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神は細部に宿る

Kamisaibuyadoru「神は細部に宿る God is in the details.」という言葉を先日カンブリア宮殿という番組の中、世界的有名な建築家との対談で村上龍が最後の感想を述べた時に聞きました。
調べてみると「神は細部に宿る」という言葉は、建築学の中で頻繁に使用されるフレーズです。この言葉から派生した「悪魔は細部に宿る The Devil is in the details.」という言葉があるくらいです。

私たち人間は、60兆個の細胞から成り立っています。その細胞一個一個に核があり、核の中にはその人特有で同一の遺伝子情報、DNAが含まれています。このDNAには、その人間の姿かたちなどの外観ばかりだけではなく、性格、行動様式、運動神経、遺伝的病気などあらゆる情報が包含されています。「神は細部に宿る」というのにピッタリの事象です。

慢性前立腺炎を研究すると、初めは排出障害が原因の全てだと思い込んでいました。しかし、研究するうちに、排尿障害が原因の膀胱の過敏さが症状の大本だと思うようになりました。さらに研究すると症状を作るのに必要な「感覚装置」そのものが、膀胱や前立腺に証明されていないことに気づきました。
皮膚などにある「感覚装置」と同じようなものが何故ないのか?と悩んでいるうちに、過活動膀胱OABの治療薬である「ベタニス」の登場で、その答えが「おぼろげ」ながら分かってきました。
平滑筋の治療薬である「ベタニス」が、膀胱の過敏さをおさえるという事実から、「平滑筋」そのものが「感覚装置」であるとヒラメキました。【平滑筋=動力装置+感覚装置】という私の「思い込み」が、調べれば調べるほど真実のように思えてなりません。

先日のアステラスの社内勉強会で平滑筋について解説しました。平滑筋は様々な顔を持っています。循環器では動脈硬化の原因です。婦人科では子宮筋腫や月経困難症の原因です。泌尿器科では、前立腺肥大症や慢性前立腺炎や過活動膀胱の原因でもあります。おそらく間質性膀胱炎の原因もそうでしょう。平滑筋の多様性の顔を全ての診療科の医師が理解できる訳ではありませんが、何となく理解している程度です。ミクロン単位のこの小さな平滑筋という細胞が正常に働いている姿は、「神は細部に宿る」の神が宿っている「細部」=「平滑筋」と言えるのでしょう。しかし、慢性前立腺炎や過活動膀胱の原因を作っている病的に異常興奮した平滑筋は、「悪魔が細部に宿る」の悪魔が宿った「細部」=「平滑筋」に他ならないのです。

この「神」あるいは「悪魔」が宿った「細部」=「平滑筋」を正常にコントロールすることが、慢性前立腺炎や過活動膀胱や間質性膀胱炎の根本治療になるのではないかと思う、今日この頃です。

【備考】
狂牛病(BSE)の原因が異常ブリオンというタンパク質であったことは記憶に新しい。病原菌やウィルスではない新たな病原体という概念に世界中が驚きました。感染すると正常のタンパク質が異常ブリオンに変化してしまい(異論もあるようだが)、そのタンパク質で構成された脳中枢が機能不全になるという病気です。悪魔が細部に宿る例です。

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コメント

質問です。
お忙しい中、すみません。
ベタニス錠ですが、9月中には処方可能になるでしょうか?

それとも、10月中でしょうか?

回答、よろしくお願い致します。
【回答】
まだ未定です。

投稿: 東京タワー | 2011/08/16 00:13

高橋先生、お忙しいところ失礼します。

最近のブログを拝見して質問があります。
本病気の本質として、膀胱平滑筋や前立腺平滑筋の異常興奮の可能性があるかもしれない、とのことですが、

Q1 それでも膀胱頚部の手術を行ってから、ベタニス等のアルファブロッカーでの症状コントロールが根治治療になるのでは思うのですがいかがでしょう?
【回答】
薬剤だけでも根本治療になると考えます。


Q2 平滑筋に作用する薬剤の登場で手術法に変化はありますか?
【回答】
変わりありません。
α‐ブロッカー(エブランチル・ハルナール・ユリーフ・フリバスなど)も平滑筋に作用する薬剤ですから、ベタニスが登場しても同じです。
どんなに素晴らしい薬剤が登場しても効かない人や体に合わない人はいます。
ですから、治療方針は変わりません。

以上、疑問に思ったため質問させていただきました。よろしくお願いします。

投稿: 山井 | 2011/09/06 21:37

高橋先生いつもお世話になります、31356です。

私は子供の頃から、アレルギー性鼻炎と言われ続けて来ました。
本人自覚はありませんし、事実鼻は詰まってません。
ただしホコリが多いところに行くとたち待ち鼻水が出ます。

先生のブログを読んで、水分代謝の異常(排尿障害)が根本的な原因なのかな?
と思っています。
しかし、排尿障害改善薬のハルナールやユリーフを飲むと鼻詰まりが起きます。

鼻にとっては平滑筋が緩くなっては困るのでしょうか???

1、慢性前立腺炎や間質性膀胱炎がハルナール等のαブロッカーで症状が改善する事実。
2、泌尿器に疾患のある患者に鼻炎を患っている人が多い、という事実
3、ハルナール、ユリーフで確実に鼻が詰まる、という事実

間違いなく平滑筋が何かを起動させてる、と感じます。

投稿: 博 | 2014/07/29 00:30

高橋先生。
お忙しいところ すみません。

5年ほど前から、会陰部に違和感があって、ゴニョゴニョグニョグニョとした動きと、ひきつれる痛みがありました。

当時、その不快感について、いろいろな病院やドクターにかかりましたが、治らず今に至っています。

今年5月ごろから、友人の紹介で京都駅近くの、泌尿器科専門のドクターにかかったところ、非細菌性慢性前立腺炎と診断され、治療を受けてきました。

7月には、いちど内視鏡で診てみましょうということで、手術になったのですが、尿道狭窄部分をレーザーで焼き切るだけで終わりました。

なぜその時に前立腺まで切ってくれなかったのか、よく解りませんが、会陰部のゴニョゴニョ感と疼痛はとれていません。

特に夜勤で16時間半座ったあとが具合悪く、
ゴニョゴニョの動き(?)が脳天までひびいて
どうしようもなくなっています。

ドクターは、前立腺周辺のうっ血が原因だろうと言って、半身浴や歩くことを勧めますが、
一向に良くなりません。

先生、どうか私を助けてください!
このままこの症状を、一生持って行かないといけないなんて辛すぎます!

現在は、ハルナールD。 エビプロスタット。ベタニス。アボルブカプセルを飲んでいます。

あと、鬱の薬も飲んでいます。
私は68歳です。

どうぞよろしくお願いします。
【回答】
ハルナールをユリーフに、アボルブをプロスタールに変えてみてはいかがでしょうか?
さらに最近の薬剤でザルティアも試してみてはいかがでしょうか?
それでもダメなら内視鏡手術を再度お勧めします。


投稿: こたりこじーじ | 2015/10/07 21:43

高橋先生。お世話になります。

さっそく、この次の診察の時に相談してみます。
ユリ―フ、プロスタールはそれぞれ何㎎の分でしょうか?
【回答】
ユリーフは1回4mg1日2回、プロスタールは1回25mg1日2回です。」

ザルティアという薬は、ハルナール、アボルブのどちらの代替えと考えておられますか?
【回答】
追加薬です。」

またそれが効かなかった場合の、内視鏡手術というのは、前立腺の摘出手術ということでしょうか?
【回答】
膀胱頚部を切除するか前立腺を切除です。
どちらも内視鏡手術でTURという技法です。」

以上どうか教えて下さい。

スミマセン。ここの書き込みですが、前回も3回目で届いたようで、今回も4回目の書き込みです。
【回答】
私は毎日60人前後の患者さんを診察し、昼休みの時間に手術を行っています。
その合間に、ブログを見て回答しています。
ですから返事をすぐには書くことができません。
1回でも入力をした段階で私のパソコンには貴方の質問は届いています。
ですから今回4つも同じ質問が入力されています。
回答が出るまでお待ちください。」

どうか届きますように。。。

先生よろしくお願い申し上げます。

投稿: こたりこじーじ | 2015/10/11 10:27

そうでしたか。
ぜんぶ届いていましたか。

お手数をおかけして、まことに申し訳ありませんでした。

確かに膀胱頸部硬化症だとも言われていました。
尋ねてみます。

ありがとうございました。

投稿: こたりこじーじ | 2015/10/11 14:19

以前メールいたしました「心配人間」です。
10月13日上京して医院をお尋ねしましたが、先生の検査で臨時休業でした。HPを失念しておりました。
ご入院とのことどうぞお大事になさってください。元気に復帰され私たちの心配を取り除いてください。
11月24日以降にまた来院いたします。
よろしくお願いいたします。
【回答】
タイミングが合わなくてごめんなさい。

投稿: 心配人間 | 2015/10/14 12:12

高橋先生。

ご入院されておられたのですね。

どうぞくれぐれも、お大事になさってください。

きょう、泌尿器科に行ってきました。
こちらのドクターは、会陰部の不快感は、やはりうっ血によるものなので、
お風呂にゆっくりつかり、散歩をしなさいとおっしゃり、薬もベタニスとアボルブを継続でした。

ユリ―フとプロスタールのことは、こちらから言えませんでした。

また手術についても、良い結果は出ないよと言われました。

もうこのドクターは、不快感については治してくれないようです。

確かに頻尿については好転しましたが、この不快感の耐えがたさを解ってくれないようです。

ということで、ユリ―フとプロスタールは、別の道で出していただきました。心療内科です。

もともと鬱の薬で排尿障害が起こってきたので、そちらで手に入れることができました。

ユリ―フとプロスタールはすぐにもらえましたが、ザルティアは取り寄せということでした。
注意書きを見たら「視覚障害を起こすかもしれない。」とちょっと怖いことが書いてありました。2.5mgを一日2回でお願いしましたが、5mgを一日一回のほうが一般的なんですってね。

鬱のほうでたくさん薬を飲んでいるので、飲み合わせがないか、ちょっと気になります。

鬱の薬は、ノリトレン25mgを一日2回。
コレミナール4mを一日3回。
ドグマチール50mgを一日3回。

眠剤としてハルシオン0.25mgとテトラミド10mgとエバミール1mgを飲んでいます。

また内科で頻脈の薬ベラパミル40mgを2錠1日2回。
高脂血症にベザテートSR200を一日2回というように、たくさんの薬を飲んでいるので、飲み合わせに引っかからないか心配です。

でも、それ以上に会陰部の不快感は酷く、仕事中にも、座っていても運転しても、もう我慢が出来ません。

長い問い合わせになってしまって、申し訳ありません。

先生のご病気も、少しでも軽くなりますようにとお祈りしています。

以上、どうぞよろしくお願い申し上げます。

投稿: こたりこじーじ | 2015/10/16 20:25

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