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単球Monocyteの多様性

Cellaspsmfuncfig2p4右の電子顕微鏡写真は動物の膀胱平滑筋を観察したものです。
平滑筋細胞の中に筋線維芽細胞(F)が観察できます。細胞にはそれぞれ寿命というものがありますから、平滑筋も寿命が来ると細胞死(アポトーシスapoptosis)し委縮し消滅します。排尿障害などで負荷がかかれば掛かるほど、当然委縮し消滅する平滑筋は増える訳です。新しい平滑筋の補充がなければ、膀胱はただの袋になってしまいます。そうはならないために、筋線維芽細胞が存在します。
ここで疑問が生じます。次々に平滑筋に成熟しなければならない筋線維芽細胞は、いったいどこから来るのでしょう?この電顕像にはたった1個の筋線維芽細胞しかありません。長い年月をかけて補充しなければならない筋線維芽細胞は、この電顕像で確認できる平滑筋よりもはるかに多く存在しなければなりません。現場にないのであれば、どこから飛来してくる筈です。常識からすれば、骨髄で筋線維芽細胞の元の細胞、筋線維芽前駆細胞なる細胞が作られて、血液に乗ってたどり着く筈です。筋線維芽前駆細胞なる形態は、筋線維芽細胞と同じ形態であるとは思えません。恐らくその形は血球に似た形でしょう。

Monocytelymphocyteそこで候補として想像できるのが、「単球」という存在です。
単球は白血球の仲間です。血液中では単球という存在ですが、組織の中に侵入すると、単球はマクロファージという貪食細胞に変身します。マクロファージは組織内の不必要な成分を処理する細胞で、動脈硬化の主役でもある泡沫細胞の元の細胞です。

Monocyte実は単球にはすごい潜在能力があることが分かっています。
一定の条件下で、骨にも筋肉にも神経にもなるのです。まるで今話題のiPS細胞のようです。組織の中で補充しなければならないのは平滑筋に限ったことではありません。恐らく「単球」がそれぞれの組織の中で、しかも一定の条件下で、その現場で必要な「〇〇芽細胞」に変身するのでしょう。つまり、神経芽細胞、骨芽細胞、筋線維芽細胞、血管内皮芽細胞などにです。

Bloodcellもしも、慢性前立腺炎や間質性膀胱炎の病態の基本に、平滑筋細胞の新規補充が不十分が原因だとしたら・・・。単球は十分に補充されているにも関わらず、単球が平滑筋芽前駆細胞として平滑筋芽細胞に変化・分化・変身しないのが病気の原因とすれば・・・、新しい治療法が見出せます。

Teribone「〇〇芽前駆細胞」を「〇〇芽細胞」に分化促進させる薬剤が存在します。骨粗鬆症の治療薬である新しい薬剤、「テリボン」です。
この薬剤(注射剤)は、骨芽前駆細胞を骨芽細胞に分化成熟させる薬剤です。保険適応疾患は骨粗鬆症、つまり骨にしか効果がない薬剤です。しかし、今までの理論展開から推理できることは、この骨芽細胞前駆細胞というのは「単球」であり、この単球は現場の環境により骨芽細胞に分化・成熟するということです。その分化・成熟に「テリボン」という薬剤(副甲状腺ホルモン)が効果があるのですが、生体の中で、何種類もの「〇〇芽細胞」を分化・成熟させるに必要な何種類ものホルモンがあるとも思えません。
もしかすると筋線維芽前駆細胞=単球を筋線維芽細胞に、さらには平滑筋細胞に分化・成熟させるホルモンと共通の成分をこの「テリボン」は有しているのかも知れません。その証拠に、骨の治療薬にもかかわらず、「テリボン」には様々な微妙な副作用、食欲減退・めまい・頭痛・消化不良・悪心・嘔吐・異常感・倦怠感・発熱など、一見骨とは無関係な症状が出現しているのです。血中カルシウム濃度が上昇したための副作用と説明されていますが、結論はあいまいです。また血管平滑筋を弛緩させる作用もあります。これらは骨以外にも作用している証拠でしょう。この副作用は通常量での症状ですから、この薬剤をある一定以上に希釈して治療に利用すれば、副作用がなく他の病気に利用できるかも知れません。人間の体は複雑怪奇ですが、チョッと方向性を変えるだけで驚くほど状況は変わるものです。
排尿障害で膀胱や前立腺の平滑筋細胞が傷み細胞死し、その結果、残存した平滑筋が過敏なり、それが慢性前立腺炎や間質性膀胱炎の症状を作り上げているとすれば、すでに絶えず補充されているであろう前駆細胞の分化・成熟の促進で平滑筋は潤沢に増え、辛い症状は軽減するかも知れません。もちろん私の仮説の域を出ませんが・・・。

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コメント

 先日ネットで高橋クリニックと同じ大田区で、先生と同じ慈恵大の卒業で、年齢も先生と同じくらいの医師が開業している泌尿器科クリニックを見つけました。

 慢性前立腺炎の治療のページに、アルファブロッカーが効果がある方もいる、アルファブロッカーについてはその有効性が臨床試験で確認されているとの記載がありました。

 この医師は先生の同期か先輩か後輩の方でしょうか。同じ大田区で慢性前立腺炎についてアルファブロッカーの効果を認める医師が同時に存在するのはけっこうすごい偶然ですね。
【回答】
私の1年後輩の和田鉄郎先生です。
彼の前立腺癌のラテント癌についての論文を引用して、前立腺癌のブログに掲載しています。
http://hinyoukika.cocolog-nifty.com/bph/2007/05/post_19a1.html

私の慢性前立腺炎に対する考え方も彼は知っています。
和田先生の奥さん、和田隆子先生は私の白内障を見つけてくれた恩人です。

投稿: とし | 2012/01/11 12:00

 この記事はつまりこの薬剤によってアルファブロッカーやベタニス、大豆イソフラや手術などでは出来ない、膀胱平滑筋を新たに生み出すということが可能かもしれないという事ですか?
【回答】
その通りです。

投稿: 地方患者 | 2012/01/16 13:35

 これはもしかしてものすごいことではないのでしょうか?新たに平滑筋を生み出すことが出来るかもしれないんですよね?
【回答】
そうです。」

 手術は機能不全な頸部と三角部を除去することしか出来なかったわけですし、アルファブロッカーは弛緩させるだけですから。いつごろから現実に治療を始めるのですか?
【回答】
今年中には始めたいと考えています。

投稿: 地方患者 | 2012/01/16 17:31

 ただ思ったのですが、この病気の原因はもともと生まれつき持っている膀胱頸部の開きにくさのはずです。とすると、平滑筋が新たに作り出されたとしても、その平滑筋が構成する膀胱頸部の開きにくさが変わらなかったら、長期的な効果は期待できないのではないでしょうか?
【回答】
慢性的な排尿機能障害で平滑筋がダメージを受けます。
ダメージを受けた平滑筋が再生されずに、その平滑筋で急場をしのいでいるので、平滑筋の興奮が治まらずに症状の発現となると考えます。
平滑筋の新陳代謝が正常に行われ、常に新しい平滑筋が補充されたとしたら、慢性前立腺炎症状は発現しないのかも知れません。」

 この薬剤によって平滑筋を作り直すことが可能であるとして、もともと持っていた開きにくさまで治るのでしょうか?まだ理論段階なのにあれこれ聞いて申し訳ありません。
【回答】
開きにくさは変わりませんが、ダメになって興奮している平滑筋から再生した新しい平滑筋が誕生し補充されれば、異常な興奮を作らないと考えています。」

投稿: 地方患者 | 2012/01/16 18:11

 なるほど。たとえ開きにくさが変わらないとしても、平滑筋がノーダメージなら興奮はせず、症状が治まるかもしれないわけですね。アルファブロッカーは平滑筋を新たに生み出す力までは無いですから、この薬剤の方がもっともっとダイレクトに治療が可能になるかもしれない。
【回答】
そのように考えます。」

 しかし、この薬剤は注射になるのか錠剤を呑むのか分かりませんが、一度の摂取で済むのですか?それとも定期的に注射しなければならないのですか?平滑筋は日々生まれ死んでいくわけですから、定期的に補充しなければいけないような気がします。
【回答】
残念がら定期的な注射になります。
どの位の定期的にするかは現在、思案中です。

投稿: 地方患者 | 2012/01/17 10:32

 もう1つ思ったのですが、手術で効果があまり見受けられない患者さんにこの治療をしたら活路が見いだせるかもしれませんね。
【回答】
正解!

投稿: 地方患者 | 2012/01/17 10:36

 うーん、この治療法凄いですね。仙骨神経ブロックのように長期的な効果が期待出来ればいいですが、定期的に注射する必要があったとしても、もしかしたら膀胱平滑筋の再生という真の根本治療になるかもしれないですから。手術で効果が感じられなかった方々にも効果があるといいですね。

 本当に楽しみなので、続報があればまた記事にしてください。大変期待してます。

投稿: 地方患者 | 2012/01/17 12:07

 この記事の意味がやっと解りました。この治療法、効果があって欲しいです!今までの治療法とは一線を画しますから期待大です。ところでこの治療法を実施するとしたら、陰茎か膀胱に直接注射するのですか?
【回答】
この記事を読んでも、なかなか理解できないでしょう。
一般的に肩に注射です。
場合によっては、自己注射も可能です。

投稿: とし | 2012/01/19 09:42

 そうですね、素人にこの記事の内容はちょっとハードル高いですが、コメント欄と合わせて読むと何とか分かりました。

 この自己注射とは糖尿病のインスリン注射のように自分で打つことを言うのですか?
【回答】
そうです。」

 まだ仮説ですし、これから試す治療ですからあれこれ聞くのはどうかと思いますが、定期的に注射とはどれくらいの間隔になりそうなんですか?
【回答】
1週間に1回、濃度の違うものを交互に注射します。
3ヵ月間治療続けて注射は終了です。
その後、効果をみます。

投稿: とし | 2012/01/19 13:07

 それでもし効果が出たら、それからはまた定期的に注射を続けるという事ですか?それとも効果が出たら治療自体が無事終了という事ですか?
【回答】
3ヵ月1クールとし、症状が改善すれば、それで終了です。
再度症状が出てくるようであれば、再び1クール注射します。

投稿: とし | 2012/01/19 14:07

先生のところでフリバスやハルナールなどのアルファブロカーを処方して頂くには何歳から保険適応になりますでしょうか?
【回答】
40歳以上ならOKです。」

最悪実費で購入するならおいくらになりますか?先生のところで実費購入はかのうでしょうか?
【回答】
薬剤費が1ヵ月分で7千円くらいでしょう。

投稿: モーツアルト | 2012/01/21 21:12

今までの、アルファブロッカー薬やベタニスなどによって平滑筋の緊張を解く、
ノイロトロピンやミノマイシンなどによって、中枢神経に作用させる
という方法とはぜんぜん方向性の違う治療法が出てきて、
様々な治療法を閃かれる高橋先生はすごいなあと思います。
【回答】
思ったように治らない人に対して、私自身がとても苦悩している結果です。」

2度の手術でも自覚症状を抑えることができなかった患者としては、
この方向性がまったく異なる治療法に期待します。
【回答】
ありがとうございます。

投稿: レイニーブルー | 2012/01/22 02:15

先生の治療は斬新なものが多く外来でQOLが上がって行くことに頭が下がる思いをいつもしておりますが今回の内容は中々難しくて理解に難しいところですがテリボンの成分を希釈して注射すれば膀胱平滑筋に対しての臓器選択性の薬剤となるのですか?
【回答】
今後の結果待ちです。」

または希釈して使う事によりアレルギー疾患や冷え症なんかと自律神経にも反応したりするでしょうか?
【回答】
症状を作っているのが、興奮した平滑筋と考えています。
症状によって原因が異なる訳ではありません。
再生することで平滑筋が新しいものに新陳代謝すれば良い結果が出るでしょう。」

骨粗鬆症と言われて第一に頭に浮かぶのは年配の方々の骨密度がもろくなり骨折しやすくなるくらいしかイメージがつかないのですが
仮説の中では新しい細胞(骨や筋や神経)が作られるとのイメージですが新しい細胞が作られたところでも出来上がった神経回路を壊すまではいかないのかもとちょっとネガティブな感じです。
【回答】
神経回路は残ります。
しかし、情報源が再生して心機一転すれば状況は変化するでしょう。」

ボトックスで約半数の方に効果があったとの事で3ヶ月後に戻ってしまったとの事から出来上がった神経回路を壊す事は何かボトックスとは違う観点があるんでしょうか?
【回答】
ボトックスは平滑筋と神経末端の連結部を破壊します。
しかし、3か月もすると破壊されなかった中枢部から新しい芽が出て、それが平滑筋と再結合し元に戻るのです。
芽が出てくるのは、平滑筋の興奮が誘引していると考えます。」

IPS細胞と単球というのが今回の大きな違いでしょうか?聞き慣れない言葉ばかりでなかなか理解できない素人ですみません。
【回答】
あくまでも私の仮説です。

投稿: KAERU | 2012/01/23 00:17

 おはようございます。

 僕も思ったのですが、肩に注射にしたのになぜ膀胱で効果を発揮して膀胱平滑筋を再生してくれるのでしょうか?
【回答】
では、逆に質問です。
骨粗鬆症の場合、テリボン注射を肩に注射して何故骨に効くのでしょう?
肺炎の場合、抗生剤を肩に筋肉注射して、何故肺に効くのでしょう?

投稿: とし | 2012/01/24 09:25

 なるほど。血管に載って全身にまわるってことですか?
【回答】
その通りです。

それでうまく膀胱で平滑筋を作ってくれるということですか?
【回答】
それはどうなるか、今後の問題です。

投稿: とし | 2012/01/24 15:02

 本当にこの治療は楽しみです。

 前のコメントでは今年中に始めたいとのことでしたが、具体的にいつごろになりそうでしょうか?
【回答】
現在、一人の患者さんを始めています。

投稿: とし | 2012/01/24 17:21

 骨粗しょう症について調べましたが、この病気の原因は骨を作る細胞が少なくなってしまい、その細胞を増やすのがこのテリポンだと思うのですが、このテリポンは骨粗しょう症の場合、どれくらいの期間ごとに注射していくのですか?骨粗しょう症の患者さんは骨芽細胞を生み出す能力が少ないわけですからしばらくすると、また骨芽細胞が少なくなってくると思います。そうなると補給の必要がありますよね。
【回答】
テリボン注射は、毎週1回で72週(回)とされています。
つまり投与期間は、約1年半と制限されています。
それ以上の投与は認められていません。」

膀胱頸部硬化症の患者さんに対して効果があったとしても、やはりしばらくすると平滑筋の再生能力が元に戻ってしまうでしょうから、再注射の目安としてどれくらいの期間ごとなのかなと参考までにお聞きしたいので。平滑筋と骨芽細胞では全く違うかもしれないので、あくまで参考程度ですが。
【回答】
本格的な治療をしている訳でもありませんから現在ハッキリしたことは言えません。
半年から1年に1回3ヵ月の治療になるものと考えています。
もちろん効果があればのことです。」

投稿: とし | 2012/01/25 08:24

先生こんにちは。自分は昨年の12月に手術していただいた患者です。まだ排尿痛、たまに血尿と血の塊が出て症状は変わりません。まだ術後一ヶ月しか経ってないので、様子をみようと思ってます。
先生は次から次へと新しい治療法を閃いてくれて患者の希望です。
毎日忙しくて大変だと思いますが先生自身、体調崩さないように気をつけてください。

投稿: K.S | 2012/01/25 14:40

 この治療の治療費はいかほどですか。
【回答】
現在無料です。

投稿: | 2012/02/01 19:08

 すいません、言葉が足りませんでした。仮に治療によって効果が出て、正式に治療を開始したとしたらの値段です。自由診療だと思いますが、おいくらでしょうか。
【回答】
混ぜる薬剤と注射器代込みで、私に利益がないとして、1クール10回~12回として、総額約3千円くらいでしょう。

投稿: | 2012/02/02 14:35

 気が早いかもしれませんが、上のコメントのテリポンの患者さんには何か効果が見受けられましたか?
【回答】
まだです。

投稿: | 2012/02/18 07:23

 テリポンを試しているのは今もお一人ですか?
【回答】
はい。

投稿: | 2012/02/20 21:31

 その後テリポンはいかがですか?
【回答】
未だ効果を認めません。

投稿: | 2012/03/04 16:51

 退院おめでとうございます。

 ところでテリポンの効果はその後いかがですか?
【回答】
ダメです。
仮説で終わりそうです。」

試しておられるのはお一人ですか?
【回答】
まだ一人です。

投稿: | 2012/04/09 12:46

 テリポン治療はその後どうなったんでしょうか。
【回答】
慢性前立腺炎や間質性膀胱炎の患者さんには効果は認められませんでした。

投稿: | 2012/11/15 07:52

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