膀胱拡大の開腹手術を受けた膀胱頚部硬化症の男性
50歳代の男性患者さんです。
25年も前から頻尿で苦しみ、有名な病院を転々とドクター・ショッピングされていました。そして先日高橋クリニックを受診しました。
現在、頻尿は就寝まで15回前後、就寝から起床まで3回~5回の頻尿です。
間質性膀胱炎?と診断されたかどうかわかりませんが、膀胱水圧拡張術を5回、8年前に私立の大学病院で開腹による膀胱拡大手術(大腸を切り貼りして膀胱に縫い付けて、膀胱容量の拡大を図る手術)を1回行っています。その後、症状はますます悪化しました。
2年前には、ある国立大学病院で、膀胱にボトックス注射を2回実施しましたが、結果頻尿は治りませんでした。
【超音波2D画像】
6時位置の膀胱括約筋はヘビが口をあけたように変形し、膀胱出口から距離を置いています。膀胱括約筋の上には膀胱三角部が肥厚し、硬化象も確認できます。膀胱頚部硬化症の所見です。
【ウロフロメトリー検査】
勢いはチョロチョロで、たった100ml尿を1分20秒もかけて排尿しています。明らかに排尿障害です。
前述の2D画像をもう少し詳細に解説しましょう。
膀胱括約筋の12時と6時の間隔距離が広がっています。それぞれの膀胱括約筋の上には、粘膜の肥厚が確認できます。膀胱三角部の粘膜は、肥厚以外に硬化像も確認できます。
開腹手術による影響で、膀胱の天井部分(膀胱前壁)のラインが不自然なものとして観察できます。なぜ不自然かといえば、頻尿で膀胱容量の少ない患者さんであれば、この程度の尿がたまった場合には、膀胱全体の形状は丸くなければおかしいのです。
同じ方向から3D画像で観察したのが右の写真です。
上の2D画像と比較してわかることは、硬化像の面積が厚く感じられます。同じ方向から観察しているのに、なぜ3D画像だと厚く見えるのでしょう?それは、立体画像を作るために収集する画像情報の幅が、2D画像よりも広いからです。観察対象物が幅の狭いものであれば、2D画像も3D画像も全く同じ画像として表現されますが、観察対象物が幅のあるものであった場合、3D画像では収集された情報に応じた画像になります。
この現象は、3D画像の膀胱側から観察すると氷解します。
2D画像では点だと思い込んでいた硬化像は、実はリングに近い形状をしていることが分かります。そして2D画像では、2つ見えた硬化象のうち膀胱出口に近い方が小さく見えた硬化象が、実は、長大な構造であることが分かります。
このような硬化像が膀胱出口を一周している訳ですから、膀胱出口が十分に開かない筈です。
「頻尿」という症状だけに惑わされて、短絡的に膀胱拡大手術を行ってしまった愚行は、膀胱に蛇足ばかりでなく障害をも残してしまいました。【頻尿=膀胱容量の縮小】という発想は、まるで素人的な発想です。読者の方でも思いつくでしょう?専門医の医師とあろう者が、まったく同じことを考えてしまったのだから・・・情けない!この患者さんは、ある意味で「被害者」です。
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コメント
お世話になっております。いろいろ病院を周り気のせいにされる始末で先生に頸部硬化症の診断をされ、薬を処方してもらい非常にいい方向に進んでいるのですが、ただ内部の痛み?みたいなのは緩んできたのですが表面の腫れや擦れたりした時のヒリヒリ感が一年間引けませんどうすればいいでしょうか?
【回答】
症状は病気のプログラム・ソフトの深さによって異なります。
おそらく内部の痛みは、プログラム・ソフトの浅い部分からの症状で、表面のヒリヒリ感は、プログラム・ソフトの深い部分からの症状なのでしょう。
薬の治療は、プログラムの階層の浅い部分は改善しやすいのですが、深い部分には限界があります。
薬以上の効果を期待するのであれば、内視鏡手術を併用しなければなりません。
投稿: 匿名 | 2009/07/27 07:47
頸部硬化症の30代男ですが、手術にはそれなりのリスクもあると思います、どのようなリスクがありますか?術後どれ位で普段の生活に戻れるのでしょか?また処方して頂いた薬で普段は大分楽になっておりますが尿を少しでも我慢すると亀頭が痛みます、亀頭も腫れ気味ですそこで市販で漢方薬など試す価値はあるでしょうか?
【回答】
http://hinyoukika.cocolog-nifty.com/cp/2004/11/post_5.html
をご覧下さい。
漢方薬は価値がないでしょう。
投稿: 何度もすみません | 2009/07/28 07:53