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慢性前立腺炎・間質性膀胱炎を治療して分かったこと

慢性前立腺炎・間質性膀胱炎の患者さんを積極的に治療して分かったことが、いくつかあります。
ここに、それらを列挙して分析したいと思います。

【1】
慢性前立腺炎・間質性膀胱炎の原因が「排尿障害だ!」とひらめき、α-ブロッカー(エブランチル・ハルナール・ユリーフ・フリバスなど)を処方したら、50%の患者さんに効果が認められた。完全に症状が消失した人もいれば、わずかしか症状が軽減しなかった人もいた。
【2】
α-ブロッカー単独では、十分に効果が得られなかった患者さんには、デパスの処方をした。やはり50%くらいの患者さんには手応えがあった。
【3】
α-ブロッカーの服用で頻尿・関連痛・自律神経症状が軽減しても、すぐには排尿障害の改善は認められなかった。その後判明したことだか、長期投与(1年以上)の患者さんでは、排尿障害の改善を認めた。
【4】
当初、「膀胱三角部の過敏さ」だけが、慢性前立腺炎・間質性膀胱炎の症状を形成していると考え、膀胱三角部のレーザー光線照射を治療に取り入れたが、症状軽減の持続期間は3ヵ月ほどであった。
【5】
手術中に膀胱粘膜の点状出血を認めるような患者さん(間質性膀胱炎の診断基準所見)は、手術後膀胱刺激症状が強く出ることがあった。しかし、必ずしも出現する訳ではなかったので、術後は心づもりをしていた。

【6】
そのような患者さん(【5】の例)は、過去に膀胱水圧拡張術を受けている方が多く、術後のコントロールに神経を使った。
【7】
そのような患者さんの場合、ステロイド剤を一定期間注射すると、膀胱刺激症状は次第に軽減し、コントロールできるようになった。膀胱刺激症状が免疫システムを刺激し、膀胱を攻撃するのだろうと推察した。膀胱刺激症状→免疫システム→膀胱を攻撃→膀胱刺激症状→免疫システムの暴走という悪循環が存在するので、免疫抑制剤であるステロイド剤注射でコントロールすれば良いことが分かった。
【8】
手術中に膀胱頚部にトリガーポイントが存在することが分かった。慢性前立腺炎で慢性胃痛の患者さんを手術した時に、膀胱頚部の9時の位置を切開したら、術中に胃痛を患者さんが訴えた。術後患者さんは慢性胃痛の症状は消失した。(泌尿器科学会で報告済み)その後の手術では、多彩な症状がある患者さんの場合、積極的にトリガーポイントを探して手術を行った。トリガーポイントで重要なのは(比較的多いのは)、6時と12時の位置であった。
【9】
術後、症状の安定しない患者さんには、仙骨神経ブロックを積極的に実施すると、10回~40回程度で症状の安定が得られることが分かった。症状の安定は持続的で、中には恒久的に得られた患者さんも多く存在した。
【10】
術前に間質性膀胱炎で禁止食品とされている食物を食べると症状が悪化した患者さんが、術後なんでも食べれるようになった。つまり、治ってみれば、禁止食品のアレルギーが原因の病気ではなかったことが判明した。考えてみれば当然で、口内炎がある時に刺激物を食べて痛くなったから、刺激物が口内炎の原因と考えないのと同じである。
【11】
一回の手術で患者さんが十分に満足できない場合には、複数回手術することがある。患者さんは手術するごとに症状が軽減するので、しばしば手術を希望される。
【12】
慢性前立腺炎・間質性膀胱炎の患者さんに「うつ状態」あるいは「うつ病」を併発している患者さんが多い。特に男性患者さんの8割、女性患者さんの2割にみられる。この性差には理由があり、この病気の病態生理から推察できる現象である。排尿障害の治療で「うつ状態」は軽減した。
【13】
慢性前立腺炎・間質性膀胱炎の患者さんには、「うつ状態」の病気の他に様々な病気を合併していることが多い。
挙げるとすれば、多汗症・花粉症・アレルギー性鼻炎・蓄膿症・慢性胃炎・過敏性腸症候群・潰瘍性大腸炎・線維筋痛症・口内乾燥症・ドライアイ・シェーグレン症候群・舌痛症・難治性性口内炎・耳鳴り・めまい・幻臭症・陰嚢掻痒症などである。
原因は、膀胱三角部を震源地として脊髄を介し様々な組織・臓器・システムに情報を漏出したことによる誤作動である。膀胱出口・膀胱三角部の保存的治療・外科的治療により、これらの病気が相当数軽減する。
【14】
慢性前立腺炎・間質性膀胱炎の原因が排尿障害だとすれば、水分を多く摂取することで尿をたくさんすることは、逆効果であることが素人でも容易に判断できる。したがって患者さんには水分摂取を1日1リットル以下(できれば500ミリリットル)に制限させる。すると水分(お茶・コーヒーを含む)制限だけで症状が軽減する患者さんが出現した。
【15】
慢性前立腺炎・間質性膀胱炎の患者さんに、過去虫垂炎の手術をされている方を多く発見した。男性(慢性前立腺炎)で5人に1人、女性(間質性膀胱炎)で4人に1人が虫垂炎手術あるいは脊椎麻酔で何らかの手術を受けた方が存在した。脊椎麻酔の後遺症で患者さんが自覚しない排尿障害(隠れ排尿障害)になり、10年単位で経過した後慢性前立腺炎・間質性膀胱炎が発症するものと理解した。
【16】
手術でしか治らないと思っていた膀胱頚部硬化症という、ある意味、「器質的疾患」が、長期のα-ブロッカー服用で検査上改善した。膀胱頚部硬化症は、膀胱頚部機能障害という「機能性疾患」の部分的「器質的変化」という意味を持っていることが判明した。同時に薬剤の持っている可能性を強く感じた。

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コメント

先生のこの疾患に対する熱意はただ感服するのみです。私は5年位前に膀胱頚部の切開、内尿道口の拡張術を受けております消化器内科医です。
私に場合は尿管結石の加療中から発症したのですが 経験上思う所があり参考になればと思い書き込みます。先生の慢性前立腺炎の神経学的・免疫学的・精神医学的検討は十分だと思います。ただ 射精に関して再度御検討頂けたら より良く解析できると思うのですが・・
つまり射精初体験年齢、射精回数(/日)自慰行為など。私自身恥ずかしながら射精をストレス発散の一つの行為としてきた事がり、発症後の一進一退の症状の増悪に射精行為が関連しているように感じました。射精行為が膀胱頚部の硬化性病変の進展に影響していると考えます。患者さんに問診取る際は かなり難しいと思いますが、上手に書面形式で行なえば 可能かと思います。今後のますますのご活躍お祈りいたします。

【回答】
ご意見ありがとうございます。

投稿: 憲 | 2010/09/10 12:01

私も憲さんと同様で射精をするかしないかで症状が大きく変わります。
私の場合、射精をずっと我慢していると調子がよいです。
その一方で我慢した状態で性的刺激を受け勃起し射精にいたらないと立っているのが辛いくらい症状が悪化します。
その場合、射精をすると落ち着きます。
射精が症状を緩和もするし悪化もさせるという2面性をもっています。

射精後の膀胱頚部への負荷をエコーで観察できればと素人考えですが感じました。
射精との因果関係についてご意見お聞かせ願えれば幸いです。

【回答】
外来での射精直後の超音波エコー検査は、残念ながら現実的にはできません。
排尿障害で常に負荷のかかっている膀胱頚部・膀胱出口が、射精時にはダイナミックに動きます。
痛んでいる部分が動く訳ですから、辛い症状が出現しても不思議ではないでしょう。

投稿: hj | 2010/09/16 04:20

先生のブログを拝見してびっくりしました!自分の症状に当てはまることがたくさんありました。

僕は2年前頃から尿臭と亀頭過敏で悩んでます。常に臭いがしている訳ではなく、ストレスを感じた時(特に重症)、寒い時、自慰行為をした翌日、などに臭いがします。膀胱あたりに力を入れてしまっている気がします。
3日前、包茎が臭いの原因だと思い仮性包茎手術を受けたんですが、臭いは消えず、まだ亀頭が敏感すぎて歩くだけで痛いです。亀頭が敏感なのはずっと前からですが・・・。
他には頻尿(夜中3回)、下半身の冷え、周りの人の鼻すすりがあります。

先生の病院に行きたいのですが、まだ大学生で、保険治療以外は治療費が払えるか分かりません。
治療費は検査などを含めて全部でいくら位かかりそうですか?

【回答】
診察・検査・薬の処方のすべてが、保険診療ですから、ご心配なく。
3割負担で1万円しません。

投稿: 京都の20才の大学生 | 2010/10/30 12:22

私は排尿困難のため近所の泌尿器科を訪れ「膀胱頸部硬化症」と診断され内視鏡手術を受けました。その後2ヶ月して落ち着いてきてから彼女とSEXを再開したのですが、そのたびに排尿困難が進み(しかも性的興奮を覚え勃起しただけで射精に至らなくても症状が悪化しました)、数回でまたもとの状態に戻ってしまい、再手術を受けようか迷っています。こうした症例はあまりないのでしょうか。
【回答】
性行為により痛み症状や頻尿が再発する例はありますが、排尿困難が短期間に再発する例は知りません。
恐らく、膀胱頚部硬化症の内視鏡手術といっても切開しただけだから容易に閉じたのでしょう。
私は膀胱頚部の部分切除を実施します。

投稿: 佐藤 | 2012/02/12 13:04

 僕は手術を受けていない患者ですが、仙骨神経ブロックをしていただくか迷っています。いろんな記事を読んでいると、仙骨神経ブロックで今症状を作り出している神経を沈黙させたら、新たに神経を作り出すキッカケになる情報を流させないためにアルファブロッカーを継続するのがいいのでは、と思うからです。素人考えですが。
 仙骨神経ブロックは1回の料金はおいくらですか?そしてこのブロック注射を30回から40回繰り返す治療になるという理解でよろしいですか。
【回答】
仙骨神経ブロックは、術後の患者さんで症状の軽快が思わしくない場合に実施しています。
内視鏡手術を行わないで仙骨神経ブロックだけを実施することはしていません。

投稿: ミューズ | 2012/02/17 09:30

 連続で申し訳ありません。

 上の方のコメントですが、先生以外にも膀胱頸部硬化症で手術をする医師が存在するんですね。埼玉の医師でしょうか?驚きです。

投稿: ミューズ | 2012/02/17 09:31

それはブロック注射を頼んでもしてもらえないということですか?理由はなぜですか?
【回答】
仙骨神経ブロックは一時的にしろ排尿障害を作ります。
仙骨神経ブロックによって膀胱出口が十分に開かなくなるからです。
場合によっては尿閉になることもあります。
排尿障害が慢性前立腺炎の原因だと力説している私が、排尿障害を作る治療をする訳がありません。
内視鏡手術で排尿障害の治療を済ませた人で、症状の軽快しない人に限って仙骨神経ブロックを行うのが、論理的です。

投稿: ミューズ | 2012/02/20 13:19

今年10月21日に、慢性前立腺炎が再発し、病院に通っています。
今飲んでいる薬は、
クラビット、セルニルトン、ハルナール、ツムラです。
いつ治るか心配です。
高橋先生の解説をよろしくお願いします。
【回答】
私の考える慢性前立腺炎は排尿障害が原因です。
慢性疾患ですから、治療の継続が必要です。

投稿: 〇〇〇〇拓人 | 2013/11/13 17:43

高橋先生のブログに救われている、一患者です。

私は、先生のブログにある通り、水分補給を控えたら症状が明らかに軽減しました。
改めて高橋先生の理論に傾倒しました。

ブログに掲載されていた中で、腰痛のシップを腰に貼ったら会陰部痛が激減した。とありました。早速実施してみようと思います。

質問があります。
1、上記のシップを貼るイコール”暖める”とした場合、膀胱頸部の緊張がほぐれるのでしょうか?
【回答】
鍼治療やトリガーポイント治療と同じです。
湿布によるある程度の面積の皮膚刺激が脊髄を介して、膀胱頚部や膀胱三角部から上がってくる情報刺激をブロックするからです。」

2、ストレッチ的な物で患者様、先生が思いつく動作、訓練、運動はありますか?
【回答】
特にありません。

お忙しい中恐縮です。よろしくお願いいたします。

投稿: いち | 2014/01/30 22:04

高橋先生いつもありがとうございます。
私は地方に住んでおりますが、近い将来貴クリニックに伺い高橋先生にこの病気の私なりの見立てを賜りたいと考えております。
患者の立場として勝手ですが、近くの病院で無駄な治療による時間、経済、を浪費したくありません。
こりごりです。

先生のブログをほぼ全て読みましたが。
その中でαブロッカーの継続的服用により、膀胱頸部の硬化が緩和した症例(エコー画像)がありました、しかしその一方で、αブロッカーの効き目が薄らいだ、とある意味真逆の結果を招いている患者さんも見受けられます。

症状の結果としては相反する状態ですが、αブロッカーの作用するのが頸部であることから決して矛盾した症例ではないことは理解しております。

愚問であること承知で質問なのですが。
αブロッカーの長期服用は頸部硬化を緩和し、薬を頼らないほどお軽快をする患者さん、αブロッカーの効き目が次第に薄らいで行く患者さん、その比率はおおよそ先生の感覚でありますでしょうか?
【回答】
80%以上です。

投稿: 藤 | 2014/02/12 00:10

御回答有難うございます。
上の質問のものです。

先生に回答頂いた「80%以上」というのはαブロッカーの継続的服用で80%以上の患者さんが膀胱頸部の硬化を緩和させている、という事でしょうか?
【回答】
症状の緩和です。」

緩和イコール症状の軽快ではないことは理解しております。
【回答】
硬化の緩和と症状の緩和はイコールではありません。
硬化の状態が変わらなくても、症状は緩和します。」

度々申し訳ありません。よろしくお願いいたします。

投稿: 藤 | 2014/02/14 17:51

先生のところに通っている患者です。
エブランチルを服用して症状が無くなった患者さんがいると書かれていますが、そのような方の場合、だいたい何れくらいの服用で症状が無くなったのでしょうか!?
【回答】
1ヵ月でも消失する人はいます。

投稿: | 2014/04/05 01:02

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