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学会報告 2011年4月 第99回日本泌尿器科学会総会 名古屋国際会議場にて

20114nagoyaposter2011年4月21日(木)クリニックを休診にして、名古屋で開催された第99回日本泌尿器科学会総会に出席・報告しました。
早朝6時37分品川発の新幹線のぞみに乗り、夜10時43分品川着の新幹線のぞみで日帰り発表してきました。

20114nagoya以前にブログで紹介したように、慢性前立腺炎の若い男性患者さん50人の集計中でした。あれからコツコツと続けて、1年間で10代~20代(13歳~29歳)75人の統計がまとまり報告しました。
下記に詳細にコメントしましたが、時間内にこれだけ説明している訳もなく、実際は身振り手振りの数分間のプレゼンです。

20114nagoya2mokuteki日ごろの臨床現場でドクターショッピングされている慢性前立腺炎の患者さんに遭遇する機会は多いでしょう。その患者さんに排尿機能障害が見つけられることが多いのに驚きます。
そこで、壮年や高齢者の慢性前立腺炎だと前立腺肥大症が原因と誤解されてしまう可能性があるので、若い男性の慢性前立腺炎症状の患者さん75人のデータをここで紹介します。

20114nagoya3hoho1年間に受診した慢性前立腺炎症状の患者さんのうち、10代から20代までの若い男性75人集まりました。
初診時に排尿機能検査と超音波検査を実施し、治療前・治療後1ヵ月~6ヵ月で慢性前立腺炎症状スコア(NIH-CPSI)をみました。全例にα-ブロッカー(エブランチル)を処方しています。内視鏡手術に至ったのは、α‐ブロッカーで功を奏さなかった75例中7例(9.3%)です。

20114nagoya4seiseki75人の患者さんの平均的所見です。
一般的に病歴が長く、平均で2年10ヵ月、一番長い方で15年間苦しまれています。


20114nagoya8pasth以前に診断された過去の病名の内訳です。
一番多いのが、慢性前立腺炎48%、次に心因性・精神的13%、陰嚢掻痒症5%、過活動膀胱4%でした。

20114nagoya9syojo初診時の患者さんが訴える症状の内訳です。
大きく分けると、痛み系症状63%、排尿系症状27%でした。
具体的に一番多いのが、睾丸の痛み19%、次に頻尿15%、会陰部の痛み14%、陰茎の痛み13%、残尿感9.8%でした。
排尿機能障害が原因の可能性が高い病気にも関わらず、排尿機能障害を直接連想させる症状の排尿困難は113症状中1例1%以下(0.88%)です。これがこの病気を誤診させてしまう原因でもあります。

20114nagoya6cpsiqol治療前後の慢性前立腺炎症状スコア(NIH-CPSI)の推移です。
治療後にスコアはハッキリと半減しています。


20114nagoya7painuri痛み・不快感スコアや排尿スコアはさらに顕著に軽減しています。

20114nagoya10kyokusen排尿機能検査として尿流量測定検査(ウロフロメトリー)を行います。
若者ですから、普通に考えると排尿障害はない筈です。しかし、排尿曲線のタイプでみるとあらゆるタイプの排尿曲線を認めることができます。
正常タイプはたった19%、膀胱頚部硬化症タイプは一番多くて44%、高齢者で多い前立腺肥大症タイプがなんと24%も占めています。

20114nagoya11typenolb排尿曲線の具体的なグラフです。
左が正常な排尿曲線です。右が膀胱頚部硬化症の際に認められるギザギザなスパイクの多い排尿曲線です。

20114nagoya12typebphn左が前立腺肥大症のタイプで、勢いがなくダラダラと排尿している状態です。
右は神経因性膀胱タイプで、途切れ途切れの排尿状態です。

20114nagoya13typemixクリアーカットに分類できない排尿曲線も認められます。
仮に混合タイプとして、ここでは分けています。

20114nagoya14typecpsi排尿曲線のタイプ別に慢性前立腺炎症状スコア(NIH-CPSI)の治療による推移を比較してみました。
正常タイプから排尿機能障害が強いと思われる混合タイプに移行するに連れて(グラフの左から右へ)、患者さんの辛い症状のスコア(慢性前立腺炎症状スコア)が強くなっているのが分かります。

20114nagoya15typefrqp神経因性膀胱タイプが頻尿症状などの排尿スコアが高い傾向にあります。

20114nagoya16typezann混合タイプは、一回の排尿自尿は多いですが、ゼロであるべき残尿がとても多い傾向にあります。

20114nagoya17typemaxm神経因性膀胱タイプは、最大流量率も平均流量率も低い傾向にあります。

20114nagoya18case17ここでα‐ブロッカー治療の実例をご紹介します。
患者さんは17歳男性です。15歳の頃より、排尿のたびに尿道の痛みを感じていました。その痛みは前の方だったり後ろの方だったりの移動性です。
都内の大学病院の泌尿器科を2軒受診しましたが、「非細菌性慢性前立腺炎」の診断でセルニルトンを処方されましたが症状が改善しません。
そこで当院を受診、検査で排尿機能障害を疑いα‐ブロッカーの治療を開始しました。慢性前立腺炎症状スコア(NIH-CPSI)が23点でしたが、6ヵ月後には1点に軽快しました。

20114nagoya18case17ech超音波エコー検査では、膀胱頚部硬化症の所見、つまり膀胱出口の硬化像、膀胱三角部の肥厚、膀胱括約筋の不連続像、前立腺周囲の静脈瘤を認めました。

20114nagoya18case17flow尿流量測定検査(ウロフロメトリー)では、ギザギザのスパイクが特徴的な膀胱頚部硬化症タイプの排尿曲線です。

20114nagoya19case29内視鏡手術の実例をご紹介します。
23歳から睾丸痛がありましたが放置していました。26歳になり亀頭が痛くなり当院を受診しました。排尿機能障害を認め、α-ブロッカー治療を開始しましたがスコアの改善が思わしくなく、患者さんの希望もあり内視鏡手術に踏み切りました。

20114nagoya19case29ech超音波検査の所見は、典型的な膀胱頚部硬化症の所見です。
すなわち膀胱出口の硬化像、膀胱三角部の台形肥厚、膀胱括約筋のワニ口変形、前立腺石灰(結石)、前立腺周囲静脈瘤の所見です。

20114nagoya19case293d上記の画像を3D画像に変換した所見です。
膀胱出口の周囲を硬化像がぐるりとリング状に囲んでいます。

20114nagoya19case29flo尿流量測定検査(ウロフロメトリー)の所見は、前立腺肥大症タイプです。自尿が465mLもあるのに最大流量率(排尿速度)が20mL/秒に満たない勢いです。

20114nagoya19case29op内視鏡手術の所見です。
術前の所見では、膀胱頚部硬化症の特徴的な所見である「柵形成」が観察されます。術後、「柵形成」部分はきれいに切除されました。

20114nagoya20kasetsu膀胱頚部機能低下が膀胱出口の振動を作り、振動が膀胱頚部硬化症と膀胱三角部の過敏を作るので、慢性前立腺炎症状になるのだろうと私は考えています。

20114nagoya21kakugo慢性前立腺炎=原因不明の前立腺の炎症とは考えないで、排尿機能障害の結果の症状と考えることが大切です。
その発見には、検査で見つけるのだ!という「覚悟」が必要です。工夫をしないルーチン検査では、異常があっても病気は見つけることはできません。

20114nagoya22ketsuron慢性前立腺炎、少なくても病歴の長い難治性の慢性前立腺炎には排尿機能障害が存在します。
必ず排尿機能検査を行い異常を証明しましょう。そしてα-ブロッカーを第一選択薬として治療すべきです。「若者に排尿機能障害がない」という固定観念(誤解)を捨てましょう。

20114nagoyapresen【備考】
ユリーフで有名なキッセイ製薬株式会社のMR三木さんが、私のプレゼンの様子を撮影してくれました。
一生懸命に解説している姿です。

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コメント

静岡市のしお医院の影山慎二です

名古屋の泌尿器科学会総会は、土曜・日曜しか行けず、発表聞けず残念でした。「若い人に経尿道手術」を誰かコメントしていたか?とても興味あります。また教えてください。
【回答】
お久しぶりです。
β3刺激薬剤治験の合同会議以来ですね。
興味を持っていただいてありがとうございます。
今回の発表では、内視鏡手術に関する質問は全くありませんでした。
理由としては、排尿機能のセクションでの発表でしたから、「慢性前立腺炎=排尿機能障害=膀胱頚部硬化症」という私の考えに、慢性前立腺炎にさほど興味のない聴衆が『本当?』と思われた印象でした。
また、75例中、内視鏡手術に至ったのはたった7例(9.3%)であったので印象が薄かったのでしょう。
座長以外に質問があったのは地元の愛知県泌尿器科医会副会長の成田クリニックの成田先生が、超音波エコー画像の詳細な読影法に興味を持たれました。

ノイロトロピンの論文は、私の母校の新潟大学の1期先輩の玉木先生のもですね。今までも少数例ですが使用しており、効く人があったことは確かです。
【回答】
奇遇ですね!
玉木先生の論文は、臨床現場にとても有用な発表です。
学会の参加して分かることですが、総会賞候補の発表も含めて、臨床とは直結しない論文の多いことに驚きます。
何百という発表の中で残るのは、数個の論文でしょう。
残り全てがフェードアウトしてしまう運命です。
遺伝子レベル・分子レベルの高額な研究がもてはやされていますが、本質を欠いたミスリードな研究が多いことに、うんざりです。
その点、玉木先生の論文は実直で病気の本質に近づいている内容と私は評価します。
私も臨床現場に役立つ論文内容をと、常々心がけています。

投稿: kageyama | 2011/04/22 15:06

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