膀胱三角部「台」
膀胱頚部硬化症が進むと、連続する膀胱三角部を巻き込んだ所見になります。
膀胱三角部は膀胱底部に三角形の「えいヒレ」のような形状になります。ところが、膀胱出口周囲に物理的刺激が絶えず被爆すると、膀胱三角部に炎症・粘膜変性・石灰化・肥厚などの変化を認めます。進行が著しいと、膀胱三角部が盛上がり、台形のような形状になります。
実例をご紹介しましょう。
51歳の男性患者さんです。30年前から慢性前立腺炎で苦しんでおられます。症状は頻尿です。朝から寝るまでに20回から25回の頻尿と夜間就寝してから朝までに3回から15回(平均10回)の頻尿です。会陰部痛もあり日常生活に支障が出ています。地元の大学病院を始め多くの医療機関を受診しましたが、改善しません。患者さんの弟さんがインターネットでこのブログを見つけ、患者さんにすすめました。
過去に前立腺高温度治療を5回受けていますが、全く効果はありませんでした。
初診の際の超音波エコー検査の所見です。
膀胱・前立腺を側面から観察しています。一見何の所見もなさそうでしょう?
膀胱鏡検査の所見です。
この写真だけでは分かりにくいので、下の写真にコメントをつけました。
膀胱三角部の逆二等辺三角形の底辺が、左右の尿管口を結んだ尿管間ヒダです。手前の粘膜のカーブが膀胱出口のラインです。中心が膀胱出口6時の位置になります。本来、膀胱三角部は膀胱内側のカーブに沿って存在しますが、写真でご覧のように膀胱内側のカーブとは、膀胱三角部の尿管間ヒダで段になっています。そして膀胱出口と膀胱三角部のラインが水平で「台状」に盛上がっています。
患者さんの強い希望で内視鏡手術になりました。
膀胱三角部の中央を膀胱出口に向って真直ぐ切開しました。膀胱三角部に隠れていた膀胱内側の奥の粘膜が確認できるようになりました。
もちろん、この患者さんにも膀胱頚部硬化症が存在します。
膀胱出口の6時方向に柵形成を認めました。
TURis-Vで、膀胱出口の6時・12時を蒸散・気化手術を行ないました。
術直後の写真では、上下に十分なスペースを確保しました。前立腺はほとんど残していますし、残った前立腺が左右から尿路を閉じてくれるので、逆向性射精は起こらないでしょう。
【補足】
手術後4日目で、朝から就寝までの頻尿は12回に、夜間就寝中の頻尿は1回になり、会陰部痛も少なくなりました。・・・でも、患者さんからは感謝の言葉は聞けません。・・・まだモヤモヤ感があり、症状が全部なくなってから感謝するそうです。All or Nothing:デジタルな患者さんです。・・・30年間全く改善したことがない頑固な症状だったのに・・・経過の途中では、感謝の言葉を決して口にしたくない人でした。執刀医は、患者さんの感謝の言葉を励みにして頑張っているのですが・・・。
| 固定リンク
コメント