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排尿のメカニズム 膀胱三角部の重要性

【3D4D画像による臨床的事実】
Wnlmorifice膀胱頚部の3D画像を観察すると、今まで私が知っていた解剖学的景色とまったく違うことに、戸惑いました。
なぜなら、膀胱三角部がもっと厚いものだと思っていたからです。ところが、右の写真の如く、膀胱三角部と思われる部分は、周囲の膀胱平滑筋に比較して明らかに薄いのです。

【想像的解剖図】
Bnclose右の図は、上の写真をイラストにしたものです。上の写真と比較して下さい。理解しやすくなります。
臨床医は、膀胱底部の輪状筋(膀胱平滑筋・排尿筋)はドーナツ状に輪になっているものと思っていました。「輪状」という名称からそのようにしか理解できません。ところが実際は図のようにドーナツではなく、ブーメラン状なのです。ブーメランの両端を輪状筋脚(排尿筋脚)と記載していますが、解説の都合上私が命名した造語です。
さて、ブーメランの内角の部分に膀胱三角部がテント状に張っています。すなわち膀胱三角部はテント状に張り詰めた存在であって、生理学や解剖学専門書に記載されているような、積極的に収縮する排尿筋ではないのです。

Bnclose2この部分を縦断面にしたのが、右のイラストです。
膀胱三角部は赤く着色しています。
輪状筋と輪状筋脚はブーメラン状につながっています。膀胱三角部は上図のイラストでは表現できていませんが、実は膀胱・膀胱頚部から尿道内までの構造になっています。
次のCampbell-Walsh Urologyに掲載されているイラストで説明します。・・・

【正常の解剖図】
Trigone膀胱三角部の膀胱出口に貫く垂(すい)という部分は膀胱頚部の中に付着しています。
この垂は後で重要な意味を持ちます。
右図でテープで支持している部分が垂です。
このイラストで想像できるように、膀胱三角部は左右の尿管が膀胱内まで連続し結合した組織です。ですから発生学的に見れば、膀胱三角部は膀胱組織ではなく尿管組織になります。尿管組織ですから膀胱組織とは異なる感覚を持っています。

Trigoneanatomy生体の3D画像と解剖学専門書に描写されている下部尿路では、細部が微妙に違います。
そこで解剖学書を色々調べると、金原出版の解剖学(有名な養老孟司先生が分担執筆しています)に記載されている右図が一番3D画像に近い描写になっています。
排尿筋として膀胱三角部も一緒になっていますが、役割分担としては異なるので、青と赤に色分けしました。
ここで注意をしていただきたいのが、三角部垂が精丘のすぐ裏にまで達しているということです。
膀胱三角部の排尿筋がかなり厚く描写されています。実は男性の膀胱三角部は筋層が厚く、女性の場合は筋層が薄いのです。解剖学書には、その理由が論じられていません。
私は次のように考察します。男性の場合は膀胱三角部の真下に前立腺が存在しているため、女性のように薄い膀胱三角部では外尿道括約筋の力だけでは円滑に引張りきれないのでしょう。膀胱三角部の平滑筋が豊かに厚ければ、外尿道括約筋に縦軸方向へ引張られた刺激で、膀胱三角部の平滑筋が自立収縮して加速度的に膀胱三角部が収縮してくれます。もしも女性のように膀胱三角部が薄ければ、カクカクという動きになるのでしょう。

【正常な排尿の仕組み】
Bnopenでは、膀胱底部、膀胱出口周囲は、なぜこのような構造をしているのでしょう。
それをこのイラストを使って解説しましょう。
排尿をしようと力みます。すると外尿道括約筋が膀胱頚部を含めた下部尿路部分を下方に引張ります。
膀胱三角部は膀胱頚部の尿道内にまで連結(三角部垂の存在)していますから、外尿道括約筋により膀胱三角部は膀胱頚部に向かって引張られます。
すると膀胱三角部が輪状筋脚に連結していますから、左右の輪状筋脚は接近してブーメラン型からドーナツ型に変形します。

Bnopen2同じタイミングて輪状筋周囲に存在する縦走筋が収縮をし、膀胱出口を取り囲む輪状筋を開かせます。膀胱三角部と輪状筋のこの一連の動きで、膀胱出口は漏斗状に開き、排尿するのです。
膀胱三角部がかなり重要な働きを行なっていることをご理解いただけましたか?

【排尿障害の仕組み 前立腺肥大症】

Bnopen3正常な排尿の仕組みを解説しましたから、次は排尿障害の仕組みを解説しましょう。まずは、有名な前立腺肥大症についてです。
右イラストは、前立腺肥大症の時の排尿障害の仕組みを描写しています。赤く盛上がっているのが膀胱三角部です。それを押し上げている緑の球体が前立腺肥大症です。このように前立腺肥大症によって膀胱三角部が圧迫を受けると、外尿道括約筋が下に引張っても、膀胱三角部は伸びずに固まったままです。すなわち、膀胱頚部の漏斗形成が失敗します。そのため、十分な排尿ができません。
Bphbns21378m74前立腺肥大症の発育・成長が著しいと、膀胱三角部は断裂してしまい、膀胱三角部の機能は廃絶します。
右写真は、実際の前立腺肥大症の患者さんの3D4D画像です。
輪状筋はブーメラン型からドーナツ型に変形しています。膀胱三角部に当る部分は前立腺肥大症が露出しており(画像では溝に見える部分)、膀胱三角部は完全に断裂状態です。


【排尿障害の仕組み 膀胱頚部硬化症・慢性前立腺炎・間質性膀胱炎】

Bnopen4次に、膀胱頚部硬化症・慢性前立腺炎についてです。
膀胱頚部硬化症の場合は、膀胱頚部あるいは膀胱出口が何らかの原因で硬い線維に変化して、排尿時に膀胱頚部が十分に開きません。と同時に、膀胱三角部に外尿道括約筋による下方への力が十分に伝わりません。そのため膀胱頚部の漏斗形成が失敗します。
Bns20765m30右写真は、実際の慢性前立腺炎症状で来院した膀胱頚部硬化症の30歳男性患者さんの3D4D写真です。
膀胱頚部周囲に硬い印象の額縁(がくぶち)が観察できます。この額縁が排尿時の膀胱三角部の進展を妨害するのです。

Boo21569f36右写真は、間質性膀胱炎症状で来院した36歳女性患者さんの3D4D画像です。
上の慢性前立腺炎患者さんと同じように膀胱頚部周囲が額縁様に硬化しているのが観察できます。

Boo21255f51右写真は、やはり間質性膀胱炎で来院した51歳女性患者さんの3D4D画像です。
膀胱頚部内の11時方向にコブ状のシコリが観察できます。このシコリのために膀胱頚部は開きにくくなります。

【だから・・・何?・・・】
では、膀胱三角部が十分に引張られないで、膀胱頚部の漏斗形成が不十分だと、どういう問題が生じるのでしょう。
まずは、排尿障害になるということです。これまでの解説で容易にご理解いただけたでしょう。
膀胱三角部は、ちょうど落とし穴のフタのような存在です。排尿時にそのフタが斜めに落ち、奈落の底に敵を落とす仕掛けのようなイメージです。落とすのは敵ではなく尿です。

さて、膀胱三角部は筋層が解剖学的に二層構造です。膀胱全体は三層構造ですから、膀胱三角部だけが単純にできているのです。ところが、神経分布は密度が一番高いのが膀胱三角部だということが組織解剖学的に分かっています。
変だと思いませんか?複雑な三層構造の部分の神経分布が少なくて、単純な二層構造の膀胱三角部の神経分布が多いという事実がです。普通に考えれば、逆でしょう。ではこの多い神経分布は何のためでしょう?恐らく、知覚神経のためでしょう。膀胱三角部が膀胱全体の中で神経分布が密なのは、膀胱三角部が排尿筋としてばかりではなく、知覚センサーとしての役割を担っているからだと、私は推察します。

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