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根治的治療とは・・・

私の行なった手術が同一の患者さんに治るまで何回も繰返されるので、私の行なっている手術は「根治的」治療ではなく、対症療法・姑息的治療であるとコメントされたことがありました。
確かに「根治的」という言葉の響きから想像できるイメージは、「1回の手術で完全に治る」という感じでしょう。そこで根治的治療の定義を調べてみましょう。
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【医学大辞典 医学書院】
根治的治療
疾患の原因そのものを取り除くための治療のこと。姑息的治療、対症療法がその対極にある治療である。

根治手術
病巣を機能的または解剖学的に切除または修復して、疾患の原因を根本から治療する手術をいう。逆に原因を根本的に除去できない場合や、修復困難な場合に行なう手術を姑息手術という。悪性腫瘍の外科治療で原発腫瘍を全摘する際に、その所属リンパ節を全て含めて摘出する術式を根治的リンパ節郭清といい、わが国では胃癌や大腸癌などによく行なわれる。良性疾患に対しても本用語が用いられ、鼠径ヘルニア根治手術などがある。
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定義されているように、病気の原因を治療することを根治的治療といいます。
癌の手術の場合、癌を全て除去したと判断できる(リンパ節郭清も含めて)手術のことを根治手術という訳です。しかるに癌の根治手術を行なった患者さんが全て再発がない訳ではありません。根治手術と再発とは無関係です。
良性の病気で鼠径ヘルニア(いわゆる脱腸)の手術は、緩んでいる腹壁の筋層を縫合し強化することでヘルニア現象を治療します。鼠径ヘルニア根治手術です。しかし、やはり再び脱腸(ヘルニア)になることがあり、再度縫合するかテフロンパッチで補強することがあります。
根治治療とは、病気の本来の原因を生理学的に解剖学的に病理学的に治療することが本質であって、1回で治ると定義されることではありません。

難治性の慢性前立腺炎は微細で慢性的な排尿障害が本当の原因だと、私は信じています。ですから、私にしてみれば、排尿障害が慢性前立腺炎の機能的・生理学的・解剖学的・病理学的原因だと考えていますから、排尿障害をα-ブロッカーの内服や内視鏡手術で治療することは、根治治療になるのです。

慢性前立腺炎の細菌説を主張している方が、抗生剤や抗菌剤の治療が根治治療と思っているのと同じです。でも患者さんは再発を繰り返します。
抗生剤・抗菌剤の効かない耐性菌が原因と考える方もいます。そんなに強力な細菌なら、急性前立腺炎に移行するはずです。慢性前立腺炎という微妙な状態に維持する方が至難の業です。
アレルギー説を唱えている方が、アレルゲン(アレルギー物質)を排除するのが根治治療と思っているのと同じです。その物質がなぜアレルゲンになったかは不明です。

さて、慢性前立腺炎の本質を示唆する内容のメールを最近いただきました。ここでご紹介しましょう。
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高橋先生ご無沙汰しております。
私は、2005年の12月、2006年10月と2回膀胱頚部硬化症で手術をしていただいた、○○(カルテNO★★798)と申します。
その節は大変お世話になりありがとうございました。
さて、現在の状況ですが、手術前の辛さを100とすると、現在は10~30で調子がいいとまったく気にならない状況です。
夜中にトイレで目が覚める事はほとんどありません、また、関連痛も前と比べれば、とっても楽です。ただし、お酒を飲みすぎたり射精を多くすると症状は悪化します。また、おしっこの出は「とっても良い」とはいえないかもしれませんが、前と比べれば良くなってます。
今現在は、病気の事をきちんと理解しているので、生活する面でとても楽になりました。私の場合、2回手術していただいたのは逆行射精を恐れたからで、調子が悪い時は「逆行射精にならないように手術していただいたのだから」と自分に言い聞かせています。
ところで、2007年10月12日に診察していただいた時に、デパスを出していただきました。ちっと調子が悪い時に飲むと、若干調子が良くなります。
診察していただいた後「まごめ薬局」の方が、薬を送っていただけるような事を言っておられましたが、そのような事をお願いできるのか教えていただきたいと思います。
何分、地方の○○県に住んでいますので、そのような事がお願いできるのなら助かります。
〒★★★-★★★★ ○○県○○市○○町★★-2-★★
○○○○
TEL★★★★-★★-★★90

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コメント

本文とあまり関係ないコメント失礼します。
ハルナールはまだ慢性前立腺炎の薬として認可されていないのでしょうか?

【高橋クリニックからの回答】
慢性前立腺炎ではもともと認可されません。
下部尿路症の薬として認可される予定ですが、遅れています。
秋にずれ込む可能性もあります。

投稿: 患者 | 2008/06/04 23:38

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