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学会報告 日本泌尿器科学会東部総会 2009年10月 松本

Poster200910scrt1以前に予告したように、10月29日に松本にて、右の内容で学会報告を行いました。

Poster200910scrtprize発表が終わり、そのセクションでの賞をいただきました。
座長の先生(東京医科歯科大学の増田均先生)から「勉強になりました」とおほめの言葉を受けました。


Poster200910scrtphoto2たまたま会場に来ていた知人に、ポスター前で記念写真を撮影してもらいました。
赤いリボンが受賞ポスターの目印です。
うれしそうでしょう。

Poster200910scrt2陰嚢掻痒症という病気をご存知ですか?
皮膚科の専門書には、「前立腺肥大症・尿道狭窄症の患者に認められる病気」とだけ記載されていますが、その根拠が書かれていませんでした。前立腺肥大症を扱う泌尿器科医には、そのよぷな常識はありません。
その常識?を知ってすぐに、76歳の前立腺肥大症の患者さんが来院されました。今回の報告のヒントの患者さんです。

Poster200910scrt3陰嚢掻痒症が排尿障害の下部尿路症であることを証明するために、今回の研究報告をしました。

Poster200910scrt4平成18年6月から平成21年10月までの40カ月間に来院した陰嚢掻痒症の患者さん83人が対象です。
毎月2人ペースで来院されています。

Poster200910scrt5右は対象患者さんの平均像です。

Poster200910scrt6case1この病気のヒントを与えてくれた患者さんです。
地元の内科から夜間頻尿で紹介されてきました。夜間頻尿の原因は前立腺でした。α‐ブロッカーの治療で、2年前からの陰嚢掻痒症が治りました。

Poster200910scrt7case2小学生のころから陰嚢の痒みで悩まれた方です。
α‐ブロッカー服用で驚くばかりの改善です。

Poster200910scrt8case3外用薬は処方せずに、α-ブロッカーだけで皮膚の病気が治るという事実に私も驚くばかりです。

Poster200910scrt9患者さんの平均年齢は44歳でした。
30歳代が一番多く状況です。予想以上に若い方が多いという印象です。

Poster200910scrt10陰嚢掻痒症の悩まれた期間は、平均5年6ヶ月でした。
長い方は、30年という患者さんがおられました。

Poster200910scrt11前立腺の大きさは、平均が20ccでした。正常範囲が20cc未満とすれば、患者さんの60%が正常です。

Poster200910scrt12超音波エコー検査で前立腺の形態を調べると、次の4パターンに分けることができます。

Poster200910scrt13今回の調査で75%以上の患者さんが膀胱頚部硬化症型でした。
一般的に泌尿器科医は音波エコー検査を丁寧に診る習慣がないので、膀胱頚部硬化症を見逃すことが多いように感じます。

Poster200910scrt14排尿の勢いを排尿曲線で分類します。

Poster200910scrt15すると、膀胱頚部硬化症型と前立腺肥大症型が多く認められます。

Poster200910scrt16国際前立腺症状スコア(IPSS)では、半数の方がそれほど異常を認めません。

Poster200910scrt17排尿のQOLに関しては、平均3.2で「満足・不満のどちらでもない」というレベルです。

Poster200910scrt181日の排尿回数の平均は7.9回です。
7回以下が正常範囲とされていますから、半数の人は排尿障害の表の症状である頻尿ではありません。

Poster200910scrt19ところが、排尿の勢いに関しては、平均尿流量率(排尿速度)は15ml毎秒以上が正常範囲と考えます。
すると、9割近くの患者さんが排尿障害の範疇に入ることになります。

Poster200910scrt20排尿直後の膀胱には残尿はないのが生理学的な正常です。
しかし、臨床的には残尿50ml以下を正常としている誤診の元凶である「悪しき常識」があります。100歩譲って10ml以下を正常範囲とすれば、8割近くの方に残尿を認めることになるのです。

Poster200910scrt21治療前の「痒み」にかんするQOLの平均スコアは5.7点です。
6点「つらい」、5点「不満」ですから、ほとんどの患者さんさんが「つらい」と感じています。

Poster200910scrt22α-ブロッカーの治療で、かなりの患者さんがQOLの改善を見ました。

Poster200910scrt23痒みのQOL改善は、1ポイントでも下がっ患者さが8割以上にも及びます。

Poster200910scrt24陰嚢掻痒症は、排尿障害による膀胱三角部や膀胱頚部の過敏さが作る「関連痛」だ考えると理解ができます。

Poster200910scrt26膀胱三角部は、発生学的に尿管由来ですから、本来の膀胱に比較して繊細なのです。

Poster200910scrt25事実、膀胱頚部硬化症の患者さんの膀胱三角部は、超音波エコー検査で容易に判別できるほど肥厚しており、過敏である要素を十分に持っています。

Poster200910scrt27考察は右の通りです。

Poster200910scrt28結果は右の通りです。
陰嚢掻痒症が排尿障害が原因の下部尿路症状(LUTS)だということがお分かりいただけたでしょうか?
これ以上、患者さんにドクターショッピングさせないためにも、知っていただきたい事実です。

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コメント

先生の不断の努力にエールを送っている者です。少しずつですが、ご努力が報われてきていらっしゃることを嬉しく思います。
先生に処方していただいたハルナールを服用してから、不快な残尿感に悩まされることがなくなり、3年が経過しました。これからも手術、学会報告とお忙しいことと存じますが、ご自愛いただきますようお願い申し上げます。

【回答】
ありがとうございます。

投稿: 京都在住者 | 2009/10/30 12:44

悩める患者様の為に努力されていらっしゃる先生にエールを送ります。
ただこれだけ先生が学会で発表されているのに全国の他の病院、医療機関からの動きが少ないのは何故でしょうか?
素人なので理論的なことは分かりませんが、先生の理論が正しいとすれば、同じ様な治療を取り入れる医療機関がとっくにいくつか出てきていいはずだと思います。
私自身も慢性前立腺炎で悩んでいますが、少なくても私の近くで先生の様な理論を持ち、治療を行っている病院は大きな総合病院、クリニックを含め皆無です。
慢性前立腺炎で悩まれていらっしゃる患者さんは全国に沢山いらっしゃるはずですから、全国どこかで治療を取り入れる病院があってもいいと思うのですが。

【回答】
「ない」のが現実です。
私の人間性をよく知る出身大学の先輩や後輩に、私の考え方を説明しても、なかなか理解されません。
理解されたとしても、「面白いことを考えるね」で終わりです。まして、まして、ほかの大学出身者が理解できるとは思えません。
教科書に書かれていないことは、事実とは認めないのが医師であり人間なのです。
地道にコツコツと学会発表を続け、論文を投稿し、私の考え方が常識になるように努力するしかありません。

応援ありがとうございます。

投稿: 匿名 | 2009/10/31 19:43

学会賞受賞おめでとうございます。2009の6月にopeしていただいた秋田の〇〇です。
西沢先生には、学生時代講義をうけました。
自分の症状は、いま一つですが、もう少し経過を見たいと思います。
私も整形外科の学会でbest paper賞を11月に頂くことになりました。
先生の益々の御健闘をお祈りいたします。

【回答】
ありがとうございます。

投稿: 〇〇幸一郎 | 2009/11/01 16:27

いやいや高橋先生のやってる治療が間違ってるから無視されるのでは?

投稿: 一般泌尿器科医 | 2009/11/01 23:05

「ない」とおっしゃられましたが、全国の医療機関、医師等からの問い合わせすらないのでしょうか?すぐにご自身の医療機関に取り入れるのは難しいとしても、全国の医療機関、医師、誰一人興味を示さないという事ですか?

【回答】
今までに、このブログでご紹介した数人だけです。

投稿: 匿名 | 2009/11/02 18:59

高橋先生おめでとうございます。
世の中捨てたものじゃないですね。

一方、「一般泌尿器科医」と名乗る輩は
本当にどうしようもありませんね。

投稿: 上田 | 2009/11/09 16:57

同じような症状で悩んでいます。
志木市周辺でよい病院はありますか?
【回答】
存じません。

投稿: | 2013/02/23 10:05

ハルナールが有効という話を数年前に知り試したことがありますが、あまり効果がありませんでした。先日、漢方薬の本で偶然に「竜胆瀉肝湯」が陰部の湿疹に有効な事があると知り、試したところ著効しました。先生の有効例にも併用することで効果が増大する可能性があるのではないかと考えましてお知らせしました。
【回答】
貴重なご報告ありがとうございます。

投稿: 内科医 | 2015/02/21 18:56

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