膀胱頚部硬化症における器質所見の改善例
以前に間質性膀胱炎のブログで紹介したように、膀胱頚部硬化症の硬化像がα-ブロッカー単独治療の1年間で改善するご婦人に遭遇しました。初めての経験で驚きでした。
なぜなら、膀胱頚部硬化症は根本的に手術以外では治らないと信じていたからです。
男性の膀胱頚部硬化症の患者さんにも、同様に軽快する方がいるだろうと思っていたら、本日(平成22年5月8日)、二人遭遇したので、ここで報告します。
患者さん(患者番号23357)は35歳男性です。
平成20年1月ごろより、1日10回以上の頻尿と会陰部痛で苦しんでいました。地元の病院で「慢性尿道炎」と診断されミノマイシンを服用しましたが改善しません。
大学病院の泌尿器科で今度は「非細菌性慢性前立腺炎」と診断され、ツムラ26番と76番、それにセルニルトンを処方されましたが改善しません。
平成21年6月に高橋クリニックを受診しました。上(側面像)と下(正面像)の超音波エコー検査写真は、初診当時の所見です。
膀胱出口に硬化像が認められます。
正面像の写真に注釈を付けました。
正常であれば、膀胱出口はV字にはなりません。少し凹みが確認できるくらいです。ところが、膀胱頚部硬化症の場合、膀胱出口の周囲が盛り上がるので、『ここが出口よ!』と言わんばかりに大きなV字で自己主張します。また、V字に沿って硬化像(矢印)が数珠のように確認できます。
α-ブロッカー1ヵ月の服用で、頻尿は1日6回に、会陰部痛は半減しました。その後、お薬の服用のみで通院していました。
経過が落ち着いていたので、お薬のみで定期的に通院されていました。
ご婦人の膀胱頚部硬化症のα-ブロッカー治療による器質所見の改善例もあることから、この患者さんにも1年ぶりに超音波エコー検査を行いました。
すると、1年前のものと比べて明らかに軽快しているのです。
上の写真に注釈を付けました。
膀胱出口のV字が小さくなり、健常人のそれと似てきました。以前は大きなV字にそって存在した硬化像も明らかに少なくなり、また不明瞭です。
患者さんの症状は、1日の排尿回数7回以下、会陰部痛は初診時の程度を100%とすると現在は20%以下にまでなりました。
CLSS(主要下部尿路症スコア)は10点から5点に、QOLは6点から4点に改善しています。
【補足】
初診時の3D画像では、膀胱出口に硬化像を容易に認めることができます。
しかし、この患者さんの最新の3D画像では、硬化像が不明瞭で確認するのが難しい所見です。
また、膀胱出口の全体的な硬化像が少なくなっているので、2D画像ではV字は小さくなっているにもかかわらず、3D画像では膀胱出口が広く見えます。(・・・この画像上のパラドックスを理解できるようになるまで苦労しました。)
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コメント
このレポートはアルファーブロッカーが膀胱頸部の器質的硬化そのものを改善する可能性がある、(器質的に硬化が進んでもアルファーブロッカーによって排尿障害が改善すればその結果として器質的硬化も不可逆的でなく可逆的に改善の可能性がある)ということでしょうか?現在アルファーブロッカーは20、30代でも保険適用されたのでしょうか?
【回答】
その通りです。
非可逆と思い込んでいた硬化像が、可逆性だったのです。
しかし硬化像の所見が軽減したという事実であって、膀胱出口が開きにくいという硬化症の病態が治った訳ではありません。
α-ブロッカーに関しては、20代30代は神経因性膀胱(膀胱出口が自律的に自動的に開放できないので)としてエブランチルを処方し、40代以上は前立腺肥大症(前立腺の中葉肥大と膀胱頚部硬化症が同じ病態なので)としてハルナール、フリバス、ユリーフを処方します。
投稿: スイカ | 2010/05/10 16:45
以前、この病気にハルナールが保険適応になるとの話があったように思いますが、いまだなっていないのでしょうか?ハルナール、フリバス、ユリーフで効果的なものはどれでしょうか?個人差でしょうか?
【回答】
下部尿路症に対する治療薬としてハルナールの臨床治験を行い、製薬会社が4年も前に厚生労働省に申請を出したのですが、未だに保険適応の認可がおりません。
行政サイドの何か思惑があるのでしょう。在野の開業医には分かりません。
製薬会社も必死になって厚労省の担当官と話し合いを持とうと努力しているのですが、会ってくれないそうです。
α-ブロッカーは、作用点であるαレセプターの種類に応じて、薬を使い分けます。(ハルナール:混在タイプのα1A優位型、フリバス:混在タイプのα1D優位型、ユリーフ:α1A超優位型)
患者さんによって様々なタイプが存在します。α1Aレセプター優位型、α1Dレセプター優位型、α1A・α1Dレセプター混在型、しかも混在比も様々です。またα1A→α1D優位に変化したり、α1D→α1A優位に変化したりすることもありますから、実際の臨床現場はとても複雑です。
投稿: スイカ | 2010/05/10 20:01
αブロッカーはタイプが違う場合、効果が無いということでしょうか?服用して効果が無い場合は違うαブロッカーに変更したら効果が出る場合も有るのでしょうか?どの様に判断されますか?それからαブロッカーによっては精液が出なくなってしまうことがありますが、それは薬ごとになったりならなかったりということもありますか?個人差でしょうか?
【回答】
α-ブロッカーの種類によって効果が異なることはあります。
個人差の場合もあります。
投稿: 匿名 | 2010/05/29 20:31
このアルファブロッカーによる膀胱頸部硬化の器質的改善と、手術による膀胱頸部硬化の改善は何らかの違いはあるのですか?
【回答】
目的は同じで、方向性が違うだけです。
改善度合いの違いは分かりません。
投稿: 地方患者 | 2012/01/15 23:37
膀胱頚部硬化症で先生に診察していただいておりますが、ここのところ排尿障害が進んで来て、薬で治すのは限界かもしれない…と言われ、あとは手術しかないのかもしれませんが、私の体質で麻酔から醒めにくい体質なので、できれば入院して行いたいと思うのですが、そういう場合にはどこかの病院を指定していただけるものなのでしょうか?
【回答】
私と同じ治療(内視鏡手術)を行う医師を存じません。
ですからご紹介できません。
投稿: H・K | 2012/11/29 12:51
はじめまして 高橋先生 大阪市内在住の52歳男性です。
3~4年ほど前に慢性前立腺炎をわずらい「良くなっては、また再発する」を繰り返しております。この3~4年の間に6、7回泌尿器科で診てもらいました。
症状はそうひどくないとは思うんですが、一つ気になる点があります。
3年ほど前までは、射精した時の快感がすごくあったんですが、今は以前ほど気持ちよくないんです。
射精してる訳ですから、それなりの快感はあるんですが、前みたいな「ズキ~ン!」とくる快感がないんです。これは前立腺炎と関係あるんでしょうか??
【回答】
排尿障害が原因の慢性前立腺炎であれば、症状に手を変え品を変え変化します。
恐らく射精の性感の質の低下もそうでしょう。
排尿障害の治療で改善する可能性があります。
また、プラズマ治療も効果的です。
http://hinyoukika.cocolog-nifty.com/daitai/
をご覧下さい。』
よろしくお願い致します
投稿: | 2013/03/29 19:05