りだとすると、説明できない現象があります。
頻尿や尿意切迫感を抑えるβ3作動薬のベタニスや抗コリン剤のベシケア・ステーブラ・トビエースなどは、膀胱の平滑筋を緩める働きがあります。そのお陰で、頻尿や尿意切迫感の患者さんが、オシッコを我慢できるようになるのです。しかし、もしそうだとしたら、平滑筋が緩み、膀胱がさらに膨らみ、膀胱の粘膜はなお一層伸びて、生物活性物質が大量に放出される筈です、すると、頻尿の尿意切迫感が強くならなければなりません。したがって、この理論は、間違いです。
では、どのように考えればいいのでしようか?
ヒントは、β3作動薬や抗コリン剤が平滑筋にしか効かないことにあります。そして、平滑筋を緩める=尿意が低下する点にあります。平滑筋細胞は、細胞間が電気結合=ギャップ結合で繋がっていて、1個の細胞の情報がすべての細胞に伝わります。つまり、1個の細胞の意識が、すべての細胞の共通の意識になるのです。膀胱が膨らむと、平滑筋は引き伸ばされて緊張(赤いギザギザ線)し、平滑筋全体に伝達されます。その緊張情報=膀胱内圧=尿意情報が神経に伝達されて尿意になるのです。この仕組みは、ほぼ神経細胞と一緒です。神経は線状なので1次元ですが、平滑筋は立体的なので3次元です。膀胱平滑筋は、収縮と弛緩する物理的な動力装置としての働きと、機能的な感覚センサーとしての働きがあるのです。
実は平滑筋には他にも違う働きがいろいろあります。動脈壁の中膜にある平滑筋は、動脈壁の内膜に溜まった悪玉コレステロールを食べて泡沫細胞になります。これはマクロファージ=貪食細胞と同じです。また、動脈壁の内膜に集まった泡沫細胞を固めるために平滑筋がコラーゲンを作ります。これは線維芽細胞と同じです。
以上のように平滑筋には、多彩な能力があるのです。その平滑筋には、私たちが知らない能力があるかもしれません。その不明の能力が原因不明の病気に関与しているかもしれません。そういう意味では、平滑筋の興奮を抑える大豆イソフラボンが、さまざまな病気の予防に役立つ可能性があります。
| 固定リンク
« 誤解 | トップページ | 新たなβ3作動薬 »
コメント
高橋先生、お世話になっております。
先月の2018年8月下旬に広島から訪問した・・・と申せば誰だかは推測頂けると思います。先日お伝えしましたが、こちらの地元にある漢方薬の先生で慢性前立腺炎の情報も公開されております。様々な要因や症状のため全ての患者にとって打開策になるとは思いませんし、自分のケースでも竜胆瀉肝湯(りゅうたんかんしゃくとう)の調合を2パターンほど試して効果はありませんでしたが、情報サンプルのひとつとしてご参照ください。しかし扁桃炎向け漢方薬による前立腺炎の副次的効果に関しては試してませんから、今後その選択肢もあると思っております。
ドクターショッピングをしていた時分には、必ず症状等を印刷した書面を提出していましたが殆どが一瞥のみで突き返され、その都度この医者は患者の訴えには耳を貸さないのだと思いました。そしてこれまで書面をアーカイブとして残し、その後の考察に役立てて下さる方針を拝見できたのは高橋クリニック:高橋先生と下記薬局:窪田先生、わずかお二方のみです。
ちなみに窪田先生の方にも、難治性慢性前立腺炎について情報発信する国内医師のお一人として高橋先生のことは既にお知らせしております。もし本コメントURLや氏名等、不都合等ありましたらお手数ですが削除又は、加工をよろしくお願いいたします。
●寺町漢方薬局ホームページ
http://www.teramachi-kanpou.jp/
●上記薬局医院長のブログ
http://www.kigusuri.com/shop/teramachi-kanpou/topic/1440561988.html
https://ameblo.jp/teramachi-k/entry-11956811103.html
以上です。
投稿: 平盛塩 | 2018/09/20 21:06