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「排尿障害を示唆する所見」 2D画像での評価法

今回のように、あらためて2D画像を詳細に解析すると、今まで見えていなかったことが、見えるようになってきました。
下記のような所見が、排尿障害を見るための要素です。

1.膀胱括約筋の位置・厚み・形
2.膀胱三角部の厚み
3.硬化像の有無
4.静脈叢の発達
5.前立腺石灰・結石の有無
6.前立腺被膜の厚み
7.前立腺嚢胞の有無
8.膀胱壁肉柱の有無
9.前立腺の大きさ
10.膀胱出口の突出の有無

2D画像だけでも、これらの要素の陽性が多ければ、排尿障害を強く疑います。

【1】膀胱括約筋、【2】膀胱三角部、【3】硬化像、【9】前立腺の大きさ、【10】膀胱出口の突出は、密接に関係しているようなので、前回のテーマ(膀胱頚部硬化症の病期分類)で分類しました。
病期1を1点、病期2を2点、病期3を3点、病期4を4点とします。

【4】静脈叢の発達は、膀胱・前立腺周囲にかかる負荷(圧力)が作る循環障害が原因でしょう。排尿時に膀胱が作る圧力を下部尿路が軽く受け流すことが出来ない場合に、静脈がうっ滞するのです。
【6】前立腺被膜の厚みも、下部尿路が受ける力が被膜の肥厚を促すと考えます。
静脈叢がない・被膜が厚くない場合を0点、静脈叢を認める/被膜が厚い場合を1点とします。

【5】前立腺石灰・結石は、膀胱出口が十分に開かないのに膀胱駆出力が強いと、前立腺部尿道内にジェット流・乱流が生じて、石灰沈着・結石となるのです。結石の数が多い・結石が大きい場合は、ジェット流が強い・経過が長期と考えます。
結石がない場合を0点、結石が1個の場合を1点、結石が2個以上/結石が大きい場合を2点とします。

【7】前立腺嚢胞の有無は先天的問題と考えます。排尿障害の要素としては特殊になります。もちろん排尿障害がその発育を促しているのかも知れません。

【8】膀胱壁肉柱は、排尿障害の極限状態の結果ですから、要素としては取り上げません。

以上の要素を見ながら、#2の患者さんを評価しましょう。
膀胱頚部硬化症の病期2ですから2点、静脈叢が発達しているので1点、前立腺結石が2個以上見えますから2点と点数をつけて、全て加算すると、2+1+2=5点になります。膀胱出口の硬化像のみで他に所見がなければ、病期1=1点、静脈叢は未発達=0点、結石がない=0点ですから、1+0+0=1点となり、画像上の評価の差が歴然です。


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コメント

超音波検査に携わっている検査技師です。泌尿器の分野はなかなか資料がなく、日頃の検査でも悩む分野でしたが、わかり易くエコーでの評価法が記載されており明日からの検査にすぐ活用できそうです。苦労して集められたデータから生み出されたエコーの診断法を惜しみなく公開される先生に感謝します。

【回答】
ありがとうございます。
専門家からのお言葉、嬉しく思います。
これからも、発見した事実をドシドシ掲載するつもりです。
お楽しみに。

投稿: MT | 2010/10/19 22:16

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