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帯状疱疹から慢性前立腺炎?

現在66歳の男性患者さんです。15歳の頃から頻尿で苦しんでいます。
現在は1日15回~20回の頻尿と夜間4回の頻尿です。
患者さんは若い頃からの頻尿よりも、尿がたまった時に毎回、陰茎の尿道先端に痛みがあることが悩みのタネです。
既往歴で15歳の時に右臀部のヘルペス(帯状疱疹)にかかっています。本人曰く、ヘルペスになってから頻尿になったというのです。
10月2日の夕刊フジの私の記事を見て来院しました。
Bns21264m6642D超音波エコー検査では、前立腺の大きさは27ccでそれ程大きくはありません。
前立腺内に石灰(前立腺結石)を認めます。
大学病院の泌尿器科で前立腺肥大症は大したことがないからと診断されています。
尿道痛に関しては、「?」でした。
Bns21264m665尿流量測定ウロフロメトリー検査では、ご覧のように勢いがありません。前立腺肥大症型の排尿曲線です。
自尿が309ml、残尿が139ml!です。

3D検査でこの患者さんの病気の表情がさらにハッキリします。

Bns21264m663D正面画像です。
膀胱出口が比較的大きく見えます。3D画像では前立腺組織は透けてしまうので、このようなポッカリと口を開けた膀胱出口に見えます。また膀胱出口周囲が盛上がっているいます。
膀胱出口の奥の6時の位置に出っ張りが確認できます。シコリ?を疑います。
Bns21264m662同じ正面画像で、ゲイン(感度)を落とすと、表層の粘膜が透けて深部の組織が3D画像で確認できます。
前立腺組織はさらに見えなくなり、前立腺で埋まっている部分が大きければ大きいほど、大きなスペースとして観察できます。
前の6時の位置にあったシコリはなくなり、1時と11時にシコリが確認できます。
Bns21264m663_2上図の3D背面画像です。
1時と11時にかなりハッキリしたシコリが確認できます。
正面画像の1時が背面画像の11時に当り、正面の11時が背面の1時に当たります。このシコリは膀胱出口の膀胱平滑筋の肥厚でしょう。
Bns21264m663enhance同じ写真の線画風強調画像です。
シコリの部分が明確に確認できます。
2D画像では、この位置に前立腺結石を認めませんでしたから、膀胱平滑筋の肥厚と考えてよいでしょう。

この硬くなった膀胱平滑筋が、現在の排尿障害の原因の一つです。
「原因の一つ」と明言したのは、この膀胱平滑筋の肥厚性変化は2次的変化だからです。では元は何なんでしょう?
それは恐らく、ヘルペス感染による排尿神経の神経炎の後遺症でしょう。以前に性器ヘルペスによる排尿障害と排便障害について述べたことがあります。(STDのブログ:写真4の例・写真5の例)
排尿神経である骨盤神経と陰部神経がヘルペスウィルスによって慢性神経炎にかかると、排尿時の膀胱出口の開放は不完全になります。すると膀胱出口は排尿中に振動します。その振動に負けないように膀胱出口の膀胱平滑筋が肥厚し硬くなるのです。

以前に2D超音波エコー検査で証明してきた膀胱出口周囲の膀胱内への突出(硬化像)は、3D超音波エコー検査で観察できる膀胱平滑筋の肥厚出現のさらに時間が経過した状況なのでしょう。ですから、2D画像で突出が確認できる以前から、3D画像で膀胱出口の膀胱平滑筋の肥厚を確認できることになります。
そして、内視鏡手術的な観点から見れば、3D画像で事前に確認した肥厚した膀胱平滑筋を中心に手術を行なえれば、治療の完成度が高まるかも知れません。
また、新しい治療法であるボトックス注射を闇雲に膀胱壁や前立腺に注射するのではなく、肥厚した膀胱平滑筋に注射できれば、治療の効果はもっと上がるかも知れません。期待でワクワクです。

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【患者さんからのメール】
高橋知宏  先生
カルテNO.・・・89の○○です。

本日アップされていたブログ拝見いたしました。
2Dと3D超音波の併用で、かなり良い情報が掴めるようになったみたいですね。
また初耳でした米国泌尿器科学会発表ボトックス注射治療、国内ではどうなってるのかなとネットサーフィンしてみたら島根大でのボトックス治療が出ていました。
形成美容領域ばかりのイメージでしたが、こういう使い方もあるのだと関心しました。(笑)
前立腺内筋弛緩作用の画像まででていました。

先生の仰る通り、
<内視鏡手術的な観点から見れば、3D画像で事前に確認した肥厚した膀胱平滑筋を中心に手術を行なえれば、治療の完成度が高まるかも知れません。

先生の提唱されていたものが証明されつつあり、また手術精度も高くなると思います。

<また、新しい治療法であるボトックス注射を闇雲に膀胱壁や前立腺に注射するのではなく、肥厚した膀胱平滑筋に注射できれば、治療の効果はもっと上がるかも知れません。期待でワクワクです。

先生の内視鏡手術後にでも、肥厚した膀胱平滑筋に注射して併用すれば治療効果はもっと上がると私も確信いたします。
そうすることで私達みたいに再度狭窄するタイプの人間は、外科的治療とボトックス注射で長期間緩められ続けれれば、再硬化しにくくなると思います。

私も患者側ながらワクワク致しております。
今後もよろしくお願いいたします。

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宮崎県○○○○郡
○○○○
E-mail: ○○○○@○○○○.jp
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コメント

昨日「Dr.House」というアメリカのドラマの中でも前立腺炎で来院されたかたに対し、主人公の医師はヘルペスという診断を下していました。ドラマと現実をごっちゃにしてはいけないとは思いますが、実際にアメリカの医師のなかでも先生が思っているような考えがあるのかもしれませんね。

【高橋クリニックからの回答】
どういう状況か分かりませんが、前立腺炎症状をヘルペスと即断するのも考えものです。
日本ではそのような医学常識はありませんが、欧米では多いのかも知れません。
鑑別疾患としてヘルペスを頭のどこかに記憶していることが、診断の正確さを増すのも事実です。

投稿: 通りすがりの・・・ | 2007/10/03 23:41

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