« 根治的治療とは・・・ | トップページ | ★ 慢性前立腺炎の要約 ★ »

再発の理由

Recurrence慢性前立腺炎を排尿障害が原因として内視鏡手術を行なっても、膀胱出口の再狭窄・再硬化を来たすことがあり、再手術をすることがあります。
前回のテーマで根治的治療の定義について述べ、根治手術を行なってもなぜ再手術を行うことがあるのかをここで解説します。

右のイラストは膀胱出口が自力で開放する能力(%)と排尿の際の膀胱内圧にどれだけ依存しているか(%)を便宜的にイメージしたものです。
実際には、恐らくはもっと複雑でしょうが、理解できればよいので、これで十分でしょう。

さて、排尿障害が原因の慢性前立腺炎の患者さんは、膀胱出口の自力による開放能力が健常の男性に比較して低下しています。すなわち100%ではない訳です。その能力の低下は検査では判定できません。なぜなら、排尿能力は、膀胱出口の開放能力と膀胱内圧の力の協力の結果ですから、通常の検査では正確には判定できません。膀胱内圧・筋電図・尿流量測定ウロフロメトリー検査・排尿時テレビレントゲンビデオ撮影でも様々な要因の協力の結果ですから、その要因の依存度を知ることはできません。

膀胱出口の開放能力が100%ではない状態が、慢性的に長年繰返し起こることで、膀胱出口は繊維化あるいは膀胱括約筋の過形成で開きが一層悪くなります。
十分に開かない膀胱出口は、排尿時に振動します。その振動エネルギーが下部尿路を刺激し頻尿や関連痛などの症状を作ります。

そこで私が排尿障害を見つけ内視鏡手術をするのですが、病気の本質である膀胱出口の自力での開放能力を治すことはできません。なぜなら、その能力の低下は神経・あるいは筋肉の機能障害によるものだからです。私が出来る事は、硬くなった膀胱出口を解放し大きく広げることです。患者さんが隠れ排尿障害に気がついていなかった頃の未病の状態に戻すことだからです。この病気は若い方が多いので、膀胱出口や前立腺を完璧にギリギリまで切除すると逆向性射精などの後遺症を残してしまうので、手術は完璧とは程遠い不完全にならざるを得ません。

手術後、膀胱出口の神経・筋肉は健常者と同じになった訳ではありません。排尿は程度の差はあるものの膀胱内圧に依存した状態でなされます。つまり膀胱収縮力・腹圧・臓器重量・重力による位置エネルギーの全てです。しかし、身体の方もバカではありませんから、手術をした傷があるのに黙って見過ごす訳がありません。修復能力の発動です。膀胱出口のようにリング状の構造は、治癒過程において、裂けたあるいは穴の開いた袋を閉じるように治します。それが再狭窄・再硬化になるのです。
膀胱出口の開放能力の自力度が高ければ、傷の閉じる修復力を排尿の都度妨げますから、膀胱出口は機能に十分な内径を維持・確保できるのです。

Recurrence2内視鏡手術により排尿障害が改善され症状も落着いた患者さんが、しばらくしてから排尿障害はないのに関連痛症状が再燃する場合があります。
この現象を解説するために、右のイラストを作りました。
トリガーポイント手術で説明したように、関連痛と膀胱出口の再硬化組織の部分が密接に関係しています。患者さんの協力を得て麻酔深度を意図的に浅めに行ないます。3D画像で確認できる硬化組織を刺激すると軽い(麻酔が効いているので)関連痛が誘発されます。つまり膀胱出口の硬化組織は、関連痛のスイッチであることが分かりました。

内視鏡手術で硬化組織は容易に破壊できますが、脊髄内の症状発現ソフトウエア(神経増幅システム)は破壊不可能(破壊したら脊髄損傷になってしまうので)ですから手付かずです。手術後、膀胱出口の自力開放能力の低い患者さんは、組織の修復システムの発動により完全ではないにしろ再度硬化し易くなります。出来上がった再硬化組織がスイッチとして再びよみがえり、ソフトの入った脊髄中枢と再び回線がつながるので症状が再燃するのです。

治療する医師としては、膀胱出口が再硬化しないように術式を工夫するしかありません。手術前の3D画像検査で硬化組織を十分正確に把握し、患部組織を効率的で十分な深さまで切除・切開するように研鑽する、修復システムが発動しないように術後ステロイド治療を行なうなどです。

|

« 根治的治療とは・・・ | トップページ | ★ 慢性前立腺炎の要約 ★ »

コメント

 手術検討中です。

 現在は1か月に何人ほど膀胱頸部硬化症の手術をしていますか?
【回答】
2人~7人です。

投稿: | 2012/11/15 13:50

手術検討中です
1ヶ月に2人から7人だと最近はかなり少ないんですね?
原因は薬でコントロールできている証拠となりますか?
【回答】
手術費用が保険が利かない高額だからです。
また、私も年で体力的に手術を控えています。
それでも毎月30件前後のいろいろな手術をこなしています。

投稿: | 2013/05/01 13:59

内視鏡手術後に再硬化 元に戻る患者さんを予防するにはステロイド治療をしたり元に戻らない何か方法はありますか?
【回答】
いろいろ試しましたが、決定打はありません。

投稿: | 2013/05/08 20:18

先生 内視鏡手術後に再硬化した患者さんでも尿は細くても痛みなどは治るケースはありますか?
【回答】
はい。
トリガーポイントが破壊されたからと考え増す。』

先生の1000人以上の治らないケースの40名が何度も再硬化するケースだと考えていいでしょうか?
【回答】
はい。

投稿: 医療関係 | 2013/05/14 09:45

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 再発の理由:

« 根治的治療とは・・・ | トップページ | ★ 慢性前立腺炎の要約 ★ »