原発性膀胱頚部硬化症と続発性膀胱頚部硬化症
非細菌性慢性前立腺炎の原因である膀胱頚部硬化症は、内視鏡検査を実施しても残念ながらほとんど分からない(所見が得られない)のが現実です。(注:二次的変化は内視鏡検査で観察できるのですが、その所見を無視している医師がほとんどです)
しかし泌尿器科医のほとんどが、下部尿路(膀胱・前立腺・尿道)の病気は内視鏡検査ですべて分かると誤解しています。ですから、内視鏡検査で所見の得られない膀胱頚部硬化症は存在しないと・・・まぁ当然の結論でしょう。私も研修医の頃であれば、そう思っていました。しかし、泌尿器科医を30年も経験すると、異なる考えが頭の中に姿を現すのです。
内視鏡検査で容易に分かる膀胱頚部硬化症は、続発性膀胱頚部硬化症です。【続発性】というのは前立腺肥大症などの内視鏡手術(TUR-P)の後遺症で、膀胱出口が線維化して狭窄した状態、つまり二次的=続発性の膀胱頚部硬化症を意味します。
続発性膀胱頚部硬化症は超音波エコー検査では分かりにくいのが盲点です。線維性の薄い膜状に狭くなった病変は、超音波エコー検査では観察できません。唯一観察できるのは内視鏡検査だけです。
私が非細菌性慢性前立腺炎の原因としている膀胱頚部硬化症は、【原発性】の膀胱頚部硬化症です。過去に内視鏡手術などを行った経験のない男性で、線維性の狭窄や硬化ではなく、【粘膜の硬化】や【平滑筋の過形成】を意味します。続発性とは異なり、内視鏡検査では分かりませんが、詳細で丁寧な超音波エコー検査で容易に観察できます。
例えると、部屋の壁を観察する時と似ています。
壁の大きさや壁紙の模様は見れば容易に分かります。これが内視鏡検査です。
しかし、壁の厚さや中の柱の本数・補強材、石膏ボードや断熱材の有無は、見ただけでは分かりません。これを分かるように観察するのが、超音波エコー検査になります。内視鏡検査だけですべてが分かるというのは、単なる思い込みでしかないのです。何の根拠もない事柄です。
そこで、若い男性の非細菌性慢性前立腺炎の患者さんを中心に、次のブログで超音波エコー検査を提示しながら原発性膀胱頚部硬化症の存在を証明しようと思います。50例も実例を挙げれば、頭の固い泌尿器科医の中に一人くらいは理解していただける御仁が出現するかも知れません。
【注】内視鏡検査で観察できる原発性膀胱頚部硬化症の二次的変化
炎症性ポリープ
柵形成(Bar in the sky)
尿道粘膜の石灰・結石
尿道球部の炎症
【補足】
昨年、健康保険支払基金の審査の医師(S大学の名誉教授)から電話があり、「若い人のこんな病気(膀胱頚部硬化症)は見たことがない。」と電話越しに鼻で笑われました。また「病気がないのだから内視鏡手術も認められない。」と一方的に告げられたのです。
私は「この病気を医師が認識せずに、慢性前立腺炎や気のせいと誤診するするから患者さんがドクター・ショッピングするのです。」そして「見たことがないから、この病気はないというのは、科学的ではありません。従来の観点からしか見ないから見えないだけです。この病気が慢性前立腺炎の原因であることを啓蒙するためにも、毎年2回泌尿器科学会で報告しています。」と返答しました。「それでは請求書(レセプト)に患者さん毎に個別に症状詳記を添付して下さい。」ということで、取りあえず、その場は一見落着しました。
昨年の暮れ頃に、鹿児島で開業している同級生から電話があり、「高橋のことが噂になっているから、気をつけて・・・」と忠告されました。
今月(2010年3月)、K大学の名誉教授が亡くなられ、そのお通夜に参列した時のことです。私のボスであった某大学の名誉教授に呼び止められ、「高橋、あまり派手なことをやるなよ!狙われているぞ。」と忠告されたのです。私は「決してやましいことは行っていません。そのことで学会でも毎年発表しています。」しかし、「コンセンサス(世の中の意見の一致)が得られていなければ、どんなに正しくても駄目なんだよ!」と注意されました。
しかし、いつまでも「お目こぼし?」を受けられるとは思えませんし、自分が悪いことを行っているとも私は思っていません。医学的に正しい診断と治療を行っても不正を行っていると思われるのは釈然としません。
そこで平成22年3月から、この病気(原発性膀胱頚部硬化症)の内視鏡手術を保険請求することを断念しました。私も慈善事業ではないので無料で手術することはできません。膀胱頚部硬化症に対する私の内視鏡手術に関しては残念ながら自費扱いとします。一律18万円の負担になります(平成22年10月から24万3千円の自己負担)。患者さんには本当にご迷惑をおかけます。
いつか原発性膀胱頚部硬化症が世間に認知され、治療法として内視鏡手術が認められるまで私は走ります。(生きている間)
【参考】ニーチェの言葉 014 白鳥晴彦編訳 ㈱ディスカバー
物事はいかようにも解釈できる。
良い物事、悪い物事が初めからあるのではない。良いとするのも悪いとするのも、役立つとか役立たないとか、素晴らしいとか醜悪だとか、いかようであろうとも、解釈するのは結局は自分なのだ。
しかし、どう解釈しようとも、そのときからその解釈の中に自分を差し込むことになるのを知っておこう。つまり、解釈にとらわれ、その解釈ができるような視点からのみ物事を見てしまうようになるのだ。
つまり、解釈や、そこから生まれる価値判断が自分をきつく縛るというわけだ。しかし、解釈せずには物事の始末がつけられない。ここに、人生を読み解いていくことのジレンマがある。
(原文のまま、自分に反省を込めて)
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コメント
昨年手術を受け、現在、投薬治療させていただいている患者です。今後の具合次第では再度手術も考えています。手術が再度保険適用になる日は来るのでしょうか?
【回答】
保険医療の衰退から考えれば、新しい治療法に対する門戸の開放は厳しいものがあるでしょう。
私が学会で報告し、英語の文献で発表出来れば可能かも知れません。現実的には5年~10年先になるでしょう。
40歳以上の年齢であれば、前立腺肥大症の中葉肥大と膀胱頚部硬化症は、病態生理がほぼ同じですから、前立腺肥大症として手術可能でしょう。ただし、10歳代~30歳代では前立腺肥大症という病気は常識的ではありませんから、保険での手術は無理です。
投稿: poncho | 2010/03/22 09:13
なんということでしょうか。。。健康保険支払基金に患者からも問い合わせたい気分です。ただでさえ苦しんでいるのに非情だと思います。なんとかならないのでしょうか。。。
【回答】
時間が解決するでしょう。
投稿: スイカ | 2010/03/22 17:59
保険に関して無知なもので質問させてください。
自由診療というのは聞いたことがありますが健康保険支払基金というものは俗にいう保険証を使った診療ということですか?
【回答】
そうです。
社会保険と国民健康保険に分類されます。
支払基金はその両方にあり、適正な請求かどうかをチェックする機関です。
手術をした場合には、民間会社?例えばアフ○ックだとか日○生命とかそういった保険会社にも手術に対する請求もできなくなるということでしょうか?
【回答】
請求は可能です。
支払基金は、保険証を利用した請求をチェックするだけで、民間の生命保険をチェックするものではありません。
投稿: kaeru | 2010/03/23 11:54