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デパスの筋弛緩作用と自律神経調節作用

私が治療にしばしば使用する、デパスについてご説明しましょう。
「高橋クリニックも最後はデパスか!」という文面がありました。おそらくは、「デパスは精神薬や抗うつ剤!」という認識の持ち主が嘆いているのでしょう。デパスについて不当な誤解があるようなので、デパスの味方になって、ここで詳しく解説しましょう。
●デパスはベンゾジアゼピン系抗不安薬です。その名の通り、抗うつ剤ではありません。そのベンゾジアゼピン系抗不安薬には、作用時間によって次のように分類できます。
【短時間型】
デパス・リーゼ
【中間型】
コンスタン・ソラナックス・ワイパックス・レキソタン
【長時間型】
コントール・バランス・セレナール・レスミット・セルシン・ホリゾン・セパゾン
【超長時間型】
メイラックス


●ベンゾジアゼピン系薬剤の共通した作用には、次のものが上げられます。
1.抗不安作用
2.鎮静作用
3.睡眠導入作用
4.筋弛緩作用
5.抗ケイレン作用
6.自律神経調節作用
7.抗ストレス作用

●ベンゾジアゼピン系薬剤の作用機序
神経細胞の細胞膜に存在する塩素イオン・チャンネル(塩素イオンの出入り口)を開放し、神経細胞内への塩素イオンの流入を促進します。その結果、神経細胞の興奮性が抑えられます。その抑制が、脳神経細胞であれば、1.抗不安作用 2.鎮静作用 3.睡眠導入作用 5.抗ケイレン作用(中枢性) 6.自律神経調節作用(中枢性) 7.抗ストレス作用になるのだろうと推測されています。
また、末梢神経末端であれば、4.筋弛緩作用 5.抗ケイレン作用に、自律神経であれば、6.自律神経調節作用になるのでしょう。

特にデパスには5番目の筋弛緩作用が強いので、筋緊張性頭痛、頸肩腕症、ムチ打ち症、肩こりの患者さんに、鎮痛剤と一緒にしばしば処方されます。これらの病気を「うつ病」として医師は処方していません。

さて私は、慢性前立腺炎症状の患者さんに、通常α-ブロッカーを処方しますが、症状が今ひとつ改善しない場合に、デパスを処方することがあります。
その理由は、膀胱頚部の筋弛緩作用を期待してのことと、仙骨部を中心とした自律神経系の調節を期待してのことです。慢性前立腺炎で苦しんでいる患者さんを「うつ病」とは考えてもいません。
内視鏡手術後の患者さんに、症状の改善がみられない時にデパスを処方するのも理由があります。
内視鏡手術を行なっても、膀胱出口の平滑筋や神経が健常者と同じように正常に戻る訳ではありません。あくまでも開かないスライドドアを壊しただけです。しかし壊すにも限度があり、スライドドアが完全にオープンになるほど壊すことはできません。患者さんによっては、その程度の壊れた穴では不十分の場合があり、そのような際にはデパスの筋弛緩作用を利用します。
【補足】
デパスの筋弛緩作用の標的は、主に骨格筋でしょう。しかし私が期待しているのは、内臓筋(膀胱平滑筋)です。ですから、デパスが必ずしもシャープに効くわけではありません。
その観点から考えると、漢方薬の芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)は最適かも知れません。尿管結石の疝痛発作の治療薬である芍薬甘草湯の効能には、骨格筋や内臓筋の抗ケイレン作用をうたっていますから、膀胱出口の硬さを理由としている慢性前立腺炎にも効果があるかも知れません。

また、排尿障害が軽減しても、一度完成してしまった膀胱・前立腺・仙骨神経を中心とした知覚神経・自律神経回路の過敏さは、なかなか消失してくれない場合があります。そのため、デパスの自律神経調節作用を利用するのです。デパスの自律神経調節作用は多岐に渡っています。
医師の中には、不定愁訴(さまざまな訴え)の多い患者さんを「抗うつ剤」などで「とりあえず黙らせよう」とする医師がいるのも事実です。そういう輩は、病気の本質や病態生理は見ずに、表面上の症状や病名でのみ薬を処方するので、「数撃てば当る」的な治療になります。そのような治療を行なえば、誤解される薬や効かない薬が増えます。デパスも、その代表例でしょう。

●下記に参考になるメールが届きましたので、ご披露します。

2006年10月21日に診察して頂いた、会員番号・・・78 ○○○○です。
あれから高橋先生に処方していただいたデパスを飲み続けたところ、今までに悩んでいた原因不明の右肋骨の痛み、逆流性食道炎の症状(頑固な胸焼け、胃の鈍痛、胃のせん痛、胃もたれ)が消滅しました。
ほかに多量の唾液の分泌や睡眠障害、腸内異常発酵も改善されました。本当に助かってとても喜んでおります。
デパスは、今までほかの病院で処方された胃薬ガスターD錠やタケプロンよりも胃痛に効果がありました。胃からくる症状やほかの原因不明な症状も慢性前立腺炎からくる関連痛だったのでしょうか?
もしくは私は心身症になっていたのでしょうか?考えるだけで混乱しますがこれからも診断の方よろしくお願いします。
あと薬のことなんですが、デパスはこれからもずっと飲み続けてもいいでしょうか? 

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コメント

排尿障害を手術で幾分か治したとして、先生の唱える神経の過敏をデパスで抑えるという図式はわかりましたが、デパスで患者の不定愁訴が治まらなかったとしたら次はどのような治療を選択されるのですか?

【高橋クリニックからの回答】
定期的な仙骨神経ブロック、追加の膀胱三角部減張切開手術、その他の神経作動薬、坐薬などです。
脊髄神経内の記憶回路や配線は動かすことが出来ません。ですから、その配線に影響を与えるような薬を捜します。また、その記憶回路に入力しない新しい回路を形成させるような条件を植えつけます。そのために仙骨神経ブロックを行ないます。

投稿: pon | 2006/11/29 23:36

仙骨神経ブロックというと麻酔だと思いますが、定期的に行うことによる副作用とかがでる可能性はあるのでしょうか?

【高橋クリニックからの回答】
排尿障害が治っていなければ、一時的に(ブロック後2時間くらい)排尿困難になることがあります。
それ以外はないでしょう。
椎間板ヘルニア、坐骨神経痛、腰痛症の患者さんに、普段外来で行なっています。

投稿: pon | 2006/12/02 00:21

もし先生のところで仙骨神経ブロックを受けるとすると費用面とどれぐらいの期間を要すのでしょうか?

【高橋クリニックからの回答】
初診日は除いて、再診の都度、仙骨神経ブロックを行なったとして、3割負担で600円くらいでしょう。

投稿: pon | 2006/12/07 19:33

もの覚えある頃から今までで頻尿で残尿感もややあり尿の勢いも弱い感じでした、外見上は痛みなど特にありませんでした。しかし去年に乱暴に手でシゴかれてから亀頭が腫れっぱなしです。特に座った状態で尿を我慢すると鈍い痛みに付き合わせられます。もともと頸部硬化症が表に出るきっかけをつけられたのでしょうか?
【回答】
可能性はあります。

エブランチル、デパスで改善出来なければ手術しかないでしょうか? まだ試してみる薬という手段はありませんでしょうか!
【回答】
膀胱頚部硬化症と診断された時に考えればよいでしょう。

投稿: 匿名 | 2009/07/30 07:56

膀胱頸部硬化症と診断されましたが、エブランチル、デパスで症状に納得できなければ、効果ある可能性の薬はないでしょうか?

【回答】
そのうち下部尿路症の治療薬として承認されるハルナールが効くかもしれません。

投稿: 匿名 | 2009/07/30 18:54

40歳以下なのですが、エブランチルで効果があまり実感できない場合ハルナールやフリバスを自由診療で処方していただけますか?先生にご迷惑がかからなければお願いしたいのですが。
【回答】
自由診療ならOKです。

投稿: | 2012/09/09 10:19

膀胱頸部硬化症と診断され、デパスを処方されました。
筋弛緩作用・自律神経調節作用のおかげで、会陰部痛や関連痛は大分減少しますが、
副作用として眠気が強く出ています。

そのため効き目は弱そうですが、
同じベンゾジアゼピン系抗不安薬のリーゼで
代用出来ればと考えていますが、どうでしょうか?

また、デパス0.5mgを半分に割って飲むのと、リーゼ5mgでは
どちらのほうをおすすめしますか?
【回答】
効き目があるのなら、どちらでもOKです。』

ご教示いただけると幸いです。
よろしくお願いします。

投稿: 匿名 | 2012/10/13 20:18

先生シャクヤクカンゾウトウはデパスのような効果を期待して飲んでよろしいでしょうか?
【回答】
服用しなければ分かりません。』

普通の薬局ドラッグストアーの漢方薬でもよろしいでしょうか?
【回答】
はい。

投稿: | 2013/04/22 12:31

50歳になりますが、30歳を過ぎたころから排尿困難を感じ始め、最近は隣に知人とか立つとか、後ろに並ばれたりすると尿意はあっても排尿できません。自宅とか個室では普通に排尿できます。また、3年ぐらい前に自律神経失調症になり、現在はデパスとメイラックスを調子が悪い時に服用しています。排尿困難は主治医にも相談していませんが、ハルナールなどが効くのでしょうか?
【回答】
膀胱頚部硬化症でしょう。
ハルナールは効きます。』

また、デパスなどとの飲み合わせに問題はないでしょうか?
【回答】
OKです。

投稿: | 2013/08/27 20:29

高橋先生、お世話になっております。

デパスを服用しましたら、下腹部の違和感が驚くほどなくなりました。ですが、時間が経つと多少出て来てしまいます。ですが、その違和感は服用以前の半分以下です。
これはデパスがよくきいているということなのでしょうか!?
【回答】
はい。」

また、下腹部内がただれているように感じます。鼠蹊部は腫れぼったいですし、勃起をすると尿道などの欠陥が圧迫されたようにかゆくなります。
これは前立腺炎の影響でしょうか!?
【回答】
はい。」

お忙しいところよろしくお願い致します。

投稿: | 2014/02/15 12:15

高橋先生

いつも楽しくブログを拝見させて頂いております。
著効例の覧でαブロッカーなどの記述は拝見致しましたが、デパスについては見つけられませんでしたので、普段頓服でデパスを服用している私から実例をお話しさせて頂きます。

数年前に突然の排尿困難に陥り、市販の薬で一週間耐えましたが全くの効き目はなく藁にもすがる思いで高橋先生のブログへたどり着きました。

そして初めての診察時に先生からのウロフロ検査の後の隠れ排尿障害、膀胱頚部硬化症の診断。
その日から私はαブロッカーとともの生活が始まりました。
そのαブロッカーも私にはとても効果があり、服用したその日から不快な症状がなくなり通常通りの生活を取り戻す事が出来ました。

とある日に、またも症状が再燃。初めての症状が出た時よりもさらに悪化したような不快感。私の場合は痛み系ではなく頻尿、排尿後の残尿感、強い尿意はあるが尿は出ないという地獄のような日々を経験しました。
そしてまた先生のもとを訪れ相談した所、デパスの存在を教えて頂きました。

デパスの服用を開始したその日からこれまたみるみるうちに症状は軽快。
今では、調子の悪そうな予感のする日や体調を崩せない日を自分でコントロールしながら頓服で服用しています。

調子がいい日が続いていたためにデパスの服用をせずにαブロッカーのみで過ごしていましたがつい先日、それまで長い事安定していた症状に遂に嫌な感覚が戻ってきました。

これまで経験した事がない尿意切迫感と残尿感、そして経験のない初めての夜間頻尿。
肝心なデパスを会社のロッカーに置き忘れていた事に気付き、服用出来ないまま朝まで尿意で眠れないという最悪な経験をしました。

朝の出社後にデパスを服用し、その日は症状を感じない快適な一日を過ごす事が出来ました。この経験から、私にはデパスが膀胱頚部の筋弛緩作用と自律神経系の調節に絶大な効果を示す薬剤だとそう確信しました。

デパスの効き目は服用する年数が長ければ長いほど効果が薄れるとよく目にします。
でも使用法を頓服にしたり工夫すれば私のようにとても効果的に救ってくれる救世主の薬です。
排尿も楽になり、不快感も不安も取り払ってくれます。

同じ病で苦しんでいる患者様にこういう例もあるという事をお教えしたく投稿致しました。
この病で苦しむ患者さんに、「希望は捨てず、この先も頑張って行きましょう」と願うばかりです。

投稿: デパス | 2014/08/03 01:00

お世話になっています。先生の患者です。
ザルティアを服用するようになってから病状も軽くなってきました。会陰部の不快感、頻尿も少しづつですが良くなっています。特に自律神経に関しましてはすっかり治ったといっても良いくらいになりました。私の一番つらかったのは自律神経で少し体を動かしただけで心拍数の上昇で疲れてしまうこと,いつも口が渇いて舌までが痛くなってしまうこと口臭が強いと妻から言われて人と話をするのが嫌だったことです。いまは妻に口が臭くないねといわれ人前にでるのがいやではなくなりました。心拍数も前は5分も歩くと100くらいまで上がっていましたが今は1時間くらい歩いても70~80の間くらいです。
他のブログで前立腺内の結石を注射で溶解する治療が中国でやっているということが書いてありましたが本当に注射で結石を溶解するということなどできるのでしょか?
先生はどう思われますか。自律神経などに関することはかかれてないです。
【回答】
分かりません。
一般的な尿路結石では、効果的な溶解方法はありません。
カルシウムに特化したキレート剤であれば可能かも知れません。
一般的にカルシウムに対しては、Mg-EDTAというキレート剤を使用します。
日本ではCa-EDTAは鉛中毒の治療薬として販売されていますが、Mg-EDTAは工業用の試薬としてしか販売されていません。
代替医療の世界では、キレーション療法といって、このMg-EDTAを各医師が海外から個人輸入して点滴注射を行っています。
Mg-EDTAというキレート剤を前立腺に局所注射することで、前立腺に含まれる石灰のカルシウムはもちろんのこと、前立腺全ての細胞からカルシウムが除去・排除されてしまいます。
カルシウムの消失した細胞は一般的に活動を停止します。
当然、前立腺やその周囲の過敏な組織は神経中枢に情報を伝達できなくなりますから、症状が軽減するのかも知れません。
効果があるとしたら、面白い治療ですね。

投稿: 患者 | 2014/08/08 07:09

いつもお世話になってる患者の者です。
私も上記の方同様、デパスを処方していただいてから、胃痛が収まってたのですが、最近空腹時に特に痛みを感じるようになってしまいました。
エブランチル、ベタニス、デパス(4錠)に加え、市販のガスター10を飲もうと思ってるんですが問題ないでしょうか?
【回答】
OKです。」

それともデパスを増量した方が良いのか悩んでます。
アドバイスいただけたら嬉しいです。

投稿: こんにちは | 2015/05/28 01:10

先生にαブロッカーを処方していただいて二年ほど経ちますが、服用当初は効果がなかったデパスを最近ふと服用してみた所、効果を感じる事ができました。最近関連痛の症状の変遷があったことと関係あるのでしょうか?そう考えるとαブロッカーを服用し続ける事で薬が効かなくなったり逆に効く薬が増えたりする事もあり得ますよね。同様にザルティアも効き目を実感できました。また、お電話で薬の追加お願いしたいと考えています。ザルティアは一ヶ月で保険適用なしだといくら位だったでしょうか?
【回答】
9千円弱です。

投稿: サトウ | 2015/11/24 00:09

質問があります。よくCMでユリナールなどの市販薬が排尿障害の改善薬として販売されていますが、あれはどの程度期待できるものなのでしょうか?効き目は人によって違うとは思いますが、やはりαブロッカーが第一選択肢で、市販薬はサプリメントほどの効果しか期待できないと考えるべきでしょうか?
【回答】
ユリナールは清心蓮子飲(せいしんれんしいん)という漢方薬と同じ成分です。
心の安定を図って頻尿を改善する漢方薬です。
この漢方薬は補助的に私も処方することがあります。
あくまでも補助的です。

投稿: サトウ | 2015/12/06 17:52

定期的な仙骨神経ブロックの治療はどの位の期間と、どの位の頻度で行うのでしょうか
【回答】
多い人で40回以上です。
週1回ペースです。

投稿: | 2016/10/16 06:34

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