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私の考える「慢性前立腺炎」の病態

Flowchartbns今までにも、このブログの中で排尿障害が原因の「慢性前立腺炎」について解説しています。
しかし、個々に詳細に解説すると全体像がつかみにくくなるので、フローチャートを利用して全体像の解説を試みましょう。
まず、一番目に下部尿路の流出障害(排出障害・排尿障害)が存在します。膀胱出口が十分に開口しないことで、膀胱出口は排尿中に物理的異常振動を繰り返します。その異常振動は近傍の膀胱三角部平滑筋を刺激します。
平滑筋からの情報は脊髄神経を刺激します。慢性的な繰り返しのたくさんの情報量に対して、脊髄神経は増幅回路を形成し対応します。その神経増幅回路により頻尿・痛み・シビレ・不快感などの「慢性前立腺炎」症状になる訳です。
脊髄からの修飾・脚色された情報により、脳中枢は対応に迫られます。その結果、自律神経・内分泌・免疫システムなどを総動員して対応に当たります。それが「慢性前立腺炎」の全身症状になる訳です。
下部尿路の流出障害は前立腺部尿道内にジェット流を作ります。ジェット流は尿道粘膜を傷つけ、尿中の石灰成分が結晶化し尿道石灰・前立腺結石になります。
膀胱出口の異常振動は、膀胱出口を反応性に硬化させます。それが膀胱頚部の硬化像になります。膀胱頚部の硬化は膀胱出口の振動をさらに増幅させます。
また、その振動は膀胱三角部も振動させますから、膀胱三角部が肥厚します。肥厚は平滑筋の増量になりますから、センサーが増えたことになり、脊髄神経増幅回路をさらに刺激し、症状は深刻化します。
超音波エコー検査で確認できるのは、前立腺結石・膀胱頚部硬化像・膀胱三角部の肥厚です。
慢性的な膀胱出口の異常振動や膀胱頚部硬化症は、振動エネルギーが高まり、それが物理的刺激となって前立腺を前立腺肥大症に発展させます。若年者の前立腺肥大症の原因は、これが理由です。

Flowchartbns2上記の病態が理解できれば、その病態に応じた治療法を考えればよいことになります。
まず一番目の排出障害(流出障害・排尿障害)に対しては、α‐ブロッカー(エブランチル・ハルナール・ユリーフ・フリバスなど)を使用します。
次に物理的異常振動する主役は平滑筋ですから、平滑筋の緊張を軽減すれば、振動数は減り振動エネルギーは軽減します。α‐ブロッカー・ベタニス(β3作動薬)は平滑筋の緊張を和らげたり弛緩させますから、治療に利用できます。
平滑筋はセンサーと考えます。そのセンサーの緊張することで大量の情報が脊髄を刺激します。ですから平滑筋の興奮を抑える目的で、α‐ブロッカー・ベタニス(β3作動薬)を利用します。また、動脈硬化の主役に平滑筋があり、大豆イソフラボンがその平滑筋の興奮を抑えるという事実から、これを利用したところ「慢性前立腺炎」症状に効果がありました。膀胱・前立腺の平滑筋も大豆イソフラボンで興奮を抑えることができるのです。
脊髄内の神経増幅回路は無数のシナップス結合のネットワークです。シナップス結合間の伝達物質が回路の要です。そこを何とかするのが、デパス・リリカ・カロナール・ノイロトロピンなどの薬剤です。しかし、これら薬剤に確実性がないのが難点です。
抗生剤のミノマイシンなどは、抗生剤としてではなく、自律神経や免疫システムの興奮を抑えてくれますから、自律神経や免疫システムの興奮が顕著と思われる人には効果が出る場合もあります。
膀胱頚部硬化症や異常振動の持続で、前立腺肥大症になった人の場合には、抗男性ホルモン剤であるアボルブ・プロスタールも必要になります。前立腺肥大症の成分である前立腺平滑筋の増殖を大豆イソフラボンが抑えてくれるので効果的です。

Flowchartcpところが、これまでの慢性前立腺炎の考え方と治療は概ね右イラストようです。
臓器(前立腺)と感染(細菌)と経過(慢性)を単純に結びつけた名称、つまり慢性前立腺炎からの言葉の意味通りそのままの考え方です。小学生でも思いつく考え方です。この考え方で単純に容易に治るのであれば問題ありませんが、現実にはなかなか治りません。それを患者さん本人の気質のせいにしている事例が多々あります。

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コメント

ミノマイシンについて質問があります。

慢性前立腺炎症状で
免疫システムが異常興奮している人はどのような症状が出るのでしょうか?
【回答】
頻尿や痛み以外にアレルギー症状のある人です。
例えば、花粉症・慢性鼻炎・アレルギー性鼻炎・蓄膿症・ドライアイ・アトピー性皮膚炎などが併発している人です。」

また、慢性前立腺炎症状の「痛み」には、ミノマイシンは効果的でしょうか?
【回答】
中枢性の痛みではなく、膀胱出口や前立腺内の末梢神経末端に白血球・リンパ球・組織球などが刺激して痛みを構成している場合です。
一般的に前立腺マッサージ後の前立腺液検査で、白血球の確認を慢性前立腺炎の根拠にしていますが、それこそ免疫システムの興奮による白血球の浸潤です。」

お忙しい中、すみません。
回答 よろしくお願い致しますm(__)m

投稿: 東京タワー | 2011/12/23 02:30

お世話になります、先生のこの図解での説明でよーくわかりました!ブログの中でふくらはぎの痛みなど関係ないようなところの症状の説明がよくわかりました、また自律神経や免疫システムまで影響を受けるとなるときついですね、私は自律神経が不安定で挙句に低血圧ときて、フリバス飲むと-10ぐらい下がり、ふらふらですので今は先生処方のイソフラボンのみです。私も自律神経の不安定が後で慢性前立腺炎が先にあるのでしょうか?てっきり、低血圧で自律神経の不安定と思ってましたが・・?
【回答】
病気は一元的に全て説明できるものではありません。
もともと自律神経失調症もあるのかも知れません。」

先生来年もどうぞ、よろしくお願いします<(_ _)>

投稿: けんじ | 2011/12/24 00:30

回答 ありがとうございました★

投稿: 東京タワー | 2011/12/24 00:35

連続コメント、すみません。僕が高橋先生のクリニックを受診する前の話 なんですが、(泌尿器科をたらい回し) やはり、クラビットやセルニルトンで様子をみて下さい。と言われ一向に良くなりませんでした。しかし唯一 、ミノマイシンを2〜3ヵ月 服用した時に症状が全く出ない時期がありました。今、思うと不思議です。ミノマイシンによって免疫システムの異常興奮が一時的に抑えられたからでしょうか?
【回答】
そうでしょう。
あなたの症状発現に免疫システムが関与している可能性があると考えます。」

その後はどんな抗生剤を服用しても悪化の一途でしたが……。

先生の意見をお聞かせ下さいm(__)m

投稿: 東京タワー | 2011/12/24 01:31

自分自身、ひどい花粉症と体の過剰な緊張(自律神経失調症?) は感じています。お電話で申し訳ないのですが、ミノマイシンの処方をお願いしたいです。
先生、いつも コメントばかりで すみませんでしたm(__)m
【回答】
OKです。

投稿: 東京タワー | 2011/12/24 15:11

少し疑問に思った点があります。
俗に言う痛み止めはロキソニン60だと思うんですがカロナールというのは成分が違うのでしょうか?
【回答】
違います。

子供を発熱など小児科に連れて行ってらカロナールが処方されます。
【回答】
カロナールはアセトアミノフェンという薬剤で、主に感冒薬として利用されます。

頭痛で病院にいったらロキソニンのさらに頓服でカロナール200でした。
【回答】
ロキソニンは、ボルタレンなどの鎮痛解熱剤のプロドラッグ(前駆体)で胃腸症状の副作用が軽減された薬剤です。」

以前何かの記事でカロナールの適応が広まってガンによる疼痛なんかでも一回量が増えたなんて記事を目にしました。
【回答】
カロナールには中枢性の鎮痛作用があるので、本当の炎症以外の痛みにも効果的です。」

プロスタグランジンによる痛み止めはロキソニンとはわかるのですが先生のブログからわざわざカロナールを指定して書いてあるあたりを察するとカロナールは系統が違う薬なのですか?
【回答】
はい。
ロキソニンには末梢炎症による鎮痛効果しかありません。」

歯科で抜歯した時もロキソニンで痛みが止まらないときはボルタレン座薬でした。
【回答】
プロドラックではないボルタレンの方が直接的に効きます。」

最後に色んな科を受信して処方は出来ないんだけど最後はモルヒネしかないねと色んな科で言われ結局処方された事は一度もありませんがもし仮にモルヒネを使用した場合は痛みは収まるんでしょうか?
【回答】
モルヒネは脳中枢の痛み中枢に効果がありますから、効きます。」

モルヒネが適応症状や副作用や常習性や処方が無理なのが分かっていてのあえての質問です。

なかなか一般の先生はあとはモルヒネかなぁと言いながらも実際には無理そうで蛇の生殺し状態で帰ってくる事が多いので思いきって質問させてもらいました。

投稿: kaeru | 2012/01/23 01:33

もう少し質問させてくださぃ。
カロナールがガンの痛みに適応症状で一回処方量が増えたとの前提で考えれば…

ガンの最終的な痛み止めはモルヒネってイメージが強いんですがカロナールがガンの痛みに対抗できるならカロナールも脳中枢の痛み中枢に届く薬なのですか?
【回答】
カロナールは、脳中枢よりも脊髄中枢の依存度が高い薬です。
しかし、感冒薬に含まれるくらいですから、モルヒネよりもはるかに弱い薬です。」

脳中枢の痛み中枢に効くであろう痛み止めはモルヒネ意外にはないんでしょうか?
ハイペン
ブルフェン
ソランタール
ポンタール
ボルタレン
テグレトール

今までもらった痛み止めはこれくらいですが効きませんでした。

間質性膀胱炎の古いページに座薬で治った方がいらっしゃると記載されてますが整理して考えると???状態です。
さっばり分かりません。
座薬=痛み止め が正しいのか 座薬≠痛み止め以上の何かがあるか先生オリジナルの座薬でもあるんでしょうか?
【回答】
膀胱と直腸は、発生時の胎児の頃は、もともと一つの臓器(総排泄腔)でした。
成長とともに真ん中でくびれ、2つに分離し、前が膀胱、後が直腸になった経緯があります。
ですから、膀胱も直腸も脊髄中枢はほぼ同じ場所に位置しているので、直腸に痛み止めの座薬を入れれば、その効き目は脊髄中枢を介して膀胱に効果があるのです。」

投稿: kaeru | 2012/01/24 16:15

なるほど、膀胱と大腸が一緒なんてびっくりしました
人間の体って不思議ですね。だから大腸を使って膀胱を作る手術があっても不思議じゃないわけですね。
脊椎中枢にはたらきかける意味で座薬でありカロナールだったんでんですね。

いつもわかりやすくご説明頂きありがとうございます。

投稿: kaeru | 2012/01/24 18:33

慢性前立腺炎では、長時間の座位でその後数日間調子が悪くなる場合も多いと思うのですが、
長時間の座位で関連痛などの症状が悪化することの関係は、
排尿障害が原因という枠組みの中でどのようにお考えなのでしょうか。
座位で悪化するとなると血流が関連するのだろうかと考えたくなるのですが・・・。
【回答】
例えば、足の裏にオデキができて歩くと痛いとします。
オデキは歩いたために出来たと思いますか?
オデキは違う原因でできて、単に歩くと痛いだけです。
それと同じで、排尿障害の関連痛で会陰部痛になった患者さんがいたとしましょう。
会陰部の感覚神経は、膀胱頚部からの神経によってインターセプトされ増幅されています。
すると、本来の会陰部からの正確な情報は、膀胱頚部からの情報によって修飾・増幅され、会陰部痛になり、長時間座ることがあたかも悪いように錯覚させるのです。」

また、冷えることでも調子が悪くなる場合が多いと思うのですが、
冷えに関してはどういうフローで症状を悪化させるのでしょうか。
【回答】
我々人間は、少なくても氷河期を3回経験しています。
一面雪原で、吹雪いていて視界も聴力も奪われた状態を想像してみて下さい。
そのような状態で、自分よりもはるかに強い肉食獣が忍び寄った時に、どのようにして逃げることができるでしょう。
自分の持てる感覚を全て鋭敏にするしか、あらかじめ逃げる手段はありません。
この状態を人間になる前の小動物の時から恐らく何億年も経験しているとすれば、寒い=冷える=感覚が鋭敏=症状が増悪という公式が成り立つのです。
つまり冷えると病気が悪くなるのではなく、感覚のボリュームを自らが大きくして感じるようになるのです。

投稿: | 2012/02/01 01:48

 先生に質問なんですが、この病気は下痢と何らかの関係がありますか?私は下痢をした後尿意のような感覚が残ったり、会陰部が痛んだりします。膀胱頸部と腸は近いですから何か関係があるのかなと思いますが・・・。
【回答】
膀胱と直腸は元々ひとつの臓器(総排泄腔)でした。
胎児が発育していくうちに、総排泄腔の中ほどがくびれ、前後2つに分かれます。
前が膀胱に後が直腸になります。
元々一つの臓器ですから、脊髄で神経はつながっている人がいます。
その場合、膀胱の刺激が直腸を、直腸の刺激が膀胱を刺激される人がいます。

投稿: | 2012/02/03 16:19

慢性前立腺炎が再発し、 10月21日より、通院しています。
今、飲んでいる薬は、
ツムラ、セルニルトン、ハルナール、クラビットです。
ハルナールは、21歳の私に下さり、ビックリしています。
【回答】
排尿障害の治療ですからハルナールは最適です。
しかし、保険では前立腺肥大症が適応病名ですから使用できません。

投稿: 〇〇〇〇拓人 | 2013/11/14 08:20

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