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膀胱括約筋過形成症候群 Bladder-Sphincter Hyperplasia Syndrome

慢性前立腺炎や間質性膀胱炎の患者さんの超音波3D画像をいくつも検討していくうちに、「膀胱括約筋過形成症候群 Bladder-Sphincter Hyperplasia Syndrome」という考え方が私の頭を占拠しています。もちろん私の造語です。常識ではありませんから、そのおつもりで・・・。
この考え方は、形態学的な観点からの名称ですが、機能面から見れば、前立腺肥大症も含めて「膀胱括約筋過緊張症候群 Bladder-Sphincter Supertension Syndrome」という名称が適切なのかも知れません。これもまた私の造語です。

慢性前立腺炎・膀胱頚部硬化症・膀胱出口閉塞症・膀胱頚部機能低下症・膀胱排尿筋内尿道括約筋協調不全・神経因性膀胱・前立腺肥大症・間質性膀胱炎・過活動膀胱・心因性頻尿・慢性骨盤内疼痛症候群・前立腺痛症・膀胱疼痛症など、これら全ての疾患が、自力・他力にかかわらず、膀胱括約筋の機能亢進に集約されます。

Bladdsphinc_2前立腺肥大症の場合は、腺腫が大きく膀胱側に突出するので膀胱括約筋はドーナツ状に周囲に追いやられ塊りとなって、常に前立腺を圧迫するようになります。図の右のように膀胱括約筋は、肥厚した堤防のようです。見かけ上膀胱括約筋の過形成ですが、筋肉が寄せ集まり団子状態になっただけで、本当の過形成ではありません。この状態は他力的な膀胱括約筋の機能亢進になります。
すると、前立腺肥大症がどんなに大きくても、膀胱内に突出しなければ(図の左)、膀胱括約筋は正常に働くので排尿障害にはならないのです。図では、左の前立腺肥大症の方が明らかに大きい前立腺ですが、小さい前立腺の方が排尿障害が強く出てきます。ここに前立腺肥大症の大きさだけでは排尿障害を評価できない根拠があるのです。

Wnlmorifice正常な男性の3D画像です。
膀胱括約筋が膀胱出口ギリギリまでありますから、正円の穴として膀胱出口が確認できます。
前立腺肥大症がたとえ大きくても、膀胱内に突出しなければ、上図の左の場合は、この正常の3D画像と同じように見えます。膀胱括約筋に開くだけの余裕があるのです。

Bph3d11624m5037ccpsa49これは前立腺肥大症の3D画像です。中央の大きなくぼみには前立腺が存在します。膀胱括約筋を明確に描写すると、前立腺組織はエコー画像上透明になってしまうので、このような映像になります。
中央のくぼみが大きければ大きいほど、前立腺が膀胱内に突出し、膀胱括約筋は周囲に追いやられドーナツ状になります。ドーナツ状に塊りになった膀胱括約筋は、これ以上緩みようがないので、常に膀胱出口を圧迫する形になり排尿障害になります。

Bladdsphinc2膀胱頚部硬化症の場合は、膀胱括約筋から膀胱出口にかけて硬い組織ができます。この硬い組織は、線維性・膀胱平滑筋性・扁平上皮化性など組織はさまざまですが、膀胱出口の開きを妨げているのには違いありません。

Bns21709m25chn右の3D画像は、実際に来院した25歳の慢性前立腺炎の患者さんの所見です。
膀胱出口周囲に硬化性の組織ができているのが分かります。この硬い輪が排尿の際のリミッターとなって、スムーズな排尿を邪魔するのです。
エコー上は、膀胱括約筋と同じように超音波を反射するので、膀胱括約筋と同じ硬さだろうということは判断できますが、組織型は判別できません。手術で切除した組織を病理検査して初めて判断できます。

Boo21569f36この画像は、間質性膀胱炎の36歳女性の所見です。
膀胱出口周囲にやはり硬化像が確認できます。一見、鳥の嘴(クチバシ)のようにも見えます。

Cp21560m40硬化像が全周囲とは限りません。
この写真のように、部分的に硬くなる場合もあります。慢性前立腺炎の40歳の患者さんの3D画像です。
膀胱出口の2時と8時に硬化像を認めます。全周ではありませんが、十分にリミッターになります。

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