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膀胱の嘆き(第190話)

Cp21557m1717歳の青年が尿道の疼痛で来院しました。
症状は排尿後の尿道の疼痛です。その痛みが尿道先端だったり、尿道の中程だったり日によって位置が異なるのです。
この症状は2年前からあり、地元の2ヵ所の大学病院泌尿器科で診察・検査をしましたが、「非細菌性慢性前立腺炎」という診断でセルニルトンの処方を受けました。が、まったく効きませんでした。

尿流量測定ウロフロメトリー検査では、腹圧性の排尿曲線で無意識の内に息んでいます。残尿は45mlと大目です。
Wnlmorifice膀胱出口の3D4D超音波エコー検査では、上の写真のようです。
右の正常の膀胱出口と比較して、いびつです。膀胱出口は正円ではなく、6時と12時の方向に平滑筋のシコリが観察できます。12時のシコリの上は凹んでいます。

上の写真をジ~とながめてみて下さい。何か見えてきませんか?・・・

Cp21557m172・・・見えてきましたか?
辛そうに口を開けて嘆いている人の顔に見えませんか?上の写真をグレイモードに変換してコントラスト強調したのが右の写真です。
17歳の患者さんとこの写真をながめて同じ印象を持ちました。
慢性前立腺炎や間質性膀胱炎の患者さんの排尿障害をもっと直感的に観察できないか?と考えて購入した3D4D超音波エコー機器です。膀胱出口の表情が少しでも見れればと思っていました。本当に表情が見えたのです。
Mun有名な「ムンクの叫び」を思い起こさせます。
膀胱平滑筋のアンバランスな肥厚のために、膀胱出口は変形し、いびつな膀胱平滑筋が影を創り、人の表情に見えるのでしょう。「早く!何とかしてくれ!・・・」という声が伝わって来るようです。
『何とかしましょう!』

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コメント

たいへん興味深い画像です。
17歳の若さでこういう状態になるということ
は、成長過程での膀胱出口周辺の発達不足とか
異常かなと思いましたが、先生は若い方のこう
いう状態を見てどのように思われているので
しょうか?
差し支えない範囲でお答えいただければ幸いです。

【高橋クリニックからの回答】
私は神様ではありませんから、自然の造形を客観的に観察し、意味付ける、ただそれだけです。
たとえ発育不全・発育異常であっても、ただ単に自然が作った産物です。それ自体には何の意味もありません。
ところが、人間の一部として機能する場所であった場合には話が変わります。構造的弱点が機能異常を作り、病気という表現で患者さんを苦しめるのです。
医師は、病気の原因になるであろう可能性や証拠を見つけ出し、仮説でもいいから論理的に病態生理を紡いでいくのが、医師の務めでしょう。
若いから病気はないという既成概念が、患者さんを苦しめるのです。神様が人間を作ったのであれば、人間の体を舞台(ゲーム板)として、神様は様々な病気というゲームを作っているのです。そこには、容易に理解できるゲームもあれば、トラップが何重(難渋)にも仕掛けられたゲームもあるのです。
医師は、この複雑なトラップにはまらないように、慎重に、そして着実に実績を積み重ねなければなりません。
慢性前立腺炎や間質性膀胱炎は、巧妙なトラップが仕掛けられた典型的な病気です。
今回、たまたま私の思いつきで、3D画像の新たな所見が得られたのはラッキーです。これからも研鑽しなければなりません。

投稿: 田中 | 2007/12/21 20:57

 高橋先生、この患者さんにもアルファブロッカーを処方ですか?それから患者さんは軽快したのですか?
【回答】
この患者さんはエブランチルと水分制限で症状は軽快しました。

過去の症例一つ一つに対して、度々「その後どうですか?」という質問は控えて下さい。
その都度、カルテ倉庫から過去のカルテを探して回答しなければなりません。
忙しい診療の中で、このような質問の連続はとても迷惑です。
私が時間を取られ、実際に診察を受けに来院した患者さんに対しても迷惑です。

投稿: クラシック | 2012/10/31 11:30

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