入力と出力
慢性前立腺炎・間質性膀胱炎の病態を来院する患者さんに、外来の短時間に説明し納得していただくのは、とても難しいことです。
また、慢性前立腺炎や間質性膀胱炎のブログの中で、手を変え品を変え何度ともなく、くどく(功徳?)解説していますが、来院される患者さんの未だ完全な理解に至っていません。
また、今回も観点を変えてご説明しましょう。
森羅万象のあらゆる事柄には、入力と出力に区別できます。すなわち原因と結果です。
イラストで示すように非常に単純です。例えば、転倒して手を付いたら手首を骨折したというようにです。
ところが、転倒したから必ずしも骨折する訳ではありません。
転倒する際の姿勢、タイミング、足の位置、歩行速度、重力加速度などがすべてそろって骨折という結果に結び付くのです。イラストで示すように、原因と結果を結び付ける一定の法則なるものが存在します。
人間の病気を例にとって考えましょう。
感染症の場合は、「原因」である病原体が人間の体に侵入します。すると身体の白血球などの先天免疫とリンパ球・抗体などの後天免疫(獲得免疫)が反応して、生体防御反応を形成します。その「結果」、症状として発現します。
風邪・インフルエンザや性行為感染症・STDなどの感染症は、外部環境由来の原因ですが、内部環境由来の原因も存在します。高血圧・糖尿病・高脂血症・動脈硬化などです。
身近なものを例にとって、原因・結果について説明しましょう。
私が利用しているパソコンは、キーボード・モニター・CPU・メモリー・ハードディスク・冷却ファンなどのハードがありますが、ハードだけではパソコンは成立しません。ワードやパワーポイントなどのプログラムソフトが利用できて初めてパソコンとしての利用価値が出てきます。
キーボードをたたいて入力をすることで、パソコン内のプログラムソフトが起動し、その結果がモニターやプリンターに出力されて利用されます。入力が原因、プログラムソフトが因果関係の法則、出力が結果になります。
以上のことを踏まえて、病気、特に慢性前立腺炎・間質性膀胱炎について考えてみましょう。
私の狂信的な考えである慢性前立腺炎・間質性膀胱炎の排尿障害説を例に上げて説明しましょう。
【原因=入力】
原因として膀胱頚部の開口障害により機能性排尿障害が出現します。十分に開口出来ないことにより、膀胱頚部・膀胱出口は排尿中に振動します。
この振動による物理的なエネルギーは、膀胱頚部・膀胱三角部をセンサー(入力装置・キーボード)として、その情報を入力(刺激)します。
【因果律の法則=プログラム・ソフト】
刺激=入力された情報は、脊髄内・脳内のプログラムソフト(神経回路)を起動します。このプログラムソフトは、患者さんの個々により異なり(ワードやエクセルなど)、また選択する出力装置も異なります(モニター・プリンターなど)。
ソフトのグレードもまちまちで、パーソナル仕上げもあればプロフェッショナル仕上げもあります。
【結果=出力=発病】
出力装置が膀胱頚部の線維化や平滑筋過形成という形で来た場合には、機能性排尿障害よりも性質(たち)の悪い器質性排尿障害、すなわち膀胱頚部硬化症になります。
出力装置が免疫反応で、その標的が膀胱である場合には、原因不明のアレルギー反応、すなわち間質性膀胱炎になります。標的が膀胱出ない場合には、花粉症・アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎・喘息・潰瘍性大腸炎・過敏性腸症候群になります。
出力装置が膀胱の線維化や平滑筋過形成である場合には、原因不明の頻尿・過活動膀胱になります。
出力装置が知覚神経である場合には、会陰部痛・陰嚢掻痒症・坐骨神経痛・腰痛・肛門痛・膣疼痛・前立腺痛・慢性骨盤疼痛症候群・膀胱疼痛症・線維筋痛症などの関連痛症状になります。
出力装置が自律神経である場合には、尿道腺分泌過多・多汗症・自律神経失調症になります。
【結論】
入力装置の種類、ソフトの種類、ソフトのグレード、出力装置の種類に応じて、原因がたとえ同じであっても信じられないほどの多彩な症状が発現します。個々の症状だけに目が向くと同じ原因の病気だと思えなくなるのは、私も含め凡人には当然でしょう。この巧妙な仕掛けを見破ってこそ、本当の治療があるのです。(こんなに謎解きの難しい仕掛け・ワナ・ゲームを人間に密かに施した神様、あんたは偉い!・・・?・・・いや悪い!)
【補足】
上記の考え方は、慢性前立腺炎・間質性膀胱炎に限らず、あらゆる臓器・器官に当てはまる考え方です。現在原因不明のたくさんの病気の原因が、その病んでいる臓器や器官が原因ではない可能性もある訳です。私は今のところ泌尿器科疾患だけに専念していますが、これをヒントに、誰かが他の科の病気の原因を究明できるといいですね。
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