「会陰部痛」 2D画像の解析#2
前回のテーマの流れで、2D画像の解析を実例を上げながら解説しましょう。
66歳の男性患者さんです。
平成20年3月から会陰部痛を感じ始めました。4月になり尿の出が悪いので、地元の総合病院泌尿器科を受診しました。前立腺ガンの疑いで前立腺針生検を受けましたが、癌は認められず、「慢性前立腺炎」の診断を受けました。セルニルトン・ハルスロー(ハルナールのジェネリック)の処方を受けています。
症状が変化しないので、平成20年11月の高橋クリニックに来院しました。
症状は、会陰部痛の他に、両側大腿部の濡れた感じとシビレ感、両側の足の裏の鈍感さです。
頻尿があり、就寝まで10回、就寝から朝まで4回です。20歳の時に虫垂炎で脊椎麻酔手術を受けています。
尿流量測定ウロフロメトリー検査はご覧のような排尿曲線です。この出の悪さをもって慢性前立腺炎と診断した泌尿器科医が存在するわけです。
この患者さんの2D画像(側面)です。前立腺の大きさは25ccでした。この2D画像の写真を解析してみてください。
下の写真がその解説です。
いかがですか?
この通り解析できましたか?
この写真で顕著に分かるのが、6時の位置の膀胱括約筋の肥厚と変形です。まるでヘビが口を大きく開けているように見えます。通常はその断端がクレヨンの先のように見えるはずの膀胱括約筋が、二つに裂けてヘビの口に見えるのですから、その異常さがお分かりいただけますか?
6時の位置の膀胱括約筋は、前立腺の膀胱側への侵入により、本来の位置よりも後退しています。本来の位置を維持しようとする膀胱括約筋が、ヘビの「上あご」に、負けてしまい前立腺側に迷入した部分がヘビの「下あご」に見えるのです。
ここまで解析すると、前立腺の大きさが正常(20~25cc)でも排尿障害があっても不思議ではありません。
ジェネリックは効きの悪い薬剤もありますから、ハルナールのみを処方し、経過をみることにしました。薬剤の効果がなければ、膀胱括約筋によって締め付けられている膀胱頚部だけを内視鏡手術することにします。
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