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医師の品位・資質

先日、ある慢性前立腺炎で悩まれていた医師から内視鏡手術のキャンセル・メールが届きました。手術後の痛みや出血についての電話での問い合わせに、私の対応がとても悪く、医師として幻滅したとも取れる内容の文面です。以下にその一部を紹介しましょう。

「・・・忙しい時間にお電話したためかどうか分かりませんが先生から「いろいろな場合があります」「びびっているなら止めた方がよいです」「びびっているならやりたくありません」と聞いたときはわが耳を疑い正直びっくり致しました。 それまでの素晴らしい先生のイメージがまったく吹っ飛んでしましました。とりつくしまがないと感じました。
小生も一介のいなか藪医ではありますが同業者の端くれです。・・・それにわずかではありますが年長者でもあります。古い考えかも知れませんが「長幼の…」とか言うことわざもまだ身体に染みついている年代です。もう少し違った物言いが無かったかと思います。・・・」

残念ながら、私はこの先生の思い描いていた理想的な医師ではありませんでした。口は悪いし、偉そうにしているし、同業の目上の医師に対しても礼儀知らずで、およそ医師としての品格はありません。でも病気を治す技量は充分に持ち合わせていると思っています。医師としての品格があって口だけの技量・資質のない医師よりはましだと思っています。頭脳明晰で神眼をもって患者さんの病気を見つけ、人には優しく接し物言いは穏やか、立振る舞いは紳士的で、技量は天下一品、白い巨塔の正反対の人間で、飲まない打たない買わない、お金にもきれい、そのような医師が理想的でしょう。私は俗物的なごく普通の医師です。勝手に高くイメージされ勝手に幻滅される、私はピエロ?でしょうか。

切除・切開をする内視鏡手術に、術後の痛みや出血がないかといえば、嘘になります。ではどのくらいでどの程度の%だと問われても、患者さんによってまちまちです。せめて最大公約数的に分かる範囲でインフォームド・コンセントというページに記載はしてありますが、必ずしもその通りになるものではないことは、医師であれば充分承知できるものでしょう。その同業者の医師からの問い合わせに、私があのように回答しなければならない情けない気持ちがお分かりいただけるでしょうか?真剣勝負の治療・手術です。下手をすれば、私の名は地に落ちます。どんなことがあっても私について行きますという患者さんでなければ、手術を引き受けることが出来ません。

医師にはいろいろなタイプの医師が存在するでしょう。研究熱心で学者肌の医師、親切丁寧で患者さん思いの医師、治療に情熱を燃やし職人気質の医師、診療は程ほどに趣味に生きる医師、お金しか頭にない医師などなどです。私はどちらかというと職人気質の偏屈な医師です。巧みの技を極めようと努力し続ける医師です。ですから私に理想的な医師をイメージしないで下さい。迷惑です。

どんな手術にもリスクはつきものです。切除・切開をする内視鏡手術に、術後の痛みや出血がまったくないかといえば、嘘になります。過剰な期待は患者さんにとっては不幸なことです。手術をお受けになった患者さんにレポートをお願いして、執刀医の私の言葉ではない、患者さんの生の言葉、実体験ををブログに掲載しています。レポート内容は私にとってはマイナスイメージ・不利な事柄が掲載されています。私としてはそれを読んでいただいて、ビビッて来院されない方が、あるいは手術をあきらめていただく方が、患者さんにとっても手術を行う私にとってもお互いに幸せだと思っています。

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