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サイトカインCytokine 炎症細胞の言語

先日、掲示板に下記のようなご意見がありました。興味を惹かれたので、ここに紹介します。

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580 :患者X:2007/04/27(金) 08:50:59 ID:jQbFLHVH
>>575
現在一般的には行われていませんが、文献では前立腺炎患者の精液中のサイトカインレベルが高いことが報告されています。
また、その文献の中では「cytokineレベルは、前立腺炎患者において病気の客観的な計測を提供するかもしれない」 と書かれています。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=pubmed&cmd=Retrieve&dopt=Abstract&list_uids=9801092&query_hl=1&itool=pubmed_docsum

また、もう一つの文献では「インターロイキン-10のレベルは、前立腺炎の苦痛の程度と相関していた」と書いてあります。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=pubmed&dopt=Abstract&list_uids=11792966&itool=iconabstr&query_hl=6&itool=pubmed_docsum

炎症に伴い上昇するサイトカイン類が前立腺炎患者の精液検査で健常人よりも多く見られるということは、客観的にも前立腺自体に炎症が存在していることを意味していると思います。
膀胱頚部三角の硬化症では説明が付きません。膀胱頚部三角の炎症は前立腺炎からの二次的変化と考えた方が自然と思います。
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さてさて、サイトカインとは何かご存知ですか?
「サイトカインcytokine」と聞くだけで、ご存じない人であれば、「ハッハ~」とひれ伏したくなる気持ちになります。まるで助さん格さんが掲げた印籠の前で、ひれ伏す悪人のようです。水戸黄門のお決まりのシーンですね。
一般にサイトカイン=慢性炎症という強いイメージです。しかし、サイトカインは急性炎症にも出現します。
細胞間シグナル伝達物質には、上記に掲げるように様々な物質があります。サイトカインはその中の一部の一群の物質です。
【標準病理学・医学書院から引用】
Inflamation_2
【分子生物学超図解ノート・羊土社から引用】
Signalmediater
【標準病理学・医学書院から引用】
Cytokinefunction_1
サイトカインは、炎症細胞間で使用される共通言語(特殊なタンパク質)と思っていただければ理解しやすいのだと思います。
Cytokineimmunoサイトカインの量が多く測定されるということは、炎症細胞同士で頻繁に炎症についての言葉が飛び交っているということです。
しかし、言葉が多く飛び交っているからといって、何の話をしているのかは不明です。使用される言語によっては、炎症の種類がある程度推理できますが、必ずしも正確ではありません。

慢性前立腺炎の患者さんの前立腺液から特定のサイトカインが多く検出されたというのは、炎症細胞間で活発な会話がなされているというだけです。炎症があるのでしょうという程度の認識にしかなりません。この程度では慢性前立腺炎の原因が追求できません。ですからサイトカインを検査するというルーチン検査にはならないのです。

では、なぜ前立腺に炎症が起きるのでしょう。
掲示板の方は誤解しているようです。私は、前立腺に炎症が起きないとは説明していません。「慢性前立腺炎症状」の原因は、前立腺の炎症ではないとは思ってるだけです。

例えば、前立腺肥大症などの排尿障害では、必ず前立腺に慢性炎症が病理学的顕微鏡検査で認められます。しかし、前立腺肥大症のほとんどの患者さんは、慢性前立腺炎の症状を持っていません。単に軽い頻尿と尿が出にくい症状だけです。本当に慢性前立腺炎があるのに、慢性前立腺炎症状が出ないのです。不思議ではありませんか?
要するに慢性前立腺炎症状は前立腺が作っている症状ではなく、膀胱頚部硬化症などの排尿障害の慢性的刺激が、膀胱三角部を刺激して作る症状なのです。

前立腺肥大症も排尿障害だろうとお思いでしょう?本質が違うのです。前立腺肥大症の患者さんは前立腺が大きくなっただけで、もともと排尿機能には問題ないのです。正常の排尿機能を超えるほど前立腺が大きくなった時点で排尿障害になるのです。
ところが、非細菌性慢性前立腺炎の患者さんになるような方は、機能性の膀胱頚部硬化症で、排尿機能が元々悪いのです。同じ排尿障害といっても質が違うのです。

以前にも説明したと思いますが、医師も一般の人も炎症の定義をごちゃごちゃにしているので、炎症に関して混乱しているのだと思います。

炎症とは、
1.生物学的刺激(細菌感染・ウィルス感染など)
2.化学的刺激(薬物・化学物質・毒物・重要微量物質の欠如など)
3.物理的刺激(熱・振動・圧力・光など)
によって起きる生体の反応および反応の過程を「炎症」と呼びます。

ですから、炎症=細菌感染・ウィルス感染ではありません。
炎症≒(30%程度の確率で)細菌感染・ウィルス感染が正解なのです。
同じことは、すべての刺激が炎症の原因になりうるということです。
ところが慢性前立腺炎=病原微生物感染と思い込んでいるので、細菌・真菌治療やウィルス治療を行なっても治らないのです。

サイトカインの存在は、慢性前立腺炎の直接の解決には結び付かないのです。
文献のインターロイキン10は、他のサイトカインの放出を抑制する作用がありますから、炎症を抑えようと努力している証でもあります。

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